第7章 ~記憶の扉が開くとき~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
やがてホテルには何台かのタクシーが到着した。そのうちの一台からアロンが降車する。
『A班、アロン・モーリスの姿を目視。ホテルに入ります』
「了解。この後ヤツはジンと会う。密談が終わって出てきてからが我々の仕事だ。気を抜くなよ」
『了解』
いよいよ密会が行われる。風見はゴクリとつばを飲み込んだ。
「来たか……」
バーボンは双眼鏡を覗きながら小さくつぶやいた。
ジンが到着して間もなく、あらかじめ知らされていた部屋で人影が動いたことを確認した。
やがて部屋のカーテンをウォッカが閉めたところも目視した。公安の通信も傍受していたのでアロンが到着した事も把握している。
密会はどうやら始まったようだった。
バーボンは暗視機能が付いた双眼鏡を使って、周辺の高いビルの屋上や電波塔に至るまでくまなく確認していく。
「ん? あれは……コルンとキャンティか……」
赤い航空障害灯が明滅する電波塔に、黒い人影を見つけた。目を凝らすとどうやらコルン達のようだ。互いに背中合わせで周辺を睨んでいた。二人はライフルを持っている。
バーボンはさらに視線を移し、怪しい影が無いか注意を払う。
ゆっくりゆっくり——
建物一つ一つ丁寧に確認していく。刻々と時間が過ぎていった。
アロンがホテルに入って1時間半ほど過ぎた頃——
ジンから連絡が入る。
『話し合いは終わりだ。これでホテルを出る。周りの警戒を怠るなよ』
「了解」
一番狙われる可能性があるのはホテルを出る時だ。バーボンはさらに警戒を強め、周囲を監視する。
やがてホテルのロータリーに、組織の末端が運転する黒い車が到着した。
そのすぐ後ろにはジンのポルシェが続く。先に部屋を出たウォッカが、ホテルの駐車場から車をまわしてきたのだろう。
そろそろ二人が出てくる。そう思った時だった。
「ッ!」
バーボンの右前方にあるビルの屋上で、何か黒いものが動いた。すぐさまコルン達に連絡を取る。
「あなた達から見て8時の方向、黒い影が動きました。確認を!」
『了解』
連絡を受けたコルンがスコープを覗く。
「暗殺者発見。さっき見た時は居なかった」
「隠れてたんだね! コルン、さっさと始末しちまいな!」
「了解」
キャンティに言われ、コルンはトリガーに指をかける。
「な!?」
トリガーを引こうとした瞬間——影の暗殺者はコルン達に銃口を向けた。
ドン!
ドン!
「ふせろ!」
コルンが叫び、二人は体勢を低くする。
キュィーン
キュイーン
電波塔の鉄筋に銃弾が当たり、甲高い音が響いた。双眼鏡でその様子を見ていたバーボンは、通信機をONにする。
「ジン! 近くに狙撃者がいます! コルン達が狙おうとして逆に狙撃されました! 次はあなた達です!」
『なに!?』
ジンはホテルの入口でビルを見上げる。
「アロン! すぐに車に乗れ!」
ジンは前方に居たアロンに声をかけ、自身もポルシェに乗り込む。キュルキュルとタイヤを鳴らし、車は急発進した。
パシュ!
パシュ!
パシュ!
パリンッ!!
ガッ!
ガッ!
3発の銃声が聞こえ、それぞれが車の窓ガラスと車体に着弾する。
アロンを乗せた車とポルシェは、狙いを付けられないよう右に左に車体を振りながらホテルを猛スピードで飛び出した。
ホテルの前では組織の車を避けた一般車両が、反動で対向車線に飛び出す。
キキキ——!!
対向車が慌ててブレーキを踏んだ。
ドン!
ドン!
尚も銃撃が続いた。
「な、なんだ!?」
突然の銃撃に公安は唖然としながらも、各班は付近の安全確保に動く。
A班B班それぞれの車が大通りに飛び出し、狙撃の動線に一般車両が入り込まぬよう車の往来を塞き止めた。
それ故に現状でアロンを追えるものが誰もいない。
「くそッ!」
風見は待機していた車を急発進させ、アロンの車を追おうとハンドルを切った。が、銃弾が1発車のタイヤをかすめる。
あっという間にタイヤの空気が抜け、思うように走行できない。
このままでは銃撃の的になってしまう。
風見は車を乗り捨て体を低くし、ビルの隙間へとダッシュした。
風見が物陰に入った瞬間——
車は集中的に撃たれ、見る影もなく破壊された。
タ——ン!!
一発の銃声が響いた瞬間、それまでの銃撃がピタリとおさまった。
『暗殺者死んだ』
バーボンのヘッドセットにコルンの声で通信が入る。
『全く油断もスキもないネズミだよ。こっちを牽制しながら、ターゲット(ジン)を狙うなんて!』
キャンティが不満そうな声を上げた。
「あなた達二人がかりでも手を焼いたんですか?」
バーボンがキャンティに問いかける。
『ああ、相当訓練されてるね。一対一だったら狙撃阻止だけで精一杯だった。アタイたちは二人いたから殺れたけどさ』
キャンティが低い声で状況を分析する。彼女のこんな態度は珍しい。
「なるほど。かなりの手練れだったようですね。二人ともお疲れさまでした。狙撃者の身元確認は僕が行きます」
そう言ってバーボンは通信を切ると「ふ~ぅ」と息をついた。
(風見…まったく無茶をする…)
どうしてこう無茶をする部下ばかりかな…とぼやきながらも、上司が僕じゃ仕方がないか…と頭を掻いた。
狙撃者が潜んでいたビルの屋上へとたどり着いたバーボンは、他に仲間がいることも想定して注意深く辺りを見回す。
銃を構えたまま耳をそばだて、全神経を集中した。
誰もいない事を確認して屋上の手すりに近づく。女が一人頭から血を流して倒れていた。
銃を懐に仕舞い、持っていた懐中電灯をつけて女の体を確認する。
胸元に付いていたピンバッチに気付き、それに手を伸ばした。
「…これは…!」
女の所属する組織を知りハッとした。慌てて女の着ていた服のファスナーを乱暴に下ろす。
そこには小さな爆弾が仕掛けられていた。
おそらく狙撃手のバイタルが途切れると作動する仕掛けなのだろう。
身元確認に来た敵も巻き込めるよう、作動時間も調整されていたようだ。
カウンターはすでに10秒を切っている。
「チィッ!」
バーボンは慌てて屋上のドアに向かって走った。階段室に滑り込んだその瞬間——
ドォォォン!!
爆弾が爆発した。
爆風で階段室のドアが乱暴に閉まる。直後にドア上部のガラスが吹き飛んだ。
パラパラとバーボンの体にガラス片が降りそそぐものの、粉々になったお陰で刺さることは無い。
衝撃がおさまり、バーボンは階段室のドアを開ける。
女が倒れていた付近のコンクリートが黒くすすけていたが、それ以外そこには何も残ってはいない。
「証拠は死体すら…残さないということか…」
非道な手口に思わず奥歯を噛みしめた。
『ジン、無事ですか?』
ジンのヘッドセットにバーボンから通信が入る。
「ああ。組織の車はどれも防弾仕様だからな。ガラスに被弾した弾も、その威力を削がれて車内に転がっている。車にキズはついたが、中の人間は誰も被害を受けちゃいねぇ。で、そっちは? 狙撃手の身元は分かったか?」
ジンはいつも通りの冷静な声で問いかける。
『ええ。狙撃手は胸に青いピンバッチを付けていました。そして……死体は爆弾で跡形もなく吹き飛びましたよ』
「ッ!!」
バーボンの報告にジンの顔が険しくなる。
「……オドゥムか?」
『ええ。間違いありません』
やや緊張したバーボンの声を聞き、ジンは小さく舌打ちした。
『A班、アロン・モーリスの姿を目視。ホテルに入ります』
「了解。この後ヤツはジンと会う。密談が終わって出てきてからが我々の仕事だ。気を抜くなよ」
『了解』
いよいよ密会が行われる。風見はゴクリとつばを飲み込んだ。
「来たか……」
バーボンは双眼鏡を覗きながら小さくつぶやいた。
ジンが到着して間もなく、あらかじめ知らされていた部屋で人影が動いたことを確認した。
やがて部屋のカーテンをウォッカが閉めたところも目視した。公安の通信も傍受していたのでアロンが到着した事も把握している。
密会はどうやら始まったようだった。
バーボンは暗視機能が付いた双眼鏡を使って、周辺の高いビルの屋上や電波塔に至るまでくまなく確認していく。
「ん? あれは……コルンとキャンティか……」
赤い航空障害灯が明滅する電波塔に、黒い人影を見つけた。目を凝らすとどうやらコルン達のようだ。互いに背中合わせで周辺を睨んでいた。二人はライフルを持っている。
バーボンはさらに視線を移し、怪しい影が無いか注意を払う。
ゆっくりゆっくり——
建物一つ一つ丁寧に確認していく。刻々と時間が過ぎていった。
アロンがホテルに入って1時間半ほど過ぎた頃——
ジンから連絡が入る。
『話し合いは終わりだ。これでホテルを出る。周りの警戒を怠るなよ』
「了解」
一番狙われる可能性があるのはホテルを出る時だ。バーボンはさらに警戒を強め、周囲を監視する。
やがてホテルのロータリーに、組織の末端が運転する黒い車が到着した。
そのすぐ後ろにはジンのポルシェが続く。先に部屋を出たウォッカが、ホテルの駐車場から車をまわしてきたのだろう。
そろそろ二人が出てくる。そう思った時だった。
「ッ!」
バーボンの右前方にあるビルの屋上で、何か黒いものが動いた。すぐさまコルン達に連絡を取る。
「あなた達から見て8時の方向、黒い影が動きました。確認を!」
『了解』
連絡を受けたコルンがスコープを覗く。
「暗殺者発見。さっき見た時は居なかった」
「隠れてたんだね! コルン、さっさと始末しちまいな!」
「了解」
キャンティに言われ、コルンはトリガーに指をかける。
「な!?」
トリガーを引こうとした瞬間——影の暗殺者はコルン達に銃口を向けた。
ドン!
ドン!
「ふせろ!」
コルンが叫び、二人は体勢を低くする。
キュィーン
キュイーン
電波塔の鉄筋に銃弾が当たり、甲高い音が響いた。双眼鏡でその様子を見ていたバーボンは、通信機をONにする。
「ジン! 近くに狙撃者がいます! コルン達が狙おうとして逆に狙撃されました! 次はあなた達です!」
『なに!?』
ジンはホテルの入口でビルを見上げる。
「アロン! すぐに車に乗れ!」
ジンは前方に居たアロンに声をかけ、自身もポルシェに乗り込む。キュルキュルとタイヤを鳴らし、車は急発進した。
パシュ!
パシュ!
パシュ!
パリンッ!!
ガッ!
ガッ!
3発の銃声が聞こえ、それぞれが車の窓ガラスと車体に着弾する。
アロンを乗せた車とポルシェは、狙いを付けられないよう右に左に車体を振りながらホテルを猛スピードで飛び出した。
ホテルの前では組織の車を避けた一般車両が、反動で対向車線に飛び出す。
キキキ——!!
対向車が慌ててブレーキを踏んだ。
ドン!
ドン!
尚も銃撃が続いた。
「な、なんだ!?」
突然の銃撃に公安は唖然としながらも、各班は付近の安全確保に動く。
A班B班それぞれの車が大通りに飛び出し、狙撃の動線に一般車両が入り込まぬよう車の往来を塞き止めた。
それ故に現状でアロンを追えるものが誰もいない。
「くそッ!」
風見は待機していた車を急発進させ、アロンの車を追おうとハンドルを切った。が、銃弾が1発車のタイヤをかすめる。
あっという間にタイヤの空気が抜け、思うように走行できない。
このままでは銃撃の的になってしまう。
風見は車を乗り捨て体を低くし、ビルの隙間へとダッシュした。
風見が物陰に入った瞬間——
車は集中的に撃たれ、見る影もなく破壊された。
タ——ン!!
一発の銃声が響いた瞬間、それまでの銃撃がピタリとおさまった。
『暗殺者死んだ』
バーボンのヘッドセットにコルンの声で通信が入る。
『全く油断もスキもないネズミだよ。こっちを牽制しながら、ターゲット(ジン)を狙うなんて!』
キャンティが不満そうな声を上げた。
「あなた達二人がかりでも手を焼いたんですか?」
バーボンがキャンティに問いかける。
『ああ、相当訓練されてるね。一対一だったら狙撃阻止だけで精一杯だった。アタイたちは二人いたから殺れたけどさ』
キャンティが低い声で状況を分析する。彼女のこんな態度は珍しい。
「なるほど。かなりの手練れだったようですね。二人ともお疲れさまでした。狙撃者の身元確認は僕が行きます」
そう言ってバーボンは通信を切ると「ふ~ぅ」と息をついた。
(風見…まったく無茶をする…)
どうしてこう無茶をする部下ばかりかな…とぼやきながらも、上司が僕じゃ仕方がないか…と頭を掻いた。
狙撃者が潜んでいたビルの屋上へとたどり着いたバーボンは、他に仲間がいることも想定して注意深く辺りを見回す。
銃を構えたまま耳をそばだて、全神経を集中した。
誰もいない事を確認して屋上の手すりに近づく。女が一人頭から血を流して倒れていた。
銃を懐に仕舞い、持っていた懐中電灯をつけて女の体を確認する。
胸元に付いていたピンバッチに気付き、それに手を伸ばした。
「…これは…!」
女の所属する組織を知りハッとした。慌てて女の着ていた服のファスナーを乱暴に下ろす。
そこには小さな爆弾が仕掛けられていた。
おそらく狙撃手のバイタルが途切れると作動する仕掛けなのだろう。
身元確認に来た敵も巻き込めるよう、作動時間も調整されていたようだ。
カウンターはすでに10秒を切っている。
「チィッ!」
バーボンは慌てて屋上のドアに向かって走った。階段室に滑り込んだその瞬間——
ドォォォン!!
爆弾が爆発した。
爆風で階段室のドアが乱暴に閉まる。直後にドア上部のガラスが吹き飛んだ。
パラパラとバーボンの体にガラス片が降りそそぐものの、粉々になったお陰で刺さることは無い。
衝撃がおさまり、バーボンは階段室のドアを開ける。
女が倒れていた付近のコンクリートが黒くすすけていたが、それ以外そこには何も残ってはいない。
「証拠は死体すら…残さないということか…」
非道な手口に思わず奥歯を噛みしめた。
『ジン、無事ですか?』
ジンのヘッドセットにバーボンから通信が入る。
「ああ。組織の車はどれも防弾仕様だからな。ガラスに被弾した弾も、その威力を削がれて車内に転がっている。車にキズはついたが、中の人間は誰も被害を受けちゃいねぇ。で、そっちは? 狙撃手の身元は分かったか?」
ジンはいつも通りの冷静な声で問いかける。
『ええ。狙撃手は胸に青いピンバッチを付けていました。そして……死体は爆弾で跡形もなく吹き飛びましたよ』
「ッ!!」
バーボンの報告にジンの顔が険しくなる。
「……オドゥムか?」
『ええ。間違いありません』
やや緊張したバーボンの声を聞き、ジンは小さく舌打ちした。