第1章 ~運命の再会そして…~
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「で? 分析の結果は?」
『夜8時を過ぎると、4つのセクションでそれぞれメインコンピューターにその日の報告を打ち込みに来ます。昨日は一番遅くて9:40頃でした』
さくらはムースを置き、監視カメラで確認した内容を安室に伝える。
『そして病室は9:00、11:00、2:00に巡回があります』
「行動を起こすなら、11時から2時の間が一番妥当だね。作業時間はどれくらいで済みそうだい?」
『この部屋を出て、帰ってくるまでトータル30分』
「では、11時の巡回終了後に決行…だな」
さくらは頷いた。
万が一バレた時のことも考えて、決行時間にはラボからほど近い埠頭の倉庫に、昴が待機する手はずになっている。ラボのすぐ外には安室が待機しているので、何かあればラボの外にさえ出られれば、逃走は容易い。
もちろん、まだラスティーとして組織に潜入し続けるためには、ここでバレるのは避けたいところだ。
一通り打ち合わせをしたところで、またしても安室の一人芝居が始まる。
「さくらさん、ラズベリームース食べられて良かったです。明日には帰れるように、医療担当の方に話しておきますね。迎えに参りますよ。それじゃあ、ゆっくり休んでください」
《11:00前にはラボの外で待機しています》
口パクでそう伝えると部屋を出ていった。
いよいよだ。
今日も一通りのチェックをして、RX-7は工藤邸へと急ぐ。
「決行は今夜11時の看護師の巡回後。作業時間はトータル30分」
「30分?!」
コナンが驚きの声を上げる。
「だって、部屋の往復と作業込で…でしょ? PCだっておそらくロックかかってるよね? パスワードとか。その上データがどこにあるか、なんて…」
「多分哀さんにレクチャーされているんでしょう」
昴は表情を変えずに答えた。
「パスワードだって、さくらさんにとってはただのドアノブに過ぎない。君も彼女の仕事を間近で見れば納得するよ」
安室も笑顔で答える。
(そんなにすごいのか…さくらさん)
コナンは彼女の容姿からは想像できない…と腕を組んで考え込んでしまった。
そんなコナンを横目に安室は、
「沖矢さん。この後ちょっと話があります」と耳打ちをした。
***
コナンは阿笠博士のところに、安室は今夜の準備に出かけたので工藤邸には昴一人になった。
自分も今夜の準備をしなければと思うが、ダイニングの椅子から立ち上がれずにいた。
安室から聞いた、りおとギムレットの過去。
両肘をダイニングテーブルにつき、組んだ両手に力が入る。
過去に、開発途中のエンジェルダストを打たれ、襲われそうになったと知っていたらラボへの潜入なんてさせなかった。
麻薬を打たれ、体からその効果が抜けるまでの苦しみを、想像しただけで吐きそうだ。しかもそのマッドサイエンティストが今、りおのそばにいるかも知れないと思うと、心臓を鷲掴みされたような痛みを感じる。
「ふぅ~…」
その痛みをまぎらわすように大きく深呼吸をして時計を見た。時刻は夜の9:00を回っている。
昴は静かに椅子から立ち上がった。
***
安室は工藤邸を出たあと一旦自宅に戻り、着替えをしてすぐにラボ周辺に待機していた。彼自身もさくらの病室に盗聴器を仕掛け、彼女に危険が及んでいないか、ずっと注意していたのだ。
ギムレットの事を話した時、昴は相当ショックを受けていた。あの様子から察するに、彼も彼女のことを…。そう悟って思わず『今は俺が彼女を守る』と言って工藤邸を出てきた。
対抗心とか、ライバル心とか、そういうものじゃなく。純粋に、今自分しか出来ないことを! そう思って出た言葉だった。
そんな気持ちになれたことに、自分が一番驚いた。あいつを恨んで殺したいほど憎んでいた、あの頃の自分からは考えられない。
こんな気持ちを教えてくれたのは、さくらだ。
君を絶対に守る。安室は決意を新たにした。
夜11時———
昴とコナンは埠頭内の高い建物に、安室はラボのすぐ近くに待機していた。全員がワイヤレスイヤホンを装着する。昴は万が一に備えて、ライフルを出し準備していた。
11時14分。
看護師が部屋を出たあと、さくらはラフな部屋着から上下黒のジャージに着替えた。左耳に差し込んだワイヤレスイヤホンのマイクをトントンと、2回タップする。メインコンピューター室への潜入開始の合図だ。
通気口から前回同様に侵入する。広くなった空間をメインコンピューター室に向けてひたすら進んだ。
コンピューターの真上に来たところで、イヤホンのマイクをトントントンと3回タップ。それを聞いて、安室がタブレットを使って監視カメラの映像を数時間前のものに切り替えた。
安室の声でイヤホンに「準備完了」と連絡が入る。
さくらは通気口のフタを開け、一気にコンピューター室に入った。
メインコンピューターに自分のノートパソコンを繋ぎ細工をする。ほんの数秒でパスワードが画面に表示された。ロック解除画面でそのパスワードを入れると、メインコンピューターはさくらに掌握された。
USBメモリを差し込み、麻薬セクションのデータをコピーする。ついでに残りの3セクションのデータもコピー出来た。
コピーを待つ間、さくらは使わない道具を片付ける。その動きに全く無駄が無い。
コピー完了を確認してUSBメモリを抜き取ると、カタカタとキーボートを叩き、後処理を行った。
最後に元の画面に戻し、自身のPC類をバッグに仕舞うと、
ジャンプして通気口に勢いよく這い上がる。そっとフタを閉め、昨日設置した小型カメラを回収しその場を後にした。
元来た道を戻り自分の部屋に入ると、先ほどの部屋着に着替えてベッドに潜り込む。
イヤホンのマイクにトントントントンと4回タップ。任務完了を伝えた。
それを確認して、安室は監視カメラの再生をストップし、通常録画に切り替えた。
コナンが時計を見る。11時38分。予定より6分も早かった。
「さくら、お疲れ様」
イヤホンから昴の声が聞こえる。その声を聞いて全員が安堵した。
「僕たち出番なかったね」
「ああ。それが一番いい」
コナンと昴が笑顔で話をする。
イヤホン越しにふたりの会話を聞いて、さくらもクスッと笑った。