第8章 ~新たな決意を胸に~
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「さてと。文房具店はこの先の大きなお店に行きましょうか。種類も豊富ですし、折り紙などもたくさんありますよ」
「はいッ!」
「おうよ!」
昴と博士に先導され、元太、光彦が元気よく歩き出す。休日の街はどこも人であふれていた。
大型文具店に着くと、そこには色とりどりのカードや色紙はもちろん、キレイな色ペンやマジック、シールなど——。
どれを選んでいいか迷うほど種類が豊富で男性陣四人はあっけにとられた。
「うひゃぁ……いっぱいあるのぅ」
「ボク達だけでこの中から選べますかね……」
「オレ、目がチカチカしてきた」
「これは……私達より、さくら達の方が良かったかもしれませんね」
小一男児二人と発明好きの中年男。そして、自称工学部の大学院生。メッセージカードやプレゼントの材料をチョイスするには些か『力不足』なのでは、と感じる組み合わせである。
四人は一抹の不安を感じつつ、とりあえず目的のメッセージカード売り場へと移動した。
「年配の男性に差し上げるのでしたら、落ち着いたデザインの方が良いでしょうね。どれが良いかな」
昴は派手なデザインや、幼稚過ぎるものを避け、落ち着いた色の物をいくつか選んで元太たちに見せた。
「ボク、この四葉のクローバーとか良いと思います。お誕生日祝いですし、幸せを運ぶクローバーなら喜んでもらえそうです」
「おう、そうだな! オレたちから幸せのプレゼントなんて、なんか良いじゃんか!」
光彦が指さしたカードを見て元太もうなずいた。
「おぉ、なかなか良いセンスをしておるな。じゃが……みんなお揃いのカードでは、誰からもらったカードか分からなくなってしまいそうじゃわい。
おぉ、そうじゃ。それぞれ好きなシールを選んで貼っておけば、誰からのカードかすぐ分かるぞい?」
「珍しく冴えてますね、博士!」
「おうよ! たまには良いこと言うな!」
一言多いわい! と反論する博士をまあまあ…となだめて、昴はクローバーのカードを五枚手に取った。
「ではシールを見に行きましょうか。二人は好きなものを選んでください。今ここに居ない三人のシールは、相談して皆で決めましょう」
すばるの提案で四人はシールコーナーへと移動。元太と光彦はそれぞれお気に入りのシールを早々に決めた。
難航すると思われた女性陣のシールだが『三人寄れば文殊の知恵』とは良く言ったもので、ことわざより一人多い四人で知恵を出し合い、特に意見が割れることも無く次々とシールを決めていった。
その頃女性陣とコナンは——
昴達と分かれた場所から程近い、手芸店に居た。
「歩美ちゃんはクマさんを作るって言ってたけど、材料は何が必要なの?」
さくらが店内を見回し、歩美に問いかけた。
「えっとね、羊毛フェルト。ママがお友達から作り方の紙をもらって来てくれたの」
歩美はそう言って、羊毛フェルトで作るクマのレシピを見せてくれた。
「へぇ~、なるほどね。ニードルでちくちく刺すと羊毛が固くなるんだ。専用の針も有るんだね」
レシピを見たさくらは目を丸くした。形を整えながら専用のニードルで何度も刺すと、羊毛が絡み合って固くなるらしい。
レシピに載っているクマは茶色、白、赤の羊毛と、目のパーツがあれば良いようだ。
「じゃあ、クマさんはこれと、これと…あと目はこの大きさで良い?」
「うん!」
ニードルは歩美の母親が持っているようなので、さくらは材料だけカゴに入れた。
「それから……コナンくんは?」
歩美の材料が揃ったところで、今度はコナンに問いかける。
「えっと…刺繍糸かミサンガ糸っていうのが必要なんだって。あ、そうそう。作家のお姉さんから《友情》を意味する天然石が《ターコイズ》だって教わったんだ。それも一緒に編み込むから、ターコイズのビーズがほしいな」
「ターコイズ? それってトルコ石のことよね? それが《友情》を意味する天然石なの?」
わりとメジャーなターコイズにそのようないわれがあるとは。さくらも初耳だった。
「うん、ボクも初めて知ったんだよ。ターコイズは空の色。『離れてしまっても、この空を見るたびにあなたと私は繋がっている』って意味らしいよ」
「⁉」
コナンの説明を聞いてさくらはドキリとした。
「あら、そういえば……誰かも似たような事言っていたわね」
哀が意地悪そうな顔をして微笑む。
「そ、そうね……だ、誰だったかな~…」
照れくさそうに視線を泳がせ、さくらは「刺繍糸かミサンガ糸よね」とひとり言を言いながら店の奥へと行ってしまった。
「灰原、意地悪するんじゃねーぞ」
「あら、意地悪なんかしてないわ。似たような話をどこかで聞いたことあるって言っただけよ」
コナンが哀に耳打ちすると、哀はいたずらっ子のように笑ってコナンの忠告をサラリと受け流した。
「あの二人、付き合ってるくせにまどろっこしいのよね。さっさと結婚しちゃえば良いのに」
さくらの正体は知っているものの、昴の正体について詳しく知らない灰原は、ズバッと鋭いところを突いた。
「ま、まあ……それってタイミングってもんがあるだろ?」
「今こそ、その時だと思うけど。潜入捜査官なんて危険がいっぱいじゃない。彼女が死の危機に直面した時に、何が何でも彼の元に戻ろうって思えるような【約束】って必要でしょう?
あと…考えたくはないけど、万が一何かあった時だって、みんなに二人の関係を認めてもらうって、大事なことだと思うけど」
「別にそれは家族にならなくたって同じだろ?」
恋人同士の昴とさくらは、哀が言う『お互いの為に何としても生きようとする』という気持ちは常に有る。
別に結婚にこだわらなくたって……、とコナンは哀に反論した。
「あら、あなた何も分かってないのね。結婚ってたかが紙切れ一枚の関係じゃ無いのよ。それは相手が亡くなった時、本当の意味で力を発揮するの。家族でなければ何かあった時に連絡は来ないし、万一の時——『他人』は遺体も遺品も引き取れないのよ」
先ほどとは違い真面目な顔で語る灰原に、コナンはハッと顔を上げた。
どんなに深く愛し合っていようと死んでしまえば、法律上『親族』しか遺体や遺品の引取りは出来ない——。
それは哀自身の経験でもある。姉が死んだ直後は、組織の科学者としてほぼ囚われの身だったこともあり、遺体とは対面出来なかった。それは仕方が無かったとしても。
今は『灰原哀』として、ある程度の自由を得ているにもかかわらず、未だに『家族』として警察から遺品を受け取ることが出来ていない。
その理由は『灰原哀』は『宮野明美』の親族ではないから——。
「まあ、生きてさえいれば良いことなんだけどね」
哀がため息交じりにつぶやいた言葉に、コナンはグッと唇を噛んだ。
「生きてさえいれば」
それがどれほど尊いことで、そして難しいか。さくらをより近くで見てきたコナンだからこそ、その言葉の重みは良く分かる。
「ターコイズはね、《友情》の意味の他に、相手の安全を願う《お守り》としての役割もあるのよね。二人にとって相手の存在こそが、このターコイズのように《お守り》になるといいわね」
哀は天然石のビーズが並ぶ台に近づき、石を手に取る。
『相手の為に絶対に生きて戻る——』
空色のターコイズを見つめる哀の目が、悲し気に細められた。
「はいッ!」
「おうよ!」
昴と博士に先導され、元太、光彦が元気よく歩き出す。休日の街はどこも人であふれていた。
大型文具店に着くと、そこには色とりどりのカードや色紙はもちろん、キレイな色ペンやマジック、シールなど——。
どれを選んでいいか迷うほど種類が豊富で男性陣四人はあっけにとられた。
「うひゃぁ……いっぱいあるのぅ」
「ボク達だけでこの中から選べますかね……」
「オレ、目がチカチカしてきた」
「これは……私達より、さくら達の方が良かったかもしれませんね」
小一男児二人と発明好きの中年男。そして、自称工学部の大学院生。メッセージカードやプレゼントの材料をチョイスするには些か『力不足』なのでは、と感じる組み合わせである。
四人は一抹の不安を感じつつ、とりあえず目的のメッセージカード売り場へと移動した。
「年配の男性に差し上げるのでしたら、落ち着いたデザインの方が良いでしょうね。どれが良いかな」
昴は派手なデザインや、幼稚過ぎるものを避け、落ち着いた色の物をいくつか選んで元太たちに見せた。
「ボク、この四葉のクローバーとか良いと思います。お誕生日祝いですし、幸せを運ぶクローバーなら喜んでもらえそうです」
「おう、そうだな! オレたちから幸せのプレゼントなんて、なんか良いじゃんか!」
光彦が指さしたカードを見て元太もうなずいた。
「おぉ、なかなか良いセンスをしておるな。じゃが……みんなお揃いのカードでは、誰からもらったカードか分からなくなってしまいそうじゃわい。
おぉ、そうじゃ。それぞれ好きなシールを選んで貼っておけば、誰からのカードかすぐ分かるぞい?」
「珍しく冴えてますね、博士!」
「おうよ! たまには良いこと言うな!」
一言多いわい! と反論する博士をまあまあ…となだめて、昴はクローバーのカードを五枚手に取った。
「ではシールを見に行きましょうか。二人は好きなものを選んでください。今ここに居ない三人のシールは、相談して皆で決めましょう」
すばるの提案で四人はシールコーナーへと移動。元太と光彦はそれぞれお気に入りのシールを早々に決めた。
難航すると思われた女性陣のシールだが『三人寄れば文殊の知恵』とは良く言ったもので、ことわざより一人多い四人で知恵を出し合い、特に意見が割れることも無く次々とシールを決めていった。
その頃女性陣とコナンは——
昴達と分かれた場所から程近い、手芸店に居た。
「歩美ちゃんはクマさんを作るって言ってたけど、材料は何が必要なの?」
さくらが店内を見回し、歩美に問いかけた。
「えっとね、羊毛フェルト。ママがお友達から作り方の紙をもらって来てくれたの」
歩美はそう言って、羊毛フェルトで作るクマのレシピを見せてくれた。
「へぇ~、なるほどね。ニードルでちくちく刺すと羊毛が固くなるんだ。専用の針も有るんだね」
レシピを見たさくらは目を丸くした。形を整えながら専用のニードルで何度も刺すと、羊毛が絡み合って固くなるらしい。
レシピに載っているクマは茶色、白、赤の羊毛と、目のパーツがあれば良いようだ。
「じゃあ、クマさんはこれと、これと…あと目はこの大きさで良い?」
「うん!」
ニードルは歩美の母親が持っているようなので、さくらは材料だけカゴに入れた。
「それから……コナンくんは?」
歩美の材料が揃ったところで、今度はコナンに問いかける。
「えっと…刺繍糸かミサンガ糸っていうのが必要なんだって。あ、そうそう。作家のお姉さんから《友情》を意味する天然石が《ターコイズ》だって教わったんだ。それも一緒に編み込むから、ターコイズのビーズがほしいな」
「ターコイズ? それってトルコ石のことよね? それが《友情》を意味する天然石なの?」
わりとメジャーなターコイズにそのようないわれがあるとは。さくらも初耳だった。
「うん、ボクも初めて知ったんだよ。ターコイズは空の色。『離れてしまっても、この空を見るたびにあなたと私は繋がっている』って意味らしいよ」
「⁉」
コナンの説明を聞いてさくらはドキリとした。
「あら、そういえば……誰かも似たような事言っていたわね」
哀が意地悪そうな顔をして微笑む。
「そ、そうね……だ、誰だったかな~…」
照れくさそうに視線を泳がせ、さくらは「刺繍糸かミサンガ糸よね」とひとり言を言いながら店の奥へと行ってしまった。
「灰原、意地悪するんじゃねーぞ」
「あら、意地悪なんかしてないわ。似たような話をどこかで聞いたことあるって言っただけよ」
コナンが哀に耳打ちすると、哀はいたずらっ子のように笑ってコナンの忠告をサラリと受け流した。
「あの二人、付き合ってるくせにまどろっこしいのよね。さっさと結婚しちゃえば良いのに」
さくらの正体は知っているものの、昴の正体について詳しく知らない灰原は、ズバッと鋭いところを突いた。
「ま、まあ……それってタイミングってもんがあるだろ?」
「今こそ、その時だと思うけど。潜入捜査官なんて危険がいっぱいじゃない。彼女が死の危機に直面した時に、何が何でも彼の元に戻ろうって思えるような【約束】って必要でしょう?
あと…考えたくはないけど、万が一何かあった時だって、みんなに二人の関係を認めてもらうって、大事なことだと思うけど」
「別にそれは家族にならなくたって同じだろ?」
恋人同士の昴とさくらは、哀が言う『お互いの為に何としても生きようとする』という気持ちは常に有る。
別に結婚にこだわらなくたって……、とコナンは哀に反論した。
「あら、あなた何も分かってないのね。結婚ってたかが紙切れ一枚の関係じゃ無いのよ。それは相手が亡くなった時、本当の意味で力を発揮するの。家族でなければ何かあった時に連絡は来ないし、万一の時——『他人』は遺体も遺品も引き取れないのよ」
先ほどとは違い真面目な顔で語る灰原に、コナンはハッと顔を上げた。
どんなに深く愛し合っていようと死んでしまえば、法律上『親族』しか遺体や遺品の引取りは出来ない——。
それは哀自身の経験でもある。姉が死んだ直後は、組織の科学者としてほぼ囚われの身だったこともあり、遺体とは対面出来なかった。それは仕方が無かったとしても。
今は『灰原哀』として、ある程度の自由を得ているにもかかわらず、未だに『家族』として警察から遺品を受け取ることが出来ていない。
その理由は『灰原哀』は『宮野明美』の親族ではないから——。
「まあ、生きてさえいれば良いことなんだけどね」
哀がため息交じりにつぶやいた言葉に、コナンはグッと唇を噛んだ。
「生きてさえいれば」
それがどれほど尊いことで、そして難しいか。さくらをより近くで見てきたコナンだからこそ、その言葉の重みは良く分かる。
「ターコイズはね、《友情》の意味の他に、相手の安全を願う《お守り》としての役割もあるのよね。二人にとって相手の存在こそが、このターコイズのように《お守り》になるといいわね」
哀は天然石のビーズが並ぶ台に近づき、石を手に取る。
『相手の為に絶対に生きて戻る——』
空色のターコイズを見つめる哀の目が、悲し気に細められた。