第8章 ~新たな決意を胸に~
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***
掃討作戦から数日が過ぎ、工藤邸には穏やかな日々が戻ってきていた。
体調がだいぶ安定したりおは、リビングの掃除を済ませると次は自室へと向かう。ふと、ポケットに入れたスマホが震えている事に気付いた。
「メール?」
自室に入ってから画面を確認してメールアプリを開く。
「降谷さんからだ……」
差出人の名を見て、りおはわずかに緊張した。
『さくらさん体調はどうですか? 僕の方は今のところ組織からの指示は無く、普段通りです。
ところで掃討作戦前に貰ったメールの件ですが、今内密に調べています。分かり次第あなたにも連絡します。それまでは何があっても今まで通り振舞ってください』
(掃討作戦の前……森教授のことね……)
降谷のメールを読みながら、りおは森の怪しい行動を思い出す。
『君の事が心配だから早くお帰り』
あの言葉は、ベルモットと会うためのウソだったのだろうか……。
そう思い始めたら、森教授のすべての行動が怪しく感じてしまう。りおは頭を振り、力なくベッドに座った。
信じていた人が裏切り者だったとしたら——
そんなバカなと思いながらも、もしかして、と思い直す。それが嫌で考えることを放棄した。
パフッとベッドに横になり、目を瞑る。何も考えずにただ深く、ゆっくりと呼吸を繰り返した。
「りお」
「!」
昴の声でハッと目を開けた。自分を覗き込む昴の顔が見える。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
昴が手を伸ばし、りおの額に触れた。
「あ、ううん。体調は良いわよ。降谷さんからメールがあったの。森教授の事は調べているから、しばらくはいつも通りにって。なんか……いつも通りってどうやったらいいか……分からなくなって…」
体を起こし辛そうな顔をするりおを見て、昴も「そうだな……」と言いながらりおの隣に腰を下ろす。両手を組んで考え込んだ。
「大学には自爆テロに巻き込まれ、ケガで療養中だと伝えてあるんだろう? 今のところ、教授との直接的なやり取りは風見くんがやっている。お前は時々メールする程度だ。あまり深く考える必要は無いんじゃないか?」
優しい表情を浮かべ、昴は赤井の口調のままゆっくりと諭すように話す。
「どうしても気になるなら、体調が優れないと言ってメールも極力控えて距離を置くといい」
昴の提案にりおはうなずいた。それでも表情は暗い。昴はりおの方へ体を向けた。
「りお、気分転換に少し外に出ないか? 家の中にばかりいると良い事を考えない。実はさっき、博士から連絡が来てね。今から探偵団を連れて買い物に行くらしいんだ。大人が多い方が良いから一緒に行かないか、とお誘いがあったんだが……行けそうか?」
探偵団と聞いて、りおの顔がぱっと明るくなる。
「うん。私も子どもたちと会いたい。すぐ用意するね」
りおはベッドから立ち上がると、ようやく笑顔を見せた。
***
「さくらお姉さ~ん!」
スバル360を近くの駐車場に停め、二人が博士たちとの待ち合わせ場所に向かうと、歩美が嬉しそうに手を振った。
「歩美ちゃん、みんな! 久しぶりね!」
さくらも笑顔で手を振り返す。
「わぁ! さくらさん、 お久しぶりです! ケガをされたと聞きましたけど……大丈夫ですか?」
光彦が心配そうにさくらを見上げる。
「うん。爆発の衝撃で耳を痛めたけど、もう平気よ」
さくらは少し身を屈め、子どもたちと視線を合わせた。
「痛そうだな~…」と顔をしかめる元太に「もう痛くないよ」と微笑んだ。
「それで……今日は何のお買い物?」
「実は、園城寺のおじいさんが、もうじきお誕生日なんです!」
さくらの問いかけに光彦が嬉しそうに答えた。
「園城寺って、先日探偵団に謎解きの依頼をしてきた、あの園城寺衛さん?」《第6.5章より》
どうしてそれをみんなが知ってるの? とさくらは首をかしげた。
「あの時、おじいさんの《お友達》だよって教えてもらった園城寺家の執事長って人が昨日、博士の家に相談に来たんだよ。『旦那様にサプライズを仕掛けたい』って」
コナンが二人を見上げてニッと笑う。
「へ~ぇ! 衛さんにサプライズを⁉︎」
さくらが嬉しそうに問いかけると探偵団は大きくうなずいた。
「そうなんです! 衛さんは二年前に体調を崩されて、その時に仕事のほとんどを息子さんに引き継いだらしいんです。
今はだいぶ元気になられたようなんですが、仕事一筋で頑張って来たのに、病気が原因で急に仕事から離れることになってしまって……。
体が良くなっても、ふさぎ込む日が多かったそうなんです」
光彦が少し顔を曇らせ、執事長から聞いた話を聞かせてくれた。
「だけど、私達が遊びに行った日からすごく顔色が良くなったんだって。だから執事の人が、サプライズで誕生パーティーをやるから是非皆で来て欲しいって、お願いに来たんだよ」
歩美が目を輝かせた。
さすがは執事長であり、長年《友》としてそばに居た人物。主の喜ぶことはお見通しのようだ。昴もさくらも、子どもたちの話を聞いて微笑んだ。
「それでオレたち、プレゼントを作ることにしたんだぜ!」
「プッ! 元太、さも自分で提案したみたいなこと言って……」
元太が得意げに話すので、哀とコナンがそれを見て噴き出した。
「それ、歩美ちゃんの発案だろ⁉ お金持ちの人だから、お金で買った高価なものより、自分たちで手作りした物の方が喜ぶんじゃないかって」
あはは……そうだった~、と苦笑いする元太を見て、皆が笑い出した。
「ふふふ。なるほど! なかなか良いアイデアじゃない。それでプレゼントの材料を買いに行くという訳ね。で、いったい何を作るの?」
さくらの問いかけに、子どもたちは嬉しそうに互い顔を見合わせた。
「まずは~、全員でメッセージカードを作ります! そのあとはそれぞれ好きなものを作るってことになりました。
ボクは今まで探偵団が解決した事件を物語にしてノートにまとめようと思いまして! おじいさん、謎解きが好きっておっしゃってましたから、きっと喜んでくれると思います!」
「私はクマさんのぬいぐるみ! いつもそばにいて、励ましてあげられるように」
「俺は輪つなぎを大量に作るぜ! パーティー会場をパ~ッと賑やかにするんだ!」
(おいおい、それはプレゼント…か? 喜んではもらえそうだけど、会場に早めに持ってかねーと飾ってもらえねーんじゃ……)
元太の言葉を聞いて、コナンは心の中でツッコミを入れた。
「哀ちゃんとコナンくんは?」
まだ発言していない二人に、さくらが問いかける。
「私はアップルパイを作ろうと思うの。執事の方に訊いたら、園城寺さんアップルパイが好きなんですって」
「ボクは園城寺さんと執事長さんに、お揃いのストラップを作ろうと思って。ミサンガと同じ作り方で、もっと簡単なヤツ。ほら、前にさくらさんがシーグラスのペンダントを作りに行った、作家さんいるでしょ?《番外編『思い出の…』より》 その人に作り方教わったんだ〜」
「わぁ! みんな色々考えたのね~。きっと衛さんも喜んでくれると思うわ」
工夫を凝らしたプレゼントのアイデアを聞いて、さくらは微笑んだ。
「そうなると買い物は……文房具店と手芸店、それからスーパーにも寄った方が良さそうですね」
話を聞いていた昴が皆に声をかけ、博士の方へ視線を上げた。
「そうなると、寄るところが多いから皆で手分けしてはどうじゃな?」
名案じゃろ、と博士はニコニコしている。
「それなら、スーパーと手芸店はさくらとコナンくんと哀さん、それから歩美ちゃんも一緒が良いかもしれませんね。
博士と元太くん、光彦くん、そして私の四人で文房具店に行きましょう。コナンくん達のメッセージカードも、こちらで選んでしまってもいいですか?」
「うん、昴さん達に任せるよ」
八人は買い物後の待ち合わせ時間と場所を決め、それぞれ目的の店へと向かった。
掃討作戦から数日が過ぎ、工藤邸には穏やかな日々が戻ってきていた。
体調がだいぶ安定したりおは、リビングの掃除を済ませると次は自室へと向かう。ふと、ポケットに入れたスマホが震えている事に気付いた。
「メール?」
自室に入ってから画面を確認してメールアプリを開く。
「降谷さんからだ……」
差出人の名を見て、りおはわずかに緊張した。
『さくらさん体調はどうですか? 僕の方は今のところ組織からの指示は無く、普段通りです。
ところで掃討作戦前に貰ったメールの件ですが、今内密に調べています。分かり次第あなたにも連絡します。それまでは何があっても今まで通り振舞ってください』
(掃討作戦の前……森教授のことね……)
降谷のメールを読みながら、りおは森の怪しい行動を思い出す。
『君の事が心配だから早くお帰り』
あの言葉は、ベルモットと会うためのウソだったのだろうか……。
そう思い始めたら、森教授のすべての行動が怪しく感じてしまう。りおは頭を振り、力なくベッドに座った。
信じていた人が裏切り者だったとしたら——
そんなバカなと思いながらも、もしかして、と思い直す。それが嫌で考えることを放棄した。
パフッとベッドに横になり、目を瞑る。何も考えずにただ深く、ゆっくりと呼吸を繰り返した。
「りお」
「!」
昴の声でハッと目を開けた。自分を覗き込む昴の顔が見える。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
昴が手を伸ばし、りおの額に触れた。
「あ、ううん。体調は良いわよ。降谷さんからメールがあったの。森教授の事は調べているから、しばらくはいつも通りにって。なんか……いつも通りってどうやったらいいか……分からなくなって…」
体を起こし辛そうな顔をするりおを見て、昴も「そうだな……」と言いながらりおの隣に腰を下ろす。両手を組んで考え込んだ。
「大学には自爆テロに巻き込まれ、ケガで療養中だと伝えてあるんだろう? 今のところ、教授との直接的なやり取りは風見くんがやっている。お前は時々メールする程度だ。あまり深く考える必要は無いんじゃないか?」
優しい表情を浮かべ、昴は赤井の口調のままゆっくりと諭すように話す。
「どうしても気になるなら、体調が優れないと言ってメールも極力控えて距離を置くといい」
昴の提案にりおはうなずいた。それでも表情は暗い。昴はりおの方へ体を向けた。
「りお、気分転換に少し外に出ないか? 家の中にばかりいると良い事を考えない。実はさっき、博士から連絡が来てね。今から探偵団を連れて買い物に行くらしいんだ。大人が多い方が良いから一緒に行かないか、とお誘いがあったんだが……行けそうか?」
探偵団と聞いて、りおの顔がぱっと明るくなる。
「うん。私も子どもたちと会いたい。すぐ用意するね」
りおはベッドから立ち上がると、ようやく笑顔を見せた。
***
「さくらお姉さ~ん!」
スバル360を近くの駐車場に停め、二人が博士たちとの待ち合わせ場所に向かうと、歩美が嬉しそうに手を振った。
「歩美ちゃん、みんな! 久しぶりね!」
さくらも笑顔で手を振り返す。
「わぁ! さくらさん、 お久しぶりです! ケガをされたと聞きましたけど……大丈夫ですか?」
光彦が心配そうにさくらを見上げる。
「うん。爆発の衝撃で耳を痛めたけど、もう平気よ」
さくらは少し身を屈め、子どもたちと視線を合わせた。
「痛そうだな~…」と顔をしかめる元太に「もう痛くないよ」と微笑んだ。
「それで……今日は何のお買い物?」
「実は、園城寺のおじいさんが、もうじきお誕生日なんです!」
さくらの問いかけに光彦が嬉しそうに答えた。
「園城寺って、先日探偵団に謎解きの依頼をしてきた、あの園城寺衛さん?」《第6.5章より》
どうしてそれをみんなが知ってるの? とさくらは首をかしげた。
「あの時、おじいさんの《お友達》だよって教えてもらった園城寺家の執事長って人が昨日、博士の家に相談に来たんだよ。『旦那様にサプライズを仕掛けたい』って」
コナンが二人を見上げてニッと笑う。
「へ~ぇ! 衛さんにサプライズを⁉︎」
さくらが嬉しそうに問いかけると探偵団は大きくうなずいた。
「そうなんです! 衛さんは二年前に体調を崩されて、その時に仕事のほとんどを息子さんに引き継いだらしいんです。
今はだいぶ元気になられたようなんですが、仕事一筋で頑張って来たのに、病気が原因で急に仕事から離れることになってしまって……。
体が良くなっても、ふさぎ込む日が多かったそうなんです」
光彦が少し顔を曇らせ、執事長から聞いた話を聞かせてくれた。
「だけど、私達が遊びに行った日からすごく顔色が良くなったんだって。だから執事の人が、サプライズで誕生パーティーをやるから是非皆で来て欲しいって、お願いに来たんだよ」
歩美が目を輝かせた。
さすがは執事長であり、長年《友》としてそばに居た人物。主の喜ぶことはお見通しのようだ。昴もさくらも、子どもたちの話を聞いて微笑んだ。
「それでオレたち、プレゼントを作ることにしたんだぜ!」
「プッ! 元太、さも自分で提案したみたいなこと言って……」
元太が得意げに話すので、哀とコナンがそれを見て噴き出した。
「それ、歩美ちゃんの発案だろ⁉ お金持ちの人だから、お金で買った高価なものより、自分たちで手作りした物の方が喜ぶんじゃないかって」
あはは……そうだった~、と苦笑いする元太を見て、皆が笑い出した。
「ふふふ。なるほど! なかなか良いアイデアじゃない。それでプレゼントの材料を買いに行くという訳ね。で、いったい何を作るの?」
さくらの問いかけに、子どもたちは嬉しそうに互い顔を見合わせた。
「まずは~、全員でメッセージカードを作ります! そのあとはそれぞれ好きなものを作るってことになりました。
ボクは今まで探偵団が解決した事件を物語にしてノートにまとめようと思いまして! おじいさん、謎解きが好きっておっしゃってましたから、きっと喜んでくれると思います!」
「私はクマさんのぬいぐるみ! いつもそばにいて、励ましてあげられるように」
「俺は輪つなぎを大量に作るぜ! パーティー会場をパ~ッと賑やかにするんだ!」
(おいおい、それはプレゼント…か? 喜んではもらえそうだけど、会場に早めに持ってかねーと飾ってもらえねーんじゃ……)
元太の言葉を聞いて、コナンは心の中でツッコミを入れた。
「哀ちゃんとコナンくんは?」
まだ発言していない二人に、さくらが問いかける。
「私はアップルパイを作ろうと思うの。執事の方に訊いたら、園城寺さんアップルパイが好きなんですって」
「ボクは園城寺さんと執事長さんに、お揃いのストラップを作ろうと思って。ミサンガと同じ作り方で、もっと簡単なヤツ。ほら、前にさくらさんがシーグラスのペンダントを作りに行った、作家さんいるでしょ?《番外編『思い出の…』より》 その人に作り方教わったんだ〜」
「わぁ! みんな色々考えたのね~。きっと衛さんも喜んでくれると思うわ」
工夫を凝らしたプレゼントのアイデアを聞いて、さくらは微笑んだ。
「そうなると買い物は……文房具店と手芸店、それからスーパーにも寄った方が良さそうですね」
話を聞いていた昴が皆に声をかけ、博士の方へ視線を上げた。
「そうなると、寄るところが多いから皆で手分けしてはどうじゃな?」
名案じゃろ、と博士はニコニコしている。
「それなら、スーパーと手芸店はさくらとコナンくんと哀さん、それから歩美ちゃんも一緒が良いかもしれませんね。
博士と元太くん、光彦くん、そして私の四人で文房具店に行きましょう。コナンくん達のメッセージカードも、こちらで選んでしまってもいいですか?」
「うん、昴さん達に任せるよ」
八人は買い物後の待ち合わせ時間と場所を決め、それぞれ目的の店へと向かった。