最終章 ~未来へ向かって~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ど、どうしたの?」
いったい何が始まったのかと、りおは不思議そうに赤井を見る。
「今から俺は一世一代の大勝負に出る。しっかり見届けてくれよ」
いつになく真面目な顔で、赤井がりおに言った。
「えぇ⁉ い、今から?」
確かに離島の瓦礫の下でそんな話をした覚えはある。しかしそれが今とは――!
何事が始まるのかと、りおは目をまん丸にして赤井を見つめる。対する赤井は気持ちを落ち着けるために「ふ~……」と大きく深呼吸した。
「……りお。俺と……結婚してくれないか?」
赤井の落ち着いた声がダイニングに響いた。そして、一瞬の静寂。
「えっ! えぇっ⁉ け、け、け、けっこん⁉」
次に響いたのはりおの素っ頓狂な声。
突然、心の準備も無しにプロポーズされ、りおは顔を真っ赤にして、口をぽかんと開けたまま固まってしまう。
「ああ。出来れば早い時期に籍だけでも入れて、式は後でも良いし……簡単なパーティーでも良い。とにかく俺はお前と早く家族になりたいんだ」
『結婚』
『籍を入れる』
『式』
『パーティー』
『家族』
予想しなかった言葉を一気に聞かされて、りおの頭の中は大パニックだった。
お陰で大事なプロポーズの返事はおろか、死んだことになっている赤井の籍がどうなっているのかとか、赤井の家族にどうやって説明するんだとか、そもそもなんで突然結婚なんだとか——。
何もかも思考の彼方へ飛んで行ってしまった。
「ああ、すまん。性急すぎて頭が追いついてないのか。分かった。順を追って話そう」
驚き過ぎて完全に石化したりおを見て、赤井はコホンと一つ咳ばらいをすると、ゆっくりこの結論に至った経緯を話し始めた。
発端はりおが行方不明になる前のこと。
園城寺氏の誕生日プレゼントを買った日の翌日、赤井はコナンから思いがけない言葉を投げかけられた。
『ねえ、赤井さん。赤井さんはさくらさんと結婚しないの?』
前日に古宿区で見かけたベルモットの影について、二人で話していた時だった。
『結婚? さあ……今は組織を追っている身だからな。いずれとは思っているが、今は特に考えていない』
今まで何度となく意識したことはあったが、組織を追う自分たちが今、それをするかと言われれば答えは【NO】だ。
『なぜそんなことを聞く?』
話の脈絡もナシに、突然そんな話を振ってくるとは。ボウヤらしくないな、と思いながら赤井は問いかけた。
『灰原が昨日言ってたんだ。万が一何かあった時にみんなに認めてもらうための《誓い》って必要だ、って。
たかが紙切れ一枚かもしれないけど相手が亡くなった時、本当の意味でその重みを知るんだって。
家族でなければ、何かあった時に連絡も来ないし、万一の時も【他人】は遺体も遺品も引き取れないんだって』
コナンはうつむき加減で、ぽつりぽつりと哀の言葉を伝える。赤井は黙ってそれを聞いていた。
言われてみれば自分の(偽装)死も、家族だからこそ母親や妹にその事実を知らされた。
結果、家族を悲しませることにはなったが、危険な仕事をする息子であり兄が、父親と同じ『消息不明』であるよりは良いだろうと思う。
生死が分からないままでは、希望を持つことも諦めることも出来ず、会えない事の悲しみを長く引きずることになる。それは赤井自身が一番知っている事だった。
『確かに組織を追ってる今は無理だって気持ちも分かるけど、でも、いつ何が起こるか分からない危険な身だからこそ、二人は家族になった方が良いと思うんだ。二人が離れ離れになった時に、後悔しないようにしないと——』
「ボウヤからこの話をされて、何日も経たないうちにお前が行方不明になった。
当時は状況的に生存の可能性が低く、俺は毎日ビクビクしながら降谷くんや風見くんからの連絡を待っていたよ。
でもそんな時、ジェームズにも言われたんだ。
『もし遺体が上がっても、家族でも何でもない君のところになど連絡なんて来ないんじゃないか』ってね」
天涯孤独のりおは、万が一のことがあっても遺体や遺品を受け取ってくれる身内がいない。
可能性として高いのは降谷が『上司』として引き取り、彼が広瀬家の菩提寺を知っていればそこに埋葬されるだろう。
もし菩提寺を知らなければ、無縁仏として近くの寺に埋葬される場合もある。
そして何より、公安警察は秘密主義だ。
降谷の、もしくは上層部の判断が『秘密裏に処理』となれば、りおが死んだこともどこに埋葬されたかも赤井には絶対知らされない。
つまり、りおが死んだら赤井の元には何も残らない。その死さえ、知らないままかもしれないのだ。
「秀一さん……」
悲しい顔をする赤井に、りおが声をかけた。
「最初はたかが紙切れ一枚と思っていた。しかし現実にりおが安否不明になって……ボウヤの言う通り、その時に後悔したんだ。家族だったら例えどんな姿になろうとも——見つかりさえすれば——俺の元に戻ってくるのに……ってな」
赤井はりおの左手を取る。
もう二度と触れられないと思っていたりおの手。柔らかくて、ちょっとだけ指先が荒れてて、でも血が通っていて温かい。
「ここに。お前の左手の薬指に、俺と揃いの指輪をつけてくれないか。『家族になる』という証を」
赤井は親指でそっとりおの左手薬指を撫でた。
もう他の誰かを好きになることなんか無い。
生涯お前だけだ、とその指にキスを落とす。
その姿を見て、りおはそっと目を閉じた。
早くに両親を亡くし、警察官になる直前に育ててくれた祖父母も相次いで亡くなった。
その後も家族のように慕った仲間がいたが、彼らも皆死んでしまった。
自分の家族になる者はみんな、自分を残して死んでしまう。こんな悲しい思いをするくらいなら、家族はいらないとさえ思っていた。
でも、赤井となら——。
彼となら、この先もずっと一緒にいられるかもしれない。
もちろん確証はない。同じ苦しみを味わう可能性だってある。けれど——。
例え、赤井がその肉体を失ったとしても、彼の魂は自分の中に居て、自分が彼の元に行くまでずっと支えてくれる。そんな気がした。
「……いいよ……」
目を開けたりおが、消え入りそうな声で返事をした。赤井がパッと顔を上げる。
「私を……あなたの家族にしてください」
幸せそうに微笑んだアンバーの瞳から、涙が一筋こぼれ落ちる。
「ッ! ああ! 家族になろう! 絶対に幸せにする」
喜びを全身に現した赤井が、力いっぱいりおを抱きしめた。
いったい何が始まったのかと、りおは不思議そうに赤井を見る。
「今から俺は一世一代の大勝負に出る。しっかり見届けてくれよ」
いつになく真面目な顔で、赤井がりおに言った。
「えぇ⁉ い、今から?」
確かに離島の瓦礫の下でそんな話をした覚えはある。しかしそれが今とは――!
何事が始まるのかと、りおは目をまん丸にして赤井を見つめる。対する赤井は気持ちを落ち着けるために「ふ~……」と大きく深呼吸した。
「……りお。俺と……結婚してくれないか?」
赤井の落ち着いた声がダイニングに響いた。そして、一瞬の静寂。
「えっ! えぇっ⁉ け、け、け、けっこん⁉」
次に響いたのはりおの素っ頓狂な声。
突然、心の準備も無しにプロポーズされ、りおは顔を真っ赤にして、口をぽかんと開けたまま固まってしまう。
「ああ。出来れば早い時期に籍だけでも入れて、式は後でも良いし……簡単なパーティーでも良い。とにかく俺はお前と早く家族になりたいんだ」
『結婚』
『籍を入れる』
『式』
『パーティー』
『家族』
予想しなかった言葉を一気に聞かされて、りおの頭の中は大パニックだった。
お陰で大事なプロポーズの返事はおろか、死んだことになっている赤井の籍がどうなっているのかとか、赤井の家族にどうやって説明するんだとか、そもそもなんで突然結婚なんだとか——。
何もかも思考の彼方へ飛んで行ってしまった。
「ああ、すまん。性急すぎて頭が追いついてないのか。分かった。順を追って話そう」
驚き過ぎて完全に石化したりおを見て、赤井はコホンと一つ咳ばらいをすると、ゆっくりこの結論に至った経緯を話し始めた。
発端はりおが行方不明になる前のこと。
園城寺氏の誕生日プレゼントを買った日の翌日、赤井はコナンから思いがけない言葉を投げかけられた。
『ねえ、赤井さん。赤井さんはさくらさんと結婚しないの?』
前日に古宿区で見かけたベルモットの影について、二人で話していた時だった。
『結婚? さあ……今は組織を追っている身だからな。いずれとは思っているが、今は特に考えていない』
今まで何度となく意識したことはあったが、組織を追う自分たちが今、それをするかと言われれば答えは【NO】だ。
『なぜそんなことを聞く?』
話の脈絡もナシに、突然そんな話を振ってくるとは。ボウヤらしくないな、と思いながら赤井は問いかけた。
『灰原が昨日言ってたんだ。万が一何かあった時にみんなに認めてもらうための《誓い》って必要だ、って。
たかが紙切れ一枚かもしれないけど相手が亡くなった時、本当の意味でその重みを知るんだって。
家族でなければ、何かあった時に連絡も来ないし、万一の時も【他人】は遺体も遺品も引き取れないんだって』
コナンはうつむき加減で、ぽつりぽつりと哀の言葉を伝える。赤井は黙ってそれを聞いていた。
言われてみれば自分の(偽装)死も、家族だからこそ母親や妹にその事実を知らされた。
結果、家族を悲しませることにはなったが、危険な仕事をする息子であり兄が、父親と同じ『消息不明』であるよりは良いだろうと思う。
生死が分からないままでは、希望を持つことも諦めることも出来ず、会えない事の悲しみを長く引きずることになる。それは赤井自身が一番知っている事だった。
『確かに組織を追ってる今は無理だって気持ちも分かるけど、でも、いつ何が起こるか分からない危険な身だからこそ、二人は家族になった方が良いと思うんだ。二人が離れ離れになった時に、後悔しないようにしないと——』
「ボウヤからこの話をされて、何日も経たないうちにお前が行方不明になった。
当時は状況的に生存の可能性が低く、俺は毎日ビクビクしながら降谷くんや風見くんからの連絡を待っていたよ。
でもそんな時、ジェームズにも言われたんだ。
『もし遺体が上がっても、家族でも何でもない君のところになど連絡なんて来ないんじゃないか』ってね」
天涯孤独のりおは、万が一のことがあっても遺体や遺品を受け取ってくれる身内がいない。
可能性として高いのは降谷が『上司』として引き取り、彼が広瀬家の菩提寺を知っていればそこに埋葬されるだろう。
もし菩提寺を知らなければ、無縁仏として近くの寺に埋葬される場合もある。
そして何より、公安警察は秘密主義だ。
降谷の、もしくは上層部の判断が『秘密裏に処理』となれば、りおが死んだこともどこに埋葬されたかも赤井には絶対知らされない。
つまり、りおが死んだら赤井の元には何も残らない。その死さえ、知らないままかもしれないのだ。
「秀一さん……」
悲しい顔をする赤井に、りおが声をかけた。
「最初はたかが紙切れ一枚と思っていた。しかし現実にりおが安否不明になって……ボウヤの言う通り、その時に後悔したんだ。家族だったら例えどんな姿になろうとも——見つかりさえすれば——俺の元に戻ってくるのに……ってな」
赤井はりおの左手を取る。
もう二度と触れられないと思っていたりおの手。柔らかくて、ちょっとだけ指先が荒れてて、でも血が通っていて温かい。
「ここに。お前の左手の薬指に、俺と揃いの指輪をつけてくれないか。『家族になる』という証を」
赤井は親指でそっとりおの左手薬指を撫でた。
もう他の誰かを好きになることなんか無い。
生涯お前だけだ、とその指にキスを落とす。
その姿を見て、りおはそっと目を閉じた。
早くに両親を亡くし、警察官になる直前に育ててくれた祖父母も相次いで亡くなった。
その後も家族のように慕った仲間がいたが、彼らも皆死んでしまった。
自分の家族になる者はみんな、自分を残して死んでしまう。こんな悲しい思いをするくらいなら、家族はいらないとさえ思っていた。
でも、赤井となら——。
彼となら、この先もずっと一緒にいられるかもしれない。
もちろん確証はない。同じ苦しみを味わう可能性だってある。けれど——。
例え、赤井がその肉体を失ったとしても、彼の魂は自分の中に居て、自分が彼の元に行くまでずっと支えてくれる。そんな気がした。
「……いいよ……」
目を開けたりおが、消え入りそうな声で返事をした。赤井がパッと顔を上げる。
「私を……あなたの家族にしてください」
幸せそうに微笑んだアンバーの瞳から、涙が一筋こぼれ落ちる。
「ッ! ああ! 家族になろう! 絶対に幸せにする」
喜びを全身に現した赤井が、力いっぱいりおを抱きしめた。