千年血戦篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
擽ったい
涅隊長曰く、
「生命に対する危機感で一時的に霊圧が高まったせいだろうネ」
ということらしい。
何とも単純な薬である。
そんなこんなで現在の平子隊長はすっかり私の身長を追い抜いてしまい、百六十五センチ程の身長に成長している。
僅かにだぶつくが、いつも通りの死覇装も着られるようになった。
「平子隊長」
「せやから、隊長ってなんやねん。同い歳くらいやろ? 真子でええわ」
成長した分、ちょっとばかし厄介ではあるけれど。
反抗期は過ぎたようで、私に対しての態度は軟化し、あからさまに"ブス"等の言葉は言わなくなった。
これには私も大いに感謝した。一々傷付かなくて済む。
「……では、真子さん。御饅頭は食べますか?」
「……お、おう。くれるんなら食べたるわ」
真子さん。
何と擽ったい事だろう。
こんな形でこの人の名前を呼ぶ事になるとは思いもしなかった。
一時的だと、自分に言い聞かせても私の胸中は恥じらいで大荒れである。
「では、御用意致しますので」
平子隊長には見えぬように、深く頭を下げて息を吸い、支度をする旨を伝え、直ぐに背を向けて給湯室のノブを捻る。
「あ、おおきに」
給湯室に入るなり、私は扉を背にずるずるとしゃがみ込んだ。
「名前呼びは、心臓に悪い……」
真子さん。
普段、平子隊長と呼ぶ私にしてみれば、その形に唇を動かすだけでも一苦労。
ともすれば、好きな人の名前だ。
呼ぶ度に胸をときめかせてしまうのは恐らく仕方がない。
「……早く戻らないかな」
呟いて、重く溜息を吐いた。
こんなに真っ赤になった顔を隠すのは何度目だろうか。