過去篇
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とある五席の独白
私は数年前まで、私がこの御話のヒロインだと信じて疑わなかった。
私は誰が見ても愛らしい容姿をしている。
あっという間に皆んなと知り合って、出世だってした。
真子さんとだっていつも一緒にいるの。
でも、気付いたら私の前をあの子が走っている。
最初はあの子も特典があって、私みたいにスムーズに出世したのだと思った。
だから、何故あの子が私より前を行っていて真子さんや皆んなから気にかけられているのか、って気に食わなかった時期もあるわ。
でも、でもね? 見てしまったの。
あの子が真子さんといることより鍛錬を選んでることを。
頭を鈍器で横殴りにされた気分だった。
「紫游は器用に見えて自分の為の息抜きをよう知らん」
いつか真子さんがそんなことを言っていた。
私は特典に胡座をかいて今の今まで来てしまったの。
だって、手に豆を作るより綺麗にネイルをしたい。
だって、顔に青痣を作るより綺麗にメイクをしたい。
だから席官になれればそれで良いって思ってた。
私が努力をしなくても物語に支障は無いのだし、私は私の恋を楽しもうって。
この間、あの子と手合わせをした。
私はあの子に全く敵わなかった。
たった一席違うだけ。だけど、努力の年数の違いを思い知った。
だからといって今更、私は私のやり方を曲げたりしない。
私は真子さんが好き。側にいたい。
強敵と渡り合える程に強くならなくたって一緒には居られる。
私は私なりの努力の仕方でこの恋を叶えるの。