最終章 ~未来へ向かって~
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「今回の【ビジネス】については、組織の幹部クラスでも詳細を知るのはごく一部だった。おかげで僕たちに疑いの目が向けられることは無かったが、その分、島谷への恨みは相当だ。ジンは島谷の身柄を確保し次第『バラバラにしてやる』と息まいていたよ」
島谷逮捕後、これまでの自死者増加の原因を、警察は『島谷が作った殺人ウィルスによるもの』と公表した。
その島谷が極秘で作ったウィルス工場でガス爆発があり、事件が発覚。私財を投げ打ってまでのめり込んでいた研究が全て焼失してしまった事で、島谷は『心神喪失状態である』と世間には発表されている。
しかし、島谷が本当に心神喪失状態であるかどうか組織が確認することは難しい。当然、警察が島谷を守るためにウソの発表をしていると勘繰っている。
「ジンのことだ。なんとしても警察から島谷を奪還し、八つ裂きにする気だろう。島谷の心神喪失がウソでもホントでも、彼の警護は以後ずっと必要だ」
降谷はふう、とため息をついた。それを見てルークも視線を落とす。
罪を犯した者が守られ、被害にあった者たちの救済は後手に回る。
何ともやるせない気持ちになった。
「トールの気持ちは良く分かる。警察組織はいつも葛藤の連続だ。俺たちは俺たちが出来ることを粛々とやるしかない。
今回、被害は最小限だったと俺は思う。トールもユーヤも使命を全うした」
ルークは顔を上げ、二人を見て微笑んだ。
「そう…だな。みんな良く頑張ったよ!」
降谷も笑顔を見せ、「なあ、風見!」と風見の肩を叩く。
「は、はいっ!」
風見は二人につられるように返事をした。
「じゃあ、コレ。ユーヤたちにご褒美」
ルークが風見に紙袋を手渡した。
「あの……これは…」
風見は袋を受け取りながら不思議そうに首をかしげる。
「俺から公安デスクに差し入れ。喫茶ポアロのサンドイッチだよ。作ったのはトールだけど金を払ったのはオ・レ!」
パチンとウインクをして、ルークは満面の笑みを見せた。
「ちょうど僕も風見たちに差し入れをしてやろうと思っていたら、ルークが店に来たんだ。そしたら『今回は俺がおごる』ってきかなくて……」
やや呆れ顔の降谷だが、ルークの心遣いには素直に感謝した。
「今回、海で行方不明になったさくらの捜索でもユーヤたちは頑張っていたし、施設潜入も園城寺氏の船を使うことや私有地である離島上陸の手続きに関しても、公安のバックアップは非常に重要だった。
俺は何の役にも立たなかったから、せめてねぎらいくらいはしたくてね」
情報屋の自分は介入できない一線。元FBIでもあるルークは歯がゆく感じたようだ。
「役に立たなかったなんて、そんなことはありません。あなたの情報が無ければ、こんなに早く組織の【ビジネス】がバイオテロを起こす《殺人ウイルス》だったなんて気付けなかったでしょう。彼らの計画をウィルス完成前に知れたことは本当に大きかった。そうでなければ離島への上陸も、施設への潜入も、もっと困難だったはずです。
ですから、頑張ったのは我々警察だけではありません。あなたや園城寺氏、森教授——。関わった全員が、それぞれの立場で最善を尽くした。だからこそ、今回の結果に繋がったのです」
風見は謙遜ではなく本心を口にした。みんなが全力で考え、動き、そして実を結んだ。誰か一人でも欠けていたらこうはならなかった。
「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。でも、今回のMVPは……やっぱりあの二人か」
ルークは嬉しそうに風見に微笑むと、次は降谷を見てニカッと笑う。
「ええ。そうでしょうね」
ルークの顔を見て一瞬目を丸くした降谷も、ニヤリと笑みをこぼした。
「で? 二人の容態は?」
ルークはわずかばかり表情を固くして降谷に問いかけた。
「赤井は右肩の亜脱臼があり、二週間前後の固定が必要だそうです。低酸素で意識喪失寸前だったことも考慮して、一週間程度の入院が必要だと診断されました。あれから一週間以上経ち、回復は順調です。それから広瀬の方ですが——」
そこまで言うと、降谷の顔が少し曇った。
「左足のケガは手術によって快方に向かっています。幸い大きな神経なども傷ついていなかったので、歩行も問題ないと言われました。
ただ、一時的ではありますが心肺停止状態に陥ったのでこちらは二週間ほど入院が必要です。
低酸素脳症の心配はありませんが、彼女の場合、幼少期に頭部への外傷と精神的なショックで記憶障害を起こしています。
今は慎重に様子を見ている状態です」
さくらの容態を聞いたルークは「そうか…」と言って視線を落とす。生きて戻って来たことは喜ぶべきことだが、またさくらの記憶が混乱を起こしたら——。
相棒の悲しみを思うと気持ちが沈んだ。
「赤井なら心配ありませんよ」
ルークの心を読んだのか、降谷が明るい声で言った。
『生きてさえいてくれたら、それでいい』
「さくらさんが手術を受けている間、赤井が僕に言った言葉です。
スンホの自爆で彼女が行方不明になったことが相当堪えたんでしょうね。
『例え記憶が全て無くなったとしても、生きてさえいてくれれば、それで良いんだ』って」
「シュウがそんなことを……」
「ええ」
ちょっと妬けるな、とルークがおどけて言うと、降谷も「ですね」と微笑んだ。
「でも、ご心配なく。今のところ広瀬に記憶障害の症状はありません。まだベッドで寝たり起きたりですが、赤井が甲斐甲斐しく世話をしていますよ。アイツまだ腕を固定されているから、片腕ちゃんと動かせないのに」
「あ〜……じゃあ、見舞いは退院してからで良いかな? 今行ったらオジャマだろう?」
呆れ顔の降谷に、ルークも困ったような顔をして問いかける。
「それは激しく同意します。冷やかしは退院してから、みんなで行きましょう」
「だな」
「ですね」
風見も同意して、三人は顔を見合わせた。互いの視線が合うと誰からともなく笑いだす。
「ふ、ふふふふ」
「くっくっく」
「あはははは」
笑い声が響くセーフハウスの外では、今日も通行人が行きかい、大通りは何台もの車が往来する。
青空が広がる東都はいつもと変わらず、平和な時間が流れていた。
島谷逮捕後、これまでの自死者増加の原因を、警察は『島谷が作った殺人ウィルスによるもの』と公表した。
その島谷が極秘で作ったウィルス工場でガス爆発があり、事件が発覚。私財を投げ打ってまでのめり込んでいた研究が全て焼失してしまった事で、島谷は『心神喪失状態である』と世間には発表されている。
しかし、島谷が本当に心神喪失状態であるかどうか組織が確認することは難しい。当然、警察が島谷を守るためにウソの発表をしていると勘繰っている。
「ジンのことだ。なんとしても警察から島谷を奪還し、八つ裂きにする気だろう。島谷の心神喪失がウソでもホントでも、彼の警護は以後ずっと必要だ」
降谷はふう、とため息をついた。それを見てルークも視線を落とす。
罪を犯した者が守られ、被害にあった者たちの救済は後手に回る。
何ともやるせない気持ちになった。
「トールの気持ちは良く分かる。警察組織はいつも葛藤の連続だ。俺たちは俺たちが出来ることを粛々とやるしかない。
今回、被害は最小限だったと俺は思う。トールもユーヤも使命を全うした」
ルークは顔を上げ、二人を見て微笑んだ。
「そう…だな。みんな良く頑張ったよ!」
降谷も笑顔を見せ、「なあ、風見!」と風見の肩を叩く。
「は、はいっ!」
風見は二人につられるように返事をした。
「じゃあ、コレ。ユーヤたちにご褒美」
ルークが風見に紙袋を手渡した。
「あの……これは…」
風見は袋を受け取りながら不思議そうに首をかしげる。
「俺から公安デスクに差し入れ。喫茶ポアロのサンドイッチだよ。作ったのはトールだけど金を払ったのはオ・レ!」
パチンとウインクをして、ルークは満面の笑みを見せた。
「ちょうど僕も風見たちに差し入れをしてやろうと思っていたら、ルークが店に来たんだ。そしたら『今回は俺がおごる』ってきかなくて……」
やや呆れ顔の降谷だが、ルークの心遣いには素直に感謝した。
「今回、海で行方不明になったさくらの捜索でもユーヤたちは頑張っていたし、施設潜入も園城寺氏の船を使うことや私有地である離島上陸の手続きに関しても、公安のバックアップは非常に重要だった。
俺は何の役にも立たなかったから、せめてねぎらいくらいはしたくてね」
情報屋の自分は介入できない一線。元FBIでもあるルークは歯がゆく感じたようだ。
「役に立たなかったなんて、そんなことはありません。あなたの情報が無ければ、こんなに早く組織の【ビジネス】がバイオテロを起こす《殺人ウイルス》だったなんて気付けなかったでしょう。彼らの計画をウィルス完成前に知れたことは本当に大きかった。そうでなければ離島への上陸も、施設への潜入も、もっと困難だったはずです。
ですから、頑張ったのは我々警察だけではありません。あなたや園城寺氏、森教授——。関わった全員が、それぞれの立場で最善を尽くした。だからこそ、今回の結果に繋がったのです」
風見は謙遜ではなく本心を口にした。みんなが全力で考え、動き、そして実を結んだ。誰か一人でも欠けていたらこうはならなかった。
「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。でも、今回のMVPは……やっぱりあの二人か」
ルークは嬉しそうに風見に微笑むと、次は降谷を見てニカッと笑う。
「ええ。そうでしょうね」
ルークの顔を見て一瞬目を丸くした降谷も、ニヤリと笑みをこぼした。
「で? 二人の容態は?」
ルークはわずかばかり表情を固くして降谷に問いかけた。
「赤井は右肩の亜脱臼があり、二週間前後の固定が必要だそうです。低酸素で意識喪失寸前だったことも考慮して、一週間程度の入院が必要だと診断されました。あれから一週間以上経ち、回復は順調です。それから広瀬の方ですが——」
そこまで言うと、降谷の顔が少し曇った。
「左足のケガは手術によって快方に向かっています。幸い大きな神経なども傷ついていなかったので、歩行も問題ないと言われました。
ただ、一時的ではありますが心肺停止状態に陥ったのでこちらは二週間ほど入院が必要です。
低酸素脳症の心配はありませんが、彼女の場合、幼少期に頭部への外傷と精神的なショックで記憶障害を起こしています。
今は慎重に様子を見ている状態です」
さくらの容態を聞いたルークは「そうか…」と言って視線を落とす。生きて戻って来たことは喜ぶべきことだが、またさくらの記憶が混乱を起こしたら——。
相棒の悲しみを思うと気持ちが沈んだ。
「赤井なら心配ありませんよ」
ルークの心を読んだのか、降谷が明るい声で言った。
『生きてさえいてくれたら、それでいい』
「さくらさんが手術を受けている間、赤井が僕に言った言葉です。
スンホの自爆で彼女が行方不明になったことが相当堪えたんでしょうね。
『例え記憶が全て無くなったとしても、生きてさえいてくれれば、それで良いんだ』って」
「シュウがそんなことを……」
「ええ」
ちょっと妬けるな、とルークがおどけて言うと、降谷も「ですね」と微笑んだ。
「でも、ご心配なく。今のところ広瀬に記憶障害の症状はありません。まだベッドで寝たり起きたりですが、赤井が甲斐甲斐しく世話をしていますよ。アイツまだ腕を固定されているから、片腕ちゃんと動かせないのに」
「あ〜……じゃあ、見舞いは退院してからで良いかな? 今行ったらオジャマだろう?」
呆れ顔の降谷に、ルークも困ったような顔をして問いかける。
「それは激しく同意します。冷やかしは退院してから、みんなで行きましょう」
「だな」
「ですね」
風見も同意して、三人は顔を見合わせた。互いの視線が合うと誰からともなく笑いだす。
「ふ、ふふふふ」
「くっくっく」
「あはははは」
笑い声が響くセーフハウスの外では、今日も通行人が行きかい、大通りは何台もの車が往来する。
青空が広がる東都はいつもと変わらず、平和な時間が流れていた。