第1章 ~運命の再会そして…~
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久しぶりの工藤邸。昴の手を借りて客室まで行く。
「お姫様抱っこでお連れしますのに」
クスクス笑う昴を横目に、「なにげにそれ、恥ずかしいんですよ」とりおが答える。
「何を今更。意識がない時は私がいつもお姫様抱っこで部屋へ連れて行っているのに」
しれっと言われて、さすがのりおも顔が真っ赤になった。
夕食の頃には自室からリビングまでひとりで歩けるようになっていた。
「病院でもお粥を食べていたんですから」と、昴は洋風のリゾットを作ってくれた。
「美味しい!」といって食べる姿に、昴も胸をなでおろす。またこうして一緒に食事が出来ることが何より嬉しかった。
夜——
入浴をして早めにベッドに入ったものの、りおはなかなか寝付けず、工藤邸の書斎で借りた本を読んでいた。
工藤邸の図書館には壁一杯の書棚があり、そこにはギッシリと名作と言われる本が並んでいる。どれを読もうかかなり悩んだが、一番目を引く場所に、これまた一番耳にすることが多い本がある。思わず手に取ってしまった。
元々読書好きだったこともあり、すぐに引き込まれ時間を忘れて読んでいた。
コンコン
ドアのノックでふと我に返る。どうぞと声をかけると、「まだ起きていたのか」と言いながら風呂上がりの赤井が入ってきた。
「電気を点けっぱなしで寝てしまったのかと思って、一応ノックしてみたんだが」
首にタオルをかけ、髪はまだ少し濡れているようだった。
「ああ、ごめんなさい。病院で寝すぎたせいか寝付けなくて……書斎から本を借りたんです。そしたら面白くて」
「シャーロック・ホームズか。それはマズイ。寝不足になるぞ」
クスクスと笑いながら近づいて手元を覗き込む。
「ホームズの冒険…。ファーストチョイスとしては良いな」
「そういえば昴さんもコナンくんもシャーロキアンでしたね。事件の感想を一言でも言ったら大変なことになりそう!」
小さな名探偵の顔を思い出し、りおは笑う。
「ああ! とくにあのボウヤはまずいぞ。根っからのホームズ好きだからな」
「ふふふ。じゃあ、ホームズを読み始めたことは黙っておきます」
「ははは。それが良い。だが…」
そこまで言うと赤井はタオルで髪を拭きながら、りおのベッドに腰かけた。
「俺とはおしゃべりしてくれないのかな?」
「? してるじゃないですか。もうひとりのシャーロキアン?」
「それは昴の方だ」
「昴さんはホームズのセリフまで暗記していましたもんね。あちらも筋金入りのホームズ好きですね」
ふふふと笑ってりおは赤井の顔を見上げた。
赤井のキレイなグリーンの瞳を見つめる。
「……」
「? どうした?」
急に黙ってしまったりおに気付き、赤井は声をかける。りおはフイッと目を逸らした。
「秀一さん。ごめんなさい」
「どうしたんだ。急に」
笑顔が消えて悲しそうな顔をするりおを、赤井は心配そうにのぞき込む。
「今回、私のことであなたに辛い思いをさせたわ。
私、自分のことでいっぱいいっぱいになっていたけど…。あなただって明美さんを…」
明美の名が出て赤井はハッとし、一瞬目を逸らす。
「愛していたんでしょう。明美さんを。私は自分だけ苦しんでいるような気になっていた。あなただって同じ苦しみを味わっていたのに…。ごめんなさい」
「違うんだ」
黙って聞いていた赤井は、りおの謝罪を聞いてすぐさま否定する。
「確かに俺は明美を愛していたし、彼女の死はショックだった。だがお前と決定的に違うのは、俺は明美の死の瞬間も、その遺体すらも見ていない。ある日突然この世から姿を消してしまった。だから受け入れるまで時間がかかったのは事実だよ。
だが、お前が受けた衝撃とは比べ物にならない。ましてや、お前のせいで明美が死んだわけじゃない。お前が謝ることじゃないんだ」
赤井はゆっくりと、言葉を選ぶようにりおに伝える。
「それよりも……俺が一番辛かったのは、堪えたのは…。俺の動画を見たお前が死のうとしたことだ。お前が躊躇なく喉元にペンを突き刺そうとした時、あれほど肝を冷やしたことは無かったよ。あの後しばらく手の震えが止まらなかった」
赤井は自分の左手を広げ、そこに視線を落とす。
「同じことをアジトでもやっていたと聞いた時は生きた心地がしなかった。お前を止めてくれたベルモットに感謝したよ」
そこまで話すと、赤井はりおの方に体を向ける。二人は真っすぐに向き合った。
「原因を作ったのが俺自身だったわけだから、よけいに辛かった。本当に苦しかったよ」
わずかに細められた目。その表情は悲しそうだ。
「お前に苦しい思いをさせていた事実も知った。謝らなければならないのは俺のほうだ」
りおの瞳を見つめ、今にも泣き出しそうな顔をする。赤井のそんな顔を見るのは初めてだった。
「本当にすまなかった。だからお前まで俺の前から居なくならないでくれ」
赤井はりおを抱きしめた。りおも赤井の背中に手を回し、しがみ付く。ジワリと感じた赤井の体温から、苦しい胸の内が伝わってくるようだった。
どちらからともなく体を離し、お互いの顔を見る。ペリドットの瞳とアンバーの瞳が重なった。
赤井は顔の角度を変え、そっとりおに口づけた。やがて舌を絡ませ深いキスへと変わっていく。
ゆっくりお互いの傷を癒し合うように…。
ふたりの息が上がる頃、唇が離れる。
「りお…抱いて…良いか?」
りおは小さく頷いた。
◇◇◇(R15部分)
赤井は恥ずかしそうにうつむくりおの頬にキスをする。
ゆっくりそれは移動して次は耳に、首筋に。
りおがくすぐったそうに首をすくめると、赤井はそのまま肩に触れてゆっくり押し倒した。
ぽすんとりおの頭が枕に着地したことを確認して、今度は首元、鎖骨とキスは降りていく。パジャマのボタンは片手で簡単に外され、白くきめの細かい肌が赤井の目の前に晒された。その肌を愛おしそうに撫でて、キスして、赤い花を散らす。ピクリと震える肌に、詰める呼吸に、赤井は酔いしれた。
赤井の愛撫やキスは驚くほどゆっくりで優しい。以前のような《証を刻む》激しさはそこには無い。
それはりおの体調を気遣っているのもあるが、お互いの心の傷を癒し合い、愛を確かめ合うための行為でもあるから。
一度の行為で知ったりおの弱い場所を、時間をかけて蕩けさせる。
「ふ……あぁッ……ッぅん……は…ぁ…」
時折漏れ聞こえる嬌声。蕩けた目元。跳ねる体。
(りお……すごく感じてる…)
触れている部分は熱く、聞こえる水音は徐々に大きくなる。
「しゅ…ちさ……お願い…きて……はや…く…ッ」
ビクビクと体を揺らし、潤んだアンバーが赤井を見つめていた。
声が聞こえることが、視線が合うことが、言葉を交わせることが、お互いの熱を感じることが、赤井は嬉しかった。
体を繋げて揺さぶれば、赤井の中で渦巻いていた焦燥も後悔も、すべてドロドロに溶けて流れていく。
「はぁッ…りおッ…あぁ…ッ」
しびれるような快感と胸いっぱいに広がる幸福感。このまま時が止まればいいとさえ思う。
互いに求め合い、上り詰め、そして熱を放つ。
頂点に達した二人の心と体は、これ以上ないほど満たされた。
◇◇◇(R15部分ここまで)
同じベッドで朝を迎える。
ふたりは抱き合ったまま眠っていた。カーテンの隙間から朝日が差し込む。
「……ぅ…ん……」
眩しさでりおが目を覚ました。重いまぶたをどうにか片方だけあけると、そこには赤井がいる。
(ああ、そうだ…夕べは…)
りおは寝起きの回らない頭で、ぼんやりと昨夜の出来事を思い出す。とたんに恥ずかしさで顔が赤くなった。
チラリと顔を上げ、良く眠っている赤井の顔を見つめた。
「あなたのペリドッドの優しい瞳が大好き。その瞳で見つめられるとドキドキするのよ」
間近で見る赤井の瞳は驚くほど透明感があって美しい。本当に宝石のようだ。それを知っている人間はいったい何人いるのだろう。
りおはそっと手を伸ばし、目元に触れる。起きる様子はない。
思わず顔を近づけて唇……のすぐ脇にちゅっとキスをしてみた。「…ん…」と反応があったものの、よく眠っているようだ。
「いっぱい心配かけちゃったね。早く元気になるから。そしたらまた組手の相手をしてね」
小さな声でつぶやくと、もそもそと赤井の胸元に耳を寄せる。彼の鼓動を聞きながら二度寝を決め込んだ。
りおは気付かなかったが、この時赤井はそっと目を開けて胸元に耳を寄せるりおを見ていた。
りおが目を覚ましたことに気付いていたが、寝たふりをしていた。おかげで朝から小さな告白と可愛いキスをもらえて嬉しさが込み上げる。
胸の鼓動が必要以上に速くならないか、りおに気付かれないかとヒヤヒヤしていた。
りおが再び眠ったことを確認して、赤井は抱きしめる腕に少し力を入れた。
「お前のアンバーの瞳に俺だってメロメロだよ」
口に出してから自分の言葉がなんだかおかしくて、「フッ」と笑うと赤井も再び眠りに落ちた。
**
あれから数日が過ぎ、りおの体調はだいぶ元の状態に近づいた。
今日の午前中は昴と組手を行い、汗を流した。以前コナンの前で組んだこともあったが、体調とカンが戻りつつあるりおの動きは以前のそれとは比べ物にならない。
昴とて油断すれば一本取られるほどだった。