第1章 ~運命の再会そして…~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「組織はエンジェルダストの取引を、全て日本国内でするつもりでいるのかしら?」
「なぜそう思うのですか?」
昴が間髪入れずに訊ねた。
「だって三角地帯で生産しているなら、中国系マフィアと直接取引した方が安全じゃないですか。それなのにわざわざ日本の暴力団を間に入れて、取り締まりの厳しい日本で取引しているでしょう?」
「?!」
皆、ハッとした。
「もし、取引を全て日本で行うつもりなら、200kgのエンジェルダストを国内に持ち込むなんて面倒じゃない? 日本国内は麻薬捜査に長けている。空港や港、どこを通っても発見される可能性は高い。わざわざそんなリスクを冒して持ち込もうとする? 私だったら…国内で生産するわ。ジンの性格的にも、『買ったあとはてめえ達でなんとかしろ』って感じでしょうし…」
さくらの話を聞いていたコナンが納得したように頷いた。
「確かにそうだよ! 日本に麻薬を持ち込むのは至難の業だ。普通の麻薬ならいざ知らず、エンジェルダストだってバレたら、組織の計画はすべてパアだし、そんなリスクを負うとはとても思えない」
「ということは…」
降谷の顔が険しくなる。
「神奈川にあるのはただの営業所だ。敷地面積も広くないし、建物もさほど大きくない。麻薬を作るような工場があるとは考えられない。
そうなると、都内の本社ビル…。地上8階地下2階の比較的大きなビルだ。あの中に工場が?
ま、まさか…東京のど真ん中にエンジェルダストの生産工場があるってことなのか?!」
降谷は信じられないという顔をしてさくらを見た。
「その可能性が高くなってきたぞよ」
博士が資料を片手に部屋へと戻ってきた。
「科捜研からの調査資料とFBIからメールで届けてもらった、地元警察が押収した麻薬の調査資料を見比べてみたんじゃが…。
合致するものは無かった。つまり、サカモト製薬の傘下で動いていた生産工場内で、エンジェルダストは作られていなかった、ということじゃ」
「潜入…してみますか」
さくらがつぶやいた。
「ちょ、ちょっと待って! 潜入って…まさか…さくらさんが行く気じゃないでしょうね?!」
哀が驚いた顔で叫んだ。
「哀ちゃん。心配してくれてありがとう」
さくらは哀に笑顔を向ける。
「でも、この潜入は私がいくわ」
「ダ、ダメよ!つい先日、3日近く昏睡状態だった人が潜入ですって!? 無茶よ!!」
先日はさくらの話を聞き、彼女の生きる意義を否定したくないと思って渋々であるが、潜入に賛成した。
だがあの時とは状況が違う。
本当に心を壊しそうになって、2日も昏睡状態だったのだ。ようやくそれも、回復しつつある大事な時なのに…。哀は泣きそうになった。
「哀ちゃん。私は私の大切な人たちを守る。今まで私を支えてくれた人達のために。それがこの国を守る第一歩。それが私の正義。
私が警察官になる時に、私の…尊敬する先輩が私に残してくれた言葉だから」
尊敬する先輩。
その言葉に降谷の体がわずかに揺れた。
『ゼロ! 自分の近くにいる大切な人たちすら守れなければ、この国は守れないよ』
遠い記憶の中に親友に言われた言葉が蘇った。
(そうか。それが君の原点なんだな)
降谷はさくらを見た。哀に話しかけるアンバーの瞳が、とてもキレイだと思った。
昴もまた、さくらの瞳を見つめていた。
サカモト製薬の本社ビルは、地上8階地下2階で経理部・総務部・開発部・人事部・営業部など各部署に分かれている。
サカモトケンジは開発部の責任者だ。
1階はエントランスと警備部、2階以降は1フロアずつ各部署のオフィスになっている。7階は会議室と社員食堂、8階は役員室に別れる。地下は駐車場。
建物の構造上は地下2階まであるが、駐車場は地下1階までしかない。建物案内によれば地下2階は倉庫・書庫・利用廃棄物一時保管所となっている。
「あやしいのは地下2階ですね」
降谷は建物の見取り図を指さした。さくらが説明を続けた。
「確かにそうですね。このビル、屋上から侵入する事は可能です。通気口沿いに各フロアに降りていくことができます。
ただ、階下へは垂直に降りるので若干の危険は伴いますが、問題はありません」
「仮に、地下2階がエンジェルダストの生産工場だったとして、どうやってエンジェルダストを灰にするんじゃ?」
博士がさくらに問いかけた。
「薬を灰に出来るだけの爆弾を仕掛けて爆破します。もっとも、建物が崩壊しない程度の爆発を起こすだけです」
「生産工場が地下2階だと確定すれば工場内に侵入し、エンジェルダストの保管場所を捜索します。
事前調査もしますが、おそらく地下2階の工場内に隠すのがベター。下手に役員室に置いて家宅捜索でも入られれば事ですから」
「なるほど。そこまで読んでいるのか」
降谷は感心した。相手は大手企業。しかも裏で腹黒いこともやっている。エンジェルダストの事が表ざたにならずとも、裏で大きな金が動いている事がバレれば国税局が乗り出してくるとも限らない。