第1章 ~運命の再会そして…~
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次の日の朝
昴は変装を終えリビングに行くが、りおの姿がない。客室も覗いたが居なかった。どこへ行ってしまったんだ。行き先も告げずどこかへ行くなんて、雨の日に新出医院へ行った日以来1度もない。
(昨日言いすぎたのがいけなかったか…。それとも…まさか、本社ビルに? いや、あれほどダメだと念を押しておいた。でも不満そうだった…)
しかしよく考えれば、下調べもなくりおが乗り込んでいくはずもない。
(彼女のことになると冷静で無くなることがある…いかんな。彼女も大人だ。干渉しすぎも良くない…)
昴はふぅ~と長く息を吐き出すと、朝食の準備をしにキッチンへと向かった。
大方食事の準備が終わる頃、哀から電話がかかってきた。
「さくらさんは博士の家にいるわ。話があるからちょっと来れるかしら」
電話を切った後、出来上がった朝食にラップをして昴は阿笠博士の家へ向かった。
「おはようございます」
そう声をかけて家の中に入る。リビングには哀と博士がいた。
「さくらさんに会わせる前にちょっと座って」
ふたりの向かいに座るよう促され、昴はソファーに座る。
「単刀直入に言うわ。あなた、さくらさんの何?」
「え?」
これはまたド直球な質問に昴は困惑した。
お互い「愛している」とは伝えた。体の関係は…先日1回あったな…。キスは…よくしている…。
だが付き合おうと言ったわけではない。そもそも、何をもって恋人というのか分からない。
今の関係を強いて言えば…
「仲の良い同居人…? ですかね」
「は??」
哀の目が点になる。盛大にため息をつかれた。
「で、その仲の良い同居人は、さくらさんをどうしたいの?」
「どうというのは?」
質問の意味が分からず質問に質問で返す。
「さくらさんを安全な部屋にでも閉じ込めておきたいのかってことよ」
哀の質問を聞いて、昴はアゴに手を当てた。人一人を閉じ込めることは無理だとしても。もし出来るのだったら、組織と一切関わりのない、安全なところに置いておきたいとは思う。
彼女は十分傷ついたし、組織を追い詰めるために貢献もした。これ以上関わらせることで心身ともに壊れてしまうのではと心配しているのは事実だ。
「さくらさんの気持ちは聞いたことあるのかしら?」
「さくら…の?」
「ええそうよ。さくらさんはどうしたいって言っていたかしら?」
「……『私には守りたいものがある』」
PTSDの治療を始めるときにさくらが言った言葉だ。
「あなたの心配も分かるわ。でもさくらさんは確固たる信念を持って警察官になった。『自分の大切な者達を守る』
それが彼女の正義。生きる糧なのかもしれない。それを奪ってしまわないようにね」
哀の目が鋭くなる。ジッと昴を見つめた。
「伝えたかったのはそれだけよ」
それだけ言うと哀はソファーから立ち上がる。さくらのところへと案内してくれた。
さくらは地下にある博士のPCでサカモト製薬のことを調べていた。カタカタと軽快にキーボードを叩く。コマンドがいくつか開かれていた。
昴の気配に気付き、さくらが振り向く。
その顔は今まで昴が見てきたラスティーとしての顔でも、悲しみや苦しみに打ちひしがれた顔でも、花壇の花を嬉しそうに覗き込む顔でもなかった。
警察官としての広瀬りおがいた。
琥珀色(アンバー)の瞳は輝きを放ち、その表情には強い決意と信念が垣間見え、不覚にもキレイだと思ってしまった。
「あなたは警察官なんですね」
昴はそう声をかける。
その言葉にりおは一瞬目を見開く。彼の言わんとしていることを悟り、わずかに微笑んで「はい」と答えた。
昴はさらにりおとの距離を縮め、ギュッと抱きしめた。この腕に閉じ込めておける相手ではないなんて、はじめからわかっていた。だがそうしたいと思うほど愛してしまったし、何より彼女は傷ついていた。その傷は癒えたわけではない。
傷を晒したまま、それでも彼女は戦うという。それならば、自分に出来ることは何だろう。
……答えは簡単だ。
『共に戦う』
立場は違えど自分たちの中にある『正義』は同じだから。昴は腕の力を緩め、りおと目を合わせて言った。
「一緒に作戦を考えましょう」