最終章 ~未来へ向かって~
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「なるほど。全てつながった」
周りがざわつく中、ひとり冷静だったルークが声を上げた。
俺が説明する、と降谷の肩に手を掛ける。
「ああ」と降谷は答えた。
「まずは順を追って説明するよ」
ルークはニッと得意げに笑みを見せると、自身が持参した資料を机に置いた。
「全ての始まりは、組織内で『バイオテロ』の計画が持ち上がったことだった。
バイオテロ自体は珍しいもんでもない。すでに旧ソ連との冷戦時代、ペスト菌をバラまく実験などが行われている。その歴史は古い」
ルークは資料の一番上を指さす。
「しかし、当時はバイオテロの成功例が少なく、どうやってターゲットに細菌やウィルスを感染させるかが問題だった。
場合によっちゃあ《味方》に被害が及ぶかもしれないからな」
「確かに……」
その場にいた者たちは顔を見合わせ、数回うなずいた。
「また、『解毒薬』の開発もなかなか難しい。今ほどDNA研究も進んでいなかったし、ゲノム解析という言葉も無かった時代だ。
そういう意味で、当時のバイオテロ計画は時期尚早だったと言える。当然、組織のトップはバイオテロの計画について一旦保留、もしくは研究ストップを言い渡したはずさ」
「ッ!」
昴が何かに気付き、ハッと顔を上げた。
「フッ。シュウは気付いたようだな。
そうさ。そこで研究を止めたい組織の上層部と、何としても続けたい研究者たちとの間に摩擦が生じたんだ」
ルークは別の資料を手に取り、先ほどの資料の上に置いた。
「上層部の方針に反発した研究者たちが、組織内での研究を続行させるべく、クーデターを目論んだ。が、ヘタに研究者たちだけが集まれば怪しまれる。
そこで、バイオ研究の先駆者だったメンバーが中心となり、昔の企業名を利用して『船』を調達したんだよ。既に研究から離れていた仲間も、その名に気づけば遠方から集められるしね。
で、その『船』でクーデターの詳細を決めるつもりだったんだ。しかも、計画がバレないようカモフラージュのために一般人も乗船させて。
しかし、その動きは組織の上層部に漏れていた。
組織のトップはある人物に裏切り者の抹殺を命じた。その人物の名が——」
そこまで言って、りおたちの顔を見回したルークの瞳が鋭く光る。
「コードネーム『ケルヴィー』。当時組織の爆破担当だった男。『カーディナル』の師匠さ」
「……なるほど」
ルークの説明を聞いて、ジェームズがうなずく。点で存在していた数々の証拠や事実が一つに繋がった。
「良く調べたな」
昴が感心したようにルークを見る。昴の視線に気付いたルークは得意げに鼻を擦った。
「ああ。FBIの資料に船の犠牲者リストがあっただろ? そいつらの職業や肩書を片っ端から調べたんだよ。
おそらく、広瀬夫妻もやっていただろうが、当時の資料はデジタルとアナログが半々。今より何倍も手間がかかる。まるで砂漠で失くした宝石を探すようなもんだ。
今は全てデジタル化されてるんでね。まあ……それでも骨が折れたよ」
ルークは苦笑いをして肩をすくめた。
「調べていくうちに、『バイオ関係の研究者』という肩書を持つ者が結構いてね。そこからアプローチしてみたら色々出てきたよ」
今だからこそ辿り着けたけど、三十二年前だったら絶対無理だったよ、とルークはおどけてみせる。
その姿を見て、風見が「ふぅ~」とため息をつく。額に浮かんだイヤな汗をハンカチで拭った。
「バイオテロの関係者が船もろとも全員始末された。ここで話は終わりのように感じるだろ? 実はまだ続きがあるんだ」
ルークは全員の顔を見回す。
まだ何かあるのか、と風見の顔はさらに青ざめた。
「この旅客船の爆破事件で、バイオテロの計画は完全に消えたはずだった。 しかし、実際は研究規模を小さくしただけで、その後も細々と続いていたんだ」
「「「「えっ⁉」」」
ルークの言葉に全員が驚きの声を上げた。
「エンジェルダストの開発が軌道に乗り始めていたからね。バイオテロについては、だいぶ予算を削っていたようだけど。
それでも、組織は必ず二重三重に何か開発を進めている。一つが頓挫しても、別の道があるように。
バイオ研究に関しては裏切り行為をする研究者を消し、新たに従順な研究者を集めたんだろう。金に物を言わせてね。
そこから推察すると、今でも俺たちが知らない研究開発があるかもしれないな」
ルークの言葉を聞いて、りおは視線を落とす。
確かに彼の言う通りだ。
以前、組織のラボから盗んだデータからも、組織が何かしらの研究を進めている事実は掴んでいる。しかしラボのデータだけでは、組織が何を企んでいるのか分からず仕舞だった。
「しかし、バイオテロと一口に言っても、使われる細菌やウィルスは多岐に渡る。彼らはいったい何をバラまこうとしていたんだ?」
ジェームズが口髭を撫でながら険しい顔で問いかけた。
「あ~、それについては俺も掴んでいません。広瀬夫妻の資料からは何か出たか?」
ルークは表情を歪ませ、頭を掻きながら降谷に訊ねた。
「ああ、それについては冴島校長が……」
降谷は冴島の方へ視線を向ける。
「そうだな。それは俺が説明しよう」
降谷の視線に気付き、冴島が顔を上げる。胸ポケットから小さなメモ紙を取り出した。
「広瀬が残したものには、今のところ細菌やウィルスの名前についての記載はなかったんだが、走り書きのようなものがジュラルミンケースのポケットから見つかったんだ」
「走り書き?」
聞き覚えの無いものに昴が首をひねる。そんなものあったか、とりおを見るが、りおも「知らない」と首を横に振った。
「ケースの内側にポケットが付いてたんだ。そこまでは教会で確認しなかったから、お前たちは知らないだろう。
警察庁でCD-Rやルーペの他に、ケースの内側も念入りに調べたんだよ。そしたらそのポケットにメモ紙が入っていた」
「そこには何と?」
昴がさらに問いかける。冴島はメモ紙を広げて机に置いた。
『突然の狂暴化、タイムリミット、自死?』
「書かれていたのはこれだけだ」
走り書きされた三つのワード。
いったい何を意味しているのか。
「エンジェルダストの症状とはちょっと違うようだから、これはおそらくバイオテロに関連するんだろうな……。
だが普通バイオテロと言えば、細菌やウィルスをバラまいた無差別殺人を思い描くが……。
このワードからはそれがイメージできない」
ルークも首をひねる。
皆一様に考え込む。ジェームズも指でテーブルをトントンと叩きながら、目を閉じた。
トン…トン…トン…トン…
一定のリズムでテーブルを叩く。
(このキーワード…どこかで…)
ジェームズの中で、メモの言葉が引っかかる。
頭に叩きこまれた膨大な事件情報などが脳裏を高速で駆け巡った。
トン…トン…トン…トン…ト…………
突然、テーブルを叩く音が途切れた。
「ジェームズ?」
不審に思った昴が声をかける。ジェームズの方へ視線をやれば、その顔はまるで恐ろしいものでも見たかのように青ざめていた。
「ジェームズ? どうしました?」
ただならぬものを感じた昴が、険しい顔で訊ねた。
「あ、ああ。すまないね。ちょっと恐ろしい結論に至ってしまったんだ」
周りの視線に気付き、ジェームズが反応した。
「恐ろしい結論?」
今度は降谷が問いかける。
「ああ。私の思い過ごしであってくれれば良いのだが……」
ジェームズは右手で額の汗を拭う。その手も震えていた。
周りがざわつく中、ひとり冷静だったルークが声を上げた。
俺が説明する、と降谷の肩に手を掛ける。
「ああ」と降谷は答えた。
「まずは順を追って説明するよ」
ルークはニッと得意げに笑みを見せると、自身が持参した資料を机に置いた。
「全ての始まりは、組織内で『バイオテロ』の計画が持ち上がったことだった。
バイオテロ自体は珍しいもんでもない。すでに旧ソ連との冷戦時代、ペスト菌をバラまく実験などが行われている。その歴史は古い」
ルークは資料の一番上を指さす。
「しかし、当時はバイオテロの成功例が少なく、どうやってターゲットに細菌やウィルスを感染させるかが問題だった。
場合によっちゃあ《味方》に被害が及ぶかもしれないからな」
「確かに……」
その場にいた者たちは顔を見合わせ、数回うなずいた。
「また、『解毒薬』の開発もなかなか難しい。今ほどDNA研究も進んでいなかったし、ゲノム解析という言葉も無かった時代だ。
そういう意味で、当時のバイオテロ計画は時期尚早だったと言える。当然、組織のトップはバイオテロの計画について一旦保留、もしくは研究ストップを言い渡したはずさ」
「ッ!」
昴が何かに気付き、ハッと顔を上げた。
「フッ。シュウは気付いたようだな。
そうさ。そこで研究を止めたい組織の上層部と、何としても続けたい研究者たちとの間に摩擦が生じたんだ」
ルークは別の資料を手に取り、先ほどの資料の上に置いた。
「上層部の方針に反発した研究者たちが、組織内での研究を続行させるべく、クーデターを目論んだ。が、ヘタに研究者たちだけが集まれば怪しまれる。
そこで、バイオ研究の先駆者だったメンバーが中心となり、昔の企業名を利用して『船』を調達したんだよ。既に研究から離れていた仲間も、その名に気づけば遠方から集められるしね。
で、その『船』でクーデターの詳細を決めるつもりだったんだ。しかも、計画がバレないようカモフラージュのために一般人も乗船させて。
しかし、その動きは組織の上層部に漏れていた。
組織のトップはある人物に裏切り者の抹殺を命じた。その人物の名が——」
そこまで言って、りおたちの顔を見回したルークの瞳が鋭く光る。
「コードネーム『ケルヴィー』。当時組織の爆破担当だった男。『カーディナル』の師匠さ」
「……なるほど」
ルークの説明を聞いて、ジェームズがうなずく。点で存在していた数々の証拠や事実が一つに繋がった。
「良く調べたな」
昴が感心したようにルークを見る。昴の視線に気付いたルークは得意げに鼻を擦った。
「ああ。FBIの資料に船の犠牲者リストがあっただろ? そいつらの職業や肩書を片っ端から調べたんだよ。
おそらく、広瀬夫妻もやっていただろうが、当時の資料はデジタルとアナログが半々。今より何倍も手間がかかる。まるで砂漠で失くした宝石を探すようなもんだ。
今は全てデジタル化されてるんでね。まあ……それでも骨が折れたよ」
ルークは苦笑いをして肩をすくめた。
「調べていくうちに、『バイオ関係の研究者』という肩書を持つ者が結構いてね。そこからアプローチしてみたら色々出てきたよ」
今だからこそ辿り着けたけど、三十二年前だったら絶対無理だったよ、とルークはおどけてみせる。
その姿を見て、風見が「ふぅ~」とため息をつく。額に浮かんだイヤな汗をハンカチで拭った。
「バイオテロの関係者が船もろとも全員始末された。ここで話は終わりのように感じるだろ? 実はまだ続きがあるんだ」
ルークは全員の顔を見回す。
まだ何かあるのか、と風見の顔はさらに青ざめた。
「この旅客船の爆破事件で、バイオテロの計画は完全に消えたはずだった。 しかし、実際は研究規模を小さくしただけで、その後も細々と続いていたんだ」
「「「「えっ⁉」」」
ルークの言葉に全員が驚きの声を上げた。
「エンジェルダストの開発が軌道に乗り始めていたからね。バイオテロについては、だいぶ予算を削っていたようだけど。
それでも、組織は必ず二重三重に何か開発を進めている。一つが頓挫しても、別の道があるように。
バイオ研究に関しては裏切り行為をする研究者を消し、新たに従順な研究者を集めたんだろう。金に物を言わせてね。
そこから推察すると、今でも俺たちが知らない研究開発があるかもしれないな」
ルークの言葉を聞いて、りおは視線を落とす。
確かに彼の言う通りだ。
以前、組織のラボから盗んだデータからも、組織が何かしらの研究を進めている事実は掴んでいる。しかしラボのデータだけでは、組織が何を企んでいるのか分からず仕舞だった。
「しかし、バイオテロと一口に言っても、使われる細菌やウィルスは多岐に渡る。彼らはいったい何をバラまこうとしていたんだ?」
ジェームズが口髭を撫でながら険しい顔で問いかけた。
「あ~、それについては俺も掴んでいません。広瀬夫妻の資料からは何か出たか?」
ルークは表情を歪ませ、頭を掻きながら降谷に訊ねた。
「ああ、それについては冴島校長が……」
降谷は冴島の方へ視線を向ける。
「そうだな。それは俺が説明しよう」
降谷の視線に気付き、冴島が顔を上げる。胸ポケットから小さなメモ紙を取り出した。
「広瀬が残したものには、今のところ細菌やウィルスの名前についての記載はなかったんだが、走り書きのようなものがジュラルミンケースのポケットから見つかったんだ」
「走り書き?」
聞き覚えの無いものに昴が首をひねる。そんなものあったか、とりおを見るが、りおも「知らない」と首を横に振った。
「ケースの内側にポケットが付いてたんだ。そこまでは教会で確認しなかったから、お前たちは知らないだろう。
警察庁でCD-Rやルーペの他に、ケースの内側も念入りに調べたんだよ。そしたらそのポケットにメモ紙が入っていた」
「そこには何と?」
昴がさらに問いかける。冴島はメモ紙を広げて机に置いた。
『突然の狂暴化、タイムリミット、自死?』
「書かれていたのはこれだけだ」
走り書きされた三つのワード。
いったい何を意味しているのか。
「エンジェルダストの症状とはちょっと違うようだから、これはおそらくバイオテロに関連するんだろうな……。
だが普通バイオテロと言えば、細菌やウィルスをバラまいた無差別殺人を思い描くが……。
このワードからはそれがイメージできない」
ルークも首をひねる。
皆一様に考え込む。ジェームズも指でテーブルをトントンと叩きながら、目を閉じた。
トン…トン…トン…トン…
一定のリズムでテーブルを叩く。
(このキーワード…どこかで…)
ジェームズの中で、メモの言葉が引っかかる。
頭に叩きこまれた膨大な事件情報などが脳裏を高速で駆け巡った。
トン…トン…トン…トン…ト…………
突然、テーブルを叩く音が途切れた。
「ジェームズ?」
不審に思った昴が声をかける。ジェームズの方へ視線をやれば、その顔はまるで恐ろしいものでも見たかのように青ざめていた。
「ジェームズ? どうしました?」
ただならぬものを感じた昴が、険しい顔で訊ねた。
「あ、ああ。すまないね。ちょっと恐ろしい結論に至ってしまったんだ」
周りの視線に気付き、ジェームズが反応した。
「恐ろしい結論?」
今度は降谷が問いかける。
「ああ。私の思い過ごしであってくれれば良いのだが……」
ジェームズは右手で額の汗を拭う。その手も震えていた。