最終章 ~未来へ向かって~
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裏口から建物内部に難なく侵入した赤井とりおは、息をひそめ静かに内部を観察した。どうやら潜入した部屋はキッチンのようだ。ドアを少し開け、居住スペース全体を見回す。
特に見張りがいる様子はない。
偵察衛星が捉えた建物内部の見取り図は、赤井の頭にほぼ入っている。島谷の寝室とセキュリティー管理室の場所はある程度読んでいた。
「寝室は……こっちだ」
キッチンを出て二人は左手の廊下を進む。
やがてドアがいくつか見えた。そのうちのどれかが島谷の寝室。赤井はしゃがみ込み、床を観察した。一つのドアの前に何かを引きずった跡がうっすら残っている。
おそらく荷物を入れた重いケースを運び込んだのだろう。
赤井が顔を上げる。りおは赤井を見てうなずいた。
静かにドアノブを回し、二人は部屋の中へと侵入した。
部屋は全ての照明が消され、ほぼ真っ暗。しかし暗闇に目が慣れている二人には、部屋の様子がある程度見えている。
まだ荷解きしていないキャリーバッグが数個。洋服が無造作に置かれたイス。食べっぱなしのカップラーメンの残がい。そして壁のフックにかけられた白衣。
目を凝らせば、白衣の胸ポケットには『島谷』のネームがぶら下がっていた。
そっとベッドに近づきながら、赤井はコナンと同じ《腕時計型麻酔銃》を取り出す。
思惑通り、ベッドでは島谷がスースーと寝息を立てていた。赤井は時計の文字盤を開け、狙いを定める。
パシュ!
微かな発射音と共に麻酔針が島谷の首元に刺さった。元々眠っていたため、麻酔が効いたかどうか確かめる術はない。が、麻酔針の効果はすでにコナンによって何度も実証済みだ。それを裏付けるように、島谷の気持ち良さそうな寝息が先程と変わらず聞こえた。
「これでしばらくは起きないだろう」
「うん」
りおは小さなペンライトを取り出すと部屋の中をグルリと見回した。先程確認した白衣に近づき、ポケットの中に手を入れる。
やがて「チャリ」という金属音が聞こえ、カギの束とカードキーを取り出した。
「……あった……これ、おそらく研究スペースで使うカギよ。
島谷教授、大事なものもそうでないものも、全部白衣のポケットに押し込むクセがあるの。だからポケットの中はいつもパンパンなのよ。
ま、お陰で労せずカギを手に入れることが出来たけどね」
「ああ」
さすがだな、と赤井は笑った。
島谷の部屋を出てドアを閉めると、赤井はりおに耳打ちをする。
「お前は右に行け。2ブロック行ったところで左に曲がれば、突き当りがセキュリティー管理室だ。俺は逆を行って研究スペース前で待機する」
「了解。インカム繋いでおいて」
「わかった」
二人はワイヤレスヘッドセットを装着すると互いの顔を見てうなずいた。すぐさま背を向け、各々の目的場所へと走り出した。
赤井はゆるく右にカーブした廊下を進む。やや開けた中央広場付近まで来ると、物陰に隠れて様子をうかがった。
中央広場は『居住スペース』と『研究スペース』を繋ぐエントランスになっていて、出入口には二人の見張りが立っている。天井を見上げれば、出入口に向かって防犯カメラが一台設置されていた。
カメラレンズのすぐ脇で赤いランプが点灯しているため、このカメラは作動しているようだ。
見張りがいる廊下は真っ暗ではなく、警護の者たちの顔が分かるくらいには照明が点いてる。このまま物陰から出れば、容易に見つかってしまうだろう。
(セキュリティーシステムを停止しない事には研究スペースには入れない。りお、頼んだぞ)
赤井は壁に背を預け、りおからの連絡を待った。
その頃、赤井と別れたりおは2ブロック先の角で様子を伺う。扉の向こうはセキュリティー管理室。人数までは分からないが人の気配がする。しばらくすると部屋から男が一人出てきた。
「ふあぁ〜。さすがに眠いな……。トイレの後、コーヒーでももらってくるか」
一人はしゃべる相手がいなくてヒマだな、などとつぶやきながら、男はりおの方へと向かってくる。
(一人? 管理室には居るのはこの男だけってことか)
りおは廊下の角で体勢を低くして、男が近づいてくるのを待った。
コツ、コツ、コツ……
足音を鳴らし、男がりおに近づいてくる。
そのままコーナーを通り過ぎ——
「ッ!?」
ヒュッ!
男が侵入者に気付き息を飲んだ瞬間、りおが攻撃を仕掛ける。りおの左肘が男の腹にめり込んだ。
「ぐほぉッ!!」
不意打ちを食らわされた男は白目をむいて脱力した。その体が派手な音を立てて倒れないように、りおはそっと支えながら床に寝かせる。
(ふぅ……さすがに重いな。かといってこのまま放置できないし……)
りおは男を引きずり、近くにあった男子トイレに男を隠した。
(さてと、さっきの男が目を覚まさないうちに……)
りおはセキュリティー管理室のドアの前に立つ。
男は一人だと言っていたが、用心のため部屋の音と気配に意識を集中する。
話し声どころか物音ひとつしない。りおはドアをわずかに開け、部屋の中を目視した。
明るい部屋の中には誰もいない。
りおは静かに自分の身を部屋の中へと滑り込ませた。
管理室はガランとしていて、あるのは防犯システムを司る操作パネルの台と、壁にはめ込まれたモニターが十台ほど。それとは別にパソコンが三台置かれていた。
よく見れば、モニターが映し出しているのは研究スペースにある『実験室』と『培養室』、建物の正面入口、居住スペースと研究スペースを繋ぐ中央広場の出入口の四か所のみ。
しかも研究室と培養室は一台のモニターで画面が切り替わるタイプ。実質動いているモニターは三台しかない。
他のモニターは電源すら入っていなかった。
(なるほど……本当に準備が間に合っていなかったのね。でもまあ、カメラは全て録画されている、か。これを切ってしまえば後々ジン達がここへ来たとしても私たちの正体に気付かない……)
りおは防犯装置の電源に手を伸ばす。それを切ろうとしてハッとした。
(ちょっと待って。この映像……アジトに送られている可能性は? もし送られていれば、映像が切れた瞬間、異変に気付かれるかも……)
慌ててパソコンに近づき、設定を確認した。
(映像の転送設定は……オフだわ!)
組織の【ビジネス】が、まだどこにもバレていない、という自信があるのだろう。研究施設の映像は録画だけで転送までは設定されていない。
(ふぅ……良かった)
額の汗を拭い、りおは全防犯装置の電源をOFFにした。
ヘッドセットの通話ボタンを押す。
「秀一さん、カメラOFFになったわ」
『了解した』
りおからの報告を待っていた赤井が返事をした。
赤井は頭上の防犯カメラを見上げ、先ほどまで点いていた赤いランプが消えていることを確認する。
「りお、悪いが居住スペースと研究スペース付近の照明を30秒だけ落とせるか?」
赤井はヘッドセットのマイクに向かって問いかけた。
『照明ね……え〜っと…あった。これだわ。
OK! 30秒ね。5秒カウントダウンしてスイッチオフにするわ。そのあと30秒カウントして点灯する』
「ああ、頼んだぞ」
ヘッドセットからりおの声で5,4,3,とカウントダウンが聞こえる。
2,1,0!
ヒュン……
最小限まで落とされていた照明が完全に消えた。
「なんだ⁉︎ 停電か?」
出入口を警備していた男たちの慌てる声が聞こえた。
ゼロカウントで死角から飛び出した赤井は、音もなく男達に近づく。
ドカッ!!
「ぐおッ!!」
ドスッ!!
「ぐふッ!!」
赤井の蹴りが男たちの腹に決まった。
……27,28,29,30!
パッ!
再び薄暗い照明が点いた。
赤井が見回すと、先ほどの男たちが意識を失っている。
「不意打ちを食らわせて悪かったな。だがこうでもしないと仲間を呼んでしまうだろう?」
一応謝罪はした。が、意識を失っている男たちには聞こえていないだろう。
赤井は倒れている二人を廊下の人目の付かないところに運んだ。そこへタイミング良くりおが走ってくる。
「上手くいったわね」
「ああ」
予定通りに事が運び、二人は笑顔を見せた。
「それにしても、警護が薄いわね」
りおが失神している男たちを見て、やや心配げに言った。
「本土からも離れているし、オドゥムが反撃してくる可能性はほぼゼロ。日本警察やFBIも、まだ【ビジネス】に気付いていないと思っている。つまり、現状で奇襲をかけてくるような敵は居ないと判断したんだろう。そのため警護は最小限。
中に3人、外に2人。5人で3交代といったところか。ということは、少なくともあと10人は施設内にいることになる」
油断するなよ、と赤井は釘を刺す。
「ええ」
りおは表情を引き締めた。
「さて、いよいよ研究スペースに乗り込むぞ!」
「うん」
赤井の言葉に、りおは先ほど島谷の白衣から拝借したカードキーを取り出した。カードを入口のシステムにかざす。
ピー! ガチャ!
電子音と共にドアのロックが開いた。
2人はうなずき合うとドアを開け、研究スペースへと足を踏み入れた。
特に見張りがいる様子はない。
偵察衛星が捉えた建物内部の見取り図は、赤井の頭にほぼ入っている。島谷の寝室とセキュリティー管理室の場所はある程度読んでいた。
「寝室は……こっちだ」
キッチンを出て二人は左手の廊下を進む。
やがてドアがいくつか見えた。そのうちのどれかが島谷の寝室。赤井はしゃがみ込み、床を観察した。一つのドアの前に何かを引きずった跡がうっすら残っている。
おそらく荷物を入れた重いケースを運び込んだのだろう。
赤井が顔を上げる。りおは赤井を見てうなずいた。
静かにドアノブを回し、二人は部屋の中へと侵入した。
部屋は全ての照明が消され、ほぼ真っ暗。しかし暗闇に目が慣れている二人には、部屋の様子がある程度見えている。
まだ荷解きしていないキャリーバッグが数個。洋服が無造作に置かれたイス。食べっぱなしのカップラーメンの残がい。そして壁のフックにかけられた白衣。
目を凝らせば、白衣の胸ポケットには『島谷』のネームがぶら下がっていた。
そっとベッドに近づきながら、赤井はコナンと同じ《腕時計型麻酔銃》を取り出す。
思惑通り、ベッドでは島谷がスースーと寝息を立てていた。赤井は時計の文字盤を開け、狙いを定める。
パシュ!
微かな発射音と共に麻酔針が島谷の首元に刺さった。元々眠っていたため、麻酔が効いたかどうか確かめる術はない。が、麻酔針の効果はすでにコナンによって何度も実証済みだ。それを裏付けるように、島谷の気持ち良さそうな寝息が先程と変わらず聞こえた。
「これでしばらくは起きないだろう」
「うん」
りおは小さなペンライトを取り出すと部屋の中をグルリと見回した。先程確認した白衣に近づき、ポケットの中に手を入れる。
やがて「チャリ」という金属音が聞こえ、カギの束とカードキーを取り出した。
「……あった……これ、おそらく研究スペースで使うカギよ。
島谷教授、大事なものもそうでないものも、全部白衣のポケットに押し込むクセがあるの。だからポケットの中はいつもパンパンなのよ。
ま、お陰で労せずカギを手に入れることが出来たけどね」
「ああ」
さすがだな、と赤井は笑った。
島谷の部屋を出てドアを閉めると、赤井はりおに耳打ちをする。
「お前は右に行け。2ブロック行ったところで左に曲がれば、突き当りがセキュリティー管理室だ。俺は逆を行って研究スペース前で待機する」
「了解。インカム繋いでおいて」
「わかった」
二人はワイヤレスヘッドセットを装着すると互いの顔を見てうなずいた。すぐさま背を向け、各々の目的場所へと走り出した。
赤井はゆるく右にカーブした廊下を進む。やや開けた中央広場付近まで来ると、物陰に隠れて様子をうかがった。
中央広場は『居住スペース』と『研究スペース』を繋ぐエントランスになっていて、出入口には二人の見張りが立っている。天井を見上げれば、出入口に向かって防犯カメラが一台設置されていた。
カメラレンズのすぐ脇で赤いランプが点灯しているため、このカメラは作動しているようだ。
見張りがいる廊下は真っ暗ではなく、警護の者たちの顔が分かるくらいには照明が点いてる。このまま物陰から出れば、容易に見つかってしまうだろう。
(セキュリティーシステムを停止しない事には研究スペースには入れない。りお、頼んだぞ)
赤井は壁に背を預け、りおからの連絡を待った。
その頃、赤井と別れたりおは2ブロック先の角で様子を伺う。扉の向こうはセキュリティー管理室。人数までは分からないが人の気配がする。しばらくすると部屋から男が一人出てきた。
「ふあぁ〜。さすがに眠いな……。トイレの後、コーヒーでももらってくるか」
一人はしゃべる相手がいなくてヒマだな、などとつぶやきながら、男はりおの方へと向かってくる。
(一人? 管理室には居るのはこの男だけってことか)
りおは廊下の角で体勢を低くして、男が近づいてくるのを待った。
コツ、コツ、コツ……
足音を鳴らし、男がりおに近づいてくる。
そのままコーナーを通り過ぎ——
「ッ!?」
ヒュッ!
男が侵入者に気付き息を飲んだ瞬間、りおが攻撃を仕掛ける。りおの左肘が男の腹にめり込んだ。
「ぐほぉッ!!」
不意打ちを食らわされた男は白目をむいて脱力した。その体が派手な音を立てて倒れないように、りおはそっと支えながら床に寝かせる。
(ふぅ……さすがに重いな。かといってこのまま放置できないし……)
りおは男を引きずり、近くにあった男子トイレに男を隠した。
(さてと、さっきの男が目を覚まさないうちに……)
りおはセキュリティー管理室のドアの前に立つ。
男は一人だと言っていたが、用心のため部屋の音と気配に意識を集中する。
話し声どころか物音ひとつしない。りおはドアをわずかに開け、部屋の中を目視した。
明るい部屋の中には誰もいない。
りおは静かに自分の身を部屋の中へと滑り込ませた。
管理室はガランとしていて、あるのは防犯システムを司る操作パネルの台と、壁にはめ込まれたモニターが十台ほど。それとは別にパソコンが三台置かれていた。
よく見れば、モニターが映し出しているのは研究スペースにある『実験室』と『培養室』、建物の正面入口、居住スペースと研究スペースを繋ぐ中央広場の出入口の四か所のみ。
しかも研究室と培養室は一台のモニターで画面が切り替わるタイプ。実質動いているモニターは三台しかない。
他のモニターは電源すら入っていなかった。
(なるほど……本当に準備が間に合っていなかったのね。でもまあ、カメラは全て録画されている、か。これを切ってしまえば後々ジン達がここへ来たとしても私たちの正体に気付かない……)
りおは防犯装置の電源に手を伸ばす。それを切ろうとしてハッとした。
(ちょっと待って。この映像……アジトに送られている可能性は? もし送られていれば、映像が切れた瞬間、異変に気付かれるかも……)
慌ててパソコンに近づき、設定を確認した。
(映像の転送設定は……オフだわ!)
組織の【ビジネス】が、まだどこにもバレていない、という自信があるのだろう。研究施設の映像は録画だけで転送までは設定されていない。
(ふぅ……良かった)
額の汗を拭い、りおは全防犯装置の電源をOFFにした。
ヘッドセットの通話ボタンを押す。
「秀一さん、カメラOFFになったわ」
『了解した』
りおからの報告を待っていた赤井が返事をした。
赤井は頭上の防犯カメラを見上げ、先ほどまで点いていた赤いランプが消えていることを確認する。
「りお、悪いが居住スペースと研究スペース付近の照明を30秒だけ落とせるか?」
赤井はヘッドセットのマイクに向かって問いかけた。
『照明ね……え〜っと…あった。これだわ。
OK! 30秒ね。5秒カウントダウンしてスイッチオフにするわ。そのあと30秒カウントして点灯する』
「ああ、頼んだぞ」
ヘッドセットからりおの声で5,4,3,とカウントダウンが聞こえる。
2,1,0!
ヒュン……
最小限まで落とされていた照明が完全に消えた。
「なんだ⁉︎ 停電か?」
出入口を警備していた男たちの慌てる声が聞こえた。
ゼロカウントで死角から飛び出した赤井は、音もなく男達に近づく。
ドカッ!!
「ぐおッ!!」
ドスッ!!
「ぐふッ!!」
赤井の蹴りが男たちの腹に決まった。
……27,28,29,30!
パッ!
再び薄暗い照明が点いた。
赤井が見回すと、先ほどの男たちが意識を失っている。
「不意打ちを食らわせて悪かったな。だがこうでもしないと仲間を呼んでしまうだろう?」
一応謝罪はした。が、意識を失っている男たちには聞こえていないだろう。
赤井は倒れている二人を廊下の人目の付かないところに運んだ。そこへタイミング良くりおが走ってくる。
「上手くいったわね」
「ああ」
予定通りに事が運び、二人は笑顔を見せた。
「それにしても、警護が薄いわね」
りおが失神している男たちを見て、やや心配げに言った。
「本土からも離れているし、オドゥムが反撃してくる可能性はほぼゼロ。日本警察やFBIも、まだ【ビジネス】に気付いていないと思っている。つまり、現状で奇襲をかけてくるような敵は居ないと判断したんだろう。そのため警護は最小限。
中に3人、外に2人。5人で3交代といったところか。ということは、少なくともあと10人は施設内にいることになる」
油断するなよ、と赤井は釘を刺す。
「ええ」
りおは表情を引き締めた。
「さて、いよいよ研究スペースに乗り込むぞ!」
「うん」
赤井の言葉に、りおは先ほど島谷の白衣から拝借したカードキーを取り出した。カードを入口のシステムにかざす。
ピー! ガチャ!
電子音と共にドアのロックが開いた。
2人はうなずき合うとドアを開け、研究スペースへと足を踏み入れた。