最終章 ~未来へ向かって~
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「先ほどのメモに残されていたキーワード。その言葉に思い当たるものがあるんだよ。
かつてアメリカが、国家の威信をかけて研究していた『あるモノ』の症状にね」
固い表情のまま、ジェームズは一度大きく息を吐く。
「アメリカが研究していた⁉︎」
ルークが思わず声を荒げた。
大国アメリカが威信をかけて研究していたとあれば、その『あるモノ』が危険な物であることはほぼ間違いない。
「冷戦時代の切り札として開発していたんだ。敵国にそのウイルスをバラまけば、自滅の道をたどる……。それはまるで地獄絵図だよ」
当時新人だったジェームズも、極秘情報としてレクチャ―されていた。
「そのウイルスに感染すると、精神が崩壊し狂暴化するんだ。周りにいる者を片っ端から傷つける。そして次々と感染者を増やすんだよ」
「なっ……⁉︎」
それはある意味、エンジェルダストと似ていた。エンジェルダストの中毒者は脳の神経をやられ、薬欲しさにまるでマインドコントロールされたような状態になる。
ただ違うのは、エンジェルダストはその薬を投与した者だけに症状が現れる。当然のことながら感染はしない。
「し、しかし、それでは感染者が爆発的に増えて取り返しのつかないことになるんじゃ……。もし敵国が地続きなら、本国にも感染者が入ってくる可能性があります」
話を聞いていた風見が反論した。
「もちろん、そう考えるのが普通だ。しかしこのウイルスの恐ろしいところは、その次なんだ」
ジェームズは言い辛そうに唇を噛む。
「感染者は発症後、数時間でウイルスをまき散らし、感染者を増やす。そして、さらに数時間後には周囲の人間を無差別に攻撃し、最後は自分を攻撃して命を絶つ。
感染者が死ねば、体内のウイルスも死滅する。
つまりウィルスに何らかの形で一人感染させれば、数時間から数日、その国への出入りを制限するだけで、国一つカンタンに滅ぼせる。
万全を記すため、さらに数日放置すれば新たに感染する危険性は無くなる。そうなれば、敵国に武器をいっさい持たず、安全に入国出来るというわけだ。
なぜなら——その国の人間は、ウイルスも含め全員死んでいるだろうから」
「ッ‼」
誰もが言葉を失った。発症数時間で人を傷つけ、最後は自分をも殺す。
ジェームズが言う通り、もしこんなウイルスがバラまかれたら地獄以外の何物でもない。
「その様子が、とある昆虫に似ていることから、そのウイルスの事をこう呼ぶんだ。
『Suicide Bombing Ant(シュイサイド ボンビング アント)』通称『SBA(エスビーエー)ウイルス』。
日本語訳では『自爆テロアリ』とでもいえば良いか。
マレーシアなどの東南アジアに生息しているアリの一種で、その名もそのまま『ジバクアリ』。
ジバクアリは自分たちの巣が敵に攻撃されると、強力なアゴで敵を攻撃して、最後は自分の体を自爆させるんだ。体内の毒を相手に飛ばすためにね。
もちろん自爆したアリも、毒を飛ばされた敵も死ぬ。
そのアリの性質に似ていることから、この名が付けられたんだ」
そんな恐ろしい性質のアリがこの地球上に存在している事すら驚きでしかない。
自分の仲間を守るため、自らの命を犠牲にする。自然界の中でそんな過酷な状況で生きている昆虫がいるとは……。
そしてそんなアリの名を持つウイルスの存在。
それがバイオテロとして利用されるとしたら——。
あまりの恐ろしさに、りおは口元を押さえたまま動けなくなった。
「しかし、組織やアメリカが何十年も前に開発をしていたウイルスと今回の組織の【ビジネス】……いったいどんな関係が……」
出来れば無関係であって欲しい。
風見の願いもむなしく、ルークが首を振った。
「残念ながら……。おそらくそのウイルスと今回の組織の【ビジネス】は無関係ではない」
ルークは再び旅客船の捜査資料を広げた。
「五十年近く前にバイオ研究をしていた【実風花/ミカゼカ】製薬。
三十二年前に爆破された船を所有していたとされる【深風香/ミカゼカ】研究所。
そしてジンの口から出た『美しい風』つまり【ミカゼ】…。
ボスの話でようやく謎が解けたよ。これらは同じ言葉のアナグラムだ」
ルークが資料の一枚をひっくり返す。白い裏紙にカタカナで【ミカゼカ】と書いた。
「前後二つをそれぞれ入れ替えると【カミカゼ】になる。カミカゼは日本が戦争をしていた時の特攻部隊の名称だよ。
アメリカでもその存在は広く知られていてね。年配の人は『自爆』『特攻』と聞くと『カミカゼ』と言う人がいるくらいだ。
【神風特別攻撃隊】
君も名前くらい知ってるだろう?
祖国を守るため、行きの燃料だけ積んで飛行機ごと敵の戦艦に突っ込む——。
まさに『ジバクアリ』と同じ心理だ」
ルークの説明を聞いた風見がゴクリと唾を飲み込んだ。
「え、ってことは……最近ニュースで話題になっていた自死者の増加。もしかして、これも組織の⁉︎」
動揺するりおの問いに昴がうなずく。
「ええ、間違いなく組織が関係してるでしょうね。私たちが古宿区で遭遇した男性の自死。
あの時、コナンくんと哀さんがベルモットの影を見たと言っていましたから」
「ッ! なんてこと……」
りおは両手で顔を覆う。組織の【ビジネス】が、これほどまでに恐ろしいものとは想像していなかった。
「そうか……だからジンは、オドゥムのアジトをあっさり爆破したのね……」
リュ・スンホたちが潜伏していたアジトに爆弾を仕掛け、少しの躊躇もなくC国の機密や資金を爆破した。
『SBA』が実用化出来れば、オドゥムというテロ組織など、国ごと滅ぼせるのだから。
「とすれば、組織が狙うアメリカの施設というのは、おそらくメリーランド州にある『Fort Detrik(フォートデトリック)』だ。
アメリカが研究開発した【SBAウイルス】の情報は全てそこに保管されている」
ジェームズが確信を得たように声を上げた。
「フォートデトリック⁉︎ アメリカ陸軍の医学研究施設の⁉︎」
全員が驚くのも無理はない。そこはアメリカ軍における、生物兵器研究の中心拠点である。
施設内には【SBAウイルス】のみならず、過去における生物兵器を使った事件・事故に関する情報等がたくさん保管されている。
しかも【SBAウイルス 】の研究データを盗まれでもしたら、組織は完全な形の【SBAウイルス 】を完成させてしまうことになる。
それは絶対に阻止しなければならない。
その時、降谷のスマホが着信を告げた。
電話に出た降谷が人の輪から外れ、小さな声で会話をしながら風見とアイコンタクトを取る。
電話を切ると再び全員に向き直った。
「暗号の解読チームから連絡が来ました。
まだ一部ですが、今回の件と関係ある部分だけ先に送ってもらえるようです」
降谷が説明をしている間に、風見がノートパソコンを立ち上げ、早速データを取り込む。
「旅客船爆破事件後、組織内でバイオ研究に携わった研究者のリストです。
元のメンバーは爆破事件で全員死亡していますから、当時の若い研究員ばかりが名を連ねているようです」
風見がマウスを操作し、ファイルを表示させた。全員で画面を覗く。
「やはり、研究の主流が『エンジェルダスト』に移った後も、バイオ研究は進められていたんだな」
ルークがメンバーのリストを見てつぶやいた。
昴とりおもリストをジッと見つめる。
十人ほどになったチームのリストを上から見ていたりおが「あっ!」と息を飲んだ。
指さした人物の名を見て、その場にいた全員が言葉を失う。
「【彼】が組織の……」
リストの名を見た降谷の眉間にグッとしわが寄る。風見の顔も険しい。
りおは視線を落とし、唇を噛んだ。
「降谷さん。この件、私に行かせてください。本当に【彼】が組織の協力者なのか。確かめたいんです」
りおの言葉を聞いて降谷はしばし考え込む。
「そうだな……。これは広瀬が適任だろう。ただし無茶するなよ……といっても君には無理な話か……」
数々の『無茶し放題』を知る降谷は大きなため息をついた。
「……沖矢さん、一緒に行ってもらえますか? あなたは一応、あの大学の院生だ。広瀬と一緒でも周りは不審に思わない」
「ええ、もちろん。最初から一緒に行くつもりでしたよ」
昴は一瞬だけりおと目を合わせると、降谷を見てニッコリ微笑んだ。
かつてアメリカが、国家の威信をかけて研究していた『あるモノ』の症状にね」
固い表情のまま、ジェームズは一度大きく息を吐く。
「アメリカが研究していた⁉︎」
ルークが思わず声を荒げた。
大国アメリカが威信をかけて研究していたとあれば、その『あるモノ』が危険な物であることはほぼ間違いない。
「冷戦時代の切り札として開発していたんだ。敵国にそのウイルスをバラまけば、自滅の道をたどる……。それはまるで地獄絵図だよ」
当時新人だったジェームズも、極秘情報としてレクチャ―されていた。
「そのウイルスに感染すると、精神が崩壊し狂暴化するんだ。周りにいる者を片っ端から傷つける。そして次々と感染者を増やすんだよ」
「なっ……⁉︎」
それはある意味、エンジェルダストと似ていた。エンジェルダストの中毒者は脳の神経をやられ、薬欲しさにまるでマインドコントロールされたような状態になる。
ただ違うのは、エンジェルダストはその薬を投与した者だけに症状が現れる。当然のことながら感染はしない。
「し、しかし、それでは感染者が爆発的に増えて取り返しのつかないことになるんじゃ……。もし敵国が地続きなら、本国にも感染者が入ってくる可能性があります」
話を聞いていた風見が反論した。
「もちろん、そう考えるのが普通だ。しかしこのウイルスの恐ろしいところは、その次なんだ」
ジェームズは言い辛そうに唇を噛む。
「感染者は発症後、数時間でウイルスをまき散らし、感染者を増やす。そして、さらに数時間後には周囲の人間を無差別に攻撃し、最後は自分を攻撃して命を絶つ。
感染者が死ねば、体内のウイルスも死滅する。
つまりウィルスに何らかの形で一人感染させれば、数時間から数日、その国への出入りを制限するだけで、国一つカンタンに滅ぼせる。
万全を記すため、さらに数日放置すれば新たに感染する危険性は無くなる。そうなれば、敵国に武器をいっさい持たず、安全に入国出来るというわけだ。
なぜなら——その国の人間は、ウイルスも含め全員死んでいるだろうから」
「ッ‼」
誰もが言葉を失った。発症数時間で人を傷つけ、最後は自分をも殺す。
ジェームズが言う通り、もしこんなウイルスがバラまかれたら地獄以外の何物でもない。
「その様子が、とある昆虫に似ていることから、そのウイルスの事をこう呼ぶんだ。
『Suicide Bombing Ant(シュイサイド ボンビング アント)』通称『SBA(エスビーエー)ウイルス』。
日本語訳では『自爆テロアリ』とでもいえば良いか。
マレーシアなどの東南アジアに生息しているアリの一種で、その名もそのまま『ジバクアリ』。
ジバクアリは自分たちの巣が敵に攻撃されると、強力なアゴで敵を攻撃して、最後は自分の体を自爆させるんだ。体内の毒を相手に飛ばすためにね。
もちろん自爆したアリも、毒を飛ばされた敵も死ぬ。
そのアリの性質に似ていることから、この名が付けられたんだ」
そんな恐ろしい性質のアリがこの地球上に存在している事すら驚きでしかない。
自分の仲間を守るため、自らの命を犠牲にする。自然界の中でそんな過酷な状況で生きている昆虫がいるとは……。
そしてそんなアリの名を持つウイルスの存在。
それがバイオテロとして利用されるとしたら——。
あまりの恐ろしさに、りおは口元を押さえたまま動けなくなった。
「しかし、組織やアメリカが何十年も前に開発をしていたウイルスと今回の組織の【ビジネス】……いったいどんな関係が……」
出来れば無関係であって欲しい。
風見の願いもむなしく、ルークが首を振った。
「残念ながら……。おそらくそのウイルスと今回の組織の【ビジネス】は無関係ではない」
ルークは再び旅客船の捜査資料を広げた。
「五十年近く前にバイオ研究をしていた【実風花/ミカゼカ】製薬。
三十二年前に爆破された船を所有していたとされる【深風香/ミカゼカ】研究所。
そしてジンの口から出た『美しい風』つまり【ミカゼ】…。
ボスの話でようやく謎が解けたよ。これらは同じ言葉のアナグラムだ」
ルークが資料の一枚をひっくり返す。白い裏紙にカタカナで【ミカゼカ】と書いた。
「前後二つをそれぞれ入れ替えると【カミカゼ】になる。カミカゼは日本が戦争をしていた時の特攻部隊の名称だよ。
アメリカでもその存在は広く知られていてね。年配の人は『自爆』『特攻』と聞くと『カミカゼ』と言う人がいるくらいだ。
【神風特別攻撃隊】
君も名前くらい知ってるだろう?
祖国を守るため、行きの燃料だけ積んで飛行機ごと敵の戦艦に突っ込む——。
まさに『ジバクアリ』と同じ心理だ」
ルークの説明を聞いた風見がゴクリと唾を飲み込んだ。
「え、ってことは……最近ニュースで話題になっていた自死者の増加。もしかして、これも組織の⁉︎」
動揺するりおの問いに昴がうなずく。
「ええ、間違いなく組織が関係してるでしょうね。私たちが古宿区で遭遇した男性の自死。
あの時、コナンくんと哀さんがベルモットの影を見たと言っていましたから」
「ッ! なんてこと……」
りおは両手で顔を覆う。組織の【ビジネス】が、これほどまでに恐ろしいものとは想像していなかった。
「そうか……だからジンは、オドゥムのアジトをあっさり爆破したのね……」
リュ・スンホたちが潜伏していたアジトに爆弾を仕掛け、少しの躊躇もなくC国の機密や資金を爆破した。
『SBA』が実用化出来れば、オドゥムというテロ組織など、国ごと滅ぼせるのだから。
「とすれば、組織が狙うアメリカの施設というのは、おそらくメリーランド州にある『Fort Detrik(フォートデトリック)』だ。
アメリカが研究開発した【SBAウイルス】の情報は全てそこに保管されている」
ジェームズが確信を得たように声を上げた。
「フォートデトリック⁉︎ アメリカ陸軍の医学研究施設の⁉︎」
全員が驚くのも無理はない。そこはアメリカ軍における、生物兵器研究の中心拠点である。
施設内には【SBAウイルス】のみならず、過去における生物兵器を使った事件・事故に関する情報等がたくさん保管されている。
しかも【SBAウイルス 】の研究データを盗まれでもしたら、組織は完全な形の【SBAウイルス 】を完成させてしまうことになる。
それは絶対に阻止しなければならない。
その時、降谷のスマホが着信を告げた。
電話に出た降谷が人の輪から外れ、小さな声で会話をしながら風見とアイコンタクトを取る。
電話を切ると再び全員に向き直った。
「暗号の解読チームから連絡が来ました。
まだ一部ですが、今回の件と関係ある部分だけ先に送ってもらえるようです」
降谷が説明をしている間に、風見がノートパソコンを立ち上げ、早速データを取り込む。
「旅客船爆破事件後、組織内でバイオ研究に携わった研究者のリストです。
元のメンバーは爆破事件で全員死亡していますから、当時の若い研究員ばかりが名を連ねているようです」
風見がマウスを操作し、ファイルを表示させた。全員で画面を覗く。
「やはり、研究の主流が『エンジェルダスト』に移った後も、バイオ研究は進められていたんだな」
ルークがメンバーのリストを見てつぶやいた。
昴とりおもリストをジッと見つめる。
十人ほどになったチームのリストを上から見ていたりおが「あっ!」と息を飲んだ。
指さした人物の名を見て、その場にいた全員が言葉を失う。
「【彼】が組織の……」
リストの名を見た降谷の眉間にグッとしわが寄る。風見の顔も険しい。
りおは視線を落とし、唇を噛んだ。
「降谷さん。この件、私に行かせてください。本当に【彼】が組織の協力者なのか。確かめたいんです」
りおの言葉を聞いて降谷はしばし考え込む。
「そうだな……。これは広瀬が適任だろう。ただし無茶するなよ……といっても君には無理な話か……」
数々の『無茶し放題』を知る降谷は大きなため息をついた。
「……沖矢さん、一緒に行ってもらえますか? あなたは一応、あの大学の院生だ。広瀬と一緒でも周りは不審に思わない」
「ええ、もちろん。最初から一緒に行くつもりでしたよ」
昴は一瞬だけりおと目を合わせると、降谷を見てニッコリ微笑んだ。