死神代行消失篇
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一頻り君坂さんと雑談をした後、彼女が店先まで送ってくれた。
しかし、店先に出てみると平子隊長がいない。
冷たい風に身震いしつつ、手をポケットに突っ込んだまま、キョロキョロと見回すが、本当に店に居ないようだ。
「電話してみたら?」
隣に立つ君坂さんが提案してくれたが、私はヘラリと笑って取り敢えず電子書簡を送ってみる。
「私が電話して、大事な用事の途中だったら申し訳無いですし……」
そう、ナンパとか。
と思ってみたが、多分一護の様子見かひよ里さん達の所への顔出しだろう。
「何でそんな卑屈かなぁ、もう」
呆れた様に君坂さんが溜息を吐く。
本日六回目の同じ台詞と行動である。
「いやぁ、だって私、モブですし」
そう、モブなのだ。
という意識は百五十年変わらない。
主人公なんてガラではないのだから。
ヘラリと笑う私に、またも溜息を吐く君坂さん。
この短時間で御決まりの流れになってしまった。
「あのね、広い世界で見てモブだとしても、自分の世界ではあなたが主人公なのよ?」
「目から鱗!!」
何ともポジティヴシンキングな御答えに、思考が停止してしまった。
成る程、確かに"自分から見た世界"は自分のものだ。
つまり主人公は私ということになる。
「ふむ……貴い御言葉として吟味させて頂きまする……」
「……何時代よ」
「鎌倉時代?」
「……あ、そう」
私の適当な返しに、君坂さんが八回目の溜息を吐いた時、伝令神機が短い電子音を立てた。
「あ、平子隊長からだ」
開いた電子書簡の内容は予想通りで、僅かな安堵を覚える。
「レコードショップで待っているそうなので、もう行きますね。有難う御座いました」
「うん、またね。気を付けて」
君坂さんの方へ向き直り、一礼すると、にこやかに手を振って送り出してくれた。
君坂さんの言葉はありふれた言葉に思えるが、私にはとても大切なものに思えた。
私が、私であること。
私として生きることを今一度見つめ直さなければなるまい。
物語の道筋だとか、モブだから、とか……そんなことではなく。
私はどうしたいか。
レコードショップへの道すがら、寒空へ小さく息を吐く。
白い息はすぐに消えたけれど、これが雲にもなるのだと思うと、やはり笑みが零れた。
「少しは素直にならなければ」