最終章 ~未来へ向かって~
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青茉区の街中へと移動した四人は、カフェへと入る。
「大丈夫ですか? 何か温かいものでも頼みましょう」
「…え、ええ……」
カフェの一番奥に席を取り、昴はりおを座らせた。コートを脱いだりおの首にはルーペのペンダントが揺れている。店の温かさでわずかに曇った。
「ペンダント、つけて来たんですね」
「ええ。ヒントとしての役目は終えたけど、謎解きは終わったわけではないし……。
両親が遺したものだから、今日はどうしても身につけたかったの」
りおはルーペを手のひらに載せると、愛おしそうに見つめる。
しばらくすると、入口でオーダーした飲み物を、冴島とジェームズが仲良く運んで来てくれた。
「スミマセン。お二人にこんな……」
りおが申し訳なさそうに礼を言う。
「気にすることはない。それより温かいうちに飲んだ方が良いぞ」
優しい笑顔を向け、冴島がりおの分のカップを目の前に置いた。
「はい……」
りおはカップを手に取り、一口飲んだ。赤井が淹れてくれるカフェオレより、わずかに苦味が強い。それでも冷え切ったりおの体を温めてくれた。
「さて、記念碑から真西の方向だということは分かった。その次は?」
ジェームズもカップのコーヒーを飲むと三人に向かって声をかける。昴がバッグから地図を取り出した。
「記念碑があったのがこの場所。そしてそこから真西は……こんな感じです」
地図に赤ペンを走らせ、真西の方向に一本線を引いた。
「さて、このままどこまで行けばいいんだ?」
書き込まれた赤い線を見て、冴島がため息をつく。
「お話には続きがあります。
【風】が畑の事を伝えた後、今度は【水】がこう言います。
『畑にはボクの故郷もあってね。作物を作るにはもってこいさ』
おそらくこれが次のヒントでしょうね」
りおがお話をそらんじてみせた。
「畑にボクの故郷……。つまり【水】の故郷ということか。いったいどういう意味だ?」
全く意味が分からない、と冴島が両手を広げる。
「水の故郷……水の……」
りおが地図を見ながら、その一節だけを何度もつぶやく。
「【水】の故郷……つまり【水】が生まれた場所ってことでしょうか?
だとしたら、作物を作るための水が生まれる……雨とか? ……湧き水……?」
思いつくままにりおがつぶやく。
「えっ」
突然、昴が反応した。
「え……どうしたの昴さん」
「いや、あの……。今あなた、何て言いました? 水が生まれるとかなんとか…そのあと」
何か引っかかるものを感じた昴が、りおに問いかけた。
「え? ええっと……作物を作るための水と言ったら雨とか、湧き水かなって」
「湧き水⁉」
昴が突然地図に目を向ける。先ほど書いた赤い線を指でゆっくりたどりながら地図を注意深く見た。
「あった! これを見てください。真西に進んだ赤い線上に湧き水があります」
「なに⁉」
冴島とジェームズが驚く。地図を見れば確かに湧き水の地図記号が書かれている。
「青茉区深水(みすい)町か……。いかにもキレイな水がありそうだな」
「ああ。普通に観光をしたいくらいだね」
体も温まり、謎解きも先に進んだためか冴島とジェームズが冗談めかして言う。
「では、少し休んだら深水町へ行ってみましょう」
昴の言葉に皆うなずいた。
カフェからはタクシーに乗り、四人は深水町へと向かう。
疲れが出たのか、りおは隣の昴の肩にもたれかかって眠っていた。
「少し無理をさせたか……」
助手席に座った冴島が振り向きながら言った。
「ええ。ですが、置いて行けば怒るでしょうし、無理をするなと言っても聞かないでしょう。それはすでに経験済みですので」
昴が半ば諦めたように答えた。
「ははは。すまんな。いったい誰に似たんだろうなぁ……」
冴島は申し訳なさそうに苦笑いした。
カフェを出て二十分——。
タクシーは深水(みすい)町に到着した。小さな山のふもとで四人は車を降りる。
「まずは湧き水を見に行くか」
道路から外れた、舗装されていない小道へと足を踏み入れる。
道路から進むこと300mほど。岩で囲まれた小さな泉が見える。近づくとそこからチョロチョロと小さな川が流れ、泉からはコンコンと水が湧き出ていた。
岩は苔むしており、そばには『深水の名水』という看板が立っていた。
「ほう……なかなか風情があるところじゃないか」
ジェームズが嬉しそうに泉に近づく。
水が湧き出る岩の近くには年季の入ったひしゃくも置かれている。
ジェームズがひしゃくを手に取るとザッと洗い流し、水を汲んで一口飲んだ。
「うん、美味い。ぜひこの水で紅茶を淹れたいよ」
「どれ」
続いて冴島もジェームズからひしゃくを渡されると、同じように一口飲んだ。
「うん、これは美味いな。ここに住めばコンビニで水を買わなくて済む」
楽しそうな二人を見て、昴とりおも顔を見合わせ微笑んだ。
「しかし水が湧く以外、他に何も無いな…」
「確かに。何かを隠せるようなところも無いしなぁ……」
一通り観光的な事を済ませ、四人は湧き水の周りを探す。
特に変わったことも無く、謎解きのヒントになるものは無い。
頼みの『お話』も、それ以降ヒントになりそうな部分は皆無。完全に行き詰った四人は顔を見合わせ考え込んだ。
その時——。
カ——ン……、カ——ン……、カ——ン……
「鐘の音?」
突然聞こえた音に四人が顔を上げる。
「そういえば、お話の最後には『早い冬の訪れを知らせる優しい鐘の音が聞こえてきました』って一節があったわ!」
ハッと顔を上げたりおが昴を見る。
昴はうなずくとバッグから地図を取り出した。
「どうやらこの近くに教会があるようです」
「教会か……。てっきりお話の最後の部分は、物語をキレイにまとめるためのオマケだと思っていたが…そこもヒントだったんだな」
良く出来てるなぁ、と冴島は感心したように何度もうなずいた。
「さっそく、その教会へ行ってみましょう」
昴がもと来た道へと歩み出す。
「OH! 日本の教会か。じっくり見てみたいものだな」
「ジェームズ! 遊びに行くんじゃないんですよ」
どこか観光気分のジェームズに昴が釘を刺す。
「まあまあ昴さん良いじゃない。ジェームズさん見てるとね、楽しそうでなんか気持ちがラクになるの。
それにね。このお話を父と作った時、すごく楽しかったことを覚えてる。だから両親もきっと、楽しく探してくれって思ってるんじゃないかしら」
親子で作った楽しい創作話。そこに隠されていた謎解き。
作った父自身もあれこれアイデアを出しながら楽しんでいた。きっとそれを解く、冴島とジェームズの事を想像していたのかもしれない。
何としても両親の遺した情報を手に入れなければ、と気負っていたりおは、ジェームズや冴島のやり取りを聞いて気持ちが少し楽になっていた。
「そうだとも。ルナも愛嬌があってね。私はしょっちゅうからかわれていたよ。さあ、楽しく行こうじゃないか」
ジェームズはパチンとウインクをして、先頭を歩き出す。
三人は顔を見合わせ、くすくすと笑いながらそれに続いた。
「大丈夫ですか? 何か温かいものでも頼みましょう」
「…え、ええ……」
カフェの一番奥に席を取り、昴はりおを座らせた。コートを脱いだりおの首にはルーペのペンダントが揺れている。店の温かさでわずかに曇った。
「ペンダント、つけて来たんですね」
「ええ。ヒントとしての役目は終えたけど、謎解きは終わったわけではないし……。
両親が遺したものだから、今日はどうしても身につけたかったの」
りおはルーペを手のひらに載せると、愛おしそうに見つめる。
しばらくすると、入口でオーダーした飲み物を、冴島とジェームズが仲良く運んで来てくれた。
「スミマセン。お二人にこんな……」
りおが申し訳なさそうに礼を言う。
「気にすることはない。それより温かいうちに飲んだ方が良いぞ」
優しい笑顔を向け、冴島がりおの分のカップを目の前に置いた。
「はい……」
りおはカップを手に取り、一口飲んだ。赤井が淹れてくれるカフェオレより、わずかに苦味が強い。それでも冷え切ったりおの体を温めてくれた。
「さて、記念碑から真西の方向だということは分かった。その次は?」
ジェームズもカップのコーヒーを飲むと三人に向かって声をかける。昴がバッグから地図を取り出した。
「記念碑があったのがこの場所。そしてそこから真西は……こんな感じです」
地図に赤ペンを走らせ、真西の方向に一本線を引いた。
「さて、このままどこまで行けばいいんだ?」
書き込まれた赤い線を見て、冴島がため息をつく。
「お話には続きがあります。
【風】が畑の事を伝えた後、今度は【水】がこう言います。
『畑にはボクの故郷もあってね。作物を作るにはもってこいさ』
おそらくこれが次のヒントでしょうね」
りおがお話をそらんじてみせた。
「畑にボクの故郷……。つまり【水】の故郷ということか。いったいどういう意味だ?」
全く意味が分からない、と冴島が両手を広げる。
「水の故郷……水の……」
りおが地図を見ながら、その一節だけを何度もつぶやく。
「【水】の故郷……つまり【水】が生まれた場所ってことでしょうか?
だとしたら、作物を作るための水が生まれる……雨とか? ……湧き水……?」
思いつくままにりおがつぶやく。
「えっ」
突然、昴が反応した。
「え……どうしたの昴さん」
「いや、あの……。今あなた、何て言いました? 水が生まれるとかなんとか…そのあと」
何か引っかかるものを感じた昴が、りおに問いかけた。
「え? ええっと……作物を作るための水と言ったら雨とか、湧き水かなって」
「湧き水⁉」
昴が突然地図に目を向ける。先ほど書いた赤い線を指でゆっくりたどりながら地図を注意深く見た。
「あった! これを見てください。真西に進んだ赤い線上に湧き水があります」
「なに⁉」
冴島とジェームズが驚く。地図を見れば確かに湧き水の地図記号が書かれている。
「青茉区深水(みすい)町か……。いかにもキレイな水がありそうだな」
「ああ。普通に観光をしたいくらいだね」
体も温まり、謎解きも先に進んだためか冴島とジェームズが冗談めかして言う。
「では、少し休んだら深水町へ行ってみましょう」
昴の言葉に皆うなずいた。
カフェからはタクシーに乗り、四人は深水町へと向かう。
疲れが出たのか、りおは隣の昴の肩にもたれかかって眠っていた。
「少し無理をさせたか……」
助手席に座った冴島が振り向きながら言った。
「ええ。ですが、置いて行けば怒るでしょうし、無理をするなと言っても聞かないでしょう。それはすでに経験済みですので」
昴が半ば諦めたように答えた。
「ははは。すまんな。いったい誰に似たんだろうなぁ……」
冴島は申し訳なさそうに苦笑いした。
カフェを出て二十分——。
タクシーは深水(みすい)町に到着した。小さな山のふもとで四人は車を降りる。
「まずは湧き水を見に行くか」
道路から外れた、舗装されていない小道へと足を踏み入れる。
道路から進むこと300mほど。岩で囲まれた小さな泉が見える。近づくとそこからチョロチョロと小さな川が流れ、泉からはコンコンと水が湧き出ていた。
岩は苔むしており、そばには『深水の名水』という看板が立っていた。
「ほう……なかなか風情があるところじゃないか」
ジェームズが嬉しそうに泉に近づく。
水が湧き出る岩の近くには年季の入ったひしゃくも置かれている。
ジェームズがひしゃくを手に取るとザッと洗い流し、水を汲んで一口飲んだ。
「うん、美味い。ぜひこの水で紅茶を淹れたいよ」
「どれ」
続いて冴島もジェームズからひしゃくを渡されると、同じように一口飲んだ。
「うん、これは美味いな。ここに住めばコンビニで水を買わなくて済む」
楽しそうな二人を見て、昴とりおも顔を見合わせ微笑んだ。
「しかし水が湧く以外、他に何も無いな…」
「確かに。何かを隠せるようなところも無いしなぁ……」
一通り観光的な事を済ませ、四人は湧き水の周りを探す。
特に変わったことも無く、謎解きのヒントになるものは無い。
頼みの『お話』も、それ以降ヒントになりそうな部分は皆無。完全に行き詰った四人は顔を見合わせ考え込んだ。
その時——。
カ——ン……、カ——ン……、カ——ン……
「鐘の音?」
突然聞こえた音に四人が顔を上げる。
「そういえば、お話の最後には『早い冬の訪れを知らせる優しい鐘の音が聞こえてきました』って一節があったわ!」
ハッと顔を上げたりおが昴を見る。
昴はうなずくとバッグから地図を取り出した。
「どうやらこの近くに教会があるようです」
「教会か……。てっきりお話の最後の部分は、物語をキレイにまとめるためのオマケだと思っていたが…そこもヒントだったんだな」
良く出来てるなぁ、と冴島は感心したように何度もうなずいた。
「さっそく、その教会へ行ってみましょう」
昴がもと来た道へと歩み出す。
「OH! 日本の教会か。じっくり見てみたいものだな」
「ジェームズ! 遊びに行くんじゃないんですよ」
どこか観光気分のジェームズに昴が釘を刺す。
「まあまあ昴さん良いじゃない。ジェームズさん見てるとね、楽しそうでなんか気持ちがラクになるの。
それにね。このお話を父と作った時、すごく楽しかったことを覚えてる。だから両親もきっと、楽しく探してくれって思ってるんじゃないかしら」
親子で作った楽しい創作話。そこに隠されていた謎解き。
作った父自身もあれこれアイデアを出しながら楽しんでいた。きっとそれを解く、冴島とジェームズの事を想像していたのかもしれない。
何としても両親の遺した情報を手に入れなければ、と気負っていたりおは、ジェームズや冴島のやり取りを聞いて気持ちが少し楽になっていた。
「そうだとも。ルナも愛嬌があってね。私はしょっちゅうからかわれていたよ。さあ、楽しく行こうじゃないか」
ジェームズはパチンとウインクをして、先頭を歩き出す。
三人は顔を見合わせ、くすくすと笑いながらそれに続いた。