第1章 ~運命の再会そして…~
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ケガをした安室とさくらは病院に入院していた。安室は衝突時の衝撃で頭を打っていたため、念のため検査したが問題はない。頭部の裂傷と胸部打撲で済んだため、さくらより早く退院した。
さくらは左脇腹を蹴られ肋骨にヒビが入り、肺にもわずかに損傷があった。幸い肺へのダメージはさほどひどくなく、10日程の入院で済んだ。
「エンジェルダストを打った相手に攻撃されて、よくこんなもので済みましたね」
退院前の診察でさくらが居ない間、昴がボソリと呟いた。
「もっとひどいこと想像してたの?」
一緒に病院に来たコナンが訊ねた。
「ええ。吐血してましたし意識も失いましたから、出血性ショックでも起こしているのかと。こちらの血の気も引きました」
(そういえば、さくらさんが意識を失った時、ものすごく焦っていたな。血吐いて倒れたんだから当たり前か…)
コナンはあの時の、変装している事すら忘れてしまうほど、動揺していた昴の事を思い出す。
(完全に目開いてたし、口調も赤井さんになってたもんな…)
いつもと変わらない様子で退院の準備をする昴を、コナンはぼんやりと眺めていた。
昴の車に乗って、さくらは工藤邸に帰ってきた。コナンも一緒に病院まで迎えに来てくれたので、昴と二人きりにならず車内が気まずくなることは無かった。
作戦は上手く行ったものの、ギムレットの事を昴に話していなかったので、物凄く怒っているらしい。おまけにかなり心配をかけてしまったので、実のところ意識が回復してから二人はまともに話をしていない。
(昴さんのうちはまだ良い…。秀一さんに戻った時が…コワイ…)
さくらは肋骨の痛みに響かぬよう、小さくため息をついた。
さくらから安室に手渡されたUSBは、安室の近くで待機していた風見の手にすぐに渡った。手に入れたラボのデータはかなり有益な情報が満載で、警察上層部は大収穫だと喜んでいた。
(問題はあの人だけだな。夜はお説教かな…)
さくらは覚悟を決めた。
夕飯は退院祝いを兼ねて哀や博士、コナンたちと一緒に食べた。お風呂は哀に手伝ってもらってなんとか入ったが、21時になる頃にはみんな帰っていった。
昴は今入浴中だ。上がってくれば赤井に戻る。りおの緊張はピークを迎えていた。
「ふぅ……」
ため息しか出なかった。
ガチャッ!
ふいにリビングのドアが開いた。赤井が髪を拭きながら入ってくる。りおはまだ痛む脇腹を押さえながらソファーに座り、クッションに体を預けていた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを持って来ていた赤井は、何も言わずに向かいのソファーにドカッと座る。
ドアの開け方、ソファーへの座り方……相当怒っているようだ。
ゴクッゴクッゴクッ
赤井が水を飲む音が響く。
りおは何も言わず、ただその音を固唾を飲んで聞いていた。
とんッ!
ペットボトルをテーブルに置くと赤井は口を開く。
「りお」
名を呼び、一瞬の沈黙が流れた。
「お前、なんでギムレットの事を俺に話さなかったんだ?」
『話していたらどうだった?』
「行かせなかった」
『だから黙ってた』
「りお、お前ッ!!」
返答を聞いて、赤井が突然怒鳴った。りおの肩がビクッ! と跳ねる。
「お前は俺に、どれだけ心配をかければ気が済むんだ!」
ガタタンッ!
赤井が立ち上がる。
「潜入していた2日間だって気が気じゃなかったんだ。
なのに! 過去にお前を襲ったやつがそばにいると知って、どれだけ潜入させたことを後悔したと思ってる!」
拳を握り閉めてまくし立てる赤井を、りおは驚いた顔で見上げた。
「その上殺人兵器と化したヤツに攻撃されて! 挙句に意識失って倒れるとか!! いい加減にしろッ!!」
はぁはぁと肩で息をしている。すごい剣幕だった。
そして目にはうっすら涙がたまっていることに、りおは気付いてしまった。
そのまま赤井はりおに近づき、そっとその体を抱きしめる。
「言っただろう。お前を失うことは耐えられないんだ。あれは本心だよ」
『ごめんなさい』
声にならない空気が赤井の耳元をくすぐった。赤井の体がわずかにピクッと揺れた。
「本当に悪いと思っているのか?」
りおはコクリと頷く。
「それなら…」
赤井はりおのアゴを優しく掴むと、食いつくように激しいキスを仕掛けてきた。
何度も舌を絡められ、上あごをくすぐられる。どちらのものともいえない唾液がつぅと口横から流れた。角度を変え、舌で翻弄され、呼吸すら許さないとでもいうような激しいキス。
そのまま、頬、耳、首筋へとキスは移動していく。
「りお……りお……!」
熱に浮かれたように赤井はりおの名を呼ぶ。りおもまた赤井の名を呼ぼうとするが、やはり声にならなかった。名を呼びたいのに呼べない。もどかしさだけが募っていく。
ふと見えた赤井の首筋。りおはそこに唇を寄せると強く吸い上げた。
ちくりと痛みが走る。
「……んッ!」
赤井の小さな声が聞こえた。唇を離すと白い首筋に赤いキスマークが付く。
「りお?」
急に笑顔になったりおに気付き、赤井は不思議そうに声をかけた。
『私の声はあなたの耳に届かないけど、私のキスはあなたの首にちゃんと残ったわ』
りおの手が嬉しそうに伝えた。
「~~ッ! おま、お前…ッ!また天然無自覚っ!…」
顔を赤くした赤井は再びりおを抱きしめた。そして心の中でつぶやく。
(生きていてくれて本当に良かった…)