第8章 ~新たな決意を胸に~
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突入部隊の男が倉庫の小さなドアノブに手を掛け、周りの者たちに目配せした。慎重にそのノブを回す。
ドゥオオォォン!!
ノブがカチリと音を立てた瞬間、激しい爆発が起きる。近くに居た三人が衝撃で吹き飛ばされた。
「なにぃ⁉」
ジンがモニターを見て目を見張った。無傷だった後続のA班達が、建物内に侵入を開始する。
すると、赤外線カメラでは捉えられていなかった工作員たちが暗闇から現れ、男たちを囲んだ。
『居ないはずの工作員が現れました!! その数多数…ぐあぁあ‼』
次々と突入した者たちが工作員に襲われた。
『どういうことだ、バーボン‼』
「ま、まさか……C国は赤外線に映らない素材、【酸化ニッケルサマリウム】をすでに商品開発までこぎつけているのか⁉」
ジンの鋭い声に、バーボンが驚いたように叫ぶ。
「【酸化ニッケルサマリウム】って、たしか赤外線カメラに映らない素材の材料として十年以上前からアメリカで研究中の……」
ラスティーも驚き「まさか…」と絶句した。
『なんだと? アメリカで研究中のブツを、なぜコイツらが使ってるんだ⁉』
二人の話を聞いていたジンは忌々しそうにダッシュボードを叩いた。
その間にもオドゥムの工作員たちが圧倒的な強さを見せ、A班の男たちをねじ伏せている。
『コルン、キャンティ! そこから工作員を狙えるか?』
別働隊として動いていたコルン達に、ジンが問いかけた。
「ああ! やれる」
コルンはグレネードランチャーを取り出すと、倉庫上部の鉄骨を狙う。
ドゥオン!!
グヮシャーン!!
発射されたグレネード弾が着弾し、倉庫の上部を破壊する。破壊された鉄骨の破片が雨のように倉庫内に降り注いだ。
「うわぁぁッ!」
中に居た工作員が慌てて倉庫の外へと逃げる。
「出て来たよ、バカどもが!!」
それを狙ってキャンティが機関銃を連射した。
ドドドドドドド!!
最大1秒間に100発の発射速度を誇るM134が火を噴くと、工作員達が次々と倒れた。
「これで全滅だよ!」
キャハハと笑いながら、キャンティは機関銃を右に左にと操作する。凄まじい銃器の音が周辺に響き渡った。
「調子に乗るなよ!」
素早い身のこなしで銃弾を避け、物陰に隠れた工作員の一人が胸元から何かを取り出すと、ピンを引き抜きキャンティに向かって投げた。
「チッ!!」
すぐに気づいたキャンティは機関銃から手を離し、車に取り付けられた射撃台からヒラリと飛び降りる。
着地と同時に車から離れ、最後は飛び込むように地面に伏せた。
ドゥォン!!
車が爆発炎上する。散り散りになった車の破片が、キャンティに降り注いだ。
「チッ! なんて奴らだい! あの状況で手りゅう弾を投げて来るなんて!」
頭を守るようにして伏せていたキャンティは、轟々と燃える車を見て舌打ちをした。
『閃光弾を撃て!』
ジンがB班に指示を出した。すぐさま倉庫の周辺に閃光弾が撃ち込まれ、辺りは強い光に包まれた。
「ぐわぁぁッ!」
「くそぉ‼ め、目がッ!」
工作員たちは目をやられ身動きできない。そこへ特殊なメガネを付けたB班、C班が突入した。
バンの後部でドローンの画面越しにその様子を見ていたラスティーが息を飲む。
強い光を見た瞬間、めまいに襲われうずくまった。
「ッ! ラスティー⁉」
バーボンが驚き、声をかけた。
「だ、大丈夫ッ。ちょっとめまいが……」
私は大丈夫だから、とラスティーは監視を続けるようバーボンを促した。見る限りとても大丈夫そうではないが、今監視の目を緩めるわけにはいかない。
「わ、分かった」
バーボンは後ろ髪を引かれつつ、再び画面に向き合う。すると、戦闘が続くアジト正面とは反対方向に移動する人影を確認した。
『ジン! 地下に居る数名が動きました。倉庫の北側へ移動!』
「フン、スンホだな。逆サイドから逃げるつもりか? そっちは俺たちが行く。ヤツの死体を拝まないことにはな」
ジンはウォッカに目配せをした。それに答えるようにウォッカが車のギアを入れる。
二人を乗せたポルシェは急発進すると、戦闘が続く倉庫の北側へと向かった。
通信の様子から、ジン達が移動した事を察したバーボンは「ふう」と小さく息をついた。
隣のラスティーに視線を移し声をかける。
「ラスティー、大丈夫ですか?」
「え、ええ……」
体を丸め、うずくまっていたラスティーがわずかに顔を上げた。
酷く顔色が悪く、ガタガタと震えている。発作を起こしているのは間違いない。
(こんな時、赤井はどうしていたっけか。確か安心させるために背中をさすって、大丈夫だと声を……)
先日、工藤邸でさくらが発作を起こした時のことを思い出し、バーボンは見よう見まねでラスティーに手を伸ばした。
そっとその背中に触れた瞬間、ラスティーの体がピクリと跳ねる。
「大丈夫ですよ。何も怖いことはありません。ゆっくり息をして——」
バーボンは赤井(昴)がしていたのと同じように、優しい声で何度も大丈夫だと声をかけた。
「はー…はー…は―……」
ラスティーはバーボンが誘導する通りに呼吸を繰り返すが、いつまでたっても体の震えは治まらない。
バーボンは恐る恐る、ラスティーの体を抱き寄せた。が、ラスティーの体は緊張でさらに強張った。
(やはり赤井でなければダメなのか……)
額に汗をにじませ、尚も震えているラスティー。
どんなにこの手を伸ばしても、その心には届かない。バーボンは一抹の寂しさを感じた。
(分かっていたさ。初めから勝ち目はないと)
思い返せば、親友と仲良くしていたことに嫉妬したこともあった。『ジンのお気に入り』の工作員だと鼻で笑ったことも。
彼女の本質を知ろうともしないで、軽視したこともある。
にもかかわらず、いざ彼女と組み、接するうちに惹かれていったなんて——。虫のいい話だと自分でも思う。
ケンバリでの戦闘時にラスティーを見て、彼女が抱える『心の闇』に気付き、見守ってきた赤井とは天地の差である。
(それでも……好きになってしまったんだ。君に迷惑はかけない。もう少し、もう少しだけ好きでいさせてくれ…)
バーボンは目を閉じ、震えるラスティーの体を抱きしめ続けた。
ドゥオオォォン!!
ノブがカチリと音を立てた瞬間、激しい爆発が起きる。近くに居た三人が衝撃で吹き飛ばされた。
「なにぃ⁉」
ジンがモニターを見て目を見張った。無傷だった後続のA班達が、建物内に侵入を開始する。
すると、赤外線カメラでは捉えられていなかった工作員たちが暗闇から現れ、男たちを囲んだ。
『居ないはずの工作員が現れました!! その数多数…ぐあぁあ‼』
次々と突入した者たちが工作員に襲われた。
『どういうことだ、バーボン‼』
「ま、まさか……C国は赤外線に映らない素材、【酸化ニッケルサマリウム】をすでに商品開発までこぎつけているのか⁉」
ジンの鋭い声に、バーボンが驚いたように叫ぶ。
「【酸化ニッケルサマリウム】って、たしか赤外線カメラに映らない素材の材料として十年以上前からアメリカで研究中の……」
ラスティーも驚き「まさか…」と絶句した。
『なんだと? アメリカで研究中のブツを、なぜコイツらが使ってるんだ⁉』
二人の話を聞いていたジンは忌々しそうにダッシュボードを叩いた。
その間にもオドゥムの工作員たちが圧倒的な強さを見せ、A班の男たちをねじ伏せている。
『コルン、キャンティ! そこから工作員を狙えるか?』
別働隊として動いていたコルン達に、ジンが問いかけた。
「ああ! やれる」
コルンはグレネードランチャーを取り出すと、倉庫上部の鉄骨を狙う。
ドゥオン!!
グヮシャーン!!
発射されたグレネード弾が着弾し、倉庫の上部を破壊する。破壊された鉄骨の破片が雨のように倉庫内に降り注いだ。
「うわぁぁッ!」
中に居た工作員が慌てて倉庫の外へと逃げる。
「出て来たよ、バカどもが!!」
それを狙ってキャンティが機関銃を連射した。
ドドドドドドド!!
最大1秒間に100発の発射速度を誇るM134が火を噴くと、工作員達が次々と倒れた。
「これで全滅だよ!」
キャハハと笑いながら、キャンティは機関銃を右に左にと操作する。凄まじい銃器の音が周辺に響き渡った。
「調子に乗るなよ!」
素早い身のこなしで銃弾を避け、物陰に隠れた工作員の一人が胸元から何かを取り出すと、ピンを引き抜きキャンティに向かって投げた。
「チッ!!」
すぐに気づいたキャンティは機関銃から手を離し、車に取り付けられた射撃台からヒラリと飛び降りる。
着地と同時に車から離れ、最後は飛び込むように地面に伏せた。
ドゥォン!!
車が爆発炎上する。散り散りになった車の破片が、キャンティに降り注いだ。
「チッ! なんて奴らだい! あの状況で手りゅう弾を投げて来るなんて!」
頭を守るようにして伏せていたキャンティは、轟々と燃える車を見て舌打ちをした。
『閃光弾を撃て!』
ジンがB班に指示を出した。すぐさま倉庫の周辺に閃光弾が撃ち込まれ、辺りは強い光に包まれた。
「ぐわぁぁッ!」
「くそぉ‼ め、目がッ!」
工作員たちは目をやられ身動きできない。そこへ特殊なメガネを付けたB班、C班が突入した。
バンの後部でドローンの画面越しにその様子を見ていたラスティーが息を飲む。
強い光を見た瞬間、めまいに襲われうずくまった。
「ッ! ラスティー⁉」
バーボンが驚き、声をかけた。
「だ、大丈夫ッ。ちょっとめまいが……」
私は大丈夫だから、とラスティーは監視を続けるようバーボンを促した。見る限りとても大丈夫そうではないが、今監視の目を緩めるわけにはいかない。
「わ、分かった」
バーボンは後ろ髪を引かれつつ、再び画面に向き合う。すると、戦闘が続くアジト正面とは反対方向に移動する人影を確認した。
『ジン! 地下に居る数名が動きました。倉庫の北側へ移動!』
「フン、スンホだな。逆サイドから逃げるつもりか? そっちは俺たちが行く。ヤツの死体を拝まないことにはな」
ジンはウォッカに目配せをした。それに答えるようにウォッカが車のギアを入れる。
二人を乗せたポルシェは急発進すると、戦闘が続く倉庫の北側へと向かった。
通信の様子から、ジン達が移動した事を察したバーボンは「ふう」と小さく息をついた。
隣のラスティーに視線を移し声をかける。
「ラスティー、大丈夫ですか?」
「え、ええ……」
体を丸め、うずくまっていたラスティーがわずかに顔を上げた。
酷く顔色が悪く、ガタガタと震えている。発作を起こしているのは間違いない。
(こんな時、赤井はどうしていたっけか。確か安心させるために背中をさすって、大丈夫だと声を……)
先日、工藤邸でさくらが発作を起こした時のことを思い出し、バーボンは見よう見まねでラスティーに手を伸ばした。
そっとその背中に触れた瞬間、ラスティーの体がピクリと跳ねる。
「大丈夫ですよ。何も怖いことはありません。ゆっくり息をして——」
バーボンは赤井(昴)がしていたのと同じように、優しい声で何度も大丈夫だと声をかけた。
「はー…はー…は―……」
ラスティーはバーボンが誘導する通りに呼吸を繰り返すが、いつまでたっても体の震えは治まらない。
バーボンは恐る恐る、ラスティーの体を抱き寄せた。が、ラスティーの体は緊張でさらに強張った。
(やはり赤井でなければダメなのか……)
額に汗をにじませ、尚も震えているラスティー。
どんなにこの手を伸ばしても、その心には届かない。バーボンは一抹の寂しさを感じた。
(分かっていたさ。初めから勝ち目はないと)
思い返せば、親友と仲良くしていたことに嫉妬したこともあった。『ジンのお気に入り』の工作員だと鼻で笑ったことも。
彼女の本質を知ろうともしないで、軽視したこともある。
にもかかわらず、いざ彼女と組み、接するうちに惹かれていったなんて——。虫のいい話だと自分でも思う。
ケンバリでの戦闘時にラスティーを見て、彼女が抱える『心の闇』に気付き、見守ってきた赤井とは天地の差である。
(それでも……好きになってしまったんだ。君に迷惑はかけない。もう少し、もう少しだけ好きでいさせてくれ…)
バーボンは目を閉じ、震えるラスティーの体を抱きしめ続けた。