死神代行消失篇
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逃げを打つ
平子隊長の自室である隊首室が私の自室。
そんな八方塞がりにも思える状況の中、戸口で膝を抱えていた私は、突然の閃きにハッと顔を上げた。
なんだ、単純な話だ。
私がこの部屋を出れば良いだけではないか。
「今更感だわ」
死中にて活を見出す、だったか。
絶望の淵に光明を得た気分である。
折角だから五席の部屋に泊めてもらおうか。
まだ只今も言えていないのだし。
この部屋から解放される術が有ると思い出せば、あれだけ重く揺れていた思考はびっくりする程にすっきりする。
それどころか、妙にうきうきしてさえ来た。
一方的に決めた事と言えど、五席の部屋に御泊まりが出来るのだ。
「よし」
そうと決まれば善は急げ!
立ち上がり、二度三度瞬きをした後、私は隊首室に置かれた中から必要な分だけ自らの私物を引っ張り出し、荷造りを始めた。
普段は嬉しいものだが、今回ばかりは五席に"駄目です"と言われないことを祈ろう。
終業後、隊首室に戻った平子は御馴染みの呆れ顔で腕を組む。
引戸の向こうは一見、昼間と変わらないが、連れてきた筈の紫游の姿がどこにもない。
それに、よくよく見れば紫游の私物のみ、幾らか減っている。
「まァた逃げよった……」
毎度毎度逃げられる身にもなれ、と重い溜息を吐く。
「ま、アイツのことやから探さんでも仕事には顔出すやろ……」
アイツが真面目な限り、全く会わんっちゅうことはないわけやし、百年待ったんを思えば、今更焦ることもない。
紫游が逃げるんくらいいつものことや、気長に行こ。
そう思いながら、ネクタイを緩めて大きな欠伸をした。
自分など愛されるべきではない。
その様な思考が付いて回る者の多くが、自らが愛される場面に立たされた場合に選び取る行動の一つが、
"逃げる"という手段である。