第8章 ~新たな決意を胸に~
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「なるほど…首都高下の倉庫街。あそこはキュラソーが事故を起こし、爆発炎上したところだわ。今は再建された倉庫もあるけど、そのまま廃倉庫になったところも多い。隠れるにはもってこいな場所ね」
さらにPCを操作し、現在ラスティーが掴んでいる、オドゥムの実行部隊長数名の顔写真を画面に表示させる。
倉庫街や首都高周辺に設置されている警視庁の監視カメラの画像を使い、アロンが来日した日より前までさかのぼって、この辺りに出没している人物を検索した。
監視カメラに映る人物の顔には次々とオレンジや赤の四角いラインが表示され、コンピューターが該当する人物を探している。
やがて「ピー」という電子音が鳴り、電話をしている人物の顔が緑のラインで囲まれた。
りおがマウスをクリックすると人物の顔写真が画面の左半分に表示される。さらに右半分には名前と経歴が表示された。
「リュ・スンホ……実働部隊のナンバー3。あのキム・ウジンの補佐をしていた男。この男が現在日本に潜伏している部隊のリーダーで間違いなさそうね……」
りおはアジトの地図とリュ・スンホの顔写真をメールに添付し、降谷、風見にそれぞれ送る。
そしてまったく同じものを、アドレスを変えてジンにも送信した。
「オドゥムの事は世間には公表されていない。だからカフェの事件も無差別テロと報道されている。警察が表立ってオドゥムの捜査をするには限界があるわ。降谷さんはきっと組織の『掃討作戦』を利用するだろうな……」
(警察が関わっても関わらなくても……今いる実行部隊を壊滅させるためには、それ相応の被害が出るのは避けられない)
りおは送信が完了した画面を見つめ、ため息をついた。
ガチャ…
「ッ!」
突然ノックも無しに部屋のドアが開いた。りおが振り返る。
「りお、何をしている?」
Tシャツにスウェット姿の赤井が険しい顔をして立っていた。
「何って……ちょっと調べものを……」
りおが説明をしている間にも、赤井はツカツカと部屋の中に入り込み、りおの腕を掴んだ。
「組織の任務か? 今は一線を離れているはずだろう?」
「情報収集だけよ。オドゥムのアジトを探し出せって……」
「…ッ! オドゥム、だと?」
サッと赤井の顔色が変わった。りおの両腕を掴むと声を荒げる。
「お前……自分の体を過信するなよ! ちょっと調子が良いからってオドゥムに関わるなんて、無謀すぎるだろう!」
「ご、ごめんなさ……」
赤井の剣幕に、りおはやや怯えた様に視線を泳がせ謝罪した。
「ッ! す、すまん。大きな声を出して悪かった。ただ……心配なんだ」
赤井は慌てて手の力を抜き、眉を下げてりおの顔を覗き込む。りおも表情を緩め小さく首を横に振った。
「私の方こそごめんなさい。情報収集だけだったし、リハビリになるかと思ってあんまり深く考えてなかった」
トン、と赤井の胸元に頭をつけた。赤井もりおを抱きしめる。
「慌てる必要は無い。今はあまり無理をするなよ」
「うん」
赤井はりおの背中をそっと撫でた。りおも赤井の胸元に頬をすり寄せる。
「さあ、もう遅い。そろそろ寝た方がいい。俺も自分の部屋に行くよ」
「うん……なんか…離れがたいね」
赤井の大きな手で抱きしめられて、頬にはその鼓動を感じて。優しい温もりを手放すのは惜しい。
りおは「もう少しだけ」と言って、赤井から離れない。
「あ、いや…りお。そ、そろそろ離れてくれないか? いろいろ…まずい…」
「え~…もう少し秀一さんを堪能したい」
赤井の焦りなどお構いなしに、りおはピッタリと体を寄せた。
これ以上はホントにマズいんだ、と赤井はしどろもどろで訴える。
「もう…何がそんなにマズい……ん?」
体を密着させていたりおは何かを感じた。
赤井は真っ赤になって顔を片手で覆い、天を仰ぐ。
スウェット越しに感じる何か。
「あ……」
違和感の理由が分かり、りおも顔を真っ赤にして声を上げた。
「りお! それ以上言うな! 言わないでくれ。俺も分かってる。なにしろ…ずいぶんご無沙汰だし。でも気にしなくていい。ほっとけば治まるから」
赤井は顔を赤くしたまま弁解した。
「……いいよ……」
「え?」
「私も…秀一さんと離れがたくなっちゃったから…ね?」
赤井以上に真っ赤な顔をしたりおが、恥ずかしそうにつぶやく。
「あ、いや……でも……」
動揺する赤井から、りおはスルリと体を離す。イスから立ち上がると、そのままベッドのふちに座った。
「抱いて、秀一さん」
恥ずかしそうな顔をしながら、赤井に向けて両手を広げる姿は破壊力抜群だった。
「ッ! りお!」
りおの両腕の中に、赤井が吸い込まれるように体を寄せる。
すぐに優しいキスの雨がりおに落ちてきた。
明け方近く——
「…ぅ…ん…」
寒さに顔を歪ませ、赤井が目を覚ます。
ようやく重いまぶたを開けて部屋を見回すと、そこは自分の部屋ではなくりおの部屋だった。
(夕べ……は…?)
どうしたんだったか…。赤井はまだ半分寝ている頭を総動員して記憶をたどった。
「ッ!」
思い出して飛び起きる。見れば自分は服を着ていない。毛布が腹の辺りにかかっているものの、肩は出ていた。どうりで寒いわけだ。
隣でスヨスヨと寝息を立てているりおも服を着ておらず、すっぽりと毛布に包まっている。
(そ、そうだ…夕べ組織の任務でオドゥムを調べていたりおを注意して…そのまま…)
りおを抱くのは久しぶりだった。
両親のことを思い出し、PTSDの症状がひどくなってそれどころではなかったからだ。
それ故ずっと我慢していたのに。あんなふうに誘われれば、いくら赤井と言えど抑えられるはずがない。それでも。本調子ではないりおを出来る限り優しく抱こうと思っていたのに。
(優しくどころか、途中から我を忘れていた気がする……)
りおの首元を見ればそれは一目瞭然。あちらこちらにうっ血痕が付いていた。
(お前相手だと…どうもダメだな…)
赤井は自分に呆れつつ、まだ眠るりおの顔に触れた。
「愛してるよ」
そう心の中で言いながら、乱れたりおの髪をそっとかき上げる。再びその隣にごろりと寝転がった。
起きるにはまだ早い。赤井は二度寝を決め込んだ。
隣にりおが居る。
ささやかな幸せを感じながら赤井は目を閉じた。
***
ラスティーから届いたメールを確認したジンは、タバコを吸いながらニヤリと口角を上げる。
「さすがラスティー、わずかな時間で奴らの居場所と実行リーダーを探し当てたか。これじゃあ情報屋も形ナシだな」
スマホをソファーに放り投げ、タバコの煙を吐き出す。
何人もの情報屋を雇ったが、誰一人アジトを割り出せなかった。そればかりか、音信不通から数日で死体となって発見される。オドゥムの守りは思っていた以上に鉄壁だった。
IT企業社長の肩書きを持つアロン(ダリル)でさえも、現状ではお手上げ状態。もちろんアロンも出来ないわけでは無いようだが、自身のフィールド(アメリカ)ではないため、仕込みには時間がかかる。数か月前ならばそれも容認できたが、今はそうはいかない。どちらが先に相手を出し抜き、牙を剥くか。いわば一触即発の状態なのだから。
ならば国内の情報に詳しいラスティーにやらせてみようと話を振ったが、どうやら正解だったようだ。
(まあネット上の諜報活動だけ見れば、アロンは装甲車、ラスティーはさしずめバイクと言ったところか。
システムへの攻撃力・防御力はアロンが上だが、小回りとスピードではラスティーの方が何倍も上だな)
それぞれに持ち味がある。ジンは愉快そうに笑った。
「ウォッカ、例の作戦の準備は進んでいるか?」
ラスティーの報告を受ける前から、水面下で動いていたウォッカにジンが問いかけた。
「ぬかりはありませんぜ、アニキ」
ウォッカがジンの顔を見て答えた。いくつものタスクを同時にこなすウォッカの手腕に、ジンは満足そうにうなずく。
「よし。奴らのアジトも割れた。あとは準備が整えば決行を待つのみだ。おっと、そうだ。アロンのヤツにも連絡を入れておけ。『ラスティーがアジトとリーダーを突き止めた』とな」
「わかりやした」
ウォッカはPCに向き直ると、メールの画面を開く。カタカタとキーボードを打つ音が部屋に響いた。
「ようやくあのうるさいハエどもを一網打尽に出来る」
鋭いジンの目がさらに大きく見開かれた。
さらにPCを操作し、現在ラスティーが掴んでいる、オドゥムの実行部隊長数名の顔写真を画面に表示させる。
倉庫街や首都高周辺に設置されている警視庁の監視カメラの画像を使い、アロンが来日した日より前までさかのぼって、この辺りに出没している人物を検索した。
監視カメラに映る人物の顔には次々とオレンジや赤の四角いラインが表示され、コンピューターが該当する人物を探している。
やがて「ピー」という電子音が鳴り、電話をしている人物の顔が緑のラインで囲まれた。
りおがマウスをクリックすると人物の顔写真が画面の左半分に表示される。さらに右半分には名前と経歴が表示された。
「リュ・スンホ……実働部隊のナンバー3。あのキム・ウジンの補佐をしていた男。この男が現在日本に潜伏している部隊のリーダーで間違いなさそうね……」
りおはアジトの地図とリュ・スンホの顔写真をメールに添付し、降谷、風見にそれぞれ送る。
そしてまったく同じものを、アドレスを変えてジンにも送信した。
「オドゥムの事は世間には公表されていない。だからカフェの事件も無差別テロと報道されている。警察が表立ってオドゥムの捜査をするには限界があるわ。降谷さんはきっと組織の『掃討作戦』を利用するだろうな……」
(警察が関わっても関わらなくても……今いる実行部隊を壊滅させるためには、それ相応の被害が出るのは避けられない)
りおは送信が完了した画面を見つめ、ため息をついた。
ガチャ…
「ッ!」
突然ノックも無しに部屋のドアが開いた。りおが振り返る。
「りお、何をしている?」
Tシャツにスウェット姿の赤井が険しい顔をして立っていた。
「何って……ちょっと調べものを……」
りおが説明をしている間にも、赤井はツカツカと部屋の中に入り込み、りおの腕を掴んだ。
「組織の任務か? 今は一線を離れているはずだろう?」
「情報収集だけよ。オドゥムのアジトを探し出せって……」
「…ッ! オドゥム、だと?」
サッと赤井の顔色が変わった。りおの両腕を掴むと声を荒げる。
「お前……自分の体を過信するなよ! ちょっと調子が良いからってオドゥムに関わるなんて、無謀すぎるだろう!」
「ご、ごめんなさ……」
赤井の剣幕に、りおはやや怯えた様に視線を泳がせ謝罪した。
「ッ! す、すまん。大きな声を出して悪かった。ただ……心配なんだ」
赤井は慌てて手の力を抜き、眉を下げてりおの顔を覗き込む。りおも表情を緩め小さく首を横に振った。
「私の方こそごめんなさい。情報収集だけだったし、リハビリになるかと思ってあんまり深く考えてなかった」
トン、と赤井の胸元に頭をつけた。赤井もりおを抱きしめる。
「慌てる必要は無い。今はあまり無理をするなよ」
「うん」
赤井はりおの背中をそっと撫でた。りおも赤井の胸元に頬をすり寄せる。
「さあ、もう遅い。そろそろ寝た方がいい。俺も自分の部屋に行くよ」
「うん……なんか…離れがたいね」
赤井の大きな手で抱きしめられて、頬にはその鼓動を感じて。優しい温もりを手放すのは惜しい。
りおは「もう少しだけ」と言って、赤井から離れない。
「あ、いや…りお。そ、そろそろ離れてくれないか? いろいろ…まずい…」
「え~…もう少し秀一さんを堪能したい」
赤井の焦りなどお構いなしに、りおはピッタリと体を寄せた。
これ以上はホントにマズいんだ、と赤井はしどろもどろで訴える。
「もう…何がそんなにマズい……ん?」
体を密着させていたりおは何かを感じた。
赤井は真っ赤になって顔を片手で覆い、天を仰ぐ。
スウェット越しに感じる何か。
「あ……」
違和感の理由が分かり、りおも顔を真っ赤にして声を上げた。
「りお! それ以上言うな! 言わないでくれ。俺も分かってる。なにしろ…ずいぶんご無沙汰だし。でも気にしなくていい。ほっとけば治まるから」
赤井は顔を赤くしたまま弁解した。
「……いいよ……」
「え?」
「私も…秀一さんと離れがたくなっちゃったから…ね?」
赤井以上に真っ赤な顔をしたりおが、恥ずかしそうにつぶやく。
「あ、いや……でも……」
動揺する赤井から、りおはスルリと体を離す。イスから立ち上がると、そのままベッドのふちに座った。
「抱いて、秀一さん」
恥ずかしそうな顔をしながら、赤井に向けて両手を広げる姿は破壊力抜群だった。
「ッ! りお!」
りおの両腕の中に、赤井が吸い込まれるように体を寄せる。
すぐに優しいキスの雨がりおに落ちてきた。
明け方近く——
「…ぅ…ん…」
寒さに顔を歪ませ、赤井が目を覚ます。
ようやく重いまぶたを開けて部屋を見回すと、そこは自分の部屋ではなくりおの部屋だった。
(夕べ……は…?)
どうしたんだったか…。赤井はまだ半分寝ている頭を総動員して記憶をたどった。
「ッ!」
思い出して飛び起きる。見れば自分は服を着ていない。毛布が腹の辺りにかかっているものの、肩は出ていた。どうりで寒いわけだ。
隣でスヨスヨと寝息を立てているりおも服を着ておらず、すっぽりと毛布に包まっている。
(そ、そうだ…夕べ組織の任務でオドゥムを調べていたりおを注意して…そのまま…)
りおを抱くのは久しぶりだった。
両親のことを思い出し、PTSDの症状がひどくなってそれどころではなかったからだ。
それ故ずっと我慢していたのに。あんなふうに誘われれば、いくら赤井と言えど抑えられるはずがない。それでも。本調子ではないりおを出来る限り優しく抱こうと思っていたのに。
(優しくどころか、途中から我を忘れていた気がする……)
りおの首元を見ればそれは一目瞭然。あちらこちらにうっ血痕が付いていた。
(お前相手だと…どうもダメだな…)
赤井は自分に呆れつつ、まだ眠るりおの顔に触れた。
「愛してるよ」
そう心の中で言いながら、乱れたりおの髪をそっとかき上げる。再びその隣にごろりと寝転がった。
起きるにはまだ早い。赤井は二度寝を決め込んだ。
隣にりおが居る。
ささやかな幸せを感じながら赤井は目を閉じた。
***
ラスティーから届いたメールを確認したジンは、タバコを吸いながらニヤリと口角を上げる。
「さすがラスティー、わずかな時間で奴らの居場所と実行リーダーを探し当てたか。これじゃあ情報屋も形ナシだな」
スマホをソファーに放り投げ、タバコの煙を吐き出す。
何人もの情報屋を雇ったが、誰一人アジトを割り出せなかった。そればかりか、音信不通から数日で死体となって発見される。オドゥムの守りは思っていた以上に鉄壁だった。
IT企業社長の肩書きを持つアロン(ダリル)でさえも、現状ではお手上げ状態。もちろんアロンも出来ないわけでは無いようだが、自身のフィールド(アメリカ)ではないため、仕込みには時間がかかる。数か月前ならばそれも容認できたが、今はそうはいかない。どちらが先に相手を出し抜き、牙を剥くか。いわば一触即発の状態なのだから。
ならば国内の情報に詳しいラスティーにやらせてみようと話を振ったが、どうやら正解だったようだ。
(まあネット上の諜報活動だけ見れば、アロンは装甲車、ラスティーはさしずめバイクと言ったところか。
システムへの攻撃力・防御力はアロンが上だが、小回りとスピードではラスティーの方が何倍も上だな)
それぞれに持ち味がある。ジンは愉快そうに笑った。
「ウォッカ、例の作戦の準備は進んでいるか?」
ラスティーの報告を受ける前から、水面下で動いていたウォッカにジンが問いかけた。
「ぬかりはありませんぜ、アニキ」
ウォッカがジンの顔を見て答えた。いくつものタスクを同時にこなすウォッカの手腕に、ジンは満足そうにうなずく。
「よし。奴らのアジトも割れた。あとは準備が整えば決行を待つのみだ。おっと、そうだ。アロンのヤツにも連絡を入れておけ。『ラスティーがアジトとリーダーを突き止めた』とな」
「わかりやした」
ウォッカはPCに向き直ると、メールの画面を開く。カタカタとキーボードを打つ音が部屋に響いた。
「ようやくあのうるさいハエどもを一網打尽に出来る」
鋭いジンの目がさらに大きく見開かれた。