第2章 ~オドゥム編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『俺にエンジェルダストの情報とラスティーの殺害を依頼した奴に伝えたいことがある。
お望み通り、ラスティーの身柄を拘束した。
あとはヤツから情報を吐かせて殺すだけだ。
だが、俺はお前たちを完全に信じちゃいない。
まずはそんな遠くで見張っていないで、お前も日本に来るんだ。
エミリーの遺骨と遺品を持ってな。
その時、俺のようにこうやって動画を撮って、本物のエミリーが日本に着いたか分かるようにするんだ。
そうでなければ、情報も殺害も何一つお前らの思い通りにはならない。
この女の情報が欲しかったら俺の言う通りにするんだな』
そう言うと藤枝はラスティーに近づき、胸ぐらを掴んで立たせた。右腹に2発膝蹴りを入れ、左右の頬を叩き、壁に背中から叩きつける。
胸ぐらを掴んだまま、藤枝の腕はラスティーの首を押しつぶすように力を込めた。
壁と腕に首が挟まれ、ラスティーは息ができない。
意識が飛ぶ直前に腕の力を緩め、今度は手前に引っ張ると、そのまま体を床に叩きつけるようにラスティーを倒す。
首への圧迫のせいで、ラスティーは床にうずくまったままゴホゴホとひどく咳き込んだ。
その後も暴行は続き、倒れたラスティーの髪を掴んで顔が見えるようにすると、
『この女、なかなか強情だ。お前たちが日本に来るまで楽しめそうだよ。
連絡を待っているぞ』
そう言って投げ捨てるようにラスティーの髪から手を離す。
そのまま立ち上がってスマホに近づき、停止ボタンをタップした。
「おいっ!大丈夫かっ?」
停止をタップしてすぐに藤枝が駆け寄る。
昴もさくらに駆け寄り抱き起こした。
口の中が切れ、口端から流血していた。全身汗だくになり、意識は朦朧としている。
あっちこっちアザだらけだ。
藤枝が手足の拘束を解いてくれた。
昴はいたたまれない気持ちになり、たださくらを抱きしめる。
藤枝も自分とエミリーの為にここまでしてくれるさくらに、涙が出そうだった。
しばらくすると朦朧としていたさくらの意識が戻りだす。はぁはぁと荒い呼吸の合間に『大丈夫』と唇が動いた。
さくらはなんとか自力でシャワーを浴び、その後昴がキズの手当をした。
その間に藤枝は動画を確認する。
『バチンッ!!』
自分がラスティーの顔を平手で殴りつけた時、切れた唇から鮮血が飛び散っていた。思わず目を背けてしまう。
「はぁぁ~~…」
両手両足を拘束された女性に暴行を働く男。どこからどう見ても、この動画に映る自分はただのゲス野郎だ。もうため息しか出ない。
さらに昴とも動画の最終確認をして本文となるメールを書く。
それに先の動画を添付し、先日指令を送ってきた相手に送信した。
送信完了の文字を見て、藤枝が大きなため息をついた。
手当をしてもらって、着替えを済ませたさくらは、藤枝が思っていたよりずっと元気な様子だ。
「本当に大丈夫なのか?」
藤枝はさくらに声をかけた。
さくらはニッコリ微笑む。
『ちゃんと避けていましたから』
ノートに書かれた文字を見て、藤枝は「マジかよ」と驚いていた。
「とりあえず、今日は帰って休みましょう。明日は差し入れでも持ってきます。くれぐれも部屋から出ないように」
昴は藤枝に注意を促す。
「あ…ああ、分かっている」
自分の動揺とは裏腹に、至って冷静な二人を見て、藤枝はあっけにとられるしかなかった。
さくらは簡単に変装し、そっとホテルの部屋を出る。地下駐車場の昴の車に乗り込み、工藤邸へと戻った。
家へ着いたのは間もなく日にちが変ろうという時刻だった。
昴はりおを支えながら部屋まで連れて行く。
確かに急所を避けてはいたが、リアリティーを出すために、拳や膝は体を痛めつけるほど強く当たっていた。
おかげで、体はアザだらけ。
刺された腹部だって強い痛みがあったはず。
まさに満身創痍だった。
「また無茶をしましたね」
二人でベッドに腰掛け、昴はりおの顔を見る。
『心配かけてごめんなさい』
「お前が暴行を受けるところなんて、…見たくなかったよ」
変装を解きながら、赤井は深いため息をついた。何度止めに入ろうと思ったことか。
藤枝がいたため冷静を装っていたが、内心は動揺しっぱなしだった。
『何も知らせずにボコボコで帰ってきた方が怒ったでしょう?』
「まあ、そうだが…。
お前の提案以外に良い案を出せない俺もいけないな。
お前のむちゃくちゃな提案が、いちいち理にかなっているのも少し腹が立つ」
言いながら、赤井は不機嫌な顔をりおに向けた。
そんな赤井にりおは『頑張れFBI!』と手話で示し、ニッと笑う。
「言ったな!」
赤井はりおを押し倒すようにして、ベッドにダイブした。
二人でベッドに横になったまま、赤井はそっとりおの頬に触れる。
「お前のキレイな顔が少し腫れている…。
冷やしたほうが良さそうだ。ちょっと待ってろ」
そういって体を起こすと部屋を出て行った。