最終章 ~未来へ向かって~
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『ハァイ……アロン。どうしたの?』
電話の向こうから、ベルモットの眠そうな声が聞こえた。
「おやすみのところ起こして悪かったね、ベルモット。迷惑ついでに今から来てもらえるか? どうも作業が進まない。イヤな予感がするんだ」
アロンは眉間にしわを寄せ、一向に進まないプログレスバーを睨む。
『イヤな予感? あらあら。あなたほどの男でも、アメリカのセキュリティーシステムに尻込みなんてするのね』
アロンの焦りなど知らないベルモットが、電話の向こうで笑う。
「アメリカのセキュリティーなんぞに尻込みしているわけじゃない。作業が全く進まないんだ。だからと言って、エラーになるわけでも封鎖されるわけでもない。
泳がされている、といった方が良いかな……。
とにかく、いいように遊ばれているような気がするんだ」
作業が進まない苛立ちと焦り。そしてシミュレーションの時とはまるで違う状況——。
エンジニアとしてのカンが『何かおかしい』と警鐘を鳴らしていた。
『今回《フォートデトリック》へのアタックを知る者はごく一部。情報が漏れることはあり得ないわ。あなたの思い過ごしじゃないの?』
「まあ、確かにそうなんだが……」
アロンは何度か違和感を訴えるが、ベルモットは取り合ってくれない。
「ナーバスになっているだけよ」とまで言われれば、それ以上何も言えなくなった。確かに彼女の言うことも一理ある。
何しろ今回の【ビジネス】については組織の幹部クラスでも、ジン、ウォッカ、ベルモット、ラムしか知らない。バーボンやラスティーはもちろん、キャンティやコルンも、指令こそ与えられてはいるが、詳細は教えられていない。
作戦はほぼ最終段階。ここで最も難関と言われている、アメリカのセキュリティーを突破しようとしているのだ。焦りが無いと言ったらウソになるだろう。
アロンは「突然すまなかった」と言って電話を切ろうとした。
ふと視線を上げ窓の外を見た時、遠くを走る数台の車が視界に入る。
「ちょ、ちょっと待って、ベルモット。車が何台か、こっちに向かってきてるけど……」
スマホを耳にあてたまま、アロンは窓辺に駆け寄る。外を見れば、セダンタイプの車が四台列をなしてこちらに向かってきているのが見えた。
『セダンが四台? 何の大名行列かしら…』
それまで楽観視していたベルモットの声が急に緊張したものに変わる。
アロンが小さな双眼鏡を手に階下を覗いた。
「四台ともホテルの前に停まった。……車から男が一、二、……少なくとも十数人出てきたぞ。お、おい! あのメガネの男……公安の刑事じゃないか⁉︎」
来日してすぐ、ジンから警戒すべき人物や組織についてレクチャーを受けた。
その時に見せられた数枚の写真中に、公安警察官数名の写真があったことを思いだす。
『公安の⁉︎』
公安と聞いてベルモットが声を荒げた。
『アロン、今すぐ部屋を出なさい! 屋上に上がって待機! ヘリを回すわ』
「わかった!」
電話を切ったアロンはパソコンを閉じて小脇に抱えると、貴重品が入ったバッグを背負い部屋を出る。
非常階段を使って屋上を目指した。
アロンが部屋を出て数分後——。
バンッ!!
部屋のドアが乱暴に開いた。
「警察だ!」
風見が銃を構えて部屋に突入する。しかし、そこはすでにもぬけの殻だった。
「まだ遠くには行っていないはずだ! 全員で探せ!」
「はッ!」
スーツ姿の公安警察数名と制服姿の警察官一名が、風見の指示に従いすぐさま散った。
フロアーを確認する者、エレベーターホールへ向かう者、非常階段の上下を手分けして調べる者……。
皆アロンを追い詰めようと必死だ。
『風見さん! ヤツは屋上です! 非常階段にヤツの痕跡が……』
部下からの報告を聞き、風見は全員に指示を出す。
「全員屋上へ向かえ! 絶対取り逃がすなよ!」
「はぁッ! はぁッ! はぁッ!」
息を切らしたアロンがホテルの屋上にたどり着く。屋上は広く、大きく「H」と書かれていた。
バラバラバラバラ……
遠くからヘリのローター音が聞こえてくる。
「早く! 早く来てくれ!!」
アロンはヘリに向かって叫んだ。
黒い点でしかなかったヘリがどんどん近づいて来る。
やがてホテルの真上に来ると、アロンに向かって縄ばしごが下ろされた。
「アロン! 着陸している時間は無いよ! これで上がってきな‼」
密閉式ヘッドホンをつけたキャンティがアロンに向かって叫んだ。
「分かった!」
目の前で揺れる縄ばしごに、アロンが手を掛ける。
「いたぞー!!」
公安の刑事が屋上のドアを開けて叫んだ。
「チッ! もう来やがったよ!」
キャンティが舌打ちをした。
「アロン、そのままはしごに掴まってな! 落っこちんじゃないよ!」
再びアロンに叫び、キャンティは操縦席に座るコルンの方へ振り返った。
「コルン! ずらかるよ!」
「わかった」
キャンティの合図でヘリは上昇を始めた。刑事たちが縄ばしごをめがけて屋上のドアから飛び出す。
キャンティが銃を取り出し、刑事たちに向けて発砲した。
「ふせろッ!」
先陣を切った刑事が叫ぶ。とっさに他の刑事たちも横に飛んで、銃弾を避けた。
「クソッ! このままじゃ逃げられる!」
部下から数秒遅れて屋上に到着した風見が空を見上げた。
その時——。
バシュッ‼
サイレンサーをつけた銃から、一発の弾丸が発射された。
バキッ!
弾はアロンが小脇に抱えていたパソコンに命中。着弾の衝撃でパソコンはアロンの脇から下方向へ傾いた。
「し、しまった‼」
慌てて脇を締めて落下を阻止しようとした。が、時すでに遅く、パソコンはアロンの体からスルリとこぼれ落ちる。
ガシャーン!!
そのままパソコンはホテルの屋上に落下。衝撃で外枠は割れ、いくつもの部品が飛び散った。
「くそッ! 三日間の作業が水の泡だ!」
アロンは怒りに震え、奥歯を噛みしめる。額には青筋が立っていた。
そうしている間に、ヘリは旋回しホテルを離れる。公安警察を睨みつけるアロンをぶら下げたまま、東都の空へと消えていった。
「……ふう……危ない危ない…」
屋上の物陰に隠れ、降谷は小さく息を吐いた。手にしている銃からは、わずかに煙が立ち上る。
その姿は公安警察の『降谷』でも無ければ、ポアロの店員『安室』でもない。
久しぶりに身に着けた警察官の制服と帽子。帽子の下は万が一に備え、黒髪のウィッグを付けていた。
「変装したとはいえ、キャンティに姿を見られればバレかねない。身を隠すところがあって良かった……」
降谷は銃をホルダーに仕舞い、耳に付けたヘッドセットで風見に話しかけた。
「風見。ご苦労だった。アロンは取り逃がしたがパソコンは押収できた。それを回収して全員撤退しろ」
『了解です』
降谷から数メートル離れた所で、風見が返事をする。
公安警察官が風見からの指示を聞いている間に、降谷はその場から姿を消した。
電話の向こうから、ベルモットの眠そうな声が聞こえた。
「おやすみのところ起こして悪かったね、ベルモット。迷惑ついでに今から来てもらえるか? どうも作業が進まない。イヤな予感がするんだ」
アロンは眉間にしわを寄せ、一向に進まないプログレスバーを睨む。
『イヤな予感? あらあら。あなたほどの男でも、アメリカのセキュリティーシステムに尻込みなんてするのね』
アロンの焦りなど知らないベルモットが、電話の向こうで笑う。
「アメリカのセキュリティーなんぞに尻込みしているわけじゃない。作業が全く進まないんだ。だからと言って、エラーになるわけでも封鎖されるわけでもない。
泳がされている、といった方が良いかな……。
とにかく、いいように遊ばれているような気がするんだ」
作業が進まない苛立ちと焦り。そしてシミュレーションの時とはまるで違う状況——。
エンジニアとしてのカンが『何かおかしい』と警鐘を鳴らしていた。
『今回《フォートデトリック》へのアタックを知る者はごく一部。情報が漏れることはあり得ないわ。あなたの思い過ごしじゃないの?』
「まあ、確かにそうなんだが……」
アロンは何度か違和感を訴えるが、ベルモットは取り合ってくれない。
「ナーバスになっているだけよ」とまで言われれば、それ以上何も言えなくなった。確かに彼女の言うことも一理ある。
何しろ今回の【ビジネス】については組織の幹部クラスでも、ジン、ウォッカ、ベルモット、ラムしか知らない。バーボンやラスティーはもちろん、キャンティやコルンも、指令こそ与えられてはいるが、詳細は教えられていない。
作戦はほぼ最終段階。ここで最も難関と言われている、アメリカのセキュリティーを突破しようとしているのだ。焦りが無いと言ったらウソになるだろう。
アロンは「突然すまなかった」と言って電話を切ろうとした。
ふと視線を上げ窓の外を見た時、遠くを走る数台の車が視界に入る。
「ちょ、ちょっと待って、ベルモット。車が何台か、こっちに向かってきてるけど……」
スマホを耳にあてたまま、アロンは窓辺に駆け寄る。外を見れば、セダンタイプの車が四台列をなしてこちらに向かってきているのが見えた。
『セダンが四台? 何の大名行列かしら…』
それまで楽観視していたベルモットの声が急に緊張したものに変わる。
アロンが小さな双眼鏡を手に階下を覗いた。
「四台ともホテルの前に停まった。……車から男が一、二、……少なくとも十数人出てきたぞ。お、おい! あのメガネの男……公安の刑事じゃないか⁉︎」
来日してすぐ、ジンから警戒すべき人物や組織についてレクチャーを受けた。
その時に見せられた数枚の写真中に、公安警察官数名の写真があったことを思いだす。
『公安の⁉︎』
公安と聞いてベルモットが声を荒げた。
『アロン、今すぐ部屋を出なさい! 屋上に上がって待機! ヘリを回すわ』
「わかった!」
電話を切ったアロンはパソコンを閉じて小脇に抱えると、貴重品が入ったバッグを背負い部屋を出る。
非常階段を使って屋上を目指した。
アロンが部屋を出て数分後——。
バンッ!!
部屋のドアが乱暴に開いた。
「警察だ!」
風見が銃を構えて部屋に突入する。しかし、そこはすでにもぬけの殻だった。
「まだ遠くには行っていないはずだ! 全員で探せ!」
「はッ!」
スーツ姿の公安警察数名と制服姿の警察官一名が、風見の指示に従いすぐさま散った。
フロアーを確認する者、エレベーターホールへ向かう者、非常階段の上下を手分けして調べる者……。
皆アロンを追い詰めようと必死だ。
『風見さん! ヤツは屋上です! 非常階段にヤツの痕跡が……』
部下からの報告を聞き、風見は全員に指示を出す。
「全員屋上へ向かえ! 絶対取り逃がすなよ!」
「はぁッ! はぁッ! はぁッ!」
息を切らしたアロンがホテルの屋上にたどり着く。屋上は広く、大きく「H」と書かれていた。
バラバラバラバラ……
遠くからヘリのローター音が聞こえてくる。
「早く! 早く来てくれ!!」
アロンはヘリに向かって叫んだ。
黒い点でしかなかったヘリがどんどん近づいて来る。
やがてホテルの真上に来ると、アロンに向かって縄ばしごが下ろされた。
「アロン! 着陸している時間は無いよ! これで上がってきな‼」
密閉式ヘッドホンをつけたキャンティがアロンに向かって叫んだ。
「分かった!」
目の前で揺れる縄ばしごに、アロンが手を掛ける。
「いたぞー!!」
公安の刑事が屋上のドアを開けて叫んだ。
「チッ! もう来やがったよ!」
キャンティが舌打ちをした。
「アロン、そのままはしごに掴まってな! 落っこちんじゃないよ!」
再びアロンに叫び、キャンティは操縦席に座るコルンの方へ振り返った。
「コルン! ずらかるよ!」
「わかった」
キャンティの合図でヘリは上昇を始めた。刑事たちが縄ばしごをめがけて屋上のドアから飛び出す。
キャンティが銃を取り出し、刑事たちに向けて発砲した。
「ふせろッ!」
先陣を切った刑事が叫ぶ。とっさに他の刑事たちも横に飛んで、銃弾を避けた。
「クソッ! このままじゃ逃げられる!」
部下から数秒遅れて屋上に到着した風見が空を見上げた。
その時——。
バシュッ‼
サイレンサーをつけた銃から、一発の弾丸が発射された。
バキッ!
弾はアロンが小脇に抱えていたパソコンに命中。着弾の衝撃でパソコンはアロンの脇から下方向へ傾いた。
「し、しまった‼」
慌てて脇を締めて落下を阻止しようとした。が、時すでに遅く、パソコンはアロンの体からスルリとこぼれ落ちる。
ガシャーン!!
そのままパソコンはホテルの屋上に落下。衝撃で外枠は割れ、いくつもの部品が飛び散った。
「くそッ! 三日間の作業が水の泡だ!」
アロンは怒りに震え、奥歯を噛みしめる。額には青筋が立っていた。
そうしている間に、ヘリは旋回しホテルを離れる。公安警察を睨みつけるアロンをぶら下げたまま、東都の空へと消えていった。
「……ふう……危ない危ない…」
屋上の物陰に隠れ、降谷は小さく息を吐いた。手にしている銃からは、わずかに煙が立ち上る。
その姿は公安警察の『降谷』でも無ければ、ポアロの店員『安室』でもない。
久しぶりに身に着けた警察官の制服と帽子。帽子の下は万が一に備え、黒髪のウィッグを付けていた。
「変装したとはいえ、キャンティに姿を見られればバレかねない。身を隠すところがあって良かった……」
降谷は銃をホルダーに仕舞い、耳に付けたヘッドセットで風見に話しかけた。
「風見。ご苦労だった。アロンは取り逃がしたがパソコンは押収できた。それを回収して全員撤退しろ」
『了解です』
降谷から数メートル離れた所で、風見が返事をする。
公安警察官が風見からの指示を聞いている間に、降谷はその場から姿を消した。