最終章 ~未来へ向かって~
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りおが話し終えると冴島とジェームズが顔を見合わせた。
「一真のヤツ……こんな才能があったんだな」
冴島は素直に感心していた。
「確かに……。とても可愛らしいお話に仕上がっていて、男親が考えたとは思えない出来栄えだ」
ジェームズも口髭を指でなぞりながら何度もうなずく。
「このお話は父と相談しながら、二人で作ったんです。特に、物語に出てくる《プレゼント》は悩みました。
でも父が『買ったものじゃなく不格好でも自分で作ったものなら、きっと友達も喜んでくれると思う。名案だろう?』って言い出して。
だから【風】の提案は父のアイデアなんです」
りおは嬉しそうに当時のことを話す。冴島はそれを見て目を細めた。
「しかしこのお話の中に、カズマは『情報のありか』の謎を組み込んでいるのだろう?」
ジェームズはあごに手を当て考え込んだ。すると、それまで黙っていた昴が口を開いた。
「お話に出てきた【太陽】【風】【水】というのがヒントなのではないでしょうか。
オオカミと子ブタは元々原作に登場していたキャラクターですし、新たなキャラクターはこの三人です」
「確かに沖矢くんの言う通りだ。そして、このお話と一緒に《ペンダント》が必要だというのも引っかかる」
ジェームズがテーブルに置いてあったペンダントを手に取った。
表裏をジッと観察するが、特に文字も書かれていないし、少しアンティークな雰囲気の虫眼鏡という以外変わったところはない。
「出てくる順番も関係あるのかな? お話の内容的にはどの順番で出てきてもさし障りは無いが、一真はあえてこの順番にした可能性も……」
冴島も、ジェームズの手元にあるペンダントをジッと見つめた。
「沖矢くんは何か気付いたことはないかい?」
突破口が見えない冴島は昴に問いかける。
「そうですね……」
小さなノートにお話の概要をメモしていた昴は、手元のメモとペンダントを交互に見た。
「問題はこのペンダントが何を意味しているか、ですね。お話の中にペンダントは登場しません。ということは、お話の中の言葉に何かヒントがあって、どこかのタイミングでペンダントが必要になる……」
昴はそこまで言うと黙り込む。
ジェームズからペンダントを受け取ると、向こう側を透かすようにレンズを見た。
「ちょ、ちょっと…昴さん! 今日は天気も良いし、いくら家の中でもそれで太陽の方を見たら危ないわ。レンズを通した光は……」
そこまで言って、りおがハッと息を飲んだ。少し遅れて昴も何かに気付く。
「昴さん!」
「ああ!」
二人の目が合い、昴はペンダントを持ったまま席を立った。
「お、おい。二人ともどうしたんだ?」
訳が分からない冴島とジェームズは、驚いた顔をして二人を見た。
昴は太陽の光が差し込む窓際へ移動すると、ペンダントに日が当たるようにして、その反対側に持っていたノートをかざした。
「やはりそうか。冴島さん、ジェームズ……ノートに当たった光を見てください」
「うん? 光を……かい?」
昴の行動に小首をかしげながら二人は近づき、言われた通りノートに当たる光を見た。
「こ、これは……!」
レンズを通過した太陽の光は、ノートの表紙に何か模様のようなものを映し出していた。
「なんだこれは! ただのルーペがなぜ…?」
驚く冴島とジェームズに昴が説明した。
「おそらく、レンズの表面に目では分からないほどの微妙な凹凸を作り、光を屈折させて模様を投影させているんです。『魔鏡』と同じ原理ですよ」
「魔鏡……そうか、なるほど」
説明を聞いて二人は納得した。
「しかし、よくこれが魔鏡と同じだと分かったな」
りおと昴がほぼ同時に気づいたことに、ジェームズは驚いていた。
「ええ。お話の中の『太陽が光を放ち、足元に影が…』というくだりと、先程のりおの言葉で魔境のことが浮かんだんです。実は魔鏡を使った謎解きを、最近やったばかりだったもので……」
昴とりおは顔を見合わせて微笑む。楽しそうな表情の二人を見て、冴島とジェームズも顔を見合わせた。
「で、ルーペが映し出した模様はなんだい?」
気を取り直して再び本題の謎解きに戻る。
「これは《木》ですよね……」
昴が模様を見て答えた。
《幹》の周りに《葉》が茂っているように見える。どう見ても《木》にしか見えない。
「うーん。《木》だよなぁ…。幹のところが白抜きなのが気になるが…」
冴島は目を凝らし、うーんと唸る。
「確かに」
「そうですね」
幹の部分がやや不自然に白抜きになっているが、模様は《木》で間違いないだろう。
「しかしこの《木》が一体何を意味してるんだ? 他にヒントは……」
ジェームズはルーペが映し出す《木》を見て考え込んだ。
同じく隣で見ていたりおが何かに気付く。
「あ……、ココ! 何か小さな文字が…」
《木》の右下には何か文字のようなものが1列に並んでいる。
「Q、u、e、u、e」
リオが目を凝らして一文字ずつ読み上げた。それを聞いていたジェームズと昴がハッと顔を上げる。
「【Queue】? IT用語の『順番』かしら?」
全てを読み上げ、りおが小首をかしげる。
「確かに《Queue(キュー)》だね。とすると、これはイギリス英語での表記かな? りお君が言うようにIT用語では『順番』という意味でもあるが、アメリカ英語だと《Line(ライン)》と同意。日本語だと《列》という意味だ」
すぐにジェームズが英語の意味を解説した。そこに昴がさらに補足を加える。
「ジェームズの言う通り《Queue(キュー)》はイギリス英語です。アメリカではほとんど使わない単語ですが、イギリスでは良く使いますよ。
イギリス人はわりと、列を作って待つのが習慣になっているんです。『列を作って待つのがフェア』という考え方があるんですよ。日本と同じですね」
さすがはイギリス出身のジェームズと、元イギリス人である赤井——もとい、昴である。冴島やりおにも分かるように解説してくれた。
「なるほど。ではこの《木》のそばに、何かが列を成している……ということか。いったい何が列になっているんだ?」
二人の説明を聞いた冴島がつぶやく。隣で《木》の大まかな形を紙に書き込んだりおも、ジッとそれを見て考え込んだ。
「なんかこの《木》……旗とかに描かれてそうですよね。会社とか学校とかの社章や校章みたい」
デフォルメされた《木》はすっきりとしたデザインで、『自然に優しい』とか『自然に囲まれた』を謳い文句にする会社などに使われそうな形をしている。
「旗に描かれているような……?」
りおの言葉を聞いた冴島の脳裏に、ふと何かがよぎる。りおが書き写したものをジーッと穴が開きそうなほど見つめ、口をへの字にして考え込んだ。
「冴島さん? どうかしました?」
難しい顔をしてりおの絵を凝視する冴島に、昴が声をかける。
「う~ん……この絵どっかで見たことあるような……」
「「「え?」」」」
冴島が発した言葉に、三人が声を上げた。りおがやや興奮気味に訊ねる。
「本当ですか? 一体どこで⁉」
「それが……思い出せないんだ。でもりおの言う『旗に描かれた』っていうのが、どうも引っかかって……」
すぐそこまで出かかっているのに、出てこない。冴島は「ああ、もう!」といって、頭をかいた。
「『旗に描かれた』というところに引っ掛かりがあるなら、やはり社章や校章に使われている可能性があるな……」
ジェームズが冷静に考察を続ける。
「環境に配慮した会社の社章などを調べてみましょうか?」というりおの提案に「PC取ってきます」と言って、昴がルーペとノートをテーブルに置いた。
しばらくして、昴がノートパソコンをテーブルに置き、りおが電源を入れた。
その周りに三人が画面を覗き込むように座る。
「まずは《社章》《校章》《環境》をキーワードにして検索してみます」
りおがキーワードを打ち込み検索をかける。
すぐさま、ヒットしたものがずらりと画面に並んだ。
「……多いですね……」
昴が画面を見てつぶやいた。
「確かに……。最近環境に配慮した会社は多いですからね。もう少し絞り込みましょうか。《木》というワードも入れてみます」
りおがキーワードを増やし、再び検索をかけた。
「一真のヤツ……こんな才能があったんだな」
冴島は素直に感心していた。
「確かに……。とても可愛らしいお話に仕上がっていて、男親が考えたとは思えない出来栄えだ」
ジェームズも口髭を指でなぞりながら何度もうなずく。
「このお話は父と相談しながら、二人で作ったんです。特に、物語に出てくる《プレゼント》は悩みました。
でも父が『買ったものじゃなく不格好でも自分で作ったものなら、きっと友達も喜んでくれると思う。名案だろう?』って言い出して。
だから【風】の提案は父のアイデアなんです」
りおは嬉しそうに当時のことを話す。冴島はそれを見て目を細めた。
「しかしこのお話の中に、カズマは『情報のありか』の謎を組み込んでいるのだろう?」
ジェームズはあごに手を当て考え込んだ。すると、それまで黙っていた昴が口を開いた。
「お話に出てきた【太陽】【風】【水】というのがヒントなのではないでしょうか。
オオカミと子ブタは元々原作に登場していたキャラクターですし、新たなキャラクターはこの三人です」
「確かに沖矢くんの言う通りだ。そして、このお話と一緒に《ペンダント》が必要だというのも引っかかる」
ジェームズがテーブルに置いてあったペンダントを手に取った。
表裏をジッと観察するが、特に文字も書かれていないし、少しアンティークな雰囲気の虫眼鏡という以外変わったところはない。
「出てくる順番も関係あるのかな? お話の内容的にはどの順番で出てきてもさし障りは無いが、一真はあえてこの順番にした可能性も……」
冴島も、ジェームズの手元にあるペンダントをジッと見つめた。
「沖矢くんは何か気付いたことはないかい?」
突破口が見えない冴島は昴に問いかける。
「そうですね……」
小さなノートにお話の概要をメモしていた昴は、手元のメモとペンダントを交互に見た。
「問題はこのペンダントが何を意味しているか、ですね。お話の中にペンダントは登場しません。ということは、お話の中の言葉に何かヒントがあって、どこかのタイミングでペンダントが必要になる……」
昴はそこまで言うと黙り込む。
ジェームズからペンダントを受け取ると、向こう側を透かすようにレンズを見た。
「ちょ、ちょっと…昴さん! 今日は天気も良いし、いくら家の中でもそれで太陽の方を見たら危ないわ。レンズを通した光は……」
そこまで言って、りおがハッと息を飲んだ。少し遅れて昴も何かに気付く。
「昴さん!」
「ああ!」
二人の目が合い、昴はペンダントを持ったまま席を立った。
「お、おい。二人ともどうしたんだ?」
訳が分からない冴島とジェームズは、驚いた顔をして二人を見た。
昴は太陽の光が差し込む窓際へ移動すると、ペンダントに日が当たるようにして、その反対側に持っていたノートをかざした。
「やはりそうか。冴島さん、ジェームズ……ノートに当たった光を見てください」
「うん? 光を……かい?」
昴の行動に小首をかしげながら二人は近づき、言われた通りノートに当たる光を見た。
「こ、これは……!」
レンズを通過した太陽の光は、ノートの表紙に何か模様のようなものを映し出していた。
「なんだこれは! ただのルーペがなぜ…?」
驚く冴島とジェームズに昴が説明した。
「おそらく、レンズの表面に目では分からないほどの微妙な凹凸を作り、光を屈折させて模様を投影させているんです。『魔鏡』と同じ原理ですよ」
「魔鏡……そうか、なるほど」
説明を聞いて二人は納得した。
「しかし、よくこれが魔鏡と同じだと分かったな」
りおと昴がほぼ同時に気づいたことに、ジェームズは驚いていた。
「ええ。お話の中の『太陽が光を放ち、足元に影が…』というくだりと、先程のりおの言葉で魔境のことが浮かんだんです。実は魔鏡を使った謎解きを、最近やったばかりだったもので……」
昴とりおは顔を見合わせて微笑む。楽しそうな表情の二人を見て、冴島とジェームズも顔を見合わせた。
「で、ルーペが映し出した模様はなんだい?」
気を取り直して再び本題の謎解きに戻る。
「これは《木》ですよね……」
昴が模様を見て答えた。
《幹》の周りに《葉》が茂っているように見える。どう見ても《木》にしか見えない。
「うーん。《木》だよなぁ…。幹のところが白抜きなのが気になるが…」
冴島は目を凝らし、うーんと唸る。
「確かに」
「そうですね」
幹の部分がやや不自然に白抜きになっているが、模様は《木》で間違いないだろう。
「しかしこの《木》が一体何を意味してるんだ? 他にヒントは……」
ジェームズはルーペが映し出す《木》を見て考え込んだ。
同じく隣で見ていたりおが何かに気付く。
「あ……、ココ! 何か小さな文字が…」
《木》の右下には何か文字のようなものが1列に並んでいる。
「Q、u、e、u、e」
リオが目を凝らして一文字ずつ読み上げた。それを聞いていたジェームズと昴がハッと顔を上げる。
「【Queue】? IT用語の『順番』かしら?」
全てを読み上げ、りおが小首をかしげる。
「確かに《Queue(キュー)》だね。とすると、これはイギリス英語での表記かな? りお君が言うようにIT用語では『順番』という意味でもあるが、アメリカ英語だと《Line(ライン)》と同意。日本語だと《列》という意味だ」
すぐにジェームズが英語の意味を解説した。そこに昴がさらに補足を加える。
「ジェームズの言う通り《Queue(キュー)》はイギリス英語です。アメリカではほとんど使わない単語ですが、イギリスでは良く使いますよ。
イギリス人はわりと、列を作って待つのが習慣になっているんです。『列を作って待つのがフェア』という考え方があるんですよ。日本と同じですね」
さすがはイギリス出身のジェームズと、元イギリス人である赤井——もとい、昴である。冴島やりおにも分かるように解説してくれた。
「なるほど。ではこの《木》のそばに、何かが列を成している……ということか。いったい何が列になっているんだ?」
二人の説明を聞いた冴島がつぶやく。隣で《木》の大まかな形を紙に書き込んだりおも、ジッとそれを見て考え込んだ。
「なんかこの《木》……旗とかに描かれてそうですよね。会社とか学校とかの社章や校章みたい」
デフォルメされた《木》はすっきりとしたデザインで、『自然に優しい』とか『自然に囲まれた』を謳い文句にする会社などに使われそうな形をしている。
「旗に描かれているような……?」
りおの言葉を聞いた冴島の脳裏に、ふと何かがよぎる。りおが書き写したものをジーッと穴が開きそうなほど見つめ、口をへの字にして考え込んだ。
「冴島さん? どうかしました?」
難しい顔をしてりおの絵を凝視する冴島に、昴が声をかける。
「う~ん……この絵どっかで見たことあるような……」
「「「え?」」」」
冴島が発した言葉に、三人が声を上げた。りおがやや興奮気味に訊ねる。
「本当ですか? 一体どこで⁉」
「それが……思い出せないんだ。でもりおの言う『旗に描かれた』っていうのが、どうも引っかかって……」
すぐそこまで出かかっているのに、出てこない。冴島は「ああ、もう!」といって、頭をかいた。
「『旗に描かれた』というところに引っ掛かりがあるなら、やはり社章や校章に使われている可能性があるな……」
ジェームズが冷静に考察を続ける。
「環境に配慮した会社の社章などを調べてみましょうか?」というりおの提案に「PC取ってきます」と言って、昴がルーペとノートをテーブルに置いた。
しばらくして、昴がノートパソコンをテーブルに置き、りおが電源を入れた。
その周りに三人が画面を覗き込むように座る。
「まずは《社章》《校章》《環境》をキーワードにして検索してみます」
りおがキーワードを打ち込み検索をかける。
すぐさま、ヒットしたものがずらりと画面に並んだ。
「……多いですね……」
昴が画面を見てつぶやいた。
「確かに……。最近環境に配慮した会社は多いですからね。もう少し絞り込みましょうか。《木》というワードも入れてみます」
りおがキーワードを増やし、再び検索をかけた。