最終章 ~未来へ向かって~
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「二人とも、大丈夫ですか?」
事件直後、連絡を受けてすぐに駆け付けた安室が運転席から問いかける。RX-7の後部座席には昴とさくらが乗っていた。
昴が右手でさくらの肩を抱き、さくらはハンカチを昴の左手の甲に当てて押さえていた。
「ええ、なんとか……」
昴が安室の問いかけに答えた。
さくらの肩は激しく上下していて、呼吸が乱れているのが分かる。昴のケガの圧迫止血をしている手も震えていた。
「さくら、大丈夫か?」
昴はさくらの耳元で問いかけた。
「…ぅ、…ぅ…ん……」
かすれた声でやっと返事が返ってきたが呼吸は速く、額には汗がにじんでいる。震えは全身にまで広がっていた。
「安室さん、急いでください。大きな発作を起こしそうだ」
「分かりました」
安室はギアを一つ上げ、アクセルを踏み込んだ。
工藤邸に着き、昴がさくらを抱きかかえるようにして車から降りる。
一足先に車を出た安室が、玄関のドアを開けた。玄関に入った瞬間、さくらは過呼吸発作を起こし倒れこむ。
「は、はぁ、はっ、は、はぅ、はッ…」
「さくら、よく頑張った! あとちょっとだ」
昴はさくらを抱き上げて寝室へと運ぶと、安室もそれに続いた。
ベッドに腰かけ、昴はさくらを抱きしめたまま声をかける。
呼吸の誘導をしながら背中を撫で、時々トントンとあやすように優しく肩や背中をたたく。
やがて呼吸が整うのと同時に、さくらの体から力が抜けた。昴の背中に回していた手がズルリと脱力したのを合図に、昴はそっとさくらをベッドに寝かせた。
「落ち着きましたか……」
ふぅ…、と安室が一息つくと、「ええ」とだけ返事をして昴は立ち上がる。そっとさくらに布団をかけた。
「次はあなたの手当だ。救急箱を貸してください。僕が手当てします」
安室は昴の左手を見ながら声をかける。
「……お願いします」
「何か不服ですか?」
返事の前にわずかな沈黙。安室は思わず文句を口にした。
「いいえ、そんなつもりは。ただ……以前は憎まれていたのにな、と思ったので」
「ッ! も、もう、それは忘れてください」
安室はバツが悪そうに答えると、クルリと踵を返した。
「はい、これで大丈夫ですよ。血も止まっていましたし、傷もさほど深くなかった」
「ありがとうございます」
救急箱をしまう安室に、昴は包帯の巻かれた手をさすりながら礼を言った。
「現場に残ったあなたの血痕はこちらで上手く処理しておきます。風見が行きましたから森教授も事態を察した事でしょう」
「ええ、助かります」
緊急事態だったとはいえ、全てを森に任せては負担が大きすぎる。早期に風見が介入したと聞いて、昴はホッと胸を撫で下ろした。
「しかし島谷教授が、まさか研究生にまで『SBA』の投与実験をしていたとは……」
安室は険しい顔でつぶやいた。
「ええ。ですが、今回の件でいくつか分かったことがあります」
「分かったこと?」
安室が不思議そうに問いかける。
「島谷自身が言っていました。『私が作ったウイルスは、まだ人から人へはうつらない。食べ物や飲み物に混ぜたり、注射を使って直接体に入れないと感染しない。その辺りが今後の課題である』と。
つまり、組織の『SBA』は現時点でやはり未完成であること。そしてそれを完全なものにするために、《フォートデトリック》の『SBA』関連のデータを狙う、ということです」
昴は確信めいた顔で安室を見た。その口元には余裕さえある。
「なるほど。それが事実だとすれば、すでにアロン・モーリスが《フォートデトリック》へのアタックを開始しているかもしれませんね。アメリカのサイバー対策室へは連絡を?」
「ええ、ジェームズから直接報告が行ったはずです。FBIのサイバー対策室が今、二重三重で手を打っています。公安の上層部にもそろそろ連絡が行ったと思いますよ。もちろん組織に悟られないように、ね」
メインコンピューターへの侵入を紙一重で阻止することで時間を引き延ばし、アロンの潜伏先を割り出す算段だという。
「あとは……逃げた島谷の行方だな。
ヤツには大学の研究室以外に、《フォートデトリック》から情報を盗み出し『SBA』を完成させられるほどの設備が整った場所がある、ということか」
安室は自身のアゴを撫でながら、その先に導き出される答えを口にした。
「ええ、そうです。組織はすでにヘッドハンティングも開始しているのでしょう? 世界中から集まった研究者たちを囲っておけるだけの大きな施設——おそらく島谷は大学を逃亡後、そちらへ向かったはずです」
「フッ……なるほど。そういうことか」
そこまで読んでいたとは。
島谷が逃亡した際、昴がその後を追わなかった理由が分かり、安室は口角を上げた。
「で、その大きな施設とやらの場所は?」
やや意地悪そうな顔をして問いかける安室に、昴は涼しい顔で答える。
「もちろん、分かっていますよ。場所は——」
「ッ!?」
昴の口から伝えられた場所を聞き、安室の顔色が変わった。
事件直後、連絡を受けてすぐに駆け付けた安室が運転席から問いかける。RX-7の後部座席には昴とさくらが乗っていた。
昴が右手でさくらの肩を抱き、さくらはハンカチを昴の左手の甲に当てて押さえていた。
「ええ、なんとか……」
昴が安室の問いかけに答えた。
さくらの肩は激しく上下していて、呼吸が乱れているのが分かる。昴のケガの圧迫止血をしている手も震えていた。
「さくら、大丈夫か?」
昴はさくらの耳元で問いかけた。
「…ぅ、…ぅ…ん……」
かすれた声でやっと返事が返ってきたが呼吸は速く、額には汗がにじんでいる。震えは全身にまで広がっていた。
「安室さん、急いでください。大きな発作を起こしそうだ」
「分かりました」
安室はギアを一つ上げ、アクセルを踏み込んだ。
工藤邸に着き、昴がさくらを抱きかかえるようにして車から降りる。
一足先に車を出た安室が、玄関のドアを開けた。玄関に入った瞬間、さくらは過呼吸発作を起こし倒れこむ。
「は、はぁ、はっ、は、はぅ、はッ…」
「さくら、よく頑張った! あとちょっとだ」
昴はさくらを抱き上げて寝室へと運ぶと、安室もそれに続いた。
ベッドに腰かけ、昴はさくらを抱きしめたまま声をかける。
呼吸の誘導をしながら背中を撫で、時々トントンとあやすように優しく肩や背中をたたく。
やがて呼吸が整うのと同時に、さくらの体から力が抜けた。昴の背中に回していた手がズルリと脱力したのを合図に、昴はそっとさくらをベッドに寝かせた。
「落ち着きましたか……」
ふぅ…、と安室が一息つくと、「ええ」とだけ返事をして昴は立ち上がる。そっとさくらに布団をかけた。
「次はあなたの手当だ。救急箱を貸してください。僕が手当てします」
安室は昴の左手を見ながら声をかける。
「……お願いします」
「何か不服ですか?」
返事の前にわずかな沈黙。安室は思わず文句を口にした。
「いいえ、そんなつもりは。ただ……以前は憎まれていたのにな、と思ったので」
「ッ! も、もう、それは忘れてください」
安室はバツが悪そうに答えると、クルリと踵を返した。
「はい、これで大丈夫ですよ。血も止まっていましたし、傷もさほど深くなかった」
「ありがとうございます」
救急箱をしまう安室に、昴は包帯の巻かれた手をさすりながら礼を言った。
「現場に残ったあなたの血痕はこちらで上手く処理しておきます。風見が行きましたから森教授も事態を察した事でしょう」
「ええ、助かります」
緊急事態だったとはいえ、全てを森に任せては負担が大きすぎる。早期に風見が介入したと聞いて、昴はホッと胸を撫で下ろした。
「しかし島谷教授が、まさか研究生にまで『SBA』の投与実験をしていたとは……」
安室は険しい顔でつぶやいた。
「ええ。ですが、今回の件でいくつか分かったことがあります」
「分かったこと?」
安室が不思議そうに問いかける。
「島谷自身が言っていました。『私が作ったウイルスは、まだ人から人へはうつらない。食べ物や飲み物に混ぜたり、注射を使って直接体に入れないと感染しない。その辺りが今後の課題である』と。
つまり、組織の『SBA』は現時点でやはり未完成であること。そしてそれを完全なものにするために、《フォートデトリック》の『SBA』関連のデータを狙う、ということです」
昴は確信めいた顔で安室を見た。その口元には余裕さえある。
「なるほど。それが事実だとすれば、すでにアロン・モーリスが《フォートデトリック》へのアタックを開始しているかもしれませんね。アメリカのサイバー対策室へは連絡を?」
「ええ、ジェームズから直接報告が行ったはずです。FBIのサイバー対策室が今、二重三重で手を打っています。公安の上層部にもそろそろ連絡が行ったと思いますよ。もちろん組織に悟られないように、ね」
メインコンピューターへの侵入を紙一重で阻止することで時間を引き延ばし、アロンの潜伏先を割り出す算段だという。
「あとは……逃げた島谷の行方だな。
ヤツには大学の研究室以外に、《フォートデトリック》から情報を盗み出し『SBA』を完成させられるほどの設備が整った場所がある、ということか」
安室は自身のアゴを撫でながら、その先に導き出される答えを口にした。
「ええ、そうです。組織はすでにヘッドハンティングも開始しているのでしょう? 世界中から集まった研究者たちを囲っておけるだけの大きな施設——おそらく島谷は大学を逃亡後、そちらへ向かったはずです」
「フッ……なるほど。そういうことか」
そこまで読んでいたとは。
島谷が逃亡した際、昴がその後を追わなかった理由が分かり、安室は口角を上げた。
「で、その大きな施設とやらの場所は?」
やや意地悪そうな顔をして問いかける安室に、昴は涼しい顔で答える。
「もちろん、分かっていますよ。場所は——」
「ッ!?」
昴の口から伝えられた場所を聞き、安室の顔色が変わった。