死神代行消失篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
逆撫でる
冬の陽気が雲間から柔らかに降り注ぐ、何とも穏やかな昼下がり。
五番隊舎の廊下は足袋越しにも温かい。
一年近く眠っていた割には身体には何の異常も無く、退院はスムーズだった。
支障があるとすれば……。
「天竺葵は……?」
「オマエが眠り始めてから知らん間に消えとったらしいわ」
そう、天竺葵が居ない。
天竺葵とは三途の河で別れたきり。
だが斬魄刀にとっての三途の河の存在など聞いたことがない。
夢ならばと思いもしたが、消えてしまっているのだから夢では済ませられないことだ。
退院時も律儀に迎えに来て下さった平子隊長に生返事をしながら、自室へ着いたら彼岸花に会わねばと思考する。
彼なら何か知っているかもしれない。
「ほれ、着いたで」
「は……い。……いや、あの、隊首室はもう平子隊長の自室ですよね?」
「おう、俺も使てんで?」
「私の自室へ行きたい、と御願いしたのですが……」
平静そのものの顔をしながら冷汗を流す私は相当に器用……いや、奇妙といえるだろう。
そんな私の目の前で、平子隊長は無言のまま隊首室を指差す。
「いえ、あの……」
「ここや」
「……ココア?」
「いや、聞き違いしつこいな。荷物いっこも動かしてへんから、ここがオマエの自室で、ほんで俺の自室でもあるっちゅうことや」
たとえ普段通り気の抜けた顔でも、隊長なりに懇切丁寧な解説をして下さった筈。
その筈なのに、内容が一つも頭に入って来ない。
「寝言の次は宇宙人語でしょうか。私、申し訳ないことに日本語しか分かりませんので、せめて日本語で御願い致しまっあだぁ」
決してマーダーと言ったのではない。
目覚めて以降おそらく初となる、手加減無しの手刀を喰らった私の口から発せられた、特に意味を成さない、ただの情けない音だった。
何をどう諦めたって
貴方は私の百年を
緩やかに、急速に
いとも簡単にひっくり返す