千年血戦篇
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何もない
平子隊長には私の小さな頃の着物を着て頂き、京楽総隊長を含めた隊長格とその周囲にあらましを説明し終えて、約半日。
何の変化もなく、何の不自由もなく。
何故何の不自由もないかと言えば、私が桃ちゃんと一緒に書類を処理し続けているからである。
「なァ、桃。菓子の時間とちゃうか?」
「隊長、書類を片付けたいのでもう少しだけ御待ちになって下さいね」
小さな平子隊長は私に口が悪いことを除けば、大きな時と殆ど変わらないようで、桃ちゃんのことも既にいつも通り呼び捨てだ。
休憩を要求する時のように、頻回に御菓子の催促をしては待ったをかけられている。
どうやら本当に御饅頭が御気に召したらしく、もう催促した回数は覚えていない。
「平子隊長、後で私と甘味処行きましょうか」
「……オマエとは嫌や」
つれない御言葉。
もう慣れたから良いのだけれど。
小さくなる前はずっと傍に居たがったくせに何とも勝手な御方だと思う。
「じゃあ桃ちゃん、いや雛森副隊長よろしくお願いします」
「桃ちゃんのままで良いですよ。じゃあ私が行って来ますね」
態々言い直した私に、そのままの呼び方で良いと言ってくれた桃ちゃんは、小さな平子隊長に声を掛け、二人で甘味処へと出掛けて行った。
こうなると落ち着くような、少し寂しいような。
雀ちゃんも今日は非番で、桃ちゃんと平子隊長の居ない執務室はシンと静まり返り、微かに耳鳴りさえする。
「……本当は、平子隊長は私を嫌いだったりして」
なんてネガティヴになるのも静けさのせいだ、きっとそう。
そういうことにしてしまおう。
そういうことにして、今くらい、寂しさに素直になろう。
子育て世帯のような環境から解放されて書類処理が快適に進む筈の環境になったが、甘んじて寂しさを受け入れた私は机に突っ伏し、二人が帰るまでの間、耳鳴りを聴き続けた。