死神代行消失篇
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赤い花
久しぶりに訪れた精神世界。
見渡す限り群生する彼岸花。
でも、いつもとは違った。
さらさらと流れる小川に、白い月明かりが反射してきらきらと光る。
小川を目で辿れば、その先に小さな小屋。
「あ……」
はっと息を吐いた私は、足元の彼岸花を踏み倒さない様に、恐る恐る小走りに駆け出す。
動悸がする。
しかし、不快ではない。
高揚する気持ちが私の身体を突き動かした。
小屋に着き、引戸を引く。
「天竺葵!!」
「悪かったな、私で」
室内に居たのは期待に反して彼岸花だった。
私の精神世界の主は元々彼岸花なのだから、期待も何も当たり前の光景なのだけれど。
彼岸花は私から目線を外すと、傍の火鉢に煙管の灰を落とし、彼の近くに無造作に置かれた座布団を指で示す。
「大方、葵が消えたことを心配しているのだろう?」
私の斬魄刀は、やはり御見通しらしい。
草鞋を脱いで、示された座布団へ大人しく座った。
私が座ったのをちらりと確かめてから、彼岸花はまた新しい刻み煙草を煙管に詰める。
「葵は、死んじゃあいない」
では、何故。
そう聞く前に、小さな足音が聞こえて、小屋の奥へ続く襖から、小さな姿が現れた。
「ひがんばな! 紫游がきたの?」
小さくて可愛らしい、よ、よ、幼女!
「彼岸花……隠し子か」
「馬鹿を言うな。よく見ろ」
「え……。あー……」
言われた通りよく見れば、この子は天竺葵そっくりだ。
天竺葵が小さければ丁度こんな感じなのだろう。
「それが葵だ」
……。
「は?」
「お前に力を貸すと決めた葵は、石倉という人物の斬魄刀から、こちらへ力を移した。その結果が、その幼子というわけだ。葵へ分散されていたお前の力が、これからは正しく一つの斬魄刀へ集まる。卍解の制御も容易くなるだろうさ」
嗚呼、そうなのか。
やんわりと拒まれていた天竺葵も、力を貸してくれる為に、あの河を渡ったのか。
理由が分かれば、もう不安は無かった。
これからは斬魄刀が一振りというだけで、何も変わらない。
同じ様に、天竺葵は此処にいるのだ。
「改めて宜しくね、天竺葵」
どうしてもそうしたくて、そっと抱きしめると、何の抵抗もなく小さな身体が抱き締め返してくる。
泣きたくなる程に温かい人肌だった。