死神代行消失篇
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八雲穿つ雀ちゃん
こんな空気の中、何度、目蓋を持ち上げただろう。
頰に滴る雫の温かさに頰を緩ませながら、雫の落ちて来る先を見上げる。
真っ赤に目を腫らした五席が、私の手を握り、咽びながら小さく"御免なさい"と繰り返していた。
まだ力の入りきらない手で、緩く握り返す。
「只今、雀ちゃん」
初めて、五席を名前で呼んだ。
以前は、また三席の様になるのが怖くて、親しく接する事に尻込みしていたのだ。
でも、目を覚ました今、何故だか、もう呼ばずには居れないと思った。
その後の雀ちゃんは、とても表現し切れる様子ではなく、悲しいやら嬉しいやら、表情を複雑に変えながら、只々泣いていた。
「只今、雀ちゃん」
自分の不注意で危険な目に遭わせた負い目。
緩く握り返された手。
初めて呼ばれた名前。
彼女がちゃんと生きていたと実感を得た事。
様々な事柄が私の脳裏を駆け巡って、収拾が付かない。
隊長、隊長、隊長。
もう隊長ではないと分かって居ても、そう呼ばずには居られなかった。
短い間でも、私はこの人の背を見ていたのだから。
サボることも、勿論あった。
けれど、それ以上に隊の為に尽力していたことをよく知っている。
地味な作業でも地道に見えぬところで隊士の負担軽減に努めたり、隊士の精神面、得意不得意、それらをどうするべきかきっといつも考えていた。
難しい顔など隊士に見せず、いつもヘラヘラと笑ったその顔の下で。
この人が分からない。
そう思う日もあったけれど、本当はちゃんと分かっていたのだ。
そして、だからこそ、私を見てほしいと、名前を呼んでほしいと……そう、思った。
「よーしよし。有難うね、雀ちゃん」
犀峰隊長は、いつまでも泣き止めない私を抱き締めて、ずっと頭を撫でてくれていた。