第7章 ~記憶の扉が開くとき~
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翌日——
アロンの消息は途絶えたまま。公安部のデスクでは公安刑事たちがうなだれていた。特に風見の落ち込みようは酷い。
(結局俺たちは降谷さん不在の状況でターゲットの追跡すら出来ないのか……)
報告書の山に忙殺され、思考はさらにネガティブになっていく。
黙々とデスクワークをこなしながら、風見はいつ上司の『それでよく公安が務まるな』というセリフが飛んでくるかと、内心ビクビクしていた。
ブーッ、ブーッ、ブーッ…
やがて風見の胸ポケットが震えた。取り出したスマホの画面には『降谷零』の文字。風見は震える手で通話をタップした。
「……はい」
『風見か』
電話口からいつも通り降谷の声が聞こえた。風見は絞り出すように謝罪の言葉を口にする。
「降谷さん…申し訳ありませんでした…」
きっとこの優秀な上司は自分たちの失態にがっかりしているに違いない。
(俺たちを信じて任せてくれていたというのに……)
風見は悔しさをにじませる。しかし上司の口から出た言葉は、風見が思っていたものとはまるで違うものだった。
『風見、何を謝っている? アロンを追跡出来なかった事か? あの状況下でヤツを追跡するのは不可能だった。
それよりも全員とっさの判断で周りの安全確保に当たってくれた。お陰でけが人ナシだ。皆の働きに感謝する』
よくやった、と言われ風見は涙が出そうになる。
『みんなにも気を落とすなと伝えてくれ。アロンの消息は僕と広瀬で追う。心配するな。それよりも事態は急速に悪い方に進んでいるんだ』
喜びもつかの間——降谷の緊張した声を聞き、風見は眉根を寄せる。
「悪い方向? それはいったい…」
『オドゥムが動き出した』
「!!」
貿易会社の爆破事件によってダメージを受けたオドゥムは、体制立て直しのため一度組織から手を引いている。
そのオドゥムがジンを狙ってきたとなると、本格的に攻撃を再開したと見るべきか。
風見は驚きのあまり声も出なかった。
『オドゥムが組織に宣戦布告をしたと考えられなくもないが……僕はアロン個人を狙ったと思っている』
「アロン・モーリスを、ですか?」
降谷の思考について行けず、風見は「何故です?」と問いかける。
『狙撃のタイミングがアロンとの密会だったというのが引っかかるんだ。あまりにもタイミングが良すぎる。もしかすると、我々が追っている《組織のビジネス》に奴らも気付いたのかもしれない』
「なるほど」
あの狙撃事件だけでそこまで考察できる上司に風見は脱帽だ。また連絡するという言葉を最後に、降谷からの電話は切れた。
「オドゥムか。まさかこのタイミングで……ん? ということは、広瀬の身も危ないんじゃ……」
風見はジンと同じくオドゥムに目を付けられている《ラスティー》の身を案じずにはいられなかった。
同じ頃、工藤邸——
前日の狙撃事件について降谷から連絡を受けたりおは、大きなため息をついた。
「どうしました? 浮かない顔ですね」
ソファーに座って本を読んでいた昴が話しかける。
「う、うん。降谷さんから許可が出ているからあなたにも話すけど……」
りおは一瞬だけ視線を落とすと、昴の方に体を向けた。
「実は夕べ、ナイトクラブのオーナーであるアロン・モーリスが来日したの。日本に着いてその足でジンと会ったようなんだけど……その時に狙撃をされたって。しかもその時の狙撃手がオドゥムの工作員だったみたいで……」
「なにッ!?」
オドゥムと聞いて昴が立ち上がる。ジンたちが狙われたとあれば、ラスティーも例外ではないからだ。
「今まで以上に警戒しなければなりませんね」
「うん。降谷さんにも同じことを言われたわ。次に狙うのはラスティーかもしれないって。大学も……出来れば休めって言われたんだけど」
またしても教授たちに迷惑が掛かってしまう。りおはうつむいた。
「仕方がありませんよ。オドゥムの攻撃は過激です。もしラスティーの仮の姿である《星川さくら》を知られて、研究室に爆弾でも仕掛けられでもしたら……」
作戦に失敗した仲間の命も、そして自らの命さえも簡単に葬ってしまう——。オドゥムの性質を知る昴の顔は険しい。
「うん、分かってる。私だけじゃなくて周りの関係のない人たちまで巻き込んでしまう。明日からのお休みを森教授に連絡しておくわ」
りおは手にしていたスマホに視線を移し、すぐに連絡を入れた。
電話を切った後、りおは力なくソファーに背を預けた。
「元気が無いですね」
オドゥムの件に関わらず、ここ数日何となく覇気がないというか、元気が無い気がする。
「え…そう、かな?」
「ええ。あまり顔色も良くないですし」
昴はりおに近づくと隣に座った。そっと手を伸ばして顔に触れる。りおの頬はヒンヤリと冷たかった。
「りお。先日から気になっていたのですが、あなたの体、最近冷えていませんか?」
「ん~…そうかな。言われてみれば指先も冷たい、かなぁ。実は……時々ツキンと一瞬だけなんだけど頭が痛くなる事があるの。おそらく片頭痛のたぐいだと思うけど。その時は決まって目の前がオレンジ色になって……」
「ッ!」
りおの説明に昴の顔色が変わった。
(オレンジ色の光……それは爆発の記憶か? 両親の記憶を思い出さなければという焦りと、思い出したくないという心の防御反応がせめぎ合っているのか?
それが自律神経を乱し、頭痛や冷えという形で、体に影響を及ぼしているのかもしれない。あまり良い状態では無いな)
昴は持っていた本をテーブルに置くと、りおを抱きしめる。
「昴さん?」
突然の抱擁にりおが不思議そうに問いかけた。
「りお、せっかくお休みを頂くのですから、しっかり体を休めましょうね。今回はタップリ甘えさせてあげますよ?」
りおの頭を撫でて、飛び切り甘い声でささやいた。
「ぅ、わぁ…。どうしたの? そんな色っぽい声出して…。ドキッとしちゃった…」
りおは顔を赤くして照れくさそうに下を向く。
「ふふふ。たまには良いかなと思いまして。覚悟してくださいね、お姫様?」
昴のお姫様発言に、りおは「ひえぇぇ~…」と悲鳴を上げて昴の胸元に顔をうずめた。
アロンの消息は途絶えたまま。公安部のデスクでは公安刑事たちがうなだれていた。特に風見の落ち込みようは酷い。
(結局俺たちは降谷さん不在の状況でターゲットの追跡すら出来ないのか……)
報告書の山に忙殺され、思考はさらにネガティブになっていく。
黙々とデスクワークをこなしながら、風見はいつ上司の『それでよく公安が務まるな』というセリフが飛んでくるかと、内心ビクビクしていた。
ブーッ、ブーッ、ブーッ…
やがて風見の胸ポケットが震えた。取り出したスマホの画面には『降谷零』の文字。風見は震える手で通話をタップした。
「……はい」
『風見か』
電話口からいつも通り降谷の声が聞こえた。風見は絞り出すように謝罪の言葉を口にする。
「降谷さん…申し訳ありませんでした…」
きっとこの優秀な上司は自分たちの失態にがっかりしているに違いない。
(俺たちを信じて任せてくれていたというのに……)
風見は悔しさをにじませる。しかし上司の口から出た言葉は、風見が思っていたものとはまるで違うものだった。
『風見、何を謝っている? アロンを追跡出来なかった事か? あの状況下でヤツを追跡するのは不可能だった。
それよりも全員とっさの判断で周りの安全確保に当たってくれた。お陰でけが人ナシだ。皆の働きに感謝する』
よくやった、と言われ風見は涙が出そうになる。
『みんなにも気を落とすなと伝えてくれ。アロンの消息は僕と広瀬で追う。心配するな。それよりも事態は急速に悪い方に進んでいるんだ』
喜びもつかの間——降谷の緊張した声を聞き、風見は眉根を寄せる。
「悪い方向? それはいったい…」
『オドゥムが動き出した』
「!!」
貿易会社の爆破事件によってダメージを受けたオドゥムは、体制立て直しのため一度組織から手を引いている。
そのオドゥムがジンを狙ってきたとなると、本格的に攻撃を再開したと見るべきか。
風見は驚きのあまり声も出なかった。
『オドゥムが組織に宣戦布告をしたと考えられなくもないが……僕はアロン個人を狙ったと思っている』
「アロン・モーリスを、ですか?」
降谷の思考について行けず、風見は「何故です?」と問いかける。
『狙撃のタイミングがアロンとの密会だったというのが引っかかるんだ。あまりにもタイミングが良すぎる。もしかすると、我々が追っている《組織のビジネス》に奴らも気付いたのかもしれない』
「なるほど」
あの狙撃事件だけでそこまで考察できる上司に風見は脱帽だ。また連絡するという言葉を最後に、降谷からの電話は切れた。
「オドゥムか。まさかこのタイミングで……ん? ということは、広瀬の身も危ないんじゃ……」
風見はジンと同じくオドゥムに目を付けられている《ラスティー》の身を案じずにはいられなかった。
同じ頃、工藤邸——
前日の狙撃事件について降谷から連絡を受けたりおは、大きなため息をついた。
「どうしました? 浮かない顔ですね」
ソファーに座って本を読んでいた昴が話しかける。
「う、うん。降谷さんから許可が出ているからあなたにも話すけど……」
りおは一瞬だけ視線を落とすと、昴の方に体を向けた。
「実は夕べ、ナイトクラブのオーナーであるアロン・モーリスが来日したの。日本に着いてその足でジンと会ったようなんだけど……その時に狙撃をされたって。しかもその時の狙撃手がオドゥムの工作員だったみたいで……」
「なにッ!?」
オドゥムと聞いて昴が立ち上がる。ジンたちが狙われたとあれば、ラスティーも例外ではないからだ。
「今まで以上に警戒しなければなりませんね」
「うん。降谷さんにも同じことを言われたわ。次に狙うのはラスティーかもしれないって。大学も……出来れば休めって言われたんだけど」
またしても教授たちに迷惑が掛かってしまう。りおはうつむいた。
「仕方がありませんよ。オドゥムの攻撃は過激です。もしラスティーの仮の姿である《星川さくら》を知られて、研究室に爆弾でも仕掛けられでもしたら……」
作戦に失敗した仲間の命も、そして自らの命さえも簡単に葬ってしまう——。オドゥムの性質を知る昴の顔は険しい。
「うん、分かってる。私だけじゃなくて周りの関係のない人たちまで巻き込んでしまう。明日からのお休みを森教授に連絡しておくわ」
りおは手にしていたスマホに視線を移し、すぐに連絡を入れた。
電話を切った後、りおは力なくソファーに背を預けた。
「元気が無いですね」
オドゥムの件に関わらず、ここ数日何となく覇気がないというか、元気が無い気がする。
「え…そう、かな?」
「ええ。あまり顔色も良くないですし」
昴はりおに近づくと隣に座った。そっと手を伸ばして顔に触れる。りおの頬はヒンヤリと冷たかった。
「りお。先日から気になっていたのですが、あなたの体、最近冷えていませんか?」
「ん~…そうかな。言われてみれば指先も冷たい、かなぁ。実は……時々ツキンと一瞬だけなんだけど頭が痛くなる事があるの。おそらく片頭痛のたぐいだと思うけど。その時は決まって目の前がオレンジ色になって……」
「ッ!」
りおの説明に昴の顔色が変わった。
(オレンジ色の光……それは爆発の記憶か? 両親の記憶を思い出さなければという焦りと、思い出したくないという心の防御反応がせめぎ合っているのか?
それが自律神経を乱し、頭痛や冷えという形で、体に影響を及ぼしているのかもしれない。あまり良い状態では無いな)
昴は持っていた本をテーブルに置くと、りおを抱きしめる。
「昴さん?」
突然の抱擁にりおが不思議そうに問いかけた。
「りお、せっかくお休みを頂くのですから、しっかり体を休めましょうね。今回はタップリ甘えさせてあげますよ?」
りおの頭を撫でて、飛び切り甘い声でささやいた。
「ぅ、わぁ…。どうしたの? そんな色っぽい声出して…。ドキッとしちゃった…」
りおは顔を赤くして照れくさそうに下を向く。
「ふふふ。たまには良いかなと思いまして。覚悟してくださいね、お姫様?」
昴のお姫様発言に、りおは「ひえぇぇ~…」と悲鳴を上げて昴の胸元に顔をうずめた。