第7章 ~記憶の扉が開くとき~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それから4日が過ぎ、ナイトクラブ殺人事件は捜査一課の懸命な捜査により、尾沼の金銭トラブルが原因だと結論付けられた。
尾沼は本来ギャンブル嫌いであったが、ここ数か月は研究が上手くいかない事でストレスを溜め、知人に誘われて複数のカジノに出入りをしていた。
現場となったカジノは今回たまたま入った店。しかしそこでイカサマに気付き、取られた金を巡って従業員と口論になったところを数人の客が目撃している。
一度は店を出て行ったものの閉店後に舞い戻り、再び口論となり揉み合った末、その従業員が衝動的に殺してしまったらしい。尾沼を殺した犯人(従業員)も捕まったという。
「本当に尾沼さんがギャンブルを!?」
りおは公安デスクで関係書類を読み、声を荒げた。
「そんなはずない! 彼に限ってそんな……。何か事件に巻き込まれたのかもしれないのに」
「現場の状況、目撃者の証言、そして何より犯人の供述がある。これ以上の捜査は出来んよ」
言葉とは裏腹に、悔しさをにじませる風見は投げ捨てるように資料をデスクに置いた。
「あまりにも出来過ぎです。現場は例のアロン・モーリスの店……。しかもテロ組織が絡んでいるかもしれない店ですよ!? その組織はおそらく……」
りおの脳裏には不気味に笑うジンの顔が浮かぶ。まだ捜査段階ではあるが、公安部ではそのテロ組織は降谷たちが潜入している例の組織だと考えている。
仮にその仮説が正しければ、今回のようにニセの犯人を仕立てることも、ウソの証言をでっちあげることも、何ら難しいことではない。
「もう少し調べさせてください。万が一組織が絡んでいれば、この事件を野放しには出来ない」
りおは鋭い眼差しを風見に向ける。風見はそれを見て「ふぅ」とため息をこぼした。
「……わかった、わかった。お前の熱意に負けたよ。だが広瀬、これだけは覚えておけよ。お前は尾沼を信じているようだが、もしかしたらお前が考えている逆の可能性もあるという事だ」
「逆?」
風見の言葉にりおは眉根を寄せた。尚も風見は続ける。
「ああ。島谷教授の研究で知り得た情報を組織に流していた、という可能性だ。つまり尾沼が組織のスパイだった。何らかの理由で不要となり消された可能性だってある。
お前の主観だけで動くなということだ。これについては降谷さんも同意見なんだ。捜査継続の報告はしておく。但しそんなに時間は取れないぞ」
「はい」
りおは小さく、そして力強く返事をした。
***
それから何日も、りおは尾沼を調べた。昼間は森教授の助手として働き、夜は公安警察として闇夜に紛れて捜査を続ける。
朝早く大学に出かけ、夜は決まって日付が変わってからの帰宅だった。しかし、そんな懸命な捜査にも関わらず、尾沼に関する新しい情報は出てこない。調べれば調べるほど、捜査一課の出した結論に至ってしまう。
これではらちが明かないと、ラスティーとしての情報網も使った。が、なぜかその事件に関してだけは不自然なほど、どこからも情報が上がってこない。
(やっぱり組織が関与してる?)
そうなれば下手に《ラスティー》の名を使って調べることも危険だ。ラスティーが尾沼の事件を嗅ぎまわっているとジンに知れれば、当然疑いの目を向けられる。捜査は完全に手づまりだった。
りおは重いため息をつきながら、路地裏にあるバー『Sirius/シリウス』のドアを開けた。
カランコロン……
ドアベルが乾いた音を鳴らす。腕まくりをした白シャツに蝶ネクタイ、ベストを着た男性がドアの方へ振り返った。
「よう。その顔を見ると空振りだったようだな」
黒髪に口髭を生やしたマスターが声をかけた。すでに店じまいを始めていた為か、店内に客はいない。
「ルーク……」
浮かない顔をしたりおは、そのままカウンター席へと座った。
「何か飲むか?」
「ん……コーヒーを」
「インスタントしかないぞ」
「うん。構わない」
しかしお前たちはコーヒーが好きだな、とルークがぼそりとつぶやく。ケトルに水を入れ、コンロにかけた。
「ん? 何か言った?」
「いや……」
ルークはそれ以上何も言わず、マグカップを戸棚から出すと、インスタントコーヒーをビンから直接振り入れた。
「ミルクと砂糖は?」
「カフェオレにしてもらえる? 砂糖はナシで」
「りょーかい」
小さな鍋を用意し、ミルクを入れる。鍋を火にかけながら、ルークはチラリとりおの顔を見た。
「だいぶお疲れのようじゃないか」
「ん……まあ、ね。組織でも最近NOCを疑われたばかりだから。これ以上ラスティーの情報筋を使うのはマズいし……」
りおはため息交じりにつぶやいた。正直打つ手ナシだった。出てくる話は『尾沼がギャンブルでトラブルを起こし殺された』ということだけだ。ただそれに納得できない自分がいる。
(尾沼さんはギャンブルをする人じゃない。なのになぜ…カジノに行ってたの…? まさか本当に風見さんが言うような、組織のスパイだった…?)
そう思い至っては、そんなはずはないと首を振る。目を閉じれば、実直で優しい尾沼の笑顔が浮かんだ。胸の奥がギュッと痛くなる。
「はぁ……」
りおは深いため息をついた。それを見たルークも小さく息を吐くと、湯気の立つコーヒーに温めたミルクを入れ、カップをりおの前に置く。
「実際のところ、今回の被害者とお前はどういう関係だったんだ?」
あまりにも捜査にのめり込むりおの姿に、ルークは不思議そうに訊ねた。
「尾沼さんとは大学の、仕事上でしか付き合いは無いわ。ただ……大学の助手として入ったばかりの時に色々面倒を見てもらっていたの」
りおはカップに手を伸ばし、フーッと息を吹きかける。ゆっくりとカフェオレに口を付けた。
「仕事に慣れない頃、私の緊張を解く為に冗談を交えて自分の身の上話をしてくれた。父親がギャンブルで痛い目を見ていたから、自分はあんなものには絶対手を出さないと何度も言ってたわ。
とても優しくて…責任感が強く、面倒見のいい人だった。そして、島谷教授をとても尊敬していて…研究熱心で。そんな彼がカジノでギャンブルをすることも、ましてやスパイ活動をすることも……私にはどうしても考えられないのよ」
カップから立ち上る湯気を見つめ、りおは悲痛な面持ちで話す。ルークは黙って聞いていた。
「そもそも彼が組織と繋がっていたなら、もっと私と接点を持とうとしてもおかしくはない。職場に仲間(ラスティー)がいるなら、協力を仰いだはず……」
考えても考えても、尾沼とカジノが結びつかない。そしてスパイ活動というのも腑に落ちない。しかし事件の結果は出ている。
尾沼がカジノに出入りしていた。そしてトラブルに合って殺された。その事実は変わらないのだ。
「確かにお前の言う通りだ。ヤツが組織のスパイだったとすれば、まずお前にコンタクトを取るだろう。だがヤツはそれをしなかった。とすれば、可能性は二つ」
ルークの目が鋭い光を放つ。りおはそれをジッと見つめる。
「ヤツ自身は組織のスパイなどでは無く、何か組織にとって都合の悪いことを知ってしまい殺された。
もう一つの可能性は、ヤツは組織のスパイだったが、裏で動いている活動は【ラスティー】には秘密にされている。
故に、自分が組織の関係者であることを伝えなかったか、もしくはヤツ自身もラスティーの存在を知らされなかった可能性もある」
ルークの推理にりおは目を見開く。
「私には秘密にされている?」
「ああ。例えば……今ジンが動いている【新しいビジネス】とか…ね」
「あ…!」
確かに【新しいビジネス】については、ラスティーだけではなく他の幹部クラスのメンバーにも伝えられていない。
また、組織の末端の人間がすべての幹部を知っているとは限らないし、おそらく不必要な情報は組織も教えないだろう。
しかしバラバラのピース(事実)を積み上げれば、一つになるのは確かだった。
ジンは【新しいビジネス】を進めている。そのジンが以前バーボンに調査を依頼したのが【アロン・モーリス】だった。
その男が所有する違法カジノで尾沼は殺された。
となれば、【新しいビジネス】に【アロン・モーリス】と今回の被害者である尾沼が関わっていたと考えても、何らおかしくはない。
「この推理が正しければ、彼が何かしらの形で組織に関わっていた可能性の方が高いだろう。スパイだったのか、それとも何も知らず組織に利用されていたとも考えられる。
いったいどんな情報を集めていたのか、それが【ビジネス】の何に繋がるのか——。その辺りも含めてまだ推測の域を出ないがな」
ルークはカクテルグラスを磨き上げ、バックバーにそっと戻す。指紋一つないグラスは店の照明を受けて、まるで鏡のように輝いた。
「この件に関しては俺も調べているんだ。しかし……おそらくジンの事だ。足が付きそうな情報は全て消している可能性もある。
エンジェルダストの失敗は組織にとっても大きかった。今度こそミスは許されないから、あっちもかなり神経を使っているはずだ。
しっぽを掴むのは難しいだろう。だからお前もあまり暴走するなよ」
「うん…わかった…」
りおはそう返事をしたものの、その顔は何かを思案していた。
尾沼の無実は信じたい。が、本人が知らないうちに組織に利用されていた可能性は十分ある。
彼の人の良さを利用して、東都大で研究している他の分野の情報までも、組織に流していたとしたら——。
新たな可能性も浮上し、りおの気持ちはすでに組織の【ビジネス】へと向いていた。
尾沼は本来ギャンブル嫌いであったが、ここ数か月は研究が上手くいかない事でストレスを溜め、知人に誘われて複数のカジノに出入りをしていた。
現場となったカジノは今回たまたま入った店。しかしそこでイカサマに気付き、取られた金を巡って従業員と口論になったところを数人の客が目撃している。
一度は店を出て行ったものの閉店後に舞い戻り、再び口論となり揉み合った末、その従業員が衝動的に殺してしまったらしい。尾沼を殺した犯人(従業員)も捕まったという。
「本当に尾沼さんがギャンブルを!?」
りおは公安デスクで関係書類を読み、声を荒げた。
「そんなはずない! 彼に限ってそんな……。何か事件に巻き込まれたのかもしれないのに」
「現場の状況、目撃者の証言、そして何より犯人の供述がある。これ以上の捜査は出来んよ」
言葉とは裏腹に、悔しさをにじませる風見は投げ捨てるように資料をデスクに置いた。
「あまりにも出来過ぎです。現場は例のアロン・モーリスの店……。しかもテロ組織が絡んでいるかもしれない店ですよ!? その組織はおそらく……」
りおの脳裏には不気味に笑うジンの顔が浮かぶ。まだ捜査段階ではあるが、公安部ではそのテロ組織は降谷たちが潜入している例の組織だと考えている。
仮にその仮説が正しければ、今回のようにニセの犯人を仕立てることも、ウソの証言をでっちあげることも、何ら難しいことではない。
「もう少し調べさせてください。万が一組織が絡んでいれば、この事件を野放しには出来ない」
りおは鋭い眼差しを風見に向ける。風見はそれを見て「ふぅ」とため息をこぼした。
「……わかった、わかった。お前の熱意に負けたよ。だが広瀬、これだけは覚えておけよ。お前は尾沼を信じているようだが、もしかしたらお前が考えている逆の可能性もあるという事だ」
「逆?」
風見の言葉にりおは眉根を寄せた。尚も風見は続ける。
「ああ。島谷教授の研究で知り得た情報を組織に流していた、という可能性だ。つまり尾沼が組織のスパイだった。何らかの理由で不要となり消された可能性だってある。
お前の主観だけで動くなということだ。これについては降谷さんも同意見なんだ。捜査継続の報告はしておく。但しそんなに時間は取れないぞ」
「はい」
りおは小さく、そして力強く返事をした。
***
それから何日も、りおは尾沼を調べた。昼間は森教授の助手として働き、夜は公安警察として闇夜に紛れて捜査を続ける。
朝早く大学に出かけ、夜は決まって日付が変わってからの帰宅だった。しかし、そんな懸命な捜査にも関わらず、尾沼に関する新しい情報は出てこない。調べれば調べるほど、捜査一課の出した結論に至ってしまう。
これではらちが明かないと、ラスティーとしての情報網も使った。が、なぜかその事件に関してだけは不自然なほど、どこからも情報が上がってこない。
(やっぱり組織が関与してる?)
そうなれば下手に《ラスティー》の名を使って調べることも危険だ。ラスティーが尾沼の事件を嗅ぎまわっているとジンに知れれば、当然疑いの目を向けられる。捜査は完全に手づまりだった。
りおは重いため息をつきながら、路地裏にあるバー『Sirius/シリウス』のドアを開けた。
カランコロン……
ドアベルが乾いた音を鳴らす。腕まくりをした白シャツに蝶ネクタイ、ベストを着た男性がドアの方へ振り返った。
「よう。その顔を見ると空振りだったようだな」
黒髪に口髭を生やしたマスターが声をかけた。すでに店じまいを始めていた為か、店内に客はいない。
「ルーク……」
浮かない顔をしたりおは、そのままカウンター席へと座った。
「何か飲むか?」
「ん……コーヒーを」
「インスタントしかないぞ」
「うん。構わない」
しかしお前たちはコーヒーが好きだな、とルークがぼそりとつぶやく。ケトルに水を入れ、コンロにかけた。
「ん? 何か言った?」
「いや……」
ルークはそれ以上何も言わず、マグカップを戸棚から出すと、インスタントコーヒーをビンから直接振り入れた。
「ミルクと砂糖は?」
「カフェオレにしてもらえる? 砂糖はナシで」
「りょーかい」
小さな鍋を用意し、ミルクを入れる。鍋を火にかけながら、ルークはチラリとりおの顔を見た。
「だいぶお疲れのようじゃないか」
「ん……まあ、ね。組織でも最近NOCを疑われたばかりだから。これ以上ラスティーの情報筋を使うのはマズいし……」
りおはため息交じりにつぶやいた。正直打つ手ナシだった。出てくる話は『尾沼がギャンブルでトラブルを起こし殺された』ということだけだ。ただそれに納得できない自分がいる。
(尾沼さんはギャンブルをする人じゃない。なのになぜ…カジノに行ってたの…? まさか本当に風見さんが言うような、組織のスパイだった…?)
そう思い至っては、そんなはずはないと首を振る。目を閉じれば、実直で優しい尾沼の笑顔が浮かんだ。胸の奥がギュッと痛くなる。
「はぁ……」
りおは深いため息をついた。それを見たルークも小さく息を吐くと、湯気の立つコーヒーに温めたミルクを入れ、カップをりおの前に置く。
「実際のところ、今回の被害者とお前はどういう関係だったんだ?」
あまりにも捜査にのめり込むりおの姿に、ルークは不思議そうに訊ねた。
「尾沼さんとは大学の、仕事上でしか付き合いは無いわ。ただ……大学の助手として入ったばかりの時に色々面倒を見てもらっていたの」
りおはカップに手を伸ばし、フーッと息を吹きかける。ゆっくりとカフェオレに口を付けた。
「仕事に慣れない頃、私の緊張を解く為に冗談を交えて自分の身の上話をしてくれた。父親がギャンブルで痛い目を見ていたから、自分はあんなものには絶対手を出さないと何度も言ってたわ。
とても優しくて…責任感が強く、面倒見のいい人だった。そして、島谷教授をとても尊敬していて…研究熱心で。そんな彼がカジノでギャンブルをすることも、ましてやスパイ活動をすることも……私にはどうしても考えられないのよ」
カップから立ち上る湯気を見つめ、りおは悲痛な面持ちで話す。ルークは黙って聞いていた。
「そもそも彼が組織と繋がっていたなら、もっと私と接点を持とうとしてもおかしくはない。職場に仲間(ラスティー)がいるなら、協力を仰いだはず……」
考えても考えても、尾沼とカジノが結びつかない。そしてスパイ活動というのも腑に落ちない。しかし事件の結果は出ている。
尾沼がカジノに出入りしていた。そしてトラブルに合って殺された。その事実は変わらないのだ。
「確かにお前の言う通りだ。ヤツが組織のスパイだったとすれば、まずお前にコンタクトを取るだろう。だがヤツはそれをしなかった。とすれば、可能性は二つ」
ルークの目が鋭い光を放つ。りおはそれをジッと見つめる。
「ヤツ自身は組織のスパイなどでは無く、何か組織にとって都合の悪いことを知ってしまい殺された。
もう一つの可能性は、ヤツは組織のスパイだったが、裏で動いている活動は【ラスティー】には秘密にされている。
故に、自分が組織の関係者であることを伝えなかったか、もしくはヤツ自身もラスティーの存在を知らされなかった可能性もある」
ルークの推理にりおは目を見開く。
「私には秘密にされている?」
「ああ。例えば……今ジンが動いている【新しいビジネス】とか…ね」
「あ…!」
確かに【新しいビジネス】については、ラスティーだけではなく他の幹部クラスのメンバーにも伝えられていない。
また、組織の末端の人間がすべての幹部を知っているとは限らないし、おそらく不必要な情報は組織も教えないだろう。
しかしバラバラのピース(事実)を積み上げれば、一つになるのは確かだった。
ジンは【新しいビジネス】を進めている。そのジンが以前バーボンに調査を依頼したのが【アロン・モーリス】だった。
その男が所有する違法カジノで尾沼は殺された。
となれば、【新しいビジネス】に【アロン・モーリス】と今回の被害者である尾沼が関わっていたと考えても、何らおかしくはない。
「この推理が正しければ、彼が何かしらの形で組織に関わっていた可能性の方が高いだろう。スパイだったのか、それとも何も知らず組織に利用されていたとも考えられる。
いったいどんな情報を集めていたのか、それが【ビジネス】の何に繋がるのか——。その辺りも含めてまだ推測の域を出ないがな」
ルークはカクテルグラスを磨き上げ、バックバーにそっと戻す。指紋一つないグラスは店の照明を受けて、まるで鏡のように輝いた。
「この件に関しては俺も調べているんだ。しかし……おそらくジンの事だ。足が付きそうな情報は全て消している可能性もある。
エンジェルダストの失敗は組織にとっても大きかった。今度こそミスは許されないから、あっちもかなり神経を使っているはずだ。
しっぽを掴むのは難しいだろう。だからお前もあまり暴走するなよ」
「うん…わかった…」
りおはそう返事をしたものの、その顔は何かを思案していた。
尾沼の無実は信じたい。が、本人が知らないうちに組織に利用されていた可能性は十分ある。
彼の人の良さを利用して、東都大で研究している他の分野の情報までも、組織に流していたとしたら——。
新たな可能性も浮上し、りおの気持ちはすでに組織の【ビジネス】へと向いていた。