第8章 ~新たな決意を胸に~
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***
「コナンくーん、園城寺さんへのプレゼント出来た?」
蘭がキッチンから声をかけた。
「ん~……あとちょっ…と~……ん、よし! 出来た~!」
ミサンガの糸を動かしながらコナンが答える。
「キリの良いところでお茶にしない? 実はさっき買い物出た時に、美味しそうなシュークリームあったから買って来ちゃった」
「うん! やったぁ!」
コナンは嬉しそうに返事をすると、広げていた道具や材料を小さな箱の中へとしまう。
ちょうどテーブルが空いたところで、蘭がおやつをトレーに載せて部屋に入ってきた。
「わぁ! 美味しそう!」
「でしょう? これ見た瞬間『買いだな』って思っちゃった」
温かい紅茶が入ったカップと、シュークリームの載ったお皿をコナンの前に置いた蘭は、得意げにウインクして見せた。
二人でさっそくかぶりつく。
「ん~! 美味し~い!」
「コレ甘すぎなくていいね~。園子姉ちゃんだったら三つはいけそうだね」
「ふふふ。そうだね!」
園子のこと良く知ってるよね~、と蘭に言われ、コナンは慌てて「お、おいし~!」と二口目にかぶりついた。
「あれ? そういえばストラップ、二つとも出来上がったんだね」
箱の中の作品を見て蘭が声をかける。
「うん。園城寺さんの誕生日プレゼントは出来たんだけど、ボクまだ作りたいものがあって」
「作りたいもの?」
蘭が小首を傾げた。
「へへへ。まどろっこしい二人に、ちょっとしたプレゼントだよ」
「まどろっこしい……?」
コナンの言っている意味が分からず、蘭は考え込む。
(小学生のコナンくんが『まどろっこしい』って思う人たち? いったい誰のことだろ?)
コナンは(見かけ上)小学一年生。男女の色恋沙汰にはまだ早い。
「へへへ~。ナイショ!」
蘭の疑問を知りつつ、クリームを口の周りに付けたコナンがニッコリ微笑んだ。
翌日夕方——
阿笠博士の家に少年探偵団が勢ぞろいした。
それぞれが用意したプレゼントをキッチンのカウンターに並べてみる。
「うわぁ、元太くん! たくさん作りましたね~!」
「ホント! これだけあれば大きなお部屋でも飾りつけできるね」
カウンターの、ほぼ半分を埋め尽くすほどの輪つなぎ。色とりどりの折り紙が使われており、とても華やかだ。
「頑張ったなぁ、元太!」
「も~大変だったんだぜ! なんたって切るのが多くて…。でも誰にも手伝ってもらわずに作ったんだぞ!」
オレ一人で頑張ったんだ、と元太は得意げに胸を張った。
「光彦のも良くまとまってるじゃねーか」
文房具店で買ったノートに光彦らしい丁寧な字で物語がつづられている。所々に挿絵も入れたらしく、なかなかの出来栄えだった。
「これ、オレも読みてーな……」
「歩美も~!」
二人は羨ましそうにプレゼントを眺めた。
「さすがにこれはプレゼントだからダメですけど、とても良くできたので記念にコピー取ったんです。それなら今度見せてあげますよ」
自信作らしく、光彦は得意顔。
「「やった~!」」
コピーがあると聞いて元太と歩美は歓声を上げた。
そんな二人を横目に、哀がクマのぬいぐるみに手を伸ばす。
「吉田さんのクマさん、可愛いわ。羊毛フェルトってこんなにしっかりするのね」
羊毛フェルトで作られた茶色のクマは、白いベストを着て、赤い蝶ネクタイをしていた。
「コレ、ベストが青かったら誰かさんみたい」
「「ホントだ~」」
哀の発言に、元太と光彦が目を丸くする。
「レシピにはベストだけだったんだけど、お耳のところに使った赤いフェルトが残っちゃったから蝶ネクタイ作ってみたの。
そう言われてみれば、コナンくんみたいだね!」
言われるまで気が付かなかった~、と歩美は笑う。一方コナンはなんだか照れくさくて、顔を赤くしながらソッポを向いた。
「なによ、別にあなただとは言ってないでしょ」
「い、いや…似てるって言われると……可愛いなんて…フッ……ちょっと照れちまうな…」
「クマが可愛いって言ってるんだけど」
蝶ネクタイが似てるってだけよ、と哀は呆れ顔。それを見て博士が必死に笑いを堪えていた。
「私は食べ物だから、当日の朝早起きして作るわ。で、江戸川くんのは?」
呆れ顔のまま、哀がコナンに問いかけた。
その顔やめろよ、とジト目になったコナンは持って来たバッグからストラップを取り出した。
「わあ、すごい」
平編みで作られたストラップは、天然石が一粒一粒編み込まれている。デザインはシンプルで、大人の男性でも持ち歩けるような仕上がりだった。
「これ、難しかったんじゃねーか?」
感動した元太がコナンに問いかけた。
「いや、平編みが出来りゃ後は簡単だぜ。
天然石はあらかじめ糸に通しておくんだ。一回だけ平編みしたら、一粒天然石を編み目に寄せて石が動かねーように縛る。
石が固定出来たらまたその編み目に次の石を寄せて縛る、を繰り返して……。
石を三つ固定出来たら、ねじり編みを1.5センチくらい編めば、あとはゆるまないように全部の糸をまとめてギュッと縛って、残った糸をフリンジ状にほぐせば完成さ」
ストラップの結び目を指さし、コナンが説明した。
「平編みは左右交互だけど、ねじり編みは左右どちらかだけ編むやり方だから、すぐ覚えられるよ」
「「「へぇぇ~」」」
とてもオシャレなストラップが簡単にできると知って、子どもたちは興味津々で見ていた。
「友情を意味する、ターコイズを使ったお守りストラップを、おじいさんと執事長さんに」
コナンらしい粋な計らいに、哀はフッと口元を緩めた。
「そういえばターコイズのビーズは全部で八個買ってたわよね? あと二つは?」
「それはナイショ」
哀の問いかけにコナンは意味ありげにニッと笑った。
プレゼントを見せあった探偵団の子どもたちは、夕方輪つなぎを取りに来てくれた執事長と、当日の打ち合わせをして解散となった。
いよいよサプライズが間近に迫り、にわかに盛り上がりを見せる元太たち。彼らと共に博士の家を出ると、コナンが声をかけた。
「あ、わりぃ。オレ、昴さんに借りた本返してくるから先帰ってくれ」
「おう、そうか」
「パーティーは明後日の日曜日です。遅れないで下さいよ」
「コナンくん、バイバーイ」
特に気にすることなく、子どもたちは工藤邸とは逆の方へ歩いていく。三人の姿を見送って、コナンは踵を返すと工藤邸へと向かった。
リンゴ~ン
工藤邸のチャイムが鳴る。
すぐに『はい』というさくらの声が聞こえた。
「あ、さくらさん。コナンです」
『あら、いらっしゃい。ちょっと待ってて』
インターホンが切れてから数十秒後——ガチャリとドアが開き、さくらが声をかけた。
「コナンくんどうぞ、上がって」
「はーい。お邪魔しまーす」
さくらに招き入れられ、コナンは工藤邸へと入った。
「おや、こんな時間にどうしました?」
リビングには昴がいて、二人はそろそろ夕ご飯の用意をしようか、と話していたところだという。
「実は、渡したいものがあったんだ~」
コナンは持っていたバッグをゴソゴソとあさると、何やら取り出す。それをリビングのテーブルに置いた。
「これ…ターコイズのチャーム……」
見覚えのある天然石のビーズを見て、さくらは目を丸くした。
「これ、ボクが作ったんだ。まあ……作ったって言って良いのか分からないくらい簡単なものだけど。
ターコイズは昔、旅の安全を願うお守りだったんだって。危険な仕事をする二人に、ボクからのプレゼント」
ターコイズのビーズと、二回りほど小さなラピスラズリのビーズがTピンで繋がれ、小さなカニカンが取り付けられていた。
「ラピスラズリは、ストラップの作り方を教わった時に、作家さんから貰ったんだよ。『二粒しか無いけどよかったら使って』って。
同系色だし、天然石の意味としても『幸運』って意味なんだって。ターコイズと両方持ってたら最強だと思わない?」
同じものを二つ並べて「ペアのチャームだよ」とコナンは微笑む。
「ありがとうコナンくん! これ持ってたら、私たち強運になりそうね!」
さくらが嬉しそうに手に取った。
「おや、私の分もあるのですか? しかもさくらとペアとは……。少々照れますね」
もう一方を手に取った昴も嬉しそうにチャームを眺める。
二人は相談して、昴は車のキーに、さくらはいつも使うバッグのファスナーに取り付けることにした。
「ターコイズは空の色に似ていますね」
チャームを眺めていた昴が突然つぶやいた。
「えっ! あ……う、うん。そぅ…だね」
ドキリとしたさくらが、しどろもどろで答える。
「ん? 私、何かおかしなこと言いました?」
さくらの顔がほんのり赤い。昴は不思議そうに訊ねた。
『どんなに離れてしまっても、この空を見るたびにあなたと私は繋がっている』
最近知った、ターコイズの宝石言葉。
それは、『どこに居ようとも、自分たちは永遠に一緒だ』と、空を見上げるさくらの祈りと偶然にも同じだった。
「何でもないよ、ね? さくらさん」
満面の笑みを浮かべ、コナンはさくらの代わりに答えた。
「?」
昴は尚も不思議そうに、小首を傾げる。
(常に危険の中にいる二人が、この先も無事に過ごせますように。
そして、別々の警察組織に所属していても——この空のように、二人は永遠に繋がっている。決して離れることは無い。
まどろっこしい二人に、俺からのささやかなプレゼントだよ)
二人を見上げてコナンは微笑む。その顔はほんのわずか、大人びていた。
「コナンくーん、園城寺さんへのプレゼント出来た?」
蘭がキッチンから声をかけた。
「ん~……あとちょっ…と~……ん、よし! 出来た~!」
ミサンガの糸を動かしながらコナンが答える。
「キリの良いところでお茶にしない? 実はさっき買い物出た時に、美味しそうなシュークリームあったから買って来ちゃった」
「うん! やったぁ!」
コナンは嬉しそうに返事をすると、広げていた道具や材料を小さな箱の中へとしまう。
ちょうどテーブルが空いたところで、蘭がおやつをトレーに載せて部屋に入ってきた。
「わぁ! 美味しそう!」
「でしょう? これ見た瞬間『買いだな』って思っちゃった」
温かい紅茶が入ったカップと、シュークリームの載ったお皿をコナンの前に置いた蘭は、得意げにウインクして見せた。
二人でさっそくかぶりつく。
「ん~! 美味し~い!」
「コレ甘すぎなくていいね~。園子姉ちゃんだったら三つはいけそうだね」
「ふふふ。そうだね!」
園子のこと良く知ってるよね~、と蘭に言われ、コナンは慌てて「お、おいし~!」と二口目にかぶりついた。
「あれ? そういえばストラップ、二つとも出来上がったんだね」
箱の中の作品を見て蘭が声をかける。
「うん。園城寺さんの誕生日プレゼントは出来たんだけど、ボクまだ作りたいものがあって」
「作りたいもの?」
蘭が小首を傾げた。
「へへへ。まどろっこしい二人に、ちょっとしたプレゼントだよ」
「まどろっこしい……?」
コナンの言っている意味が分からず、蘭は考え込む。
(小学生のコナンくんが『まどろっこしい』って思う人たち? いったい誰のことだろ?)
コナンは(見かけ上)小学一年生。男女の色恋沙汰にはまだ早い。
「へへへ~。ナイショ!」
蘭の疑問を知りつつ、クリームを口の周りに付けたコナンがニッコリ微笑んだ。
翌日夕方——
阿笠博士の家に少年探偵団が勢ぞろいした。
それぞれが用意したプレゼントをキッチンのカウンターに並べてみる。
「うわぁ、元太くん! たくさん作りましたね~!」
「ホント! これだけあれば大きなお部屋でも飾りつけできるね」
カウンターの、ほぼ半分を埋め尽くすほどの輪つなぎ。色とりどりの折り紙が使われており、とても華やかだ。
「頑張ったなぁ、元太!」
「も~大変だったんだぜ! なんたって切るのが多くて…。でも誰にも手伝ってもらわずに作ったんだぞ!」
オレ一人で頑張ったんだ、と元太は得意げに胸を張った。
「光彦のも良くまとまってるじゃねーか」
文房具店で買ったノートに光彦らしい丁寧な字で物語がつづられている。所々に挿絵も入れたらしく、なかなかの出来栄えだった。
「これ、オレも読みてーな……」
「歩美も~!」
二人は羨ましそうにプレゼントを眺めた。
「さすがにこれはプレゼントだからダメですけど、とても良くできたので記念にコピー取ったんです。それなら今度見せてあげますよ」
自信作らしく、光彦は得意顔。
「「やった~!」」
コピーがあると聞いて元太と歩美は歓声を上げた。
そんな二人を横目に、哀がクマのぬいぐるみに手を伸ばす。
「吉田さんのクマさん、可愛いわ。羊毛フェルトってこんなにしっかりするのね」
羊毛フェルトで作られた茶色のクマは、白いベストを着て、赤い蝶ネクタイをしていた。
「コレ、ベストが青かったら誰かさんみたい」
「「ホントだ~」」
哀の発言に、元太と光彦が目を丸くする。
「レシピにはベストだけだったんだけど、お耳のところに使った赤いフェルトが残っちゃったから蝶ネクタイ作ってみたの。
そう言われてみれば、コナンくんみたいだね!」
言われるまで気が付かなかった~、と歩美は笑う。一方コナンはなんだか照れくさくて、顔を赤くしながらソッポを向いた。
「なによ、別にあなただとは言ってないでしょ」
「い、いや…似てるって言われると……可愛いなんて…フッ……ちょっと照れちまうな…」
「クマが可愛いって言ってるんだけど」
蝶ネクタイが似てるってだけよ、と哀は呆れ顔。それを見て博士が必死に笑いを堪えていた。
「私は食べ物だから、当日の朝早起きして作るわ。で、江戸川くんのは?」
呆れ顔のまま、哀がコナンに問いかけた。
その顔やめろよ、とジト目になったコナンは持って来たバッグからストラップを取り出した。
「わあ、すごい」
平編みで作られたストラップは、天然石が一粒一粒編み込まれている。デザインはシンプルで、大人の男性でも持ち歩けるような仕上がりだった。
「これ、難しかったんじゃねーか?」
感動した元太がコナンに問いかけた。
「いや、平編みが出来りゃ後は簡単だぜ。
天然石はあらかじめ糸に通しておくんだ。一回だけ平編みしたら、一粒天然石を編み目に寄せて石が動かねーように縛る。
石が固定出来たらまたその編み目に次の石を寄せて縛る、を繰り返して……。
石を三つ固定出来たら、ねじり編みを1.5センチくらい編めば、あとはゆるまないように全部の糸をまとめてギュッと縛って、残った糸をフリンジ状にほぐせば完成さ」
ストラップの結び目を指さし、コナンが説明した。
「平編みは左右交互だけど、ねじり編みは左右どちらかだけ編むやり方だから、すぐ覚えられるよ」
「「「へぇぇ~」」」
とてもオシャレなストラップが簡単にできると知って、子どもたちは興味津々で見ていた。
「友情を意味する、ターコイズを使ったお守りストラップを、おじいさんと執事長さんに」
コナンらしい粋な計らいに、哀はフッと口元を緩めた。
「そういえばターコイズのビーズは全部で八個買ってたわよね? あと二つは?」
「それはナイショ」
哀の問いかけにコナンは意味ありげにニッと笑った。
プレゼントを見せあった探偵団の子どもたちは、夕方輪つなぎを取りに来てくれた執事長と、当日の打ち合わせをして解散となった。
いよいよサプライズが間近に迫り、にわかに盛り上がりを見せる元太たち。彼らと共に博士の家を出ると、コナンが声をかけた。
「あ、わりぃ。オレ、昴さんに借りた本返してくるから先帰ってくれ」
「おう、そうか」
「パーティーは明後日の日曜日です。遅れないで下さいよ」
「コナンくん、バイバーイ」
特に気にすることなく、子どもたちは工藤邸とは逆の方へ歩いていく。三人の姿を見送って、コナンは踵を返すと工藤邸へと向かった。
リンゴ~ン
工藤邸のチャイムが鳴る。
すぐに『はい』というさくらの声が聞こえた。
「あ、さくらさん。コナンです」
『あら、いらっしゃい。ちょっと待ってて』
インターホンが切れてから数十秒後——ガチャリとドアが開き、さくらが声をかけた。
「コナンくんどうぞ、上がって」
「はーい。お邪魔しまーす」
さくらに招き入れられ、コナンは工藤邸へと入った。
「おや、こんな時間にどうしました?」
リビングには昴がいて、二人はそろそろ夕ご飯の用意をしようか、と話していたところだという。
「実は、渡したいものがあったんだ~」
コナンは持っていたバッグをゴソゴソとあさると、何やら取り出す。それをリビングのテーブルに置いた。
「これ…ターコイズのチャーム……」
見覚えのある天然石のビーズを見て、さくらは目を丸くした。
「これ、ボクが作ったんだ。まあ……作ったって言って良いのか分からないくらい簡単なものだけど。
ターコイズは昔、旅の安全を願うお守りだったんだって。危険な仕事をする二人に、ボクからのプレゼント」
ターコイズのビーズと、二回りほど小さなラピスラズリのビーズがTピンで繋がれ、小さなカニカンが取り付けられていた。
「ラピスラズリは、ストラップの作り方を教わった時に、作家さんから貰ったんだよ。『二粒しか無いけどよかったら使って』って。
同系色だし、天然石の意味としても『幸運』って意味なんだって。ターコイズと両方持ってたら最強だと思わない?」
同じものを二つ並べて「ペアのチャームだよ」とコナンは微笑む。
「ありがとうコナンくん! これ持ってたら、私たち強運になりそうね!」
さくらが嬉しそうに手に取った。
「おや、私の分もあるのですか? しかもさくらとペアとは……。少々照れますね」
もう一方を手に取った昴も嬉しそうにチャームを眺める。
二人は相談して、昴は車のキーに、さくらはいつも使うバッグのファスナーに取り付けることにした。
「ターコイズは空の色に似ていますね」
チャームを眺めていた昴が突然つぶやいた。
「えっ! あ……う、うん。そぅ…だね」
ドキリとしたさくらが、しどろもどろで答える。
「ん? 私、何かおかしなこと言いました?」
さくらの顔がほんのり赤い。昴は不思議そうに訊ねた。
『どんなに離れてしまっても、この空を見るたびにあなたと私は繋がっている』
最近知った、ターコイズの宝石言葉。
それは、『どこに居ようとも、自分たちは永遠に一緒だ』と、空を見上げるさくらの祈りと偶然にも同じだった。
「何でもないよ、ね? さくらさん」
満面の笑みを浮かべ、コナンはさくらの代わりに答えた。
「?」
昴は尚も不思議そうに、小首を傾げる。
(常に危険の中にいる二人が、この先も無事に過ごせますように。
そして、別々の警察組織に所属していても——この空のように、二人は永遠に繋がっている。決して離れることは無い。
まどろっこしい二人に、俺からのささやかなプレゼントだよ)
二人を見上げてコナンは微笑む。その顔はほんのわずか、大人びていた。