最終章 ~未来へ向かって~
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「つまり日本とアメリカ、全く異なった場所で同じ技術で爆破が起こった、ということなのか?」
新聞記事を読み終えた昴がルークに問いかける。
「そういうこと。船の爆破も、それは見事だよ。乗員乗客一人も殺し損ねず、どう爆破したのか詳細が分からないほどキレイサッパリ吹き飛ばした。
あれだけの大きな船だ。ただドカンと爆発させただけなら、海に飛び込んだり爆発から遠かったりして一人や二人生存者がいてもおかしくないだろう? しかし実際、生存者はゼロだった」
「……」
ルークの説明を聞きながら、りおは何か心に引っ掛かりを感じ口元に手を当てた。
「じゃあ、いったい誰が船を爆破したんだ? カーディナルと同程度の技術を持った人物が、組織外にも居たと考える方が現実的では?」
物理的に日本とアメリカ、遠く離れた場所に同時にいることは出来ない。現実的に考えれば、昴の意見は至極当然だった。
「う~ん……その可能性も確かにあるが、奴ほどの爆破技術を持つ者なんて、そうそう居ないぞ? いや、居てもらっては困る——というのが本音か」
ルークも腕を組んで考え込んだ。二人が考え込む横で、りおが難しい顔をして黙り込む。
「りお、どうした?」
先程からずっと黙ったままのりおに、昴が問いかけた。
「う、ん…」
りおは曖昧な返事をして目を伏せた。
(なんか……引っかかる…何だろう…)
なにか思い出せそうで思い出せない。確信は無いものの、この疑問を払拭出来るような何かを、自分は見た気がする。
りおは「ふぅ……」と大きく息を吐き、視線を上げると周りをぐるっと見回した。
「とにかく、船の爆破犯は未だに俺も目星が付けられない状態だ。ここをクリアできれば、もっと見えてくると思うんだが……」
お手上げと言いたげに、ルークはドカッと背もたれに体重を預けた。胸ポケットに入っているタバコを出そうとジャケットをまさぐる。
「ッ!」
胸の内ポケットに手を入れたルークの姿が、アジトで見たカーディナルの姿と重なる。
「あッ!!」
思わずりおは大きな声で叫んだ。
「わッ! びっくりした! ど、どうしたんだよ、急に大きな声出して」
ルークの青い目がまん丸になって、りおを見た。
「思い出した……! そうよ! カーディナルよ! 彼には師匠がいたの。
『爆破は爆発の規模や壊す建物の構造、及ぼす範囲、それらすべてを計算できなければいけない。それらが完璧だったのが私の師匠だ』って、以前カーディナルが言ってたわ!」
「な、なに⁉」
ルークは弾かれたように体を起こした。
「で、その師匠というヤツは今どこに?」
「残念ながら、ずいぶん前に亡くなったって言ってたわ。カーディナルは、その師匠の残したノートを大事に持っていたの。いつも胸ポケットにそのノートが入っていて……。もしかしたら、そこに何か書かれているかも。降谷さんに言って、カーディナルが亡くなった時に身に着けていた物を調べれば……」
「分かった!! すぐトール(透)と連絡を取る!」
ルークはスマホを取り出すと安室に電話を掛けた。
「……ああ、そうだ。亡くなった日に身に着けていた物……そうか! 分かった。手続きが済んだら連絡をくれ」
「すぐ」という宣言通り、安室に連絡をしたルークはカーディナルの遺品を見せてもらえるよう頼んだようだった。
「近いうちにトールと会ってノートの中身を確認するよ。そのカーディナルの師匠が組織と繋がっていれば——」
ルークはニヤリと口角を上げた。それを見ていた昴が「少し整理をしよう」といって、現状で分かっていることを順番にあげていく。
「32年前、組織は何かしらの計画を進めていた。
仮にその《師匠》が《カーディナル》と同様、組織の爆破担当だとして、ソイツが仲間の船を爆破し、一般人を巻き込んで関係者を全て葬ったとするならば……。
その当時、組織内で対立があったと見るべきか……」
「ああ。あの組織はデカい。当然、上層部と組織の末端とでは温度差が出ることだってある。
シュウの仮説が正しければ——船の爆破事件は、そんな上下の摩擦から起った事件だといえる」
スマホをポケットにしまいながら、ルークはようやく冷静な口調で話し始めた。
「32年前、くだらない組織のいざこざで何の関係もない一般人まで巻き込んで爆破事件が起きた。
そこにさくらの父親の親友夫妻と、母親の両親が居合わせた。他にもたくさんの人たちが船に乗り合わせて……そして死んだ」
淡々と話すルーク。しかしその表情は明らかに怒っていた。
「必ず暴いてやるさ。全て、な。さくらの両親が追っていた事件だ。全てを見届けることなく亡くなった彼らに、今度こそ真相を手向けてやろう」
ルークの青い瞳が強い光を放つ。それを見た昴はかつて子どもが多数犠牲になった、あの暴動の時のエヴァンを思い出す。
「熱くなるのは良いが気を付けろよ。ジンたちも本気だ。正体がバレれば、ただでは済まないだろう」
「ああ、分かってるさ」
ルークはフッと表情を緩め、昴の顔を見るとニヤリと笑った。
二人のやり取りを、りおは黙ったまま聞いていた。テーブルの上に開かれたFBIの捜査資料。
以前、りお自身も見せてもらったものだ。
事件の詳細が書かれたページに、日本の企業名【深風香(ミカゼカ)研究所】の文字がある。
(【深風香】と【実風花】どちらも読み方は【ミカゼカ】……【ミカゼ】……美…風……)
『計画通りさ。良い風が吹いてきている』
『ああ、良い風だよ。【美しい風】とでも言っておこうか——』
(ッ!! あれは、アロンと初顔合わせをした時——!)
ビジネスが計画通りに進んでいることを、ジンは【美しい風】と表現していた。
「どうした? まだ何か引っかかるものでもあるのか?」
ひどく驚いた顔をして固まっているりおを見て、昴が心配そうに声をかける。
「…あの……だたの偶然かも…しれないけど……」
りおは心配げに、少し小さな声で切り出す。
「ん? どうした?」
昴が微笑んで、もう一度りおに問いかけた。
「アロンが来日した次の日、組織の幹部クラスとアロンが初顔合わせしたんだけど…。その時にジンがおかしなことを言ったの。
【ビジネス】が計画通りに進んでいることを、『良い風が吹いてきている。美しい風が』って……」
「美しい風?」
ルークが眉根を寄せる。ジンはわりと頻繁に比喩表現を使うが、〈ネズミ〉や〈ヘビ〉〈キツネ〉など動物絡みが多い。
それが【美しい風】などと言うものだから、りおが違和感を感じるのも無理はない。
「32年前の事件に関係していた【深風香】。そのさらに20年前は【実風花】。
そして今回ジンの口から『美しい風』つまり【ミカゼ】…。ちょっと偶然にしては気持ち悪い一致だなって…」
「「ッ‼」」
りおの言葉を聞いて、二人はハッと顔を見合わせた。
「それ……偶然じゃないかもしれないぞ。32年前の爆破事件は組織が関係しているってだけでなく、組織の【ビジネス】とも繋がっている可能性が高いってことだ。そうなるとボスが言うように、広瀬夫妻が集めた情報の中に有益なものがあるかもしれない」
ルークが口元を撫でながらつぶやく。昴も「ああ」と何度もうなずいた。
新聞記事を読み終えた昴がルークに問いかける。
「そういうこと。船の爆破も、それは見事だよ。乗員乗客一人も殺し損ねず、どう爆破したのか詳細が分からないほどキレイサッパリ吹き飛ばした。
あれだけの大きな船だ。ただドカンと爆発させただけなら、海に飛び込んだり爆発から遠かったりして一人や二人生存者がいてもおかしくないだろう? しかし実際、生存者はゼロだった」
「……」
ルークの説明を聞きながら、りおは何か心に引っ掛かりを感じ口元に手を当てた。
「じゃあ、いったい誰が船を爆破したんだ? カーディナルと同程度の技術を持った人物が、組織外にも居たと考える方が現実的では?」
物理的に日本とアメリカ、遠く離れた場所に同時にいることは出来ない。現実的に考えれば、昴の意見は至極当然だった。
「う~ん……その可能性も確かにあるが、奴ほどの爆破技術を持つ者なんて、そうそう居ないぞ? いや、居てもらっては困る——というのが本音か」
ルークも腕を組んで考え込んだ。二人が考え込む横で、りおが難しい顔をして黙り込む。
「りお、どうした?」
先程からずっと黙ったままのりおに、昴が問いかけた。
「う、ん…」
りおは曖昧な返事をして目を伏せた。
(なんか……引っかかる…何だろう…)
なにか思い出せそうで思い出せない。確信は無いものの、この疑問を払拭出来るような何かを、自分は見た気がする。
りおは「ふぅ……」と大きく息を吐き、視線を上げると周りをぐるっと見回した。
「とにかく、船の爆破犯は未だに俺も目星が付けられない状態だ。ここをクリアできれば、もっと見えてくると思うんだが……」
お手上げと言いたげに、ルークはドカッと背もたれに体重を預けた。胸ポケットに入っているタバコを出そうとジャケットをまさぐる。
「ッ!」
胸の内ポケットに手を入れたルークの姿が、アジトで見たカーディナルの姿と重なる。
「あッ!!」
思わずりおは大きな声で叫んだ。
「わッ! びっくりした! ど、どうしたんだよ、急に大きな声出して」
ルークの青い目がまん丸になって、りおを見た。
「思い出した……! そうよ! カーディナルよ! 彼には師匠がいたの。
『爆破は爆発の規模や壊す建物の構造、及ぼす範囲、それらすべてを計算できなければいけない。それらが完璧だったのが私の師匠だ』って、以前カーディナルが言ってたわ!」
「な、なに⁉」
ルークは弾かれたように体を起こした。
「で、その師匠というヤツは今どこに?」
「残念ながら、ずいぶん前に亡くなったって言ってたわ。カーディナルは、その師匠の残したノートを大事に持っていたの。いつも胸ポケットにそのノートが入っていて……。もしかしたら、そこに何か書かれているかも。降谷さんに言って、カーディナルが亡くなった時に身に着けていた物を調べれば……」
「分かった!! すぐトール(透)と連絡を取る!」
ルークはスマホを取り出すと安室に電話を掛けた。
「……ああ、そうだ。亡くなった日に身に着けていた物……そうか! 分かった。手続きが済んだら連絡をくれ」
「すぐ」という宣言通り、安室に連絡をしたルークはカーディナルの遺品を見せてもらえるよう頼んだようだった。
「近いうちにトールと会ってノートの中身を確認するよ。そのカーディナルの師匠が組織と繋がっていれば——」
ルークはニヤリと口角を上げた。それを見ていた昴が「少し整理をしよう」といって、現状で分かっていることを順番にあげていく。
「32年前、組織は何かしらの計画を進めていた。
仮にその《師匠》が《カーディナル》と同様、組織の爆破担当だとして、ソイツが仲間の船を爆破し、一般人を巻き込んで関係者を全て葬ったとするならば……。
その当時、組織内で対立があったと見るべきか……」
「ああ。あの組織はデカい。当然、上層部と組織の末端とでは温度差が出ることだってある。
シュウの仮説が正しければ——船の爆破事件は、そんな上下の摩擦から起った事件だといえる」
スマホをポケットにしまいながら、ルークはようやく冷静な口調で話し始めた。
「32年前、くだらない組織のいざこざで何の関係もない一般人まで巻き込んで爆破事件が起きた。
そこにさくらの父親の親友夫妻と、母親の両親が居合わせた。他にもたくさんの人たちが船に乗り合わせて……そして死んだ」
淡々と話すルーク。しかしその表情は明らかに怒っていた。
「必ず暴いてやるさ。全て、な。さくらの両親が追っていた事件だ。全てを見届けることなく亡くなった彼らに、今度こそ真相を手向けてやろう」
ルークの青い瞳が強い光を放つ。それを見た昴はかつて子どもが多数犠牲になった、あの暴動の時のエヴァンを思い出す。
「熱くなるのは良いが気を付けろよ。ジンたちも本気だ。正体がバレれば、ただでは済まないだろう」
「ああ、分かってるさ」
ルークはフッと表情を緩め、昴の顔を見るとニヤリと笑った。
二人のやり取りを、りおは黙ったまま聞いていた。テーブルの上に開かれたFBIの捜査資料。
以前、りお自身も見せてもらったものだ。
事件の詳細が書かれたページに、日本の企業名【深風香(ミカゼカ)研究所】の文字がある。
(【深風香】と【実風花】どちらも読み方は【ミカゼカ】……【ミカゼ】……美…風……)
『計画通りさ。良い風が吹いてきている』
『ああ、良い風だよ。【美しい風】とでも言っておこうか——』
(ッ!! あれは、アロンと初顔合わせをした時——!)
ビジネスが計画通りに進んでいることを、ジンは【美しい風】と表現していた。
「どうした? まだ何か引っかかるものでもあるのか?」
ひどく驚いた顔をして固まっているりおを見て、昴が心配そうに声をかける。
「…あの……だたの偶然かも…しれないけど……」
りおは心配げに、少し小さな声で切り出す。
「ん? どうした?」
昴が微笑んで、もう一度りおに問いかけた。
「アロンが来日した次の日、組織の幹部クラスとアロンが初顔合わせしたんだけど…。その時にジンがおかしなことを言ったの。
【ビジネス】が計画通りに進んでいることを、『良い風が吹いてきている。美しい風が』って……」
「美しい風?」
ルークが眉根を寄せる。ジンはわりと頻繁に比喩表現を使うが、〈ネズミ〉や〈ヘビ〉〈キツネ〉など動物絡みが多い。
それが【美しい風】などと言うものだから、りおが違和感を感じるのも無理はない。
「32年前の事件に関係していた【深風香】。そのさらに20年前は【実風花】。
そして今回ジンの口から『美しい風』つまり【ミカゼ】…。ちょっと偶然にしては気持ち悪い一致だなって…」
「「ッ‼」」
りおの言葉を聞いて、二人はハッと顔を見合わせた。
「それ……偶然じゃないかもしれないぞ。32年前の爆破事件は組織が関係しているってだけでなく、組織の【ビジネス】とも繋がっている可能性が高いってことだ。そうなるとボスが言うように、広瀬夫妻が集めた情報の中に有益なものがあるかもしれない」
ルークが口元を撫でながらつぶやく。昴も「ああ」と何度もうなずいた。