第1章 ~運命の再会そして…~
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3人が家に着く頃には自分の足でしっかり歩ける程回復していたが、りおの表情は曇ったままだ。
博士にお礼を言って、ふたりは玄関に入る。だがりおはリビングには向かわず、そのまま客室へと行ってしまった。
(まだ具合でも悪いのだろうか?)
昴もりおの後をついて行った。
トントン
ノックをしてドアを開けると、りおはベッドに座っている。
「どうしました?」
声をかけても下を向いたまま動かない。
「隣に座っても?」
昴の問いかけに、りおはコクリと小さく頷いた。
昴は部屋の中へ入るとドアを閉め、そっと隣に座った。りおはゆっくり顔を上げ、昴の顔を見る。アンバーの瞳が切なげに揺れていた。
そうして昴をしばらく見つめた後、りおは突然スッと立ち上がった。そのまま向き直ってベッドに座る昴の前に立つ。今度は昴がりおを見上げる形になった。
「どうし…」
そこまで言いかけたところで、りおの両手は昴の頬を優しく包み、そっとキスをした。
触れるだけのキス…かと思ったがペロッと唇を舐め、するりと舌を入れてきた。とっさのことで油断していた昴は、りおのキスに思わずゾクリとする。
「…っん!」
思わず声が出てしまった。それに気を良くしたのか、りおはドンドン大胆に、昴の口内の感じるところを探る。
舌を絡め、歯列をなぞり、唇や舌先を甘噛みする。
「ッん!…ちょ…待っ……ふぅ……」
ドサッ
呼吸が上手くできず、昴はそのまま後ろに倒れ込む。だがますます逃げ場を失い追い込まれた。
「んッ…はぁ…ぅく…」
息は苦しいのに体にはジュクジュクと熱が溜まる。
見ないフリをして、気付かぬフリをして、ずっと押し殺してきた感情が爆発しそうになる。
(俺たちは危険に身を置く者同士…恋愛なんてもので…お互いを縛ってしまうわけには…いか…ない…のに…ッ!)
昴の思考はりおから与えられる刺激でドロドロに溶けていく。りおの肩を掴む手に力が入る。ただそれを押し返すことは出来なかった。
口の端をちゅくっと吸われて、ようやくりおが体を起こした。酸素が肺に入る。はぁはぁとお互い呼吸が荒い。
「…はぁ…はぁ……りお…どうしたんだ、いったい…」
ベッドに倒れたまま昴は質問するが、りおは答えず昴の首元に手を伸ばす。首に巻いていたスカーフをするりと取り、シャツのボタンを外しだした。
「お、おい! こ、これ以上は!」
制止するが聞き入れてもらえない。りおは昴の首筋にキスをし、ペロリと舐めた。昴の体がぴくっと反応する。好きな女性にここまでされて感じない方がどうかしてる。
「りお…頼む。これ以上は俺も歯止めがきかなくなる!」
昴のシャツはほぼ全てのボタンが外されて、肌が晒されている。そこにりおは自分の左耳を寄せた。そのまま体重を預ける。
トクトクトクトク……
早鐘のような昴の鼓動が聞こえる。目を閉じ、しばらくその鼓動を聞き入っていた。やがて体を起こすと昴を見つめる。
『いいよ』
りおが手話でそう答えた。
「え?」
『私を抱いて?』
「りお? 今なんて?」
『抱いてって言ったの』
『そのかわり、沖矢昴ではなく赤井秀一で』
「…本気か?…後戻り…できなくなるぞ……俺たちは…」
『私は本気だよ。決めたの。だから…お願い…』
「……分かった」
上半身を起こし、昴はりおが見ている前で変装を解く。
りおはじっとその様子を見つめていた。
シャツのボタンを外され、だらしなく肌を晒した沖矢昴が、あっという間に赤井秀一になった。りおは赤井の右胸に顔を寄せキスをする。何度も何度も。
「…っ!」
ゾクリとして、赤井は危うく声が出そうだった。
そこはキールに撃たれたところだ。もちろん空砲だったのだからキズなど一つもないが。
執拗にそこにキスをされ、息が上がる。もどかしさでどうかなりそうだ。
「はっ…はぁ…はぁ…りお…っ!」
赤井はりおを押し倒す。息を乱し、やや紅潮した顔でりおを見下ろした。
『赤井秀一がちゃんと生きてるって私に分からせて。私の隣に居るのが…間違いなくあなただって…』
「お前、そのためにこんな…」
りおの目から涙が零れる。その手が思いを伝えた。
『この先治療が進めば記憶はますます曖昧になるかもしれない。現に、スコッチの死についてはところどころボンヤリしているの。ただ、彼は死んだと納得をしているだけ。
カウンセリングは、赤井秀一に対しても記憶が曖昧になって、死んでいるのか生きているのか、一瞬分からなくなることがあるの。変装をしていて、沖矢昴の姿をしている時間が長いせいかもしれない。自分の記憶のどれが本物なのか、わからなくなる瞬間が…すごく怖い。
だから……記憶に残らなくても体に刻みつけて欲しい。
大切な存在となったあなた(赤井秀一)が、ちゃんと私のそばに居る。そう実感できるように……』
「りお!」
彼女の本心を知って、赤井は自制が効かなくなった。りおの服を剥ぎ取ると、彼女の白い肌に何度も吸い付く。赤い花がいくつも咲いた。
正直、りおを抱きたいと思ったことは何度もあった。だが恋だの愛だのそんな感情は、敵の中では弱点になる事もある。だから赤井はその一歩を踏み出せなかった。
しかし今、自分が踏み出せなかった一歩を、彼女は踏み出した。
《赤井秀一》が生きている証を刻むこと。
それはお互いが唯一無二の相手であると認めるという事。そしてその覚悟を決めるという事に他ならなかった。