第8章 ~新たな決意を胸に~
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バタン
「あ、昴さん」
リビングに昴が戻ってくると、コナンが心配そうに声をかけた。
「さくらさん、寝た?」
「ああ。退院したばかりだから『少し休め』と言ったんだが、なかなか寝なくてね。無理やり毛布を掛けたんだ。しばらくは文句を言っていたが、そのうち寝たよ」
「ごめんね。ボクが早く帰れば良かったんだけど」
「いや、ボウヤの話は興味深い。さくらももっと聞きたかったんだろうが、続きは俺と話そう」
変装は解いていなかったが、変声機をOFFにしたのだろう。昴は赤井の声と口調で話す。
「それで? 『前に彼女と似た人物と会った』と言っていたんだな?」
「うん。確かにそう言っていたよ。『子どもたちから元気をもらって、私の命が長らえられる。人生で二度目だな、人に生かしてもらうのは』って小声で言ったのを聞いたんだ」
パーティーでのことを思い出しながらコナンが説明した。
「それで不思議に思って、パーティーが盛り上がってる時にそれとなく訊いてみたんだよ。
その時に『似た人物と会った』って教えてくれたんだ」
コナンが答えると、昴は口元に手を当てて考え込んだ。
「命の恩人、と言うからには、さくらの母親が彼を助けたということか。以前というのが、どのあたりのことを言うのか分かれば良いんだが……」
「確かにそうだね」
コナンも赤井同様、難しい顔をして考え込む。
誕生会の時は少年探偵団もいたし、パーティーも盛り上がっていた。【本日の主役】相手に余り突っ込んだ話は出来ていない。
「あ、そういえば……その時、上の子が七歳だったって言ってたような……。ちょうど今の君たちと同い年だって。そんな小さな子を置いて、死ななくて良かったって」
まるでパズルのピースをはめるように、コナンは衛の言葉一つ一つを思い出す。
「上の子が七歳? たしか彼には息子が二人いて、長男は今年二十七だぞ。
つまり、園城寺氏とさくらの母親が会ったのは——」
「「二十年前‼」」
赤井とコナンの声が重なる。
二十年前と言えば、さくらの両親が亡くなった年と同じである。
「ちょっと待て。二十年前、園城寺氏はさくらの母親であるルナに命を助けられた。そしてその年、両親は殺されている。
もしかして、彼はその件に何か関係しているのかもしれない」
「ッ!」
コナンが勢いよく顔を上げた。
「詳しくは、冴島さんに訊いてみなければ分からんが……」
赤井は腕を組み、さらに考え込んだ。
「ねえ、赤井さん」
コナンが赤井に声をかける。どうしたボウヤ、と赤井はコナンの方へ視線を向けた
「ボク、すごく嫌な予感がするんだ。園城寺さんが怪しいとか……そういうわけでは、ないんだけど……」
珍しく言い淀むコナンの姿に、赤井は膝をついて目線を合わせた。
「どうした? ボウヤらしくないな」
赤井の問いかけに、コナンは下を向いたまま続ける。
「この間の古宿区の自死の現場の時に、ベルモットの姿を見た気がしたって言ったでしょ?
組織が新たな【ビジネス】に着手して、もうすでに動き出しているって事に、疑いの余地はない。だいぶ前から公安もその事実を掴んでいたみたいだしね。それなのに……肝心なことは何一つ分かってないんだ。
奴らがいったい何をしようとしているのか。水面下で何が進んでいるのか……。
さくらさんの体調も、心の方も、まだまだ不安定で万全とは言えない。うまく言えないけど……すごく不安なんだ。目に見えない何かが迫ってきているみたいで」
コナンの瞳は不安で揺れていた。
彼の言う通り、現状では組織の【ビジネス】以外にも、分かっていないことが多い。
森教授の疑惑も晴れていない。
尾沼助手の死の真相も闇の中。
園城寺衛とさくらの母親との関係。
そして——
さくらの両親が残したものも、分からないまま——。
「心配するな、ボウヤ。確かに今は全てが闇の中。不安な気持ちになるのも分かる。
だが今は辛抱の時だ。闇雲に動いても真実は逃げるだけ。物事には押す時と引く時、そして待つ時も必要だ。
もう少しさくらの体調が良くなって心の治療が進めば、彼女の両親が遺したものが分かるかもしれない。それが何なのか——今は分からんが、もしかしたら俺たちに何かしらのヒントを与えてくれる物かもしれないんだ」
赤井の説明に、コナンが「え」と声を上げた。
「さくらさんのご両親が遺したもの……が?」
「ああ。前に冴島さんとジェームズを引き合わせた時にそんな話が出たんだ。雑談の中でだったから、余り突っ込んでは訊けなかったが……。
少なくともジェームズは、そう考えている節がある。
何にしても、君や君の仲間のことは、俺たちが必ず守ってやる。だから……もうしばらく待ってくれ」
赤井のペリドットの瞳が、コナンをジッと見つめる。
光り輝くグリーンの虹彩は、彼の決意と包み込むような優しさを湛えていた。それを見てコナンは表情を緩めてうなずいた。
「分かった。二人を信じて待つよ」
「ありがとう、ボウヤ」
コナンの言葉を聞いて、赤井が微笑んだ。
その時、ふいに夕日が差し込んだ。二人の視線が窓に向く。
雲の切れ間から顔を出した日の光は、温かく街を、二人を、そして穏やかに眠るさくらを照らす。
夕日に照らされた赤井が何か覚悟を決めた様にフッと口角を上げた。
間もなく避けては通れない大きなうねりがやってくる。
「絶対に負けられないね」
赤井を見上げ、コナンも微笑む。
「ああ、大事な人たちを守る。俺もボウヤも、そしてさくらも、それは同じだ。
なぁに、心配は無用だ。俺たちはひとりで戦ってるんじゃない。たくさんの仲間がいるんだ。
自分を、仲間を、信じてさえいれば……きっと道は開ける」
「うん、そうだね!」
二人は視界に広がる真っ赤な夕焼けを見つめ、決意を新たにしたのだった。
==第8章完==
「あ、昴さん」
リビングに昴が戻ってくると、コナンが心配そうに声をかけた。
「さくらさん、寝た?」
「ああ。退院したばかりだから『少し休め』と言ったんだが、なかなか寝なくてね。無理やり毛布を掛けたんだ。しばらくは文句を言っていたが、そのうち寝たよ」
「ごめんね。ボクが早く帰れば良かったんだけど」
「いや、ボウヤの話は興味深い。さくらももっと聞きたかったんだろうが、続きは俺と話そう」
変装は解いていなかったが、変声機をOFFにしたのだろう。昴は赤井の声と口調で話す。
「それで? 『前に彼女と似た人物と会った』と言っていたんだな?」
「うん。確かにそう言っていたよ。『子どもたちから元気をもらって、私の命が長らえられる。人生で二度目だな、人に生かしてもらうのは』って小声で言ったのを聞いたんだ」
パーティーでのことを思い出しながらコナンが説明した。
「それで不思議に思って、パーティーが盛り上がってる時にそれとなく訊いてみたんだよ。
その時に『似た人物と会った』って教えてくれたんだ」
コナンが答えると、昴は口元に手を当てて考え込んだ。
「命の恩人、と言うからには、さくらの母親が彼を助けたということか。以前というのが、どのあたりのことを言うのか分かれば良いんだが……」
「確かにそうだね」
コナンも赤井同様、難しい顔をして考え込む。
誕生会の時は少年探偵団もいたし、パーティーも盛り上がっていた。【本日の主役】相手に余り突っ込んだ話は出来ていない。
「あ、そういえば……その時、上の子が七歳だったって言ってたような……。ちょうど今の君たちと同い年だって。そんな小さな子を置いて、死ななくて良かったって」
まるでパズルのピースをはめるように、コナンは衛の言葉一つ一つを思い出す。
「上の子が七歳? たしか彼には息子が二人いて、長男は今年二十七だぞ。
つまり、園城寺氏とさくらの母親が会ったのは——」
「「二十年前‼」」
赤井とコナンの声が重なる。
二十年前と言えば、さくらの両親が亡くなった年と同じである。
「ちょっと待て。二十年前、園城寺氏はさくらの母親であるルナに命を助けられた。そしてその年、両親は殺されている。
もしかして、彼はその件に何か関係しているのかもしれない」
「ッ!」
コナンが勢いよく顔を上げた。
「詳しくは、冴島さんに訊いてみなければ分からんが……」
赤井は腕を組み、さらに考え込んだ。
「ねえ、赤井さん」
コナンが赤井に声をかける。どうしたボウヤ、と赤井はコナンの方へ視線を向けた
「ボク、すごく嫌な予感がするんだ。園城寺さんが怪しいとか……そういうわけでは、ないんだけど……」
珍しく言い淀むコナンの姿に、赤井は膝をついて目線を合わせた。
「どうした? ボウヤらしくないな」
赤井の問いかけに、コナンは下を向いたまま続ける。
「この間の古宿区の自死の現場の時に、ベルモットの姿を見た気がしたって言ったでしょ?
組織が新たな【ビジネス】に着手して、もうすでに動き出しているって事に、疑いの余地はない。だいぶ前から公安もその事実を掴んでいたみたいだしね。それなのに……肝心なことは何一つ分かってないんだ。
奴らがいったい何をしようとしているのか。水面下で何が進んでいるのか……。
さくらさんの体調も、心の方も、まだまだ不安定で万全とは言えない。うまく言えないけど……すごく不安なんだ。目に見えない何かが迫ってきているみたいで」
コナンの瞳は不安で揺れていた。
彼の言う通り、現状では組織の【ビジネス】以外にも、分かっていないことが多い。
森教授の疑惑も晴れていない。
尾沼助手の死の真相も闇の中。
園城寺衛とさくらの母親との関係。
そして——
さくらの両親が残したものも、分からないまま——。
「心配するな、ボウヤ。確かに今は全てが闇の中。不安な気持ちになるのも分かる。
だが今は辛抱の時だ。闇雲に動いても真実は逃げるだけ。物事には押す時と引く時、そして待つ時も必要だ。
もう少しさくらの体調が良くなって心の治療が進めば、彼女の両親が遺したものが分かるかもしれない。それが何なのか——今は分からんが、もしかしたら俺たちに何かしらのヒントを与えてくれる物かもしれないんだ」
赤井の説明に、コナンが「え」と声を上げた。
「さくらさんのご両親が遺したもの……が?」
「ああ。前に冴島さんとジェームズを引き合わせた時にそんな話が出たんだ。雑談の中でだったから、余り突っ込んでは訊けなかったが……。
少なくともジェームズは、そう考えている節がある。
何にしても、君や君の仲間のことは、俺たちが必ず守ってやる。だから……もうしばらく待ってくれ」
赤井のペリドットの瞳が、コナンをジッと見つめる。
光り輝くグリーンの虹彩は、彼の決意と包み込むような優しさを湛えていた。それを見てコナンは表情を緩めてうなずいた。
「分かった。二人を信じて待つよ」
「ありがとう、ボウヤ」
コナンの言葉を聞いて、赤井が微笑んだ。
その時、ふいに夕日が差し込んだ。二人の視線が窓に向く。
雲の切れ間から顔を出した日の光は、温かく街を、二人を、そして穏やかに眠るさくらを照らす。
夕日に照らされた赤井が何か覚悟を決めた様にフッと口角を上げた。
間もなく避けては通れない大きなうねりがやってくる。
「絶対に負けられないね」
赤井を見上げ、コナンも微笑む。
「ああ、大事な人たちを守る。俺もボウヤも、そしてさくらも、それは同じだ。
なぁに、心配は無用だ。俺たちはひとりで戦ってるんじゃない。たくさんの仲間がいるんだ。
自分を、仲間を、信じてさえいれば……きっと道は開ける」
「うん、そうだね!」
二人は視界に広がる真っ赤な夕焼けを見つめ、決意を新たにしたのだった。
==第8章完==