第2章 ~オドゥム編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ウジンたちが倉庫の外へ出ると、彼らに向かって一斉にライトが当てられた。
「な、何だ?!」
あまりの眩しさにウジンたちは手で目元にあたる光を遮ろうとする。
「FBIよ! 手を挙げなさい!
K国でのFBI捜査官拉致暴行について聞きたいことがあるわ」
ジョディの声が響いた。
FBI捜査官達がライトのそばで銃を構えている。
また、彼らの周りには後方支援として日本の公安警察が待機していた。
風見の姿も確認できる。
昴、藤枝、さくらも彼らを追って倉庫から走って出てきた。
ウジンたちは前も後ろも包囲され、もう逃げ場はない。
するとウジンはジャケットの右ポケットに手を入れる。
動きを察知したジョディは警戒を強め、叫んだ。
「手を挙げなさい! 勝手な行動はしないで!」
ウジンがポケットから取り出したのは小さなリモコンスイッチだった。
部下がFBIに銃口を向けられたウジンを庇うように立つ。するとウジンは踵を返し、ゆっくりとさくらたちに近づいていく。
「アイツ…もしかして自分の体に爆弾を!」
藤枝が叫んだ。
「ッ!」
昴が銃でウジンを狙う。だがそれより一瞬早く、彼はさくらに近づきその腕を掴んだ。
(速い!)
さくらはとっさに避けようとしたが、かなりの訓練を受けているらしく避けきれなかった。
流れる様な動きでさくらの体から自由を奪う。
「さくらッ!!」
ウジンを照準から外し昴が叫ぶ。
「このまま本国へ帰っても我らは処分される。
ならば将軍様のためにラスティー、お前だけでも道連れだ」
さくらはなんとか逃れようとするが左腕をひねり上げられ、後ろから羽交い絞めされた状態。
リモコンを持つウジンの腕で強く首を押さえられている為、身動きどころか呼吸もままならない。
「グッ…ふぅ…ッ!」
次第に意識が遠くなる。
「くッ!!このままではさくらが…ッ!」
昴はリモコンを打ち抜くことも考えた。
だがそのリモコンはさくらの顔の前だ。
(手足を狙うか? 一瞬ひるんだとしても、さくらがヤツから離れるだけの時間は稼げない)
「くそっ!!」
打開策が見いだせず、昴に焦りが見えた。
さくらは右手でウジンの右腕の掴み、必死に抵抗をする。しかし鍛えられたウジンの腕はびくともせず、ただその皮膚を掻きむしることしか出来ない。
(だ、ダメ…だ…息……苦し…)
酸素も血流も遮断され、次第に薄れる意識。
意識を失う…まさにその時———
倉庫の上に人影が見えた。
金色の髪が風に揺れている。
「請閉上眼睛(目を閉じて)!!」
安室の声で中国語が聞こえるのと同時に、昴とウジンとの間に何かが投げ入れられた。
中国語の分かる藤枝とさくら以外、皆何事かと動揺する。
とっさに藤枝は昴に近づき、彼の目元を片手で覆う。
さくらはぎゅっと目を閉じた。
カッ!!!
鋭い閃光があたりを照らす。
「うわぁああ!!」
「目が、目が見えん!!」
閃光弾で目が見えなくなりウジンが怯んだ。そのスキにさくらは彼の腕を解き、昴の方へ向かって走り出す。酸欠に陥っていたさくらの足元がふらついた。
「逃がすか!!」
ウジンがさくらを再び捕まえようと左手を伸ばした。
だが目がよく見えないため、その手は空を切る。
「チィッ!!」
右手の親指がスイッチにかかった。
昴もさくらの方へ走る。
倒れ込むさくらの体を抱きとめると、そのまま右脇にあったコンテナの方へ飛んだ。
カチッ
スイッチが押された瞬間、ウジンや部下たちの体がカッと光った。
「みんな伏せろ!!」
藤枝が叫ぶ。
その直後激しい爆発が起きた。
ドゥオオォォォン!!!
……しばらくして爆発の衝撃が治まり、藤枝やジョディたちが立ち上がった。
ジョディは閃光弾で見えなかった目が、ようやく見えるようになってくる。
「シュウとさくらは?」
何度も瞬きをしながらあたりを見回す。
「シュウ! さくら!」
二人の名を叫んだ。
「ここだ!」
昴の声が聞こえた。
声のした方へ藤枝とジョディが駆けつける。
コンテナの影で二人は無事だった。
「ゴホッゴホッゴホッ!」
さくらは激しく咳き込んだ。
「さくら! 大丈夫かッ?」
昴はさくらの肩を抱き、背中をさする。
ぜぇぜぇと肩で息をするさくらを、昴は優しく抱きしめた。
藤枝も「間一髪だったな…」と言葉を発するものの、血の気が引いたような情けない顔をしていた。
「あなたのおかげで閃光弾に目をやられずに済みました。ありがとうございます」
昴は礼を言うと藤枝に何かを差し出した。
「なんだ?」
「さっき、ウジンが逃げる時にポケットから落とした物です。
おそらく空港のコインロッカーの鍵ですよ」
藤枝の手にそっと鍵を置いた。
藤枝はグッとその鍵を握り締める。
「ありがとう…」
それ以上は言葉にならなかった。
藤枝の目から涙がこぼれていた。
3人のやり取りを安室は倉庫の屋根の上から見ていた。インカムで風見に連絡を取る。
「最近のスマホは便利だな。簡単な言葉ならすぐに調べられる」
通信を切った後、安室はつぶやいた。
「赤井…これで貸し2つですよ」
***
プルルルル……プルルルル……
チュ・ソジュンの側近が電話に出る。
「ソジュン様、お電話です」
「まわせ」
「はっ!」
「私だ…。何…ウジンが…。マスターレポートはギムレットによって削除…それは間違いないのか? …分かった」
自身の斥候からだった。
「ソジュン様…次はいかがなさいますか?」
側近が静かに声をかけた。
「いや、しばらくラスティーとあの組織からは手を引く。
エンジェルダストのマスターレポートが存在しないとなれば、計画を大幅に変えねばならん。
アメリカを黙らせ、世界を手に入れるために。
今はせいぜい、恋人と仲良くやっているが良い。あの組織もろとも、いずれ闇に葬ってやる」
ソジュンはギリッと奥歯を噛み締めた。