最終章 ~未来へ向かって~
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トントン
ベルモットがアジトの自室でPCを開いている時だった。ドアのノックに顔を上げる。
「どなた?」
『ラスティーです』
「⁉」
返答を聞いてベルモットは驚く。急いで部屋のドアを開けた。
「ラスティー! あなた体は大丈夫なの?」
ベルモットとラスティーが顔を合わせるのはスンホの自爆でケガをしたのち、バーボンが手配した病院へ転院して以来だった。
久しぶりに見たラスティーは顔色も良く、順調に回復しているように見える。
「ええ。まだ復帰できる程ではないけど。
今日は気分も良かったからリハビリがてら、ベルモットとアロンに先日のお礼を言おうと思って」
そう言って笑ラスティ―の手にはテイクアウトの箱。ベルモットが好きなサンドイッチ店のものだ。
「あらあら、お礼だなんて……本当にジッとしていられないのね。でも良かったわ。あなたの顔を見れて」
ベルモットは嬉しそうに微笑むと部屋の中へと招き入れた。
しばらく談笑をしながら持って来たサンドイッチを二人で食べた。ベルモットの話によればアロンはアジトにはおらず、組織で用意したホテル住まいをしているらしい。
「正式に組織のメンバーとなれば、ここに入れるんだけどね」
「そう……」
さりげなく状況を探りながら、ラスティーは会話を続ける。差し障りのない事をひと通り聞いて、ラスティーは席を立った。
「さて、そろそろ戻るわね」
「ええ。彼氏クンが寂しがっているんでしょう?」
「もう、そうやってすぐからかうんだから!」
軽口をたたきながらラスティーは部屋を出る。
「そういえば……ジンは? ちょっと声だけかけていこうかな」
復帰にはまだ時間が必要だと話しておいた方が良いでしょう、とラスティーの足がジンの部屋に向く。
「えっ、ちょっと! そんなこと良いから。このまますぐに帰りなさい」
ベルモットが慌てたように声をかけた。
「え? どうして? 今の私の状態を見てもらった方が彼も納得するでしょ?」
ラスティーは構うことなく、そのままジンの部屋へ向かって歩みを進めた。
ジンの部屋へと向かう途中、いつもは使わない部屋の前でラスティーは床に大きなシミがあることに気付く。
「ん? これ……何のシミ?」
ラスティーは振り向き、ベルモットに問いかけた。
「ッ! そ、それは……」
明らかに動揺するベルモットを見て、ラスティーはさらに問いかける。
「この部屋……最近何かに使ったの?」
「い、いえ…何も…」
「……何もないのに…どうしてそんなに動揺しているの? ベルモット」
ラスティーはジッとベルモットを見つめた後、意を決して部屋のドアに手を掛けた。
「ラスティー! その部屋に入ってはダメ!!」
ガチャ……ギィィ……
ベルモットの制止を無視してラスティーは部屋のドアを開ける。薄暗い部屋の入口に立ち、照明をつけた。
パッと明るくなった部屋にあったのは——
未だに残る大量の血痕。
何かを引きずったような跡。
拘束に使ったと思われるロープや手錠。
生々しい痕がそこには残っていた。
「ッ!」
息を飲み、ヨロヨロと後ずさったラスティーを、ベルモットが後ろから抱きしめた。
「……こ、ここで……誰か…殺した…の?」
「……ええ。男を…ひとり…」
ラスティーを抱きしめる手に力を込めながら、ベルモットは小さな声で答えた。
「……だ、誰を…殺した…の…」
ラスティーが震える声でさらに問いかける。
バレたのなら仕方がない、とベルモットが重い口を開いた。
「組織を探っていたネズミよ。最近ちょろちょろしていたから、コルンが……」
ズルッ……
「ッ!」
全てを話し終える前に、ラスティーの体から力が抜ける。ベルモットが慌ててその体を支え、二人で床に座り込んだ。
「ラスティー⁉ しっかりして‼」
「……ぅ……」
顔色を失くしたラスティーは、ぐったりとその身を預けるだけだった。
1時間後——。
「気分はどう?」
ようやく起き上がれるようになったラスティーに、ベルモットが声をかける。
「ありがとう。だいぶ良いわ」
ラスティーはゆっくりと体を起こし、ソファーに座り直す。少し色味を戻した顔を見て、ベルモットがホットミルクを手渡した。
「ここ最近、組織の事を嗅ぎまわっているネズミがいてね。その男をコルンが捕まえたの。雇い主を吐かせるために、ジンが痛めつけていたわ……」
「そう……それで? 雇い主は分かったの?」
ラスティーはカップのミルクを見つめたまま問いかけた。
「残念ながら雇い主は聞き出せなかったそうよ。ジンもせっかちだし、ダンマリを決め込んだ男にしびれを切らして始末したってわけ。
男が死んだあと身体検査をしたけど、持っていたのはスマホと財布だけ。中を調べても、結局何も分からなかった。ただ……」
「ただ?」
続く言葉を、ラスティーは緊張しながら待つ。
「ポケットからマッチ箱が出て来たの」
「マッチ?」
「ええ。『シリウス』という店の名前が書いてあるマッチ箱がね」
「!」
店の名前を聞いてドキリと心臓が跳ねる。
(昴さんが言った通りだわ……。店のマッチ…持ってたのか…)
ルークに繋がる小さな小さな証拠。ラスティーは小さく息を飲んだ。
「彼氏クンとはうまくいってる?」
ラスティーの気を他へ向けようと、ベルモットはあえて関係のない質問をした。
「ええ」
「それは良かった」
思い出したようにミルクを口にするラスティーを眺めながら、ベルモットは微笑んだ。
「組織の動きは今後本格化するわ。間もなくあなたの力を借りる時が来る。それまでに体調を整えておいて」
「いったい何をする気なの?」
さりげなく、それでいて直接的に。ラスティーは【ビジネス】について問いかけた。
「まだ詳しくは言えないわ。でもそうね、アメリカの大きな施設を狙うの。その為にアロンに協力を仰いだのよ」
詳細をベールに隠しながら、ベルモットは答える。
「《ホール》を開ける……のね?」
「あら、アロンから聞いたの? そうよ。誰も気付かないくらいの小さな穴。でもデータを頂くには十分」
クスリと笑うベルモットの顔には、余裕が見える。
「そう……」
(狙うのはアメリカの施設……)
ラスティーは再びカップに口を付け、ミルクをゆっくり飲み込んだ。
ベルモットがアジトの自室でPCを開いている時だった。ドアのノックに顔を上げる。
「どなた?」
『ラスティーです』
「⁉」
返答を聞いてベルモットは驚く。急いで部屋のドアを開けた。
「ラスティー! あなた体は大丈夫なの?」
ベルモットとラスティーが顔を合わせるのはスンホの自爆でケガをしたのち、バーボンが手配した病院へ転院して以来だった。
久しぶりに見たラスティーは顔色も良く、順調に回復しているように見える。
「ええ。まだ復帰できる程ではないけど。
今日は気分も良かったからリハビリがてら、ベルモットとアロンに先日のお礼を言おうと思って」
そう言って笑ラスティ―の手にはテイクアウトの箱。ベルモットが好きなサンドイッチ店のものだ。
「あらあら、お礼だなんて……本当にジッとしていられないのね。でも良かったわ。あなたの顔を見れて」
ベルモットは嬉しそうに微笑むと部屋の中へと招き入れた。
しばらく談笑をしながら持って来たサンドイッチを二人で食べた。ベルモットの話によればアロンはアジトにはおらず、組織で用意したホテル住まいをしているらしい。
「正式に組織のメンバーとなれば、ここに入れるんだけどね」
「そう……」
さりげなく状況を探りながら、ラスティーは会話を続ける。差し障りのない事をひと通り聞いて、ラスティーは席を立った。
「さて、そろそろ戻るわね」
「ええ。彼氏クンが寂しがっているんでしょう?」
「もう、そうやってすぐからかうんだから!」
軽口をたたきながらラスティーは部屋を出る。
「そういえば……ジンは? ちょっと声だけかけていこうかな」
復帰にはまだ時間が必要だと話しておいた方が良いでしょう、とラスティーの足がジンの部屋に向く。
「えっ、ちょっと! そんなこと良いから。このまますぐに帰りなさい」
ベルモットが慌てたように声をかけた。
「え? どうして? 今の私の状態を見てもらった方が彼も納得するでしょ?」
ラスティーは構うことなく、そのままジンの部屋へ向かって歩みを進めた。
ジンの部屋へと向かう途中、いつもは使わない部屋の前でラスティーは床に大きなシミがあることに気付く。
「ん? これ……何のシミ?」
ラスティーは振り向き、ベルモットに問いかけた。
「ッ! そ、それは……」
明らかに動揺するベルモットを見て、ラスティーはさらに問いかける。
「この部屋……最近何かに使ったの?」
「い、いえ…何も…」
「……何もないのに…どうしてそんなに動揺しているの? ベルモット」
ラスティーはジッとベルモットを見つめた後、意を決して部屋のドアに手を掛けた。
「ラスティー! その部屋に入ってはダメ!!」
ガチャ……ギィィ……
ベルモットの制止を無視してラスティーは部屋のドアを開ける。薄暗い部屋の入口に立ち、照明をつけた。
パッと明るくなった部屋にあったのは——
未だに残る大量の血痕。
何かを引きずったような跡。
拘束に使ったと思われるロープや手錠。
生々しい痕がそこには残っていた。
「ッ!」
息を飲み、ヨロヨロと後ずさったラスティーを、ベルモットが後ろから抱きしめた。
「……こ、ここで……誰か…殺した…の?」
「……ええ。男を…ひとり…」
ラスティーを抱きしめる手に力を込めながら、ベルモットは小さな声で答えた。
「……だ、誰を…殺した…の…」
ラスティーが震える声でさらに問いかける。
バレたのなら仕方がない、とベルモットが重い口を開いた。
「組織を探っていたネズミよ。最近ちょろちょろしていたから、コルンが……」
ズルッ……
「ッ!」
全てを話し終える前に、ラスティーの体から力が抜ける。ベルモットが慌ててその体を支え、二人で床に座り込んだ。
「ラスティー⁉ しっかりして‼」
「……ぅ……」
顔色を失くしたラスティーは、ぐったりとその身を預けるだけだった。
1時間後——。
「気分はどう?」
ようやく起き上がれるようになったラスティーに、ベルモットが声をかける。
「ありがとう。だいぶ良いわ」
ラスティーはゆっくりと体を起こし、ソファーに座り直す。少し色味を戻した顔を見て、ベルモットがホットミルクを手渡した。
「ここ最近、組織の事を嗅ぎまわっているネズミがいてね。その男をコルンが捕まえたの。雇い主を吐かせるために、ジンが痛めつけていたわ……」
「そう……それで? 雇い主は分かったの?」
ラスティーはカップのミルクを見つめたまま問いかけた。
「残念ながら雇い主は聞き出せなかったそうよ。ジンもせっかちだし、ダンマリを決め込んだ男にしびれを切らして始末したってわけ。
男が死んだあと身体検査をしたけど、持っていたのはスマホと財布だけ。中を調べても、結局何も分からなかった。ただ……」
「ただ?」
続く言葉を、ラスティーは緊張しながら待つ。
「ポケットからマッチ箱が出て来たの」
「マッチ?」
「ええ。『シリウス』という店の名前が書いてあるマッチ箱がね」
「!」
店の名前を聞いてドキリと心臓が跳ねる。
(昴さんが言った通りだわ……。店のマッチ…持ってたのか…)
ルークに繋がる小さな小さな証拠。ラスティーは小さく息を飲んだ。
「彼氏クンとはうまくいってる?」
ラスティーの気を他へ向けようと、ベルモットはあえて関係のない質問をした。
「ええ」
「それは良かった」
思い出したようにミルクを口にするラスティーを眺めながら、ベルモットは微笑んだ。
「組織の動きは今後本格化するわ。間もなくあなたの力を借りる時が来る。それまでに体調を整えておいて」
「いったい何をする気なの?」
さりげなく、それでいて直接的に。ラスティーは【ビジネス】について問いかけた。
「まだ詳しくは言えないわ。でもそうね、アメリカの大きな施設を狙うの。その為にアロンに協力を仰いだのよ」
詳細をベールに隠しながら、ベルモットは答える。
「《ホール》を開ける……のね?」
「あら、アロンから聞いたの? そうよ。誰も気付かないくらいの小さな穴。でもデータを頂くには十分」
クスリと笑うベルモットの顔には、余裕が見える。
「そう……」
(狙うのはアメリカの施設……)
ラスティーは再びカップに口を付け、ミルクをゆっくり飲み込んだ。