千年血戦篇
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違和感と平穏
何事も無く。
本当に何事も無く、一ヶ月が過ぎた。
平子隊長は、まだ戻らない。
「涅隊長、あの薬の解毒剤を下さい。平子隊長が一向に戻りません」
平穏ではあれど違和感を消せない生活に痺れを切らし、私は十二番隊舎を訪れた。
私の存在に気付いておきながら一瞥もせずに作業に没頭する涅隊長に、やや張った声で要件を伝える。
「なんだネ、アレはそれ程強い薬ではない筈だヨ。私は面白いから経過を見たいんだがネ」
何が入っているのだか分からない毒々しい色味の液体を試験管の中で揺らしながら、シレッと"面白い"等と言う涅隊長に一撃御見舞いしたい気持ちが僅かに湧いたが、そうもいくまいと咳払いをして、彼の天敵の名前を出す。
「……では、浦原喜助に御願いして来ます」
浦原喜助。
その名前を聞いた途端に、涅隊長のギョロリとした眼球がこちらを向いた。
彼にとっては浦原喜助の名前は聞き捨てならないのだ。
先程まで愉快そうだった声音がガラリと変わる。
「……あの男を引き合いに出してくるとは……小憎らしい娘だネ、全く。良いだろう、今から取り掛かる。明日にでも取りに来たまえ」
吐き捨てるような言葉だったが、約束は取り付けた。
後は今日一日をやり過ごすだけだ。
「……で、真子さん。この御饅頭は何ですか」
五番隊舎へ帰って見れば、来客用長机の上に老舗和菓子店の名の入った箱が二箱。上の箱は既に開封済みで、甘い餡と皮の匂いがふわりと漂って来る。
「桃と雀チャンが買うて来てん」
「……成程」
そう聞いて安心した。
桃ちゃんも雀ちゃんもどうやら少年の平子隊長に餌付けをしているようだ。
もし出処の分からない貰い物であれば「学習しろ」と言いたいところだが、記憶の無い平子隊長には何のことやらだろう。
「私も御一緒しても?」
「ええで〜」
違和感の拭えない生活に一つ溜息を吐いて、御饅頭を食べる為に私は長椅子に腰掛けた。