最終章 ~未来へ向かって~
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離島の研究施設爆破から早十日が過ぎ——
報告書の山に埋もれる風見がガチガチになった肩を回しデスクを離れた。
「ちょっと席を外す。何かあれば連絡してくれ」
「了解です」
隣の席で同じように報告書を処理していた部下が、しょぼしょぼの目を何度もこすりながら返事をした。
そんな部下の姿を見て風見はややうしろめたさを感じながらも、スーツのジャケットに袖を通し公安の部屋を出た。
風見が指定されたセーフハウスに到着すると、そこには降谷とルークが待っていた。
「風見、忙しいのに呼び出して悪かったな」
お役所の報告書業務を知る降谷は申し訳なさそうに声をかけた。
風見はまだ大量に残っている報告書の山と、そこで青い顔をしてPC入力を続けている部下を思い出し、それでも「いえ」とだけ返事をした。
「よう! ユーヤ。久しぶりだな」
対照的に降谷の隣にいたルークはニコニコと明るい笑顔を向け挨拶をした。
「ルークさん! 久しぶりです」
風見も表情を緩め、右手を差し出す。二人はガッチリと握手を交わした。
「今日は情報のすり合わせをしようと思ってね。風見にも来てもらったんだ」
挨拶もそこそこに降谷が切り出した。
「あ、はい。承知しております。まず亡くなった深田研究員ですが、司法解剖の結果『SBAウィルス』の感染が確認されました。
そして島谷の逮捕が報道されたタイミングでテロリスト関連の疑惑については【ガセ】であったと刑事部に報告し、今回の被害者として世間に報道されています。
まあ、疑惑はメディアに漏れていなかったので刑事部の方へ通達が行っただけですが」
風見の報告を聞いて降谷が「そうか……」と小さくつぶやいた。
深田の『テロリスト関連疑惑』は、昴とさくらが事件に関与した事を捜査一課に悟られないために、公安が急きょでっち上げたものだ。
島谷の起こした事件が公になったことで深田も事件の正式な被害者であると認定され、名誉が回復。降谷はホッと胸を撫で下ろす。
「俺からも一つ報告だ」
今度はルークが風見と降谷に声をかけた。
「広瀬夫妻の情報から上がっていた『SBAウィルス研究者名簿』だが、研究者全員の所在と現在の状況を確認した」
ルークは広瀬夫妻が遺したとされる名簿を机に置いた。
「10人いた研究者は、現在生存しているのが7人。内、研究職を続けている者が5人。その5人の中で『SBAウィルス』について研究を続けていたのが島谷を含めて3人だったんだが、島谷以外は原因不明の病で療養中だった。
どちらも精神を病んでいて、まともに意思疎通は出来ない。おそらくだが……その病も、島谷による【実験】で……」
そこまで言うとルークは唇を噛む。
これまでの島谷の素行を見れば、手近な仲間を実験対象としてみていた可能性は十分ある。
研究初期の時点で3人の研究員が相次いで亡くなっていることも疑惑が残るところだ。
「じゃあ『SBAウイルス』のデータは島谷しか持っておらず、そのデータも広瀬たちが爆破して消滅したと考えて良い、ということか?」
名簿を手にし、ジッと見ていた降谷がルークに問いかける。
「ああ。ウワサによると島谷は【SBAウィルス】の研究に全てを捧げていた。だから、その成果も権利も——全て自分の物にしたかったようだよ。
その為か、研究がまだ完全では無かった事もあって彼のパソコン以外にデータは保存されておらず、別の第三者が『SBAウィルス』のデータを持っている可能性はほぼゼロと言って良い」
これで一安心だな、とルークは笑顔を見せる。報告を聞いていた降谷と風見も「よかった」と安堵のため息をこぼした。
「後は……その張本人の様子だが……」
降谷が風見の顔を見る。そろそろ島谷の精神鑑定の結果が出る頃だった。
「あ、はい。それなら今朝、検察から結果が届きました」
風見は持って来た書類ケースから封筒を取り出し、降谷に手渡した。
「現在の島谷ですが、報告によると『心神喪失の状態』にあるそうです。意思疎通も難しく、日常生活も介助者の手がないと行えません」
「そうか……。今後のことを考えると、だいぶ厳しい状況だな」
受け取った書類を確認しながら、降谷はため息を零す。
「心血を注いで研究してきた【SBAウィルス】が焼失し、そのショックが原因ではと言われています。
しかし【実験】と称して行った数々の殺人についてはその責任が問える、と検察は判断したようです」
責任能力が必要となるタイミングは、犯罪の実行行為を行った時点。それを踏まえれば、島谷の心神喪失は実行行為後になる。当然罪に問えるという見解だ。
ただし、その時の詳しい経緯や方法等について、本人の自供は望めない。裁判が長期化する可能性が大いにある。
「刑が確定するまでには長い時間が必要だろう。遺族は居た堪れないな……」
ルークがため息交じりにつぶやく。結局しわ寄せは犯罪被害者やその家族に来るのだ。
「今後、島谷には厳しい警護を付けなければならないだろう。彼は一生塀の外には出られないし、出ない方が良い」
降谷の顔が急に険しくなった。風見は「えっ」と言って降谷を見る。
「組織が彼を狙っている。ジンは【ビジネス】失敗の原因を島谷の行き過ぎた【実験】だと結論付けた。人が集まる歓楽街や自身の職場で起こした騒ぎによって警察が嗅ぎつけた、と思っているようだ」
封筒に書類をしまい、降谷は風見の方へ顔を向ける。その顔は先ほど同様に険しいままだ。
報告書の山に埋もれる風見がガチガチになった肩を回しデスクを離れた。
「ちょっと席を外す。何かあれば連絡してくれ」
「了解です」
隣の席で同じように報告書を処理していた部下が、しょぼしょぼの目を何度もこすりながら返事をした。
そんな部下の姿を見て風見はややうしろめたさを感じながらも、スーツのジャケットに袖を通し公安の部屋を出た。
風見が指定されたセーフハウスに到着すると、そこには降谷とルークが待っていた。
「風見、忙しいのに呼び出して悪かったな」
お役所の報告書業務を知る降谷は申し訳なさそうに声をかけた。
風見はまだ大量に残っている報告書の山と、そこで青い顔をしてPC入力を続けている部下を思い出し、それでも「いえ」とだけ返事をした。
「よう! ユーヤ。久しぶりだな」
対照的に降谷の隣にいたルークはニコニコと明るい笑顔を向け挨拶をした。
「ルークさん! 久しぶりです」
風見も表情を緩め、右手を差し出す。二人はガッチリと握手を交わした。
「今日は情報のすり合わせをしようと思ってね。風見にも来てもらったんだ」
挨拶もそこそこに降谷が切り出した。
「あ、はい。承知しております。まず亡くなった深田研究員ですが、司法解剖の結果『SBAウィルス』の感染が確認されました。
そして島谷の逮捕が報道されたタイミングでテロリスト関連の疑惑については【ガセ】であったと刑事部に報告し、今回の被害者として世間に報道されています。
まあ、疑惑はメディアに漏れていなかったので刑事部の方へ通達が行っただけですが」
風見の報告を聞いて降谷が「そうか……」と小さくつぶやいた。
深田の『テロリスト関連疑惑』は、昴とさくらが事件に関与した事を捜査一課に悟られないために、公安が急きょでっち上げたものだ。
島谷の起こした事件が公になったことで深田も事件の正式な被害者であると認定され、名誉が回復。降谷はホッと胸を撫で下ろす。
「俺からも一つ報告だ」
今度はルークが風見と降谷に声をかけた。
「広瀬夫妻の情報から上がっていた『SBAウィルス研究者名簿』だが、研究者全員の所在と現在の状況を確認した」
ルークは広瀬夫妻が遺したとされる名簿を机に置いた。
「10人いた研究者は、現在生存しているのが7人。内、研究職を続けている者が5人。その5人の中で『SBAウィルス』について研究を続けていたのが島谷を含めて3人だったんだが、島谷以外は原因不明の病で療養中だった。
どちらも精神を病んでいて、まともに意思疎通は出来ない。おそらくだが……その病も、島谷による【実験】で……」
そこまで言うとルークは唇を噛む。
これまでの島谷の素行を見れば、手近な仲間を実験対象としてみていた可能性は十分ある。
研究初期の時点で3人の研究員が相次いで亡くなっていることも疑惑が残るところだ。
「じゃあ『SBAウイルス』のデータは島谷しか持っておらず、そのデータも広瀬たちが爆破して消滅したと考えて良い、ということか?」
名簿を手にし、ジッと見ていた降谷がルークに問いかける。
「ああ。ウワサによると島谷は【SBAウィルス】の研究に全てを捧げていた。だから、その成果も権利も——全て自分の物にしたかったようだよ。
その為か、研究がまだ完全では無かった事もあって彼のパソコン以外にデータは保存されておらず、別の第三者が『SBAウィルス』のデータを持っている可能性はほぼゼロと言って良い」
これで一安心だな、とルークは笑顔を見せる。報告を聞いていた降谷と風見も「よかった」と安堵のため息をこぼした。
「後は……その張本人の様子だが……」
降谷が風見の顔を見る。そろそろ島谷の精神鑑定の結果が出る頃だった。
「あ、はい。それなら今朝、検察から結果が届きました」
風見は持って来た書類ケースから封筒を取り出し、降谷に手渡した。
「現在の島谷ですが、報告によると『心神喪失の状態』にあるそうです。意思疎通も難しく、日常生活も介助者の手がないと行えません」
「そうか……。今後のことを考えると、だいぶ厳しい状況だな」
受け取った書類を確認しながら、降谷はため息を零す。
「心血を注いで研究してきた【SBAウィルス】が焼失し、そのショックが原因ではと言われています。
しかし【実験】と称して行った数々の殺人についてはその責任が問える、と検察は判断したようです」
責任能力が必要となるタイミングは、犯罪の実行行為を行った時点。それを踏まえれば、島谷の心神喪失は実行行為後になる。当然罪に問えるという見解だ。
ただし、その時の詳しい経緯や方法等について、本人の自供は望めない。裁判が長期化する可能性が大いにある。
「刑が確定するまでには長い時間が必要だろう。遺族は居た堪れないな……」
ルークがため息交じりにつぶやく。結局しわ寄せは犯罪被害者やその家族に来るのだ。
「今後、島谷には厳しい警護を付けなければならないだろう。彼は一生塀の外には出られないし、出ない方が良い」
降谷の顔が急に険しくなった。風見は「えっ」と言って降谷を見る。
「組織が彼を狙っている。ジンは【ビジネス】失敗の原因を島谷の行き過ぎた【実験】だと結論付けた。人が集まる歓楽街や自身の職場で起こした騒ぎによって警察が嗅ぎつけた、と思っているようだ」
封筒に書類をしまい、降谷は風見の方へ顔を向ける。その顔は先ほど同様に険しいままだ。