過去篇
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苺大福
「あの、平子隊長」
俯き気味に声を掛ける、腕の中には最近有名な店の大福。しっかり抱いては温まってしまうだろうかと、少し緩く抱えている。
「おー、何や、ええモンくれるんか?」
いつもの様にやや気怠げに頬杖をつき、その手がやんわりと支える細身の輪郭の中、弧を描く唇からは並びの良い歯列が覗く。
真っ直ぐに揃った前髪の下の目は柔らかに細められ、
細く、柔らかい、誰しもその印象を先ず受けるであろう。
事実、体格も細身で猫背である。おまけに背を流れる豊かな金糸の髪が、彼の柔和さを更に強調している。
極め付けにはその声だ。低く、しかし重くはなく温かみを感じる。くどい程に柔らかい。
さぞ、おモテになられるであろう。
「そろそろ、お茶でも、と思いまして」
白く滑らか頰が薄っすらと色付き、こちらも何と柔らかそうか。
「大福やんけ! おおきになァ、ほな一緒に食おか」
甘味は大福。嗚呼、柔らかい、温かい、甘い。
「では、お茶を淹れて参ります。平子隊長、
そう言って私は、キリのいい書類を端に寄せ席を立つ。
もうお分かりか、これは私の目の前の光景であり、苺大福の様に愛らしいお嬢さんは私ではない。このお嬢さん、君坂五席は正に夢小説のヒロインの様な立ち位置であり、私は
ある日、トリップなるモノを体験した。
そう、残念ながら私は只のモブでして。