第7章 ~記憶の扉が開くとき~
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それから3日後の午前9時過ぎ——
以前ガサ入れをした店とはまた別の、アロン所有のナイトクラブで通報が入る。赤色灯を回したパトカーが何台も店の前に駆けつけた。
刑事部捜査一課の佐藤刑事が現場に到着した時には、店の周りは規制線が張られ、辺りは物々しい雰囲気が漂う。
「あ! 佐藤さん! こっちです」
先に現場に到着していた高木刑事が手を上げて佐藤を呼んだ。
「で、被害者の身元は?」
店の入口に男が一人倒れている。そのそばではフラッシュが何度もたかれ、鑑識達が写真を撮っている。床は血で赤く染まり、未だに鉄さびのような匂いが立ち込めていた。
黙々と進む鑑識作業を横目に、佐藤は高木に訊ねた。
「え~っと…所持品から被害者の身元は《尾沼裕樹/おぬまひろき》さん31歳。
死亡推定時刻は今から6時間前の午前3時頃。
20分ほど前に、ここを通りかかった方が店のドアが開いている事に気付き、泥棒でも入ったのかと思って店内を覗いたところ、大量の血痕を見つけて119番したようです」
「なるほど。ナイトクラブの扉がこんな時間に開いてるなんて確かに不自然だものね。他に分かっていることは?」
「えーっと……被害者の職業なんですが、東都大の研究室で助手をされているようです。財布にIDカードが入ってました」
高木がパラパラと手帳をめくる。近くに居た鑑識官が、証拠品として袋に入れられたIDカードを佐藤に差し出した。
「東都大で助手? あら? どっかで同じような人いなかったかしら?」
「あ~……。たぶんそれ、星川さくらさんじゃないですか? 前にホームセンターでの強盗事件や、デパートの爆弾未遂、あと東都銀行の強盗事件の時に居合わせた……」
「ああ! 阿笠博士のお隣さんとお付き合いしてるっていう……。じゃあ、同僚かもしれないから聞き込みに行った方が良いわね」
佐藤はああ、あの時の……、とつぶやきながらさくらの顔を思い出す。
(星川さくらさん、か。なんかもっと前に……どっかで会ったことあるような気がするんだけど……)
佐藤は「う~ん…」とその場で考え込んだ。
「ほら、佐藤さん! 聞き込み行けって指示が出ましたよ! 僕が運転しますから。行きましょう」
「え、ええ」
高木の声にハッと我に返る。結局何も思い出せないまま、佐藤は慌てて彼の後を追った。
東都大学理学部——
理学部の受付では職員たちが騒然としていた。尾沼助手の訃報を聞いて、あちらこちらで対応に追われている。
事務室に設置された2台の電話はひっきりなしに鳴っていて、もはやパンク寸前。繋がらない電話に業を煮やしたのか、職員のスマホまで鳴り出す始末。
そんな中、佐藤と高木は応接スペースに通され、責任者が来るのを待っていた。
「お待たせして申し訳ありません」
やがて理学部生物学科の免疫学研究室、島谷伸幸教授が息を切らして応接スペースへとやってきた。
「こちらこそお忙しい時間に申し訳ありません。警視庁刑事部凶行犯係の佐藤です。
ところで、理学部にお勤めになられている助手の尾沼裕樹さんは、島谷教授の助手さんということで間違いありませんか?」
佐藤は警察手帳を見せ手短に挨拶を済ませると、早速本題に入った。
「あ、はい。尾沼君は私の研究室の助手で間違いありません」
そう答えた島谷教授の顔は青ざめていた。
「尾沼さんが殺されたのは違法カジノが行われていたナイトクラブです。以前から彼はそのようなところに出入りしていたのでしょうか?」
高木も佐藤同様、警察手帳を見せて名を名乗ると、尾沼の事を訊ねる。
「さ、さあ……。研究室では真面目で几帳面な彼にいつも助けられていました。が、大学を出た後の事は分かりません。そもそも彼に限らず、助手のプライベートな事は全然知らなくて……」
島谷は頭を掻きながら申し訳なさそうにつぶやいた。
確かに教授がここに来る前、他の助手や受付の女性に話を聞いた際にも、『島谷教授は細菌以外には興味ない人』と言われていたので、島谷の話は二人の想定内だった。
「失礼ですが、夕べ教授はどちらにいらっしゃいました? できれば今日大学に来られるまでの事をザッとお話願えますか?」
「あ、はい、分かりました。私は夕べ8時過ぎまで尾沼くんや他の助手と研究室に居ました。失敗続きの研究を、もう一度考え直すことになって……。
その後『たまには早く帰ろう』ということで、助手たちと近くのラーメン屋で夜食を食べて家に帰りました。彼とはそこで別れましたよ。
もしお疑いでしたら、私のマンションには守衛さんが居ますからその方に確認してください。その方と昨夜は確か……9時半頃に挨拶をしています。その日はそのまま風呂に入って寝ました。今朝は7時半に起きて8時過ぎには大学に来ていましたよ」
「そうですか。分かりました。つまり、被害者は夕べ9時過ぎに皆さんと別れて、カジノに行った…ということになりますね」
高木が島谷の話のメモを取り、尾沼の足取りを大まかに整理した。
その他にも被害者の事を訊ねたが、本当に細菌以外に興味が無いようで、自分の助手だというのにほとんど何も知らなかった。
「教授、お時間をいただいてありがとうございました。事情聴取は以上です」
「出来るだけ早く犯人を捕まえてください。尾沼君のために……」
「分かりました」
特に不審な点は無く、佐藤と高木は礼を言って理学部の事務室を出る。その後、二人は森教授の研究室へと足を運んだ。
以前ガサ入れをした店とはまた別の、アロン所有のナイトクラブで通報が入る。赤色灯を回したパトカーが何台も店の前に駆けつけた。
刑事部捜査一課の佐藤刑事が現場に到着した時には、店の周りは規制線が張られ、辺りは物々しい雰囲気が漂う。
「あ! 佐藤さん! こっちです」
先に現場に到着していた高木刑事が手を上げて佐藤を呼んだ。
「で、被害者の身元は?」
店の入口に男が一人倒れている。そのそばではフラッシュが何度もたかれ、鑑識達が写真を撮っている。床は血で赤く染まり、未だに鉄さびのような匂いが立ち込めていた。
黙々と進む鑑識作業を横目に、佐藤は高木に訊ねた。
「え~っと…所持品から被害者の身元は《尾沼裕樹/おぬまひろき》さん31歳。
死亡推定時刻は今から6時間前の午前3時頃。
20分ほど前に、ここを通りかかった方が店のドアが開いている事に気付き、泥棒でも入ったのかと思って店内を覗いたところ、大量の血痕を見つけて119番したようです」
「なるほど。ナイトクラブの扉がこんな時間に開いてるなんて確かに不自然だものね。他に分かっていることは?」
「えーっと……被害者の職業なんですが、東都大の研究室で助手をされているようです。財布にIDカードが入ってました」
高木がパラパラと手帳をめくる。近くに居た鑑識官が、証拠品として袋に入れられたIDカードを佐藤に差し出した。
「東都大で助手? あら? どっかで同じような人いなかったかしら?」
「あ~……。たぶんそれ、星川さくらさんじゃないですか? 前にホームセンターでの強盗事件や、デパートの爆弾未遂、あと東都銀行の強盗事件の時に居合わせた……」
「ああ! 阿笠博士のお隣さんとお付き合いしてるっていう……。じゃあ、同僚かもしれないから聞き込みに行った方が良いわね」
佐藤はああ、あの時の……、とつぶやきながらさくらの顔を思い出す。
(星川さくらさん、か。なんかもっと前に……どっかで会ったことあるような気がするんだけど……)
佐藤は「う~ん…」とその場で考え込んだ。
「ほら、佐藤さん! 聞き込み行けって指示が出ましたよ! 僕が運転しますから。行きましょう」
「え、ええ」
高木の声にハッと我に返る。結局何も思い出せないまま、佐藤は慌てて彼の後を追った。
東都大学理学部——
理学部の受付では職員たちが騒然としていた。尾沼助手の訃報を聞いて、あちらこちらで対応に追われている。
事務室に設置された2台の電話はひっきりなしに鳴っていて、もはやパンク寸前。繋がらない電話に業を煮やしたのか、職員のスマホまで鳴り出す始末。
そんな中、佐藤と高木は応接スペースに通され、責任者が来るのを待っていた。
「お待たせして申し訳ありません」
やがて理学部生物学科の免疫学研究室、島谷伸幸教授が息を切らして応接スペースへとやってきた。
「こちらこそお忙しい時間に申し訳ありません。警視庁刑事部凶行犯係の佐藤です。
ところで、理学部にお勤めになられている助手の尾沼裕樹さんは、島谷教授の助手さんということで間違いありませんか?」
佐藤は警察手帳を見せ手短に挨拶を済ませると、早速本題に入った。
「あ、はい。尾沼君は私の研究室の助手で間違いありません」
そう答えた島谷教授の顔は青ざめていた。
「尾沼さんが殺されたのは違法カジノが行われていたナイトクラブです。以前から彼はそのようなところに出入りしていたのでしょうか?」
高木も佐藤同様、警察手帳を見せて名を名乗ると、尾沼の事を訊ねる。
「さ、さあ……。研究室では真面目で几帳面な彼にいつも助けられていました。が、大学を出た後の事は分かりません。そもそも彼に限らず、助手のプライベートな事は全然知らなくて……」
島谷は頭を掻きながら申し訳なさそうにつぶやいた。
確かに教授がここに来る前、他の助手や受付の女性に話を聞いた際にも、『島谷教授は細菌以外には興味ない人』と言われていたので、島谷の話は二人の想定内だった。
「失礼ですが、夕べ教授はどちらにいらっしゃいました? できれば今日大学に来られるまでの事をザッとお話願えますか?」
「あ、はい、分かりました。私は夕べ8時過ぎまで尾沼くんや他の助手と研究室に居ました。失敗続きの研究を、もう一度考え直すことになって……。
その後『たまには早く帰ろう』ということで、助手たちと近くのラーメン屋で夜食を食べて家に帰りました。彼とはそこで別れましたよ。
もしお疑いでしたら、私のマンションには守衛さんが居ますからその方に確認してください。その方と昨夜は確か……9時半頃に挨拶をしています。その日はそのまま風呂に入って寝ました。今朝は7時半に起きて8時過ぎには大学に来ていましたよ」
「そうですか。分かりました。つまり、被害者は夕べ9時過ぎに皆さんと別れて、カジノに行った…ということになりますね」
高木が島谷の話のメモを取り、尾沼の足取りを大まかに整理した。
その他にも被害者の事を訊ねたが、本当に細菌以外に興味が無いようで、自分の助手だというのにほとんど何も知らなかった。
「教授、お時間をいただいてありがとうございました。事情聴取は以上です」
「出来るだけ早く犯人を捕まえてください。尾沼君のために……」
「分かりました」
特に不審な点は無く、佐藤と高木は礼を言って理学部の事務室を出る。その後、二人は森教授の研究室へと足を運んだ。