第1章 ~運命の再会そして…~
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『エンジェルダストとは言っても、当時はまだ凶暴性は無く気分を良くする方だけ。もちろん私に使うつもりだったから、だいぶ弱く作り変えていたようだったけど』
衝撃の発言に安室は口を開けたままだ。
『治療と偽って打たれたの。でもさすがにすぐ分かりますよ。薬が効く前に逃げたの。ベルモットが介抱してくれたわ。まあ、弱いといっても麻薬は麻薬。完全に抜けるのに3日かかったわ(笑)』
「(笑)じゃないだろう! 笑えないよ!」
『もちろんベルモットからジンにバレて、次やったら頭に風穴開けるって怒られたらしいけど。今思えばエンジェルダストの開発途中だったから、殺されなかったのかもね』
「な、なるほどね」
本当にマッドサイエンティストだったんだなと、安室は頭を抱えた。
『おしゃべりはこれくらいにして、そろそろ始めますか』
「ああ、気をつけて」
そうスマホで言葉を交わした後、安室はベッドに人が寝ているように毛布を使って細工する。
さくらは監視カメラがないことを最終確認して、通気口を静かに開けた。
人一人やっと入れるくらいの所に、華奢なさくらはスルリと身を滑らす。通気口を伝い、メインコンピューターのある部屋へと向かった。
普通にメインコンピューター室へ行くには、何台もの監視カメラの前を通り抜けなくてはならない。それはあまりにもハイリスクだ。
それならば、カメラの目が届かない通気口を使えばいい。普通に考えればそこは人が入る余地など無いほど狭い。
ただ最初だけ上手く通れれば、中は意外と広いということを知っている人は案外少ない。人など入れない、通れないという概念がある限り、絶対気付かれない盲点なのだ。
薄暗い通気用の隙間を進み、さくらは光が差し込む通気口からフタ越しに部屋の中を覗き込む。メインコンピューターの真上に来たようだ。
まず監視カメラの数を確認した。2台あるが、1台は部屋の中から出入り口に向いている。PCの真上から侵入すれば、こちらの姿は写らない。
PC本体を写しているのは1台だけだ。カメラにつながっているPCをジャックすれば数時間前の映像をループして流しておくことは出来る。
メインコンピューター室へは、各部署の責任者がたまに来るくらいだと哀は言っていた。
通気口からPCが見えるように小型カメラを仕込んで、さくらは元来た道を戻った。
安室しかいないことを確認して病室に入る。通気口のフタをそっと閉めた。
「一度看護師が検温に来たので、僕の体温を測って渡しました」という報告をスマホで見せられて、思わず笑ってしまった。
「で、どうでした?」
『監視カメラは2台。1台は出入り口のみ。PCに向かっているカメラは1台のみです』
「分かりました。そちらは僕に任せてください」
安室がニヤリと笑う。
『小型カメラを仕掛けてきました。その映像を見て決行時間を決めましょう』
「分かりました。では僕は警備室に細工をして一旦ここから離れます。明日また同じ時間に来ます」
『了解です。気をつけて』
「大丈夫。ヘマはしません」
スマホで言葉を交わしたあと、安室は立ち上がり
「ああ、目が覚めましたか? 薬が効いたんですね。よく眠っていましたよ。顔色がまだ良くないですね。もう少し寝てください。僕は一旦帰りますね。明日また来ます」
ナチュラルに芝居をして、最後にウィンクまでして部屋を出ていった。
(安室さんはムダにカッコよさを振りまいているなぁ…)
彼のいつもと変わらない様子に、さくらはちょっとだけホッとした。
安室は、さくらの部屋を出て非常用の出口の鍵を壊した。もちろん、ここは監視カメラから死角になっている。
その後なに食わぬ顔で警備室に寄った。
警備員に声をかけ、2ブロック先の非常用出口の鍵が壊れていると知らせた。
「分かりました! 確認します!」といって出ていった男の顔を確認する。
すぐに近くのトイレに寄り、着替えと変装をしてその男に成りすました。
スマートに警備室に入り、メインコンピューターの監視カメラを制御しているPCに近づくと、慣れた手つきで細工を施す。
あっという間の出来事で気付いた者はいない。そのまま警備室をあとにして変装を解いた。
安室がトイレを出る頃、鍵を直した警備員が戻ってきた。安室はさくらにメールを送る。
「任務完了。明日はあなたが好きな物を買って来ますね」
さすがに仕事が速い。でも好きなもの…って?
安室さん、私の好きなもの知っているのかしら…?
さくらは小首をかしげた。
安室はラボを出て、尾行や盗聴器などが仕掛けられていないことを確認し、工藤邸に向かう。
予定通り進んでいることを昴とコナンに知らせると、ふたりはホッとした顔をした。
ただ、ギムレットのことを伝えるかどうか悩んでいた。正直、あのラボにギムレットが出入りしているのは確実だ。過去にそのようなことが有りながら、さくらは潜入した。よほどの覚悟であろう。
今、ギムレットの事を話せば、おそらく昴は潜入の中止を決めるに違いない。きっとそれをさくらは望まないはずだ。報告はいずれする。だが今ではない。
出来るだけラボのそばで待機し、自分が守ってやらねばと安室は思った。
翌日
同じ時間に安室はやって来た。
「お土産ですよ~」と言って、ラズベリームースを買ってきてくれた。
『なぜ私がラズベリー好きだと知ってるの?』
さくらはスマホに文字を打つ。
「尾行していた時に、よくラズベリーのものを手に取っていたので」サラッとカミングアウトしてきた。
『へぇ~。尾行してたことバラしちゃうんだ』
「どうせ知ってたでしょ」
『まぁ…。確かに』
「結局食欲の無かったあなたは、何も買わなかったけどね」
『そこもお見通しか』
ムースを味わいながら、安室の観察力に感心していた。