死神代行消失篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
過保護が過ぎる
現世へ行った日以降、どうにも平子隊長が視界に入る。
「邪魔です、隊長」
私の呼びかけに、隊長はチラリと目線を寄越し、ニッと笑うだけして、右横で鼻歌混じりに書類を読み続ける。
本人は御機嫌の様だが、隊長は執務室の棚を背凭れにしているため、棚の整理中である私からすれば大迷惑だ。
「はぁ……」
隊長はあの日からずっと、こんな風に、何の用もないのに側にいる。
風呂、厠、就寝時を除いて、この金髪を見ない時はないのではないかと錯覚する程には。
それでいて、この御方ときたら何故かキチンと仕事を熟しているので、文句の一つも言えやしない。
「平子隊長、すみませんがもう一つ右にズレて下さい」
隊長にそう声を掛ければ、またチラリと視線を上げて、何も言わず右に移動した。
喋らない平子隊長。
キチンと仕事する平子隊長。
どうにも気味が悪い。
「隊長、すみません、また右へ」
でも、不快ではないのも事実なのだ。
不快どころか半歩隣の空気が穏やかで、仕事中に瞼が重くなる。
前まで、近くに居れば心臓を握り潰されそうな気分だったのに。
前と今と、何が違うのか。
分からない。
「隊長、」
まだもう少し、
その意味は分からないままで居たい。
「隊長」
一見冷たい、事務的に呼び掛ける彼女の声が、俺は嫌いやない。
シンと鋭くて、しかし、どこか柔らかい。
ああ、多分、この冬の空気に似ているのだ。
通りで冬がよう似合うわ。
そう考えを巡らせ、再び彼女に呼ばれるまでと、また書類に目を落とした。