第8章 ~新たな決意を胸に~
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「勝負はこれからさ」
昴は口角を上げると再び構える。今度は昴から仕掛けた。
素早く相手との間合いを詰め、昴が回し蹴りを仕掛ける。相手がそれを避けながらパンチを仕掛けてきたのを見極め、左手でそれを払った。
さらに死角から放たれた蹴りを、昴はノールックで避け、手刀でスンホの首元を狙う。しかしそれも上手く回避された。
お互い何度か攻撃を放ったが決定打にはならない。しかし、スンホの重心が片足のみに乗った瞬間を見逃さず、昴はスンホの足を払った。
「ッ!」
体勢が崩れたスンホに、昴は再び足を振り上げ顔を蹴り上げる。相手が攻撃に転じた瞬間、すぐに距離を取った。
「なるほど、お前はジークンドーか。少しはやるようだ」
ズキリと痛む顔をさすりながら、スンホは昴に向かって声をかけた。その間にさくらが音もなく近づく。
「おっと!」
さくらの蹴りを回避して、スンホは正拳突きを放つ。
「くぅ!」
それをさくらは手のひらで受け止め、左に流した。さらにスンホの蹴りがさくらを狙うが、それも体を引いて避けた。
「ラスティー、お前もなかなかの身のこなし……蹴りも悪くない」
スンホは連続で正拳突きを繰り出す。
(は、速い…!)
手のひらでその突きを右に左に流しつつ、さくらは反撃のタイミングを伺うが、全くスキがない。
スンホが大きく腕を振り上げた瞬間に相手の間合いに転がり込み、相手との距離を詰めたがそれも読まれ、さくらの首元にスンホの膝蹴りが襲い掛かる。
ドガッ!
「くっ…あぁ!」
ドオォン!
ギリギリ両腕でガードしたものの、さくらは蹴りの衝撃で吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。
「さくら!」
「人の心配をするヒマはない」
さくらに駆け寄ろうとした昴の前に、サッとスンホが現れる。
さくらの時と同様、速い正拳突きを何発も繰り出した。
昴はそのすべてを受け止め、流す。合間に蹴りを放つが、相手もそれを器用に避けた。
(くそッ…コイツにはスキが無い…)
やがて昴は防戦一方になる。
ふとスンホの肩越しに、体を起こしたさくらが見えた。さくらが一瞬昴を見て、そして視線を動かす。その先には——
(なるほど)
さくらの意図を読み取った昴は、攻撃を避けながら少しずつさくらがよこした視線の先へ移動した。
ドンッ!
「くッ!」
流れる様な動きで、何度も繰り出されるスンホの正拳突きを、昴はいくつか胸部に食らう。
スンホの突きは重く、一瞬息ができなくなる。
それでもあと少し——。昴は歯を食いしばって痛みに耐えた。
「俺の突きを食らっても、まだ防御が出来るのか?」
余裕の表情でスンホが話しかけた。
「ああ、こんなへなちょこな突き、たいしたことはない」
昴はニヤリと笑って挑発した。
「その減らず口、今すぐへし折ってやるよ!」
スンホが正拳突きをやめ、今度は昴のアゴを狙って大きく腕を振り上げた。
その瞬間——
ガッ!!
スンホの足元にあったロープが突然ピンと張り、勢いよく上に跳ねあがった。
「な、なに⁉」
スンホがロープへ目を向けると、その先端をさくらが握っている。
誰かがデッキの手すりにかけたまま放置してあったロープを、スンホがまたいだ瞬間——
さくらが勢いよく引き上げたのだ。
足元をすくわれたスンホは、そのまま仰向けに転倒する。間髪入れずに昴の肘打ちが腹部に決まった。
「ぐふぉぉぉッ!!」
スンホは腹を押さえ、動かなくなった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
昴はスンホから少し距離を取り、胸を押さえてその場に膝をついた。
胸部に食らった突きのせいで、息がしづらい。
「昴さん!」
さくらがすぐさま昴に駆け寄る。
「大丈夫?」
さくらが泣きそうな顔で昴の顔を覗き込んだ。
「ああ、大丈夫だ。お前こそ平気か? 大立ち回りが出来るほど、体力回復してないだろ。それなのに無茶ばかりして……。お前はどこまで俺に心配かけるんだ」
はぁはぁと荒い呼吸をしながら、昴はさくらの顔を見た。口元から流れる血を自身の親指で拭い、苦し紛れに微笑む。
「ゴメンね」
さくらは眉尻を下げ、少し悲しげに微笑んだ。拭いきれなかった昴の血を、左手でそっと拭き取る。二人はコツンと額をぶつけ合うと、お互いの無事を確認し合った。
「ぐ……ふぅ…」
「「!」」
二人のすぐ横でスンホが唸り声を上げた。
「まさか……アレを食らって意識があるのか? 急所には確実に入ったはずだぞ…」
昴は信じられないという目でスンホを見る。
スンホは表情を歪ませ、腹を押さえて上半身を起こした。さらに膝をつき、デッキの手すりに掴まりながら立ち上がった。
昴は左手で胸を押さえる。先ほどの突き、間違いなくアバラに来ている。この状態で戦えるか——
そう思った瞬間、さくらが昴から離れた。立ち上がったばかりのスンホに、攻撃を仕掛けたのだ。
ドカッ!
最初の一撃がスンホの首元に決まるが、あまりダメージにならない。筋肉で強化されたスンホには、治療でトレーニングもままならなかったさくらの蹴りは通じなかった。
「くっ!」
ならばと、先ほど昴によってダメージを受けた腹を狙った。だが、息を切らしたさくらの攻撃は、すぐに避けられてしまう。
三度目の突きで、さくらはスンホに腕を掴まれた。
「さあラスティー、気は済んだか? ここで俺と一緒に死のう」
スンホはさくらを羽交い締めにし、起爆スイッチをポケットから出した。客たちがいっせいに悲鳴をあげる。
「スンホッ! よせッ!」
昴は胸を押さえたまま、力の限り叫ぶ。すぐにでもさくらを助けたいが、呼吸が整わないせいか、足に力が入らない。
反撃できない昴を見て、スンホは満足気に笑った。
「ああ…俺は最後の最後で、将軍様のお役に立てる……」
恍惚とした表情を見せながら、スンホの親指が起爆スイッチのロックを外す。
「昴さんッ!」
さくらはスンホの腕から逃れようと身をよじりながら、昴の名を呼ぶ。
「……」
フッと笑顔を見せた。
その直後——
さくらは渾身の力で、手すりに向かって体を揺すった。
「⁉」
バランスを崩したスンホは、さくらと共に手すりを越えて海に落下する。
ドボーン!!!
「さくら——ッ!!」
昴は胸の痛みも、呼吸の苦しさも忘れ、前のめりに転びそうになりながら、デッキの手すりに駆け寄った。
手すりを握って身を乗り出し、海を覗き込んだ、その瞬間——
ドュオォォォン!!
海から激しい水柱が吹き上がった。
「自爆だ!」
「爆弾男が自爆したぞ!」
「一緒に落ちた女性は⁉」
客たちが次々と叫ぶ。
昴は目の前の光景が信じられず、ただただ海を見つめる。やがてハッと我に返り、水面にさくらの姿を探した。
「さくらッ! さくら——ッ!!」
昴は何度も何度も、海に向かって叫んだ。爆発で乱れた波の間を、くまなく目で追う。
しかしついぞ、さくらの姿は発見できなかった。
昴は口角を上げると再び構える。今度は昴から仕掛けた。
素早く相手との間合いを詰め、昴が回し蹴りを仕掛ける。相手がそれを避けながらパンチを仕掛けてきたのを見極め、左手でそれを払った。
さらに死角から放たれた蹴りを、昴はノールックで避け、手刀でスンホの首元を狙う。しかしそれも上手く回避された。
お互い何度か攻撃を放ったが決定打にはならない。しかし、スンホの重心が片足のみに乗った瞬間を見逃さず、昴はスンホの足を払った。
「ッ!」
体勢が崩れたスンホに、昴は再び足を振り上げ顔を蹴り上げる。相手が攻撃に転じた瞬間、すぐに距離を取った。
「なるほど、お前はジークンドーか。少しはやるようだ」
ズキリと痛む顔をさすりながら、スンホは昴に向かって声をかけた。その間にさくらが音もなく近づく。
「おっと!」
さくらの蹴りを回避して、スンホは正拳突きを放つ。
「くぅ!」
それをさくらは手のひらで受け止め、左に流した。さらにスンホの蹴りがさくらを狙うが、それも体を引いて避けた。
「ラスティー、お前もなかなかの身のこなし……蹴りも悪くない」
スンホは連続で正拳突きを繰り出す。
(は、速い…!)
手のひらでその突きを右に左に流しつつ、さくらは反撃のタイミングを伺うが、全くスキがない。
スンホが大きく腕を振り上げた瞬間に相手の間合いに転がり込み、相手との距離を詰めたがそれも読まれ、さくらの首元にスンホの膝蹴りが襲い掛かる。
ドガッ!
「くっ…あぁ!」
ドオォン!
ギリギリ両腕でガードしたものの、さくらは蹴りの衝撃で吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。
「さくら!」
「人の心配をするヒマはない」
さくらに駆け寄ろうとした昴の前に、サッとスンホが現れる。
さくらの時と同様、速い正拳突きを何発も繰り出した。
昴はそのすべてを受け止め、流す。合間に蹴りを放つが、相手もそれを器用に避けた。
(くそッ…コイツにはスキが無い…)
やがて昴は防戦一方になる。
ふとスンホの肩越しに、体を起こしたさくらが見えた。さくらが一瞬昴を見て、そして視線を動かす。その先には——
(なるほど)
さくらの意図を読み取った昴は、攻撃を避けながら少しずつさくらがよこした視線の先へ移動した。
ドンッ!
「くッ!」
流れる様な動きで、何度も繰り出されるスンホの正拳突きを、昴はいくつか胸部に食らう。
スンホの突きは重く、一瞬息ができなくなる。
それでもあと少し——。昴は歯を食いしばって痛みに耐えた。
「俺の突きを食らっても、まだ防御が出来るのか?」
余裕の表情でスンホが話しかけた。
「ああ、こんなへなちょこな突き、たいしたことはない」
昴はニヤリと笑って挑発した。
「その減らず口、今すぐへし折ってやるよ!」
スンホが正拳突きをやめ、今度は昴のアゴを狙って大きく腕を振り上げた。
その瞬間——
ガッ!!
スンホの足元にあったロープが突然ピンと張り、勢いよく上に跳ねあがった。
「な、なに⁉」
スンホがロープへ目を向けると、その先端をさくらが握っている。
誰かがデッキの手すりにかけたまま放置してあったロープを、スンホがまたいだ瞬間——
さくらが勢いよく引き上げたのだ。
足元をすくわれたスンホは、そのまま仰向けに転倒する。間髪入れずに昴の肘打ちが腹部に決まった。
「ぐふぉぉぉッ!!」
スンホは腹を押さえ、動かなくなった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
昴はスンホから少し距離を取り、胸を押さえてその場に膝をついた。
胸部に食らった突きのせいで、息がしづらい。
「昴さん!」
さくらがすぐさま昴に駆け寄る。
「大丈夫?」
さくらが泣きそうな顔で昴の顔を覗き込んだ。
「ああ、大丈夫だ。お前こそ平気か? 大立ち回りが出来るほど、体力回復してないだろ。それなのに無茶ばかりして……。お前はどこまで俺に心配かけるんだ」
はぁはぁと荒い呼吸をしながら、昴はさくらの顔を見た。口元から流れる血を自身の親指で拭い、苦し紛れに微笑む。
「ゴメンね」
さくらは眉尻を下げ、少し悲しげに微笑んだ。拭いきれなかった昴の血を、左手でそっと拭き取る。二人はコツンと額をぶつけ合うと、お互いの無事を確認し合った。
「ぐ……ふぅ…」
「「!」」
二人のすぐ横でスンホが唸り声を上げた。
「まさか……アレを食らって意識があるのか? 急所には確実に入ったはずだぞ…」
昴は信じられないという目でスンホを見る。
スンホは表情を歪ませ、腹を押さえて上半身を起こした。さらに膝をつき、デッキの手すりに掴まりながら立ち上がった。
昴は左手で胸を押さえる。先ほどの突き、間違いなくアバラに来ている。この状態で戦えるか——
そう思った瞬間、さくらが昴から離れた。立ち上がったばかりのスンホに、攻撃を仕掛けたのだ。
ドカッ!
最初の一撃がスンホの首元に決まるが、あまりダメージにならない。筋肉で強化されたスンホには、治療でトレーニングもままならなかったさくらの蹴りは通じなかった。
「くっ!」
ならばと、先ほど昴によってダメージを受けた腹を狙った。だが、息を切らしたさくらの攻撃は、すぐに避けられてしまう。
三度目の突きで、さくらはスンホに腕を掴まれた。
「さあラスティー、気は済んだか? ここで俺と一緒に死のう」
スンホはさくらを羽交い締めにし、起爆スイッチをポケットから出した。客たちがいっせいに悲鳴をあげる。
「スンホッ! よせッ!」
昴は胸を押さえたまま、力の限り叫ぶ。すぐにでもさくらを助けたいが、呼吸が整わないせいか、足に力が入らない。
反撃できない昴を見て、スンホは満足気に笑った。
「ああ…俺は最後の最後で、将軍様のお役に立てる……」
恍惚とした表情を見せながら、スンホの親指が起爆スイッチのロックを外す。
「昴さんッ!」
さくらはスンホの腕から逃れようと身をよじりながら、昴の名を呼ぶ。
「……」
フッと笑顔を見せた。
その直後——
さくらは渾身の力で、手すりに向かって体を揺すった。
「⁉」
バランスを崩したスンホは、さくらと共に手すりを越えて海に落下する。
ドボーン!!!
「さくら——ッ!!」
昴は胸の痛みも、呼吸の苦しさも忘れ、前のめりに転びそうになりながら、デッキの手すりに駆け寄った。
手すりを握って身を乗り出し、海を覗き込んだ、その瞬間——
ドュオォォォン!!
海から激しい水柱が吹き上がった。
「自爆だ!」
「爆弾男が自爆したぞ!」
「一緒に落ちた女性は⁉」
客たちが次々と叫ぶ。
昴は目の前の光景が信じられず、ただただ海を見つめる。やがてハッと我に返り、水面にさくらの姿を探した。
「さくらッ! さくら——ッ!!」
昴は何度も何度も、海に向かって叫んだ。爆発で乱れた波の間を、くまなく目で追う。
しかしついぞ、さくらの姿は発見できなかった。