死神代行消失篇
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あなたとわたし
店に入る頃には真っ赤な顔もしれっと元通りの顔に戻り、待ち構えていた浦原さんとアッサリとした挨拶を交わした。
問題はその後。
「……」
気を遣った浦原さんと平子隊長は、母屋の一室に君坂さんと私を二人きりにしてくれたわけだが……何を話して良いやら分からない。
卓袱台を挟んで、黙々と御茶を啜る。
沈黙が痛いとはこの事。
俯いたまま、チラリと目をやった先の君坂さんは相変わらず可愛らしくて、更には以前より薄い御化粧が彼女の自然な美しさを際立たせている様に見えた。
輪郭は西洋人形のそれを思わせる柔らかな線を描いて、長い睫毛の垂れ目や少し低い鼻、小さな桜色の唇を包んでいる。
見れば見るほど美しい。
御茶を啜るために伏せられた瞳がもう芸術のようだ。
「は〜、あったまるわ〜」
「……???」
麗しい桜色の唇から聞こえたのは以前より確実にハスキーな声。
そして台詞は上品、とは言い難い、庶民的なもの。
「……君坂さん、ですよね?」
動揺を隠せない私の発言に、僅かにきょとんとした君坂さんは、すぐに合点がいったと言うニンマリ顔になった。
「私、元々こうよ? 百年前は可愛くいようと頑張ってたけど」
「
「妙に発音良いわね……」
思わずネイティヴアメリカンになってしまうのも仕方無き事と許して頂きたい。
私の憧れの君坂さんが!
実は! 割と庶民的!
この衝撃は平子隊長事件以来の威力。
私の人生が根底から覆りそうな気さえした。
百五十年見続けたあの姿は君坂さんの努力の結果なのか。
「紫游ちゃん、今は真子さんと良い感じなんでしょう?」
突然、目を爛々と輝かせた君坂さんが、卓袱台に身を乗り出して私に問う。
「そ、そうなんですかね……?」
未だに"告白逃げたい衝動"から抜け出せない私は言葉を濁す事しか出来ず、卓袱台の御茶をちゃっかり回収しつつ首を傾げた。
「私ね……多分、喜助さんがちゃんとした初恋なのかもしれないの。真子さんの時は……なんて言うか、あなたへの嫉妬と、意地みたいなものがあってね? ちっとも優しくなれなかったの。でも、喜助さんと居ると"彼を助けたい"って思うのよ」
そう言って頰を赤らめた君坂さんは、やっぱり妖精の様に無垢で愛らしく見える。
けれど。
嗚呼、彼女も元を正せば人間なのだ。
嫉妬もすれば意地も張る。嫌味だってその唇は紡げるのだろう。
それらを以前に発しなかったのは、確かに彼女の意地だったのかもしれない。
彼女は私と大きな違いの無い、同じ場所で生きる"人"だった。
そこまで思って、何だかやっと、"君坂さん"という人物を理解出来た気がした。