第1章 ~運命の再会そして…~
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そんな穏やかな雰囲気を壊すようにゆっくりとさくらの部屋のドアが開いた。
殺気を感じ、さくらは一瞬で状況を察知する。彼女の息を飲む音を昴は聞き逃さなかった。
「さくら?」
安室も部屋に仕掛けた盗聴器から、誰かが部屋に入ってきた事を察知する。
「やっと見~~つけた~~~~」
イヤホン越しにゾクリと寒気が走るような男の声が聞こえた。
「さくら? さくら!!何があった?!」
昴は声を掛けるが、今彼女は声が出ない。安室は慌てて車外に飛び出し、ラボの庭先に回る。イヤホンからは部屋の中で争う音が響いていた。
部屋に入ってきたギムレットは、さくらに襲いかかる。ベッドに向かってきたところを身を翻してかわすと、置いてあった点滴のスタンドは、ギムレットがぶつかった衝撃で倒れた。
ガチャーンッ!!!
耳をつんざくような大きな音がした。
ギムレットはそのスタンドを手に持つと、さくらめがけて振り下ろす。
グシャッ!!
「ッ!?」
上手くさくらがかわしたため、それは空を切って床を叩く。すると衝撃でスタンドはグニャリと半分くらいに曲がってしまった。それを見てさくらは凍りつく。
『あなた、まさか…エンジェルダストを?!』
さくらの驚いた顔を見て、ギムレットはニヤリと笑う。曲がったスタンドを振り回し、狂気の笑顔を向けてさくらを追い詰めていく。
そのうち大きな音に気がついた医療スタッフたちが何事かとやってきた。
「星川さん、どうし……ぐわぁぁぁ!!」
ドアを開けた瞬間、ギムレットはスタンドで医療スタッフを殴り倒す。次々と悲鳴が上がった。
その隙をついて、さくらは病室の窓ガラスを来客用の丸椅子で叩き割り、USBの入った小さなバッグを持って窓から飛び出した。
ちょうど窓から飛び出し、外に着地したとき、安室がこちらに向かって走ってくるのが見えた。さくらは安室に駆け寄る。小さなバッグを手渡すと安室の耳元で掠れた声でささやいた。
「ギムレットがエンジェルダストを! 狙いは私よ。データをお願い!」
そう言ってすぐに安室から離れ、埠頭に向かって走り出した。
その直後、
ドゥォォオオオオン!!!
すごい音がした。病室の壁が壊されたのだ。
僅かに土煙が上がる。そこに現れたのは、常軌を逸し、悪魔のような形相をした男が立っていた。安室は彼の前に立ちはだかり行く手を阻むが、もはやさくら以外は見えていないようだった。
「食らえッ!!」
ドカッ!!
安室は強烈な右ストレートをお見舞いするが、ギムレットは全く堪えていないようだった。
『僕のパンチを受けてもこれか…恐ろしい薬だ…!』
笑顔を湛えるギムレットに、安室は恐怖すら感じる。かくなる上はと、体当たりをして尻もちをつかせた。
体勢を崩したままギムレットは尚も笑う。そんなものは何も意味を成さないとでも言うかのように、片腕をブンッと振り回した。
「ぐッ!」
安室はとっさに両腕で防御するが、あまりの力に吹っ飛ばされてしまった。
ギムレットはゆっくりと立ち上がると安室には目もくれず、さくらの後を追いかけていった。
エンジェルダストの力に驚きを隠せない安室。すぐさまイヤホンのマイクに手を当て、昴に連絡をした。
何かが起きていることだけはわかるが、それ以上のことが全く分からず、昴もコナンも焦っていた。
「さくら! 何があったんだ!」
「さくらさん! 安室さん!」
何度もイヤホンのマイクに問いかけた。
やがて、安室から通信が入る。
「さくらさんがギムレットに襲われている。しかもギムレットはエンジェルダストを打っている!」
「「なんだって?!」」
「今彼女はそっちに向かっているはずだ!! 援護を頼む。僕も車で追いかける!」
安室からの連絡にコナンは血の気が引いた。
『エンジェルダストを打った殺人兵器がさくらさんを襲っているだと?!』
コナンは隣にいる昴を見上げた。彼も額に大量の汗をかき、眉間にしわを寄せている。やがて意を決したようにバッグからショットガンも取り出した。
はぁはぁはぁ…
さくらはひたすら埠頭に向かって走っていた。だが、ギムレットは狂った笑顔を見せながら、さくらを追いかける。
「今日こそ俺のモノに~~ラスティィィ~~~」
魔の手はすぐそこまで迫ってきていた。
これ以上は逃げられないと悟ったさくらは走るのをやめ、ギムレットと向かい合い彼をキッと睨んだ。
「いいネェェェ~~そういう顔もそそるねぇぇ~。俺はお前を一目見た時から狙っていたんだよ…。ふふふ…お前のアンバーの瞳……似てるよ……」
一瞬だけ優しげな笑顔を見せる。だがすぐに狂気の顔に戻ると、ジリジリと間合いを詰めてきた。
『え?似てる…?誰と…? しかも今…笑った?』
ギムレットの不可解な行動と言葉の意味を考えていた、その時。
ブオオオン!! キキキキ~~~~ッ!!
安室の運転する黒い車がギムレットめがけて猛スピードで走ってきた。
『安室さん!まさか!』
そう思った瞬間、車は横にドリフトしながらギムレットをはねた。体が宙に舞う。
車は更にドリフトして向きを変えると、海ギリギリに止まった。ギムレットはピクリともしない。
「やったか?」
安室がハンドルから頭を離し、状況を確認しようと前を見た。
「ッ! ま、まさか…」
「それで俺を殺したつもりかい? 笑っちゃうねえぇ~~! ははははははは!!」
ギムレットは何事も無かったかのように大笑いをしながら起き上がり、安室の車に近づく。
『安室さん逃げて!!!』
さくらは必死に叫ぶが声にならない。
「うっ…くっ!」
安室は車がギムレットに当たった衝撃でケガをしていた。頭からの出血が激しい。彼が近づいて来るのが見えたが、痛みで動けない。
何とか左手を伸ばしギアを入れようとしたが、わずかに遅くグラリと車が大きく揺れた。
あろうことか、ギムレットは車の前のバンパーを掴むとそれを持ち上げたのだ。車は裏を向く形で海へと落とされた。
『安室さん!! 安室さん!!』
声にならないさくらの叫びが続いた。
「さあ、邪魔者はいなくなったよ~。ラスティーこちらにおいで~~~」
ギムレットはジリジリとさくらに近づいてきた。さくらは一度目を閉じ、深呼吸する。
『落ち着け。出来るだけ悟られないように、彼を狙撃できるところまで誘い出せば…』
さくらは覚悟を決めるとギムレットに向けて攻撃を仕掛けた。