第8章 ~新たな決意を胸に~
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「あ、アニキ!」
ウォッカが驚いた声を上げ、とっさに懐から銃を取り出す。
「ここまでだ、ジン。我々のアジトを突き止めるとはたいしたものだ」
ギラリと鋭い目をむけたスンホがナイフを構え直した。
「フン。お前らのアジトなど、ラスティーにかかればものの数分。簡単すぎで拍子抜けだ」
挑発するようにジンは口の端を持ち上げる。
「チッ! やはりあの女か!」
忌々しそうにスンホは舌打ちをした。
ヒュッ!
ヒュォッ!!
刃先を鳴らし、スンホのナイフがジンを襲う。狭い通路でジンはわずかに体をずらし、ギリギリで避けた。
ウォッカが銃で男を狙うが、動きが速く狙いが定まらない。下手に撃てばジンに当たるかもしれないと思うと、不用意にトリガーを引けずにいた。
「チィッ!」
防戦一方だったジンが男のスキをついて蹴りを入れた。が、スンホはバク宙しそれを避ける。攻撃を避けながらさらにジンを切り付けた。
ザシュッ‼
ジンの右腕をナイフの刃がかすめる。
「あ、アニキッ⁉」
「服だけだ。他は切れちゃいねぇ」
ジンは鋭い目で男を睨みつけた。
「フン。さすが実行部隊のトップを務めるだけのことはある。だが……ここまでだ」
ナイフを手にしてギラギラとした殺気を向けるスンホに、ジンは銃口を向けた。
ドン!
ドン!
ジンの銃が火を吹いた。
銃弾が完全にスンホを捉えたと思ったが、スンホは素早く銃弾を避け、高くジャンプすると壁を二度蹴って、ジンの背後に回る。
素早い身のこなしにウォッカは「なに⁉」と言ったまま身を固くした。
「まさか、こんなに早くアジトを見つけられるとは予想外だった。やはりラスティーはさっさと始末をつけるべきだったよ。だがピンチは逆にチャンスというだろう。
ダミーを用意して逃げるフリをすれば、お前は必ず俺を探して単身乗り込んでくると読んでいたんだ。フフフ。どうやら正解だった。お前にはここで俺と一緒に死んでもらう」
スンホはナイフを構えたまま、爆弾の起爆スイッチをポケットから取り出す。
わずかに後ろを振り返ったジンは、フンと鼻で笑った。
「⁉」
予想外の態度に、スンホは眉根を寄せる。
「そのボタン、押したきゃ押せ。但し……俺が戻らなければ、お前の主である『将軍様』の立場が悪くなるぞ」
「なに?」
ジンの言葉に、スンホの顔がさらに険しくなった。
「オドゥムはC国直属のスパイ組織。国の最高指導者である『将軍様』が、お前らを使って世界を掌握しようとしている——という証拠をアメリカ政府に送りつける手筈になっている。
そうなれば各国のお偉いさんたちは大喜びでC国を攻撃するだろう。より強力な経済制裁から始まり、場合によっては軍がお前たちの国を包囲するかもしれない。
『C国を倒す』という大義名分ができるわけだからな!」
「ッ!」
まだ日本を掌握していない段階で、それがバレる事はあってはならない。しかし本当にそんな証拠をこの組織が掴んでいるのか——
スンホは訝し気にジンを見た。
「その証拠をお前たちが持っていると、どうやって証明する?」
スンホは表情を崩さず問いただした。
「証明はできねぇ。信じられねぇなら俺を殺して、あの世で国の行く末を確かめれば良い」
さあ殺れよ、とジンは笑いながらスンホの方へ振り返った。スンホの顔を凝視し挑発してみせる。
「くッ!」
スンホはスイッチにかけていた親指を離すと、持っていたナイフをジンに向かって投げつける。
カシャン! カラカラカラ……
ジンによって叩き落されたナイフが、甲高い音を立てて通路に転がった。
「はッ! い、いない?!」
キョロキョロとウォッカが周りを見回す。
ナイフに一瞬気を取られたスキに、スンホは姿を消していた。
「フン、とんだ邪魔が入った。さっさと行くぞ」
「へ、へい! アニキ!」
二人はそれ以上深追いはせず、その場を後にする。
ギュオォォン——!!
地上に出たジン達は車のタイヤを鳴らし、猛スピードでコルン達の待つ倉庫正面へと急いだ。
「……」
ジン達がアジトを出た直後——
死体の転がる廊下の暗闇から、のっそりとスンホが姿を現した。
ジン達は気付かなかったが、裏口に続く通路には隠し扉が一つ仕込まれていた。そこに隠れていたスンホは、すぐさま爆弾の仕掛けられた先程の扉へと急いだ。
「くそッ! ダメだ! 解除できない‼」
スンホは爆弾の解除を試みたが、時すでに遅く解除は不可能だった。
仮に解除できたとしても、ジン達にアジトの場所を知られてしまっては、今後ここで諜報活動を行う事は出来ない。
最後のチャンスとして与えられた任務(組織の【ビジネス】を暴くこと)も完遂出来ていない。
もはや、自分には生きる価値はない。スンホはこのままここに残り、死のうと思っていた。
しかし——
ブー、ブー、ブー……
ポケットに入れていたスンホのスマホがわずかに振動した。
「ッ!」
着信したメールを読み、スンホは立ち上がる。手に持っていた【酸化ニッケルサマリウム】の隠れ蓑をかぶって足早に来た道を戻り、倉庫街の外へと姿を消した。
***
「……チッ!」
ジン達が再び倉庫の入口に戻ると、多くの工作員と組織の者たちが折り重なるように倒れていた。
黒煙がモクモクと立ちのぼる倉庫からは、時々炎が吹き出し、燃え広がっている。
遠くからサイレンの音も聞こえてきた。
「サツが到着する前にずらかれ‼」
生き残った者たちは車に乗り込み、急発進させて倉庫街を出る。
「退避命令が出ました。ラスティー、前の席へ移動しますよ」
「は、は…い…」
バーボンはめまいで動けないラスティーを抱き上げると、バンの助手席へと座らせる。シートベルトがしっかり締まったことを確認し、自身も運転席へと移動した。
エンジンをかけてギアを入れ、猛スピードで現場を後にする。バーボンたちの車がパトカーや消防車とニアミスをした次の瞬間——
ドゥオオオォォォン!!!
激しい爆発が起きた。爆風で近隣倉庫の窓ガラスが一斉に吹き飛ぶ。
キキキィィ——‼
爆発に驚き、現場に向かっていたパトカーや消防車がタイヤを鳴らして急停車した。
一人の警察官が車から出ると、呆然と爆発の炎を見上げている。
「ジンの仕掛けた爆弾か……。これでオドゥムは日本における大きな拠点を失ったな……」
バーボンはルームミラー越しに真っ赤な炎を見る。「ふぅ、」と小さく安堵の息を吐いた。
ウォッカが驚いた声を上げ、とっさに懐から銃を取り出す。
「ここまでだ、ジン。我々のアジトを突き止めるとはたいしたものだ」
ギラリと鋭い目をむけたスンホがナイフを構え直した。
「フン。お前らのアジトなど、ラスティーにかかればものの数分。簡単すぎで拍子抜けだ」
挑発するようにジンは口の端を持ち上げる。
「チッ! やはりあの女か!」
忌々しそうにスンホは舌打ちをした。
ヒュッ!
ヒュォッ!!
刃先を鳴らし、スンホのナイフがジンを襲う。狭い通路でジンはわずかに体をずらし、ギリギリで避けた。
ウォッカが銃で男を狙うが、動きが速く狙いが定まらない。下手に撃てばジンに当たるかもしれないと思うと、不用意にトリガーを引けずにいた。
「チィッ!」
防戦一方だったジンが男のスキをついて蹴りを入れた。が、スンホはバク宙しそれを避ける。攻撃を避けながらさらにジンを切り付けた。
ザシュッ‼
ジンの右腕をナイフの刃がかすめる。
「あ、アニキッ⁉」
「服だけだ。他は切れちゃいねぇ」
ジンは鋭い目で男を睨みつけた。
「フン。さすが実行部隊のトップを務めるだけのことはある。だが……ここまでだ」
ナイフを手にしてギラギラとした殺気を向けるスンホに、ジンは銃口を向けた。
ドン!
ドン!
ジンの銃が火を吹いた。
銃弾が完全にスンホを捉えたと思ったが、スンホは素早く銃弾を避け、高くジャンプすると壁を二度蹴って、ジンの背後に回る。
素早い身のこなしにウォッカは「なに⁉」と言ったまま身を固くした。
「まさか、こんなに早くアジトを見つけられるとは予想外だった。やはりラスティーはさっさと始末をつけるべきだったよ。だがピンチは逆にチャンスというだろう。
ダミーを用意して逃げるフリをすれば、お前は必ず俺を探して単身乗り込んでくると読んでいたんだ。フフフ。どうやら正解だった。お前にはここで俺と一緒に死んでもらう」
スンホはナイフを構えたまま、爆弾の起爆スイッチをポケットから取り出す。
わずかに後ろを振り返ったジンは、フンと鼻で笑った。
「⁉」
予想外の態度に、スンホは眉根を寄せる。
「そのボタン、押したきゃ押せ。但し……俺が戻らなければ、お前の主である『将軍様』の立場が悪くなるぞ」
「なに?」
ジンの言葉に、スンホの顔がさらに険しくなった。
「オドゥムはC国直属のスパイ組織。国の最高指導者である『将軍様』が、お前らを使って世界を掌握しようとしている——という証拠をアメリカ政府に送りつける手筈になっている。
そうなれば各国のお偉いさんたちは大喜びでC国を攻撃するだろう。より強力な経済制裁から始まり、場合によっては軍がお前たちの国を包囲するかもしれない。
『C国を倒す』という大義名分ができるわけだからな!」
「ッ!」
まだ日本を掌握していない段階で、それがバレる事はあってはならない。しかし本当にそんな証拠をこの組織が掴んでいるのか——
スンホは訝し気にジンを見た。
「その証拠をお前たちが持っていると、どうやって証明する?」
スンホは表情を崩さず問いただした。
「証明はできねぇ。信じられねぇなら俺を殺して、あの世で国の行く末を確かめれば良い」
さあ殺れよ、とジンは笑いながらスンホの方へ振り返った。スンホの顔を凝視し挑発してみせる。
「くッ!」
スンホはスイッチにかけていた親指を離すと、持っていたナイフをジンに向かって投げつける。
カシャン! カラカラカラ……
ジンによって叩き落されたナイフが、甲高い音を立てて通路に転がった。
「はッ! い、いない?!」
キョロキョロとウォッカが周りを見回す。
ナイフに一瞬気を取られたスキに、スンホは姿を消していた。
「フン、とんだ邪魔が入った。さっさと行くぞ」
「へ、へい! アニキ!」
二人はそれ以上深追いはせず、その場を後にする。
ギュオォォン——!!
地上に出たジン達は車のタイヤを鳴らし、猛スピードでコルン達の待つ倉庫正面へと急いだ。
「……」
ジン達がアジトを出た直後——
死体の転がる廊下の暗闇から、のっそりとスンホが姿を現した。
ジン達は気付かなかったが、裏口に続く通路には隠し扉が一つ仕込まれていた。そこに隠れていたスンホは、すぐさま爆弾の仕掛けられた先程の扉へと急いだ。
「くそッ! ダメだ! 解除できない‼」
スンホは爆弾の解除を試みたが、時すでに遅く解除は不可能だった。
仮に解除できたとしても、ジン達にアジトの場所を知られてしまっては、今後ここで諜報活動を行う事は出来ない。
最後のチャンスとして与えられた任務(組織の【ビジネス】を暴くこと)も完遂出来ていない。
もはや、自分には生きる価値はない。スンホはこのままここに残り、死のうと思っていた。
しかし——
ブー、ブー、ブー……
ポケットに入れていたスンホのスマホがわずかに振動した。
「ッ!」
着信したメールを読み、スンホは立ち上がる。手に持っていた【酸化ニッケルサマリウム】の隠れ蓑をかぶって足早に来た道を戻り、倉庫街の外へと姿を消した。
***
「……チッ!」
ジン達が再び倉庫の入口に戻ると、多くの工作員と組織の者たちが折り重なるように倒れていた。
黒煙がモクモクと立ちのぼる倉庫からは、時々炎が吹き出し、燃え広がっている。
遠くからサイレンの音も聞こえてきた。
「サツが到着する前にずらかれ‼」
生き残った者たちは車に乗り込み、急発進させて倉庫街を出る。
「退避命令が出ました。ラスティー、前の席へ移動しますよ」
「は、は…い…」
バーボンはめまいで動けないラスティーを抱き上げると、バンの助手席へと座らせる。シートベルトがしっかり締まったことを確認し、自身も運転席へと移動した。
エンジンをかけてギアを入れ、猛スピードで現場を後にする。バーボンたちの車がパトカーや消防車とニアミスをした次の瞬間——
ドゥオオオォォォン!!!
激しい爆発が起きた。爆風で近隣倉庫の窓ガラスが一斉に吹き飛ぶ。
キキキィィ——‼
爆発に驚き、現場に向かっていたパトカーや消防車がタイヤを鳴らして急停車した。
一人の警察官が車から出ると、呆然と爆発の炎を見上げている。
「ジンの仕掛けた爆弾か……。これでオドゥムは日本における大きな拠点を失ったな……」
バーボンはルームミラー越しに真っ赤な炎を見る。「ふぅ、」と小さく安堵の息を吐いた。