第2章 ~オドゥム編~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
午前6時30分
さくらは昴にメールを打っていた。
『9:00発の成田行きに乗ります。お昼前には成田です。
そのまま近くのホテルに缶詰ですが…。着いたらまた連絡しますね』
「これでよしっと」
メールを送信して、さくらは最後の荷物をバッグに詰めた。
タクシーで空港に向かう時、エミリーの入院している病院が見えた。じっと病院を見つめるさくらを見て、安室はそっとその手を握る。残り少ない彼女の時間が、どうか安らかであるように。二人で祈った。
午前9時…——
ふたりはK国を後にした。
成田に着くと、二人はすぐに最寄りのホテルにチェックインをした。
安室はジンに成田空港近くのホテル到着の一報を送る。送信ボタンを押すと小さく息をはいた。
「はぁ~~。ホテル住まいも楽じゃないわね」
さくらは荷物を片付けるとベッドダイブした。冷たい布団が頬に触れる。
「けほっ!けほっ!ごほっ!」
藤枝の隠れ家に潜入した時に、台風の風雨に晒されて、少々風邪っぽかった。
K国への潜入でも飛行機内や、ホテルの空調が効きすぎて乾燥するのか、この2日間ずっと喉の調子が悪い。
「あ~あ、早く秀一さんに会いたいな…」
成田のホテルに着いた事を赤井にメールすると、さくらはそのままウトウトとまどろんでいた。
トントン
部屋のドアがノックされる。慌てて開けると安室が立っていた。
「二人でラウンジに来るようにと連絡が」
そう言われて安室と共にラウンジへと急いだ。
ラウンジに着くとジンが一人だった。ウォッカが居ないのは珍しい。
「ジン、一人ですか?」
ラスティーは思わず問いかけた。
「ああ、藤枝を連れてくるのに手こずってな。
明日、ウォッカが藤枝を連れて帰国する」
ジンはポケットに突っ込んでいた手をタバコと一緒に出した。
「バーボンの読み通り、サカモトの掴んでいる情報をくれてやると言ったら、大人しく言うことを聞くようになったそうだ」
なるほど。それを伝えにウォッカを行かせたのか。バーボンもジンが一人だったことが不思議だったが、話を聞いて納得した。
「コルン達は当初、暗殺目的で行っていたからね」
ラスティーが小さく耳打ちした。
バーボンとラスティーのつぶやきが聞こえたのか、ジンがフンと鼻を鳴らす。
「キャンティのヤツはギャーギャーわめくばかりだし、コルンもぶっきらぼうにしか話さねーから、藤枝と交渉にならなかったんだ」
アイツらは暗殺しか向かねーな、とタバコに火をつけながら愚痴っていた。
「それでだ」
タバコをふかしながら、ジンが二人の顔をじっと見た。
「藤枝はかなり頭のキレる男だ。我々の情報を2年近く、しっぽも掴まれずに探っていたくらいにはな。
お前たちはヤツがギムレットレポートを見つけたとき、そのレポートをオドゥムに引き渡さないように上手く交渉しろ。
ヤツの女があっちの手の内にある以上、藤枝はレポートが見つかれば必ず寝返るはずだ。それを阻止するんだ」
確かにジンの言う通りだ。エンジェルダストでエミリーが助かると思っているなら、藤枝はレポートが見つかり次第、間違いなくオドゥムの元へ行くだろう。
「ジン、エンジェルダストを改良してガンが治るなんて事あり得るの?」
ラスティーがジンに問いかける。
「俺も可能性があれば、それをエサにと思ってラボのヤツらに聞いたが…そんな効果は期待できないとさ」
ジンはタバコを咥えたまま煙を吐き出した。
その煙で「ゴホッ」とラスティーがむせる。
「オドゥムの奴らのハッタリだったわけだ。藤枝はそんな嘘に踊らされている哀れな男だ。もっとも、レポートが見つかるまでは、その事実を藤枝が知ることは無いがな」
そう吐き捨てるように言うと、ジンはタバコを灰皿に押し付けスッと立ち上がった。
「明日成田に着き次第、このホテルの一室に藤枝を連れて行く。そこで今後のことについて話せ。それが済んだ後ラボへ連れて行くが、交渉次第ではお前たちもラボに来てもらうことも有り得る。話はそれだけだ」
そう言ってジンはラウンジを出て行った。
「明日が勝負って事ですね」
「ええ」
取り残された二人は、明日まで特にすることもない。昼前にホテルに着いてからまだ食事を取っていなかったので、とりあえず昼食を取ることにした。
昼食後は空港のターミナルビルへ行き、ショッピングエリアをブラブラした。
さくらは少年探偵団の子どもたちと阿笠博士、お休みをもらっている森教授夫妻のお土産を買った。
「昴さんのお土産って何が良いかな…」
(成人男性のお土産って一番悩むなぁ…。博士は好きなもの分かりやすくて良いけど)
色々見て回るがピンと来ない。
ふと、シルバーの携帯灰皿が目に止まった。
シンプルなデザインで、なんとなくライフルの銃弾のようにも見える。
何より一粒だけキレイな黄緑色の石がはめ込まれていた。
瞳の色と同じだ…。そう思った時には手に取り、レジへと向かっていた。
「…」
その様子を安室は見て見ぬふりをした。