最終章 ~未来へ向かって~
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「ケンチ。私はその約束を守って、今まで研究を続けて来たんだよ。
この世界に人間は増えすぎた。食料不足、環境汚染、森林伐採。全ての元凶は人間だ。
不必要な人間を少し排除した方が良いとは思わないかい?」
島谷は自分の考えがいかに正しく偉大なのかを伝えようと熱弁を振るう。
「そろそろ世の中の大掃除が必要だ。私の研究は人の為さ。不必要な人間が不必要な人間を始末して、自身も駆除する。
世の中に必要とされる人間が手を汚さずに済むんだよ。合理的じゃないか」
「もしかして尾沼くんも君が? 二人は君にとって不必要な人間だったということか?」
人を物のように言い捨てる島谷の態度に、森は怒りを抑えて訊ねた。
「ああ、尾沼くんね。彼は必要な男だったよ。私のことをリスペクトしていたから、何でも言うことを聞く便利な駒だったよ」
島谷はニコニコしながら尾沼のことを語りだした。
「私は常々『このウイルス研究は世の為だ』と彼に伝えていたんだ。彼はその言葉を信じて色々と危険な橋を渡ってくれたよ。
私のフリをして学会に出たことも一度や二度じゃない。あんまり欠席ばかりすると、不審がられちゃうからね。
あとはカジノの客から、最近『研究成果を出している企業』の名前を聞く役割もこなしてくれたんだ。
企業名が分かれば、あとは組織にお願いするだけで必要な資料が手に入る。学会に出るよりそっちの方が効率的だろ?」
罪悪感のかけらもない島谷の笑顔。彼の本性を知り、森は少なからずショックを受けた。
「やはり……最近大きく報道された島谷教授の【実験】も……」
さくらの脳裏に、報道記者として大学に来ていた東都出版の社員《小林登》の顔が浮かぶ。
『友人は…情報を盗まれたんじゃないかって…』
『最新の情報を共有していないのに、出す論文は最新の情報を常に入れてくる。疑いたくもなりますよ!』
小林とその友人は、当初から島谷の情報窃取を疑っていた。
「ああ、お察しの通りだよ。あの実験は『マヌイア研究所』の飯崎くんが研究していた資料をいただいたんだ。
いやぁ…危なかったよ。もう少し遅れていたら、彼が時の人になっていた」
島谷は肩を窄めておどけてみせた。
「尾沼くんはね、知り過ぎちゃったんだ。おとなしく私の助手として働いていれば良かったのに。『不要な人間を排除する』という僕の理想と、彼の理想はどうやら違ったみたいで……。
そのうちに彼、組織のことを嗅ぎつけちゃってね。
尾沼くんマジメだからさ、カジノで私をリークする証拠を探そうなんてするから、殺されちゃった」
『バカだよね』とでも言いたげに、島谷は両手を広げた。
「……なんて…ことを……ッ!」
尾沼を卑下するような島谷の言い様に、さくらは唇を噛む。
「ああ、あと下に落ちちゃったケンチのゼミの子……深田くんだっけ。彼はちょうどいい実験材料だったんだよ。
研究には実験が必要不可欠だろ? その実験台になれたんだ。彼も研究生として本望じゃない?」
「なん…だ…と…?」
島谷の言葉に森は全身の血液が沸騰するような怒りを覚えた。しかし島谷は、さらに話を続ける。
「そうそう、研究生として本望と言えば、君の奥さんも研究者の妻として、なかなか良い働きをしたんだよ」
「なに……?」
突然妻のことを引き合いに出され、森はギロリと島谷を睨んだ。
「もう二十五、六年前になるかな。実はね、君の奥さんに初期の試作をプレゼントしたんだ。妊娠のお祝いにね。ウイルスに感染した母体と胎児がどうなるか——。
それはそれは、ワクワクしたのを覚えているよ。
結局母体は死ななかったけど、胎児は予想通り弱いから死んじゃったね」
「「「‼」」」
島谷の言葉にその場にいた三人は息を飲んだ。
森夫妻は二十数年前に子どもを早産で亡くしている。まさかそれも島谷の実験の影響だったとは……。
あまりにもショッキングなカミングアウトに、森はよろよろと床に座り込む。
やがて、遠くに救急車のサイレンが聞こえてきた。
「おっと、長話をしてしまったね。私はこれで失礼するよ。もう二度と君たちと会う事は無いだろう」
救急車のサイレンの中にパトカーのサイレンも聞こえる。島谷は数歩後ろに下がるとクルリと踵を返して駆け出した。
「ま、待って! 島谷教授!」
さくらが慌てて後を追おうとするが、呼吸が整わないためか上手く足が動かない。よろめいて床に激突しそうになったところを、昴がすんでのところで抱きとめた。
「す、昴さん…! 私の、ことは…良いから! …早く…はや、く…彼を…追って!」
「いや……」
さくらの肩を抱きながら昴は静かに答える。
「ヤツの行き先は見当がついている」
「え?」
不思議そうに昴の顔を見上げるさくらに、昴は力強くうなずいた。
この世界に人間は増えすぎた。食料不足、環境汚染、森林伐採。全ての元凶は人間だ。
不必要な人間を少し排除した方が良いとは思わないかい?」
島谷は自分の考えがいかに正しく偉大なのかを伝えようと熱弁を振るう。
「そろそろ世の中の大掃除が必要だ。私の研究は人の為さ。不必要な人間が不必要な人間を始末して、自身も駆除する。
世の中に必要とされる人間が手を汚さずに済むんだよ。合理的じゃないか」
「もしかして尾沼くんも君が? 二人は君にとって不必要な人間だったということか?」
人を物のように言い捨てる島谷の態度に、森は怒りを抑えて訊ねた。
「ああ、尾沼くんね。彼は必要な男だったよ。私のことをリスペクトしていたから、何でも言うことを聞く便利な駒だったよ」
島谷はニコニコしながら尾沼のことを語りだした。
「私は常々『このウイルス研究は世の為だ』と彼に伝えていたんだ。彼はその言葉を信じて色々と危険な橋を渡ってくれたよ。
私のフリをして学会に出たことも一度や二度じゃない。あんまり欠席ばかりすると、不審がられちゃうからね。
あとはカジノの客から、最近『研究成果を出している企業』の名前を聞く役割もこなしてくれたんだ。
企業名が分かれば、あとは組織にお願いするだけで必要な資料が手に入る。学会に出るよりそっちの方が効率的だろ?」
罪悪感のかけらもない島谷の笑顔。彼の本性を知り、森は少なからずショックを受けた。
「やはり……最近大きく報道された島谷教授の【実験】も……」
さくらの脳裏に、報道記者として大学に来ていた東都出版の社員《小林登》の顔が浮かぶ。
『友人は…情報を盗まれたんじゃないかって…』
『最新の情報を共有していないのに、出す論文は最新の情報を常に入れてくる。疑いたくもなりますよ!』
小林とその友人は、当初から島谷の情報窃取を疑っていた。
「ああ、お察しの通りだよ。あの実験は『マヌイア研究所』の飯崎くんが研究していた資料をいただいたんだ。
いやぁ…危なかったよ。もう少し遅れていたら、彼が時の人になっていた」
島谷は肩を窄めておどけてみせた。
「尾沼くんはね、知り過ぎちゃったんだ。おとなしく私の助手として働いていれば良かったのに。『不要な人間を排除する』という僕の理想と、彼の理想はどうやら違ったみたいで……。
そのうちに彼、組織のことを嗅ぎつけちゃってね。
尾沼くんマジメだからさ、カジノで私をリークする証拠を探そうなんてするから、殺されちゃった」
『バカだよね』とでも言いたげに、島谷は両手を広げた。
「……なんて…ことを……ッ!」
尾沼を卑下するような島谷の言い様に、さくらは唇を噛む。
「ああ、あと下に落ちちゃったケンチのゼミの子……深田くんだっけ。彼はちょうどいい実験材料だったんだよ。
研究には実験が必要不可欠だろ? その実験台になれたんだ。彼も研究生として本望じゃない?」
「なん…だ…と…?」
島谷の言葉に森は全身の血液が沸騰するような怒りを覚えた。しかし島谷は、さらに話を続ける。
「そうそう、研究生として本望と言えば、君の奥さんも研究者の妻として、なかなか良い働きをしたんだよ」
「なに……?」
突然妻のことを引き合いに出され、森はギロリと島谷を睨んだ。
「もう二十五、六年前になるかな。実はね、君の奥さんに初期の試作をプレゼントしたんだ。妊娠のお祝いにね。ウイルスに感染した母体と胎児がどうなるか——。
それはそれは、ワクワクしたのを覚えているよ。
結局母体は死ななかったけど、胎児は予想通り弱いから死んじゃったね」
「「「‼」」」
島谷の言葉にその場にいた三人は息を飲んだ。
森夫妻は二十数年前に子どもを早産で亡くしている。まさかそれも島谷の実験の影響だったとは……。
あまりにもショッキングなカミングアウトに、森はよろよろと床に座り込む。
やがて、遠くに救急車のサイレンが聞こえてきた。
「おっと、長話をしてしまったね。私はこれで失礼するよ。もう二度と君たちと会う事は無いだろう」
救急車のサイレンの中にパトカーのサイレンも聞こえる。島谷は数歩後ろに下がるとクルリと踵を返して駆け出した。
「ま、待って! 島谷教授!」
さくらが慌てて後を追おうとするが、呼吸が整わないためか上手く足が動かない。よろめいて床に激突しそうになったところを、昴がすんでのところで抱きとめた。
「す、昴さん…! 私の、ことは…良いから! …早く…はや、く…彼を…追って!」
「いや……」
さくらの肩を抱きながら昴は静かに答える。
「ヤツの行き先は見当がついている」
「え?」
不思議そうに昴の顔を見上げるさくらに、昴は力強くうなずいた。