死神代行消失篇
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冬の堕天使
五席の部屋へ続く廊下を歩いていると、突然、グイと手を引かれた。
「おっわぁ!?」
バランスを崩し、そのまま何処ぞの御部屋へ転がり込む形になる。
反射的に目を瞑ったが、危惧した床に打ち付けられる感触はなく、私を引き摺り込んだ誰かさんに受け止められたらしい。
いったい誰だ。と思いつつ、恐る恐る目を開く。
「いやぁ、紫游ちゃん。突然ごめんな〜」
目の前にあったのは、ちっとも申し訳なさそうじゃあない、にんまり顔。
「……君はどうして、私が誰かに会いに行こうとすると現れるんだろうねぇ、ギンちゃん」
炬燵は狡いと思うんですよ。
まぁまぁ、と上手い具合に流されて入った室内には炬燵。
ギンちゃんから私への退院祝いの言葉もそこそこに、暖房器具を見付けた嬉しさから直ぐに炬燵に入ってしまった私は、もう抜け出せなかった。
炬燵は冬の堕天使ですよ、えぇ。
その温かさはさながら天使のように……。
その離れがたさはまるで悪魔のように……。
つまり、魔性の堕天使というわけである。
「あったかい〜……」
「ええやろ〜? 炬燵〜」
何の用か。
そんな考えが吹き飛んでしまう程の魔力が、このぬくぬくした正方形の天板をした物体には備わっている。
肩まですっぽりと分厚い炬燵布団に収まり、天板の上へ火照った頬を押し当てるという行為は、寒い冬には抗い切れない至福だ。
「……紫游ちゃん、有難うな」
「うん?」
突然の御礼に胸中で首を傾げた。
御礼を言われる様な覚えはない。
しかし、ギンちゃんが厭に真面目な顔で言うものだから聞き返すのも何だか躊躇われ、そのまま頷く。
すると、藍染が居た頃とは違う無邪気な笑みが返って来て、私まで頰が緩んだ。
「ボク、今日非番やからゆっくりしてってな」
その後、ギンちゃんが御茶と御菓子を出してくれたので、すっかりギンちゃんの部屋の炬燵に居座ってしまったのだった。