第2章 ~オドゥム編~
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昴のケガは、致命傷を避けていたため数針縫ったものの傷は浅く、大きな血管や神経にも問題なかった。
ただ、さくらの精神的なショックは大きかった。
病院では昴の処置を待つ間、トイレで嘔吐を繰り返しずっと震えていた。
その間は蘭がずっとさくらに付き添ってくれていた。
処置が済んだあとは簡単な事情聴取をされ、捜査一課の高木が4人を工藤邸まで送ってくれた。
「さくらさんの事は任せて」
家に着くと蘭がさくらを浴室に連れて行き、血液を洗い流して着替えを手伝う。
その間に昴も血だらけの服を脱ぎ、着替えをした。
コナンに手伝ってもらって4人分のお茶を淹れていると、バスルームから二人が戻ってくる。
昴は蘭に礼を言ってさくらの肩を抱き、リビングのソファーに座らせた。
酷く青い顔をして表情がほとんどない。ぼんやりとしていて起きてはいるが、意識があるのか無いのか分からないような状態だ。
さくらの様子に皆心配になる。
あまりの憔悴した姿にいたたまれなくなった蘭は、
「私、何か食べられるものでも作ってきますね」と言ってキッチンへ向かった。
蘭の姿を見送ると、コナンは昴の隣に座って話しかけた。
「沖矢昴の正体を晒さずに、さくらさんを助けるにはこれしか無かったけど…。さくらさんの心の傷はまだ完全に癒えたわけじゃない。それなのに昴さんが切りつけられるところを目撃して…。何も無いわけ…ないよね」
コナンの言葉を聞いて昴も小さく息を吐く。
「それは私も一瞬考えました。しかしあそこで躊躇していたら、間違いなく…ヤツはさくらの心臓を背中から…。それは私が耐えられません」
確かにそうだった。さくらは子どもを守るために刺されそうになった瞬間、男に背を向けた。
そして万が一ナイフが自分を突き抜けても子どもに刺さらないように、子どもの体をグッと下に押し、自身と子どもの間に空間を作った。
とっさの事だったし、本人も無意識にやっていたのだろう。だがその行為は文字通り、自分の体を盾にする事に違いなかった。
「自分の命は簡単に差し出すのに、自分以外の命が危機にさらされると、発作を起こしたり泣いたり。本当に勝手な人ですよ」
昴の声はいつもより沈んでいた。
「私の体の心配はしてくれるのに、心の心配は全然してくれない」
昴はさくらに近づく。
「本当に…ひどい人だ…」
そのままさくらを抱きしめた。
何品かおかずを作り、冷蔵庫へと収納した蘭は、小五郎の事が心配だからと家へ帰った。コナンはケガをした昴の身の回りの手伝いをするために、今夜は泊まる事にした。
さくらは自室として使っている部屋で眠っている。飲ませた鎮静剤が効いているのだろう。
「ねえ、昴さん。一つ聞きたいんだけど」
「なんだい?」
向かい合わせで座った昴が返事をする。
「さっきさくらさんを浴室から連れて帰った時、蘭姉ちゃんが行っていたんだけど…」
そこまで言って、一度言葉を切る。
「あの……最近、さくらさん…誰かに襲われた? 両手首と腕には誰かに握られたような痕がくっきり残っていたし、背中には床のような固いところに押し付けられたような青アザ。そして首元から胸元に無数のキスマーク…。誰かに襲われたとしか…」
「コナンくん。それを聞いてどうするんだい? 探偵として興味を持つことは大事だけど、踏み込んではならないエリアもあるんだよ」
昴は質問に答えようとしない。さくらほどの人があそこまでされるとなれば、襲った人物は限られる。赤井やコナンにとっても無関係な人物ではないだろう。
「昴さん、それでいいの? 好きな人が誰かに襲われたんだよ? それなのに黙って見過ごすの?それで良い…」
「良いわけ無いだろう!!」
昴が突然声を荒らげたことにコナンは驚いた。
「さくらは必死で抵抗したんだ。だが男の力で押さえ付けられたら、彼女といえども逃げるのは不可能だ。それを聞いたとき、俺だって腹わたが煮えくり返る思いだった」
開いた目は怒りの色を映す。思わずコナンはゴクリと喉を鳴らした。
「抵抗しても無理だと悟ったさくらは、体を切り捨ててでも、心だけは守ろうとしたんだ」
「体を切り捨てる?」
「襲った相手に『体だけで良いならあげる。ただし心は赤井秀一のもの』そう言ったそうだ」
「ッ!」
「それを聞いて、相手もそれ以上襲ってこなかった。俺への気持ちを守るためにそうしたのなら、俺は…」
「もしかして、襲った相手って…安室さん…?」
「…これ以上の詮索はやめたほうがいい。俺も正気でいられる自信がない」
再び目を細め沖矢昴へと切り替える。それ以上はコナンも訊くことが出来なかった。
以前さくらは発作を起こした後、ふらりと雨の中家を飛び出し、新出先生のところへ行ってしまったことがあった。
今回も心配した昴は、さくらと一緒に寝ることにした。
コナンに手伝ってもらって変装を解き、シャワーを浴びるとさくらの部屋へ向かう。
「おやすみなさい」
コナンはかつての自室で寝ると言って、挨拶をすると部屋へ行ってしまった。
赤井は痛む右肩をさすり、りおが眠るベッドに体を滑り込ませる。今日は抱きしめてやれないな…と寂しげにりおの顔を見た。
薬が効いているのか、よく眠っている。
抱きしめられなくても、生きて隣に居てくれればそれで良い。
愛おしそうにその髪に触れた。